2021/07/30(金) - 12:00
ブリヂストンのアンカーより新作ロードバイク、RP9が発売される。これはトラックバイクで世界選手権の頂点を獲ったアンカーの技術を結集して作った「勝てるロードバイク」だ。実際に、TEAM BRIDGESTONE Cyclingの今村駿介が、このRP9に乗り、7月11日のJプロツアーレースで勝利を飾っている。
試験を繰り返し作り込んだ空力性能、トラックバイクでのデータを存分に活かした剛性バランス、そして空力と剛性の開発目標を達成しつつUCI規定内で削り込んだ重量。その卓越したバランスが、アンカーのお家芸である「誰にでも扱いやすい操作感」「そうと気がつかずに増す速さ」を、このRP9でも実現したと言えるだろう。
RP9は、日本の技術者が、世界を制した技術で、日本の選手のために作ったロードレーシングマシンだ。しかもその得意分野は、何かに偏ることのない、全方位なのである。
RP9のPとは、Propulsion、つまり推進力のPだ。現在のアンカー、その根幹技術とも言えるPROFORMAT(推進力最大化解析技術)の由来でもある推進力「P」を冠する一台である。
アンカーのロードバイクのトップモデルであるRS9s。この後継として位置付けられるRP9は、その良さを受け継ぎつつ進化させた「次世代のロードバイク」であるという。
RS9sの性能は、それで今年も勝利を重ねるチームブリヂストンサイクリングの選手の結果で明らかだが、依然確かなものである。「RS9は依然として戦闘力があるが、他社がエアロやディスク化を進めてゆくに伴いRS9を上回る戦闘力を持つバイクが必要になった」(商品企画部・村河さん)。
その言葉通りに新作RP9は、ディスクブレーキを搭載、電動変速を前提とし、エアロロード並みの空力性能を身につけた。いわゆる現代的なロードバイクである。「現在のトレンドに対応しただけではない、RS9sを置き換える、次世代のロードバイクなんです」(村河さん)。
そして彼らの言う次世代とは「あらゆる状況に対応でき、しかもレースで勝利できるロードバイク」という欲張りなものだった。それをまず、車体の作りから読み解いてみよう。
その通り、アンカーによる最新トラックバイク、短距離種目用の「PRZ」はチームブリヂストンサイクリングの選手、脇本雄太が2020年世界選手権・男子ケイリンで2位を獲った。中距離種目用「PRP」は、梶原悠未が女子オムニアム・世界チャンピオンを獲得した。その世界を制した技術を、今度はロードバイクに余す所なく利用した。現在のアンカーが持つ技術の集大成とも言える新作だ。
RP9が目指したのは、「オールラウンドに戦えるロードバイク」であること。長めのワンデーレース、ステージレースなど、様々な環境が入り乱れるコースで勝てるロードバイク、として開発が進められたという。実際に勝てる、というのが重要である。勝てそうなスペック、ではない。チームブリヂストンサイクリングの選手の勝利がそれを実証している。
ではRP9は、どのようにロードバイクのオールラウンダーになったのか。ロードバイクにおける勝利に必要な3つの要素、これらにこだわり抜いてバランスを取った結果であるという。
現在の技術をもってすれば、上記3つの要素で、個別に特化して驚くような数字を出すことは難しくない。しかし数字だけのために自転車を作る意味はない。RP9の開発で大事にしたのは、実際に乗った時のフィーリングと性能だった。日本のブランド、アンカーらしい実直なやり方である。それぞれの要素を見ていこう。
屋内のベロドローム内を走るトラックは、空気抵抗以外の外的要素が少ない。特にケイリンやスプリントといったトラック短距離種目、フィニッシュスプリントでは、この空気抵抗で大きく差がつく。PRZの場合、開発の際に想定した速度は80km/hに達するほどだった。
ここでアンカーの根幹技術であるPROFORMATが活躍した。CFD(数値流体力学)を用いた空力解析、積層FEM(有限要素法)シミュレーション、これによる構造・材料の設計といった解析で、多くの知見を溜めたのだ。この開発データをロードバイクに置き換え、部位ごとに空力の影響を割り出した。その結果、RS9s対比で大幅に改善した空力性能を得られたという。
特に気を使ったのは、空気が真っ先にぶつかるフロントまわりだ。ステムからヘッド周りまで改めて設計し、専用に作られたステムを使用する。空気抵抗となるケーブル群は、ステムの中を通さずに、使い勝手の良さを残した方法で中に収めている。
そして、シートチューブ、ダウンチューブ部のカムテール形状だ。前後方向に長い翼形チューブの方が空力性能は良いのだが、その分重量は重くなり横風の影響も強くなる。そのため後部をカットしたカムテール形状を使う。シートチューブに入るシートポストも専用設計として、可能な限り無駄を削ぎ落としている。
実際の作りのポイントとして特徴的なのは、左右非対称のチェーンステー構造だ。左が太く、右が細い。これは右側にチェーンリングやパワーメーターなどが付き、太くできる空間が取れないためだ。
そこで左側のチェーンステーを太くした。リアホイールを抜いてフレーム全体を後ろから眺めるとわかりやすい。スルーアクスルシャフトも含めて、リアバック全体を一つの構造体と考えた剛性を高めたのだ。クランクを踏み込んだ時に、左右同じ挙動になるようフレーム変形量をコントロールし、高い推進力を得られるようにする。そのための全体剛性だ、という考え方が見える。
逆に言えば、右側に確かなスペースを確保し、レースで使われる機材を問題なくつけられる配慮がなされているということである。剛性を確保する目的で、あえてBBには大径で幅広のプレスフィットを採用する。これでレース機材としての拡張性を備えつつ、高い推進力をもたらす剛性を確保できるのだ。
これらに代表される部位で剛性を高めていった結果、空力性能と軽量性を前作RS9sよりも高めながら、チームのプロ選手による官能評価でも不足ない剛性の確保を確認したという。
その軽量性を確保するためにRP9では、重量を大きく削れる軽量なカーボン素材を採用した。それが「TORAYT1100」だ。繊維メーカーである「東レ」が開発したこの高強度カーボン素材は、薄い積層でも高い強度を保てるため、総合的な重量を減らせる。これをフレーム本体はもちろんフォークやシートポストといった部位に採用することで、まずは全体的な軽さを達成した。
ここからが、開発者による試作と検証、その繰り返しがものをいった。部位ごとに、性能を落とさないよう、細かく重さを削っていく。それこそプリプレグ(カーボン繊維シート)を一枚貼る、貼らない、といった細かなことを積み重ねた。
その結果、プロトタイプでの計測ではフレーム単体(490mm)の重量は900g。なお、RS9sはフレーム重量は960g。ディスクブレーキ採用+エアロフレーム化してなお重量減となっている。フォーク+フレーム小物などを足した重量は1360g。完成車・ペダルなしで6.8kg(フレームサイズ490mm/SHIMANO DURA-ACE R9170(ペダルレス)/EASTON EC90 AERO/DT SWISS ARC1100 50/FIZIK ARGO VENTO R1)になるイメージだという。
このように、部位ごとに細かな考え方、判断、の積み重ねた結果であるRP9。その積み重ねの開発を可能としたのが、ブリヂストンサイクルの社内にある研究施設、「カーボンラボ」である。
社内で型を作り、それにプリプレグを貼り、窯である「オートクレーブ」に入れて、実際のカーボンフレームにする。実際に作る時間は従来よりも大幅に短縮できるため、シミュレーションから試作のプロセスを格段に速くでき、そのために試作、検証の数も格段に増えた。
試作・検証を増やせたということは、目標に近い開発結果をより早く得られたということだ。この仕組みを持っていることがアンカーの強み。日本人開発者が、日本人のために、こだわり尽くした結果である。
そういった実際の使い勝手と安全性を大事にし、使い勝手の面でもチーム選手、そしてメカニックからの意見を取り入れた。「大量のバイクを一気に組み立てる、限られた時間で整備をするバイクだからこそ、ユーザビリティが重要だと考えています」(村河さん)。
例えば専用設計のステムでは、ケーブル内装だがブレーキホースを抜いたり完全にばらさなくてもスペーサーを抜くだけでステムポジションを変えられるシステムを設計、採用した。またシートポストの内部に電動変速用のバッテリーを収納し、飛行機輸送の際にはバッテリーを簡単に取り出せるようにした。
こういった実践的な使い勝手も、RP9の特徴の一つだ。実直なものづくりを得意とするアンカーならではの特徴とも言える。
※試験条件:RP9はプロトタイプ(490mm/SHIMANO DURA-ACE R9170ペダルレス/EASTON EC90 AERO/DT SWISS ARC1100 50)/RS9sはRS9s市販仕様にホイール(Shimano WH-9000-C50)装着。
※タイムシミュレーションは風洞実験での実測値を元に簡易的に算出したもの。
※バイクの差はブリヂストンサイクルで実施した風洞試験におけるRP9とRS9sの完成車をヨー角±0度で計測した実測値を使用し、ライダー相当のCdAはブリヂストンサイクルで実施した複数の風洞試験の実測値を使用。
この5kmというのは、国内の代表的なサーキットコースである富士スピードウェイの周回4.6km、鈴鹿サーキットの5.8km、もてぎツインリンクの4.8kmと同等の距離として使われている。
次回記事では、このRP9を実際に見て、話を聞いて、浮かんできたさまざまな疑問を開発者にぶつけてみる。
RP9フレームセットは2021年9月の販売予定。フレームセット価格は495,000円(税込)、専用設計のステム+ヘッド小物群、専用設計のバッテリー内蔵可能なシートポスト+クランプ小物群、そしてスルーアクスルが付属する。サイズは440mm、490mm、510mm、530mmの4種類が用意される。
完成車の発売価格と発売時期は未定。
試験を繰り返し作り込んだ空力性能、トラックバイクでのデータを存分に活かした剛性バランス、そして空力と剛性の開発目標を達成しつつUCI規定内で削り込んだ重量。その卓越したバランスが、アンカーのお家芸である「誰にでも扱いやすい操作感」「そうと気がつかずに増す速さ」を、このRP9でも実現したと言えるだろう。
RP9は、日本の技術者が、世界を制した技術で、日本の選手のために作ったロードレーシングマシンだ。しかもその得意分野は、何かに偏ることのない、全方位なのである。
世界を制したトラックの技術で作ったレース用ロードバイク
RP9のPとは、Propulsion、つまり推進力のPだ。現在のアンカー、その根幹技術とも言えるPROFORMAT(推進力最大化解析技術)の由来でもある推進力「P」を冠する一台である。
アンカーのロードバイクのトップモデルであるRS9s。この後継として位置付けられるRP9は、その良さを受け継ぎつつ進化させた「次世代のロードバイク」であるという。
RS9sの性能は、それで今年も勝利を重ねるチームブリヂストンサイクリングの選手の結果で明らかだが、依然確かなものである。「RS9は依然として戦闘力があるが、他社がエアロやディスク化を進めてゆくに伴いRS9を上回る戦闘力を持つバイクが必要になった」(商品企画部・村河さん)。
その言葉通りに新作RP9は、ディスクブレーキを搭載、電動変速を前提とし、エアロロード並みの空力性能を身につけた。いわゆる現代的なロードバイクである。「現在のトレンドに対応しただけではない、RS9sを置き換える、次世代のロードバイクなんです」(村河さん)。
そして彼らの言う次世代とは「あらゆる状況に対応でき、しかもレースで勝利できるロードバイク」という欲張りなものだった。それをまず、車体の作りから読み解いてみよう。
RP9とは、勝利に必要な3要素にこだわり、バランスを取った総合体
RP9の最大の特徴であり、また作り手が自信を持つのは、「世界を制したトラックバイクを作った開発のノウハウをロードバイクに落とし込んだ」ことだ。その通り、アンカーによる最新トラックバイク、短距離種目用の「PRZ」はチームブリヂストンサイクリングの選手、脇本雄太が2020年世界選手権・男子ケイリンで2位を獲った。中距離種目用「PRP」は、梶原悠未が女子オムニアム・世界チャンピオンを獲得した。その世界を制した技術を、今度はロードバイクに余す所なく利用した。現在のアンカーが持つ技術の集大成とも言える新作だ。
RP9が目指したのは、「オールラウンドに戦えるロードバイク」であること。長めのワンデーレース、ステージレースなど、様々な環境が入り乱れるコースで勝てるロードバイク、として開発が進められたという。実際に勝てる、というのが重要である。勝てそうなスペック、ではない。チームブリヂストンサイクリングの選手の勝利がそれを実証している。
ではRP9は、どのようにロードバイクのオールラウンダーになったのか。ロードバイクにおける勝利に必要な3つの要素、これらにこだわり抜いてバランスを取った結果であるという。
ー空力 x 剛性 x 重量ー
現在の技術をもってすれば、上記3つの要素で、個別に特化して驚くような数字を出すことは難しくない。しかし数字だけのために自転車を作る意味はない。RP9の開発で大事にしたのは、実際に乗った時のフィーリングと性能だった。日本のブランド、アンカーらしい実直なやり方である。それぞれの要素を見ていこう。
PROFORMATでこだわり抜いた空力性能の良さ=平地での速さ
空力性能の良さとは、特に平地高速巡行で速いことにつながる。つまりライドでの最大の抵抗と言われる空気抵抗が小さいことを意味する。アンカーがその実際のデータと実証を得たのが、先に開発したトラックバイクだった。屋内のベロドローム内を走るトラックは、空気抵抗以外の外的要素が少ない。特にケイリンやスプリントといったトラック短距離種目、フィニッシュスプリントでは、この空気抵抗で大きく差がつく。PRZの場合、開発の際に想定した速度は80km/hに達するほどだった。
ここでアンカーの根幹技術であるPROFORMATが活躍した。CFD(数値流体力学)を用いた空力解析、積層FEM(有限要素法)シミュレーション、これによる構造・材料の設計といった解析で、多くの知見を溜めたのだ。この開発データをロードバイクに置き換え、部位ごとに空力の影響を割り出した。その結果、RS9s対比で大幅に改善した空力性能を得られたという。
特に気を使ったのは、空気が真っ先にぶつかるフロントまわりだ。ステムからヘッド周りまで改めて設計し、専用に作られたステムを使用する。空気抵抗となるケーブル群は、ステムの中を通さずに、使い勝手の良さを残した方法で中に収めている。
そして、シートチューブ、ダウンチューブ部のカムテール形状だ。前後方向に長い翼形チューブの方が空力性能は良いのだが、その分重量は重くなり横風の影響も強くなる。そのため後部をカットしたカムテール形状を使う。シートチューブに入るシートポストも専用設計として、可能な限り無駄を削ぎ落としている。
トラックフレーム譲りの剛性の高さ=スプリントでの反応の良さ
ロードバイクで必要な剛性の高さとは、つまりスプリント・アタックでの反応が良い・速いということだ。加速感のあるフィーリングと推進力を両立させる。そのためにトラック開発で培った経験が大きくものを言った。実際の作りのポイントとして特徴的なのは、左右非対称のチェーンステー構造だ。左が太く、右が細い。これは右側にチェーンリングやパワーメーターなどが付き、太くできる空間が取れないためだ。
そこで左側のチェーンステーを太くした。リアホイールを抜いてフレーム全体を後ろから眺めるとわかりやすい。スルーアクスルシャフトも含めて、リアバック全体を一つの構造体と考えた剛性を高めたのだ。クランクを踏み込んだ時に、左右同じ挙動になるようフレーム変形量をコントロールし、高い推進力を得られるようにする。そのための全体剛性だ、という考え方が見える。
逆に言えば、右側に確かなスペースを確保し、レースで使われる機材を問題なくつけられる配慮がなされているということである。剛性を確保する目的で、あえてBBには大径で幅広のプレスフィットを採用する。これでレース機材としての拡張性を備えつつ、高い推進力をもたらす剛性を確保できるのだ。
これらに代表される部位で剛性を高めていった結果、空力性能と軽量性を前作RS9sよりも高めながら、チームのプロ選手による官能評価でも不足ない剛性の確保を確認したという。
高強度カーボンT1100で実現した重量の軽さ=上りの速さ
重量の軽さは、上りでの速さに直結する。その一方で軽さと空力性能、そして剛性とは相反する要素だ。空力性能を高める形状にすれば、その分素材量は増える。剛性もまた同じである。その軽量性を確保するためにRP9では、重量を大きく削れる軽量なカーボン素材を採用した。それが「TORAYT1100」だ。繊維メーカーである「東レ」が開発したこの高強度カーボン素材は、薄い積層でも高い強度を保てるため、総合的な重量を減らせる。これをフレーム本体はもちろんフォークやシートポストといった部位に採用することで、まずは全体的な軽さを達成した。
ここからが、開発者による試作と検証、その繰り返しがものをいった。部位ごとに、性能を落とさないよう、細かく重さを削っていく。それこそプリプレグ(カーボン繊維シート)を一枚貼る、貼らない、といった細かなことを積み重ねた。
その結果、プロトタイプでの計測ではフレーム単体(490mm)の重量は900g。なお、RS9sはフレーム重量は960g。ディスクブレーキ採用+エアロフレーム化してなお重量減となっている。フォーク+フレーム小物などを足した重量は1360g。完成車・ペダルなしで6.8kg(フレームサイズ490mm/SHIMANO DURA-ACE R9170(ペダルレス)/EASTON EC90 AERO/DT SWISS ARC1100 50/FIZIK ARGO VENTO R1)になるイメージだという。
社内の研究施設「カーボンラボ」ですぐ試作でき、すぐ検証できた
このように、部位ごとに細かな考え方、判断、の積み重ねた結果であるRP9。その積み重ねの開発を可能としたのが、ブリヂストンサイクルの社内にある研究施設、「カーボンラボ」である。
社内で型を作り、それにプリプレグを貼り、窯である「オートクレーブ」に入れて、実際のカーボンフレームにする。実際に作る時間は従来よりも大幅に短縮できるため、シミュレーションから試作のプロセスを格段に速くでき、そのために試作、検証の数も格段に増えた。
試作・検証を増やせたということは、目標に近い開発結果をより早く得られたということだ。この仕組みを持っていることがアンカーの強み。日本人開発者が、日本人のために、こだわり尽くした結果である。
専用設計のパーツで実現した、実際のレース機材としての使い良さ
また実際のレースの現場では、とっさのパーツ交換などに対応しにくいモデルが見られる。特にショップの店長はこの問題によく直面してきたことだろう。そういった実際の使い勝手と安全性を大事にし、使い勝手の面でもチーム選手、そしてメカニックからの意見を取り入れた。「大量のバイクを一気に組み立てる、限られた時間で整備をするバイクだからこそ、ユーザビリティが重要だと考えています」(村河さん)。
例えば専用設計のステムでは、ケーブル内装だがブレーキホースを抜いたり完全にばらさなくてもスペーサーを抜くだけでステムポジションを変えられるシステムを設計、採用した。またシートポストの内部に電動変速用のバッテリーを収納し、飛行機輸送の際にはバッテリーを簡単に取り出せるようにした。
こういった実践的な使い勝手も、RP9の特徴の一つだ。実直なものづくりを得意とするアンカーならではの特徴とも言える。
ではどのぐらい変わったのか?……5kmで約14秒先行できる!?
これだけのこだわりのもとに作られた新作ロードバイクRP9。その細かな改善の積み重ねた結果を示すデータが、開発側から提示された。- RS9sと比べ、ヨー角±0度実測値で約20w、ヨー角±20度で約25wの大幅改善
- 例えば平均250wで5kmを走行した場合、約14秒のタイム短縮につながる
※試験条件:RP9はプロトタイプ(490mm/SHIMANO DURA-ACE R9170ペダルレス/EASTON EC90 AERO/DT SWISS ARC1100 50)/RS9sはRS9s市販仕様にホイール(Shimano WH-9000-C50)装着。
※タイムシミュレーションは風洞実験での実測値を元に簡易的に算出したもの。
※バイクの差はブリヂストンサイクルで実施した風洞試験におけるRP9とRS9sの完成車をヨー角±0度で計測した実測値を使用し、ライダー相当のCdAはブリヂストンサイクルで実施した複数の風洞試験の実測値を使用。
この5kmというのは、国内の代表的なサーキットコースである富士スピードウェイの周回4.6km、鈴鹿サーキットの5.8km、もてぎツインリンクの4.8kmと同等の距離として使われている。
次回記事では、このRP9を実際に見て、話を聞いて、浮かんできたさまざまな疑問を開発者にぶつけてみる。
RP9の販売予定価格と予定時期
RP9フレームセットは2021年9月の販売予定。フレームセット価格は495,000円(税込)、専用設計のステム+ヘッド小物群、専用設計のバッテリー内蔵可能なシートポスト+クランプ小物群、そしてスルーアクスルが付属する。サイズは440mm、490mm、510mm、530mmの4種類が用意される。
完成車の発売価格と発売時期は未定。
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提供:ブリヂストンサイクル
text:Koichiro Nakamura/photo:Nobuhiko Tanabe
text:Koichiro Nakamura/photo:Nobuhiko Tanabe