2021/08/20(金) - 12:00
「本当に勝てるバイク」を目指した、オールラウンドなレースバイク、アンカー・RP9。空力・剛性・重量の最適なバランスを求めたこのバイクの実力を、藤野智一さん(なるしまフレンド)がインプレし、確かめる。
PROFORMAT(推進力最大化解析技術)による綿密なシミュレーション。世界を走るTEAM BRIDGESTONE Cycling選手による圧倒的な脚力と繊細な感覚。そして埼玉県上尾市の自社内カーボンラボによる試作と改善の迅速なプロセス。RP9は、アンカーが持つこれらリソースの連携が作り上げた、真に実践的なレースバイクである。
その実力を確かめるため、1998年にロード全日本チャンピオンを獲得したこともある元レーサー、藤野智一さんにRP9に乗ってもらい、インプレしてもらった。
藤野さんは現在、東京都渋谷区のプロショップ「なるしまフレンド 神宮店」に勤め、日々お客様と接しながら、数々のハイエンドバイクの性能を実際に見極めている。
「お店の中でよく、いろんな自転車を乗り回すんです。狭い店舗の中ですが、ペダリング効率が違うというか、進む感じがもう別格なものは、もはやひと踏みでわかります」という藤野さん。その豊富な経験と確かな感覚でRP9を称する印象的な言葉が「バイクがもっとスピード出したいなあ、って言っている」だった。
「勝てるレースバイク」を目指したRP9に、実際に勝ってきた男は何を感じ取ったのか。RP9のインプレそのものはもちろんのこと、話が進むにつれ深みの出る藤野さんの言葉も、ぜひ堪能して欲しい。
―まず乗り味、第1印象はどうでした?
よく進みます。踏んだ力を無駄なく推進力に繋げられますね。スムーズな流れ、力の流れを感じます。無駄に踏まず、普通に踏むだけで、自転車がスーッと進んでくれるので、過剰な力を出す必要はないかなと思いますね。
剛性はとても高いと思うんですけど、剛性を感じる前に、自転車が力を前に持っていくので、脚に跳ね返ってくる感じは少ないですね。巡行している時に、少ない力で自転車が進むので、パワーが温存できると思います。この大事な積み重ねが、大きく感じられますね。
―数字的に気がついたところはありましたか?
今使っているパワーメーターは、ペダリングの左右差とかスムーズさが出るんですが、いつも乗っている自転車よりネガティブな数字が低いんですよ。だから効率よくペアリングを回しているんでしょうね。
ペダリングをより綺麗に回せられれば、少ない力でたくさん力を出せる。少ない力で巡航できるし速くも走れる。フレームのパワーロスを抑えている、という言い方ですかね。
―では上りではどうでしょう?
上りも同じですね。踏んだらサーッと自転車が前に進むので、次に踏むまでの間に失速せず、次の踏んだ時のスピードも加わって、上りでも速度を維持しやすい。
だから、ある程度ケイデンスを高く回しても、勾配のきついところでは、そのままスムーズに上ってくれますし、緩い上り斜面では、前がアウターの後ろがセカンドぐらいの重たいギアでも軽く踏んでも前に進んでいくんですね。
―アタック、スプリントなどパワーをかけた時の印象は?
アウターのトップに近いぐらいのギアで、思いっきりスプリントをかけても、やっぱり加速がいい。
「脚は周り切らないだろうな」と思って3枚ぐらいトップに残したギアで掛けても、回り切っちゃうんですよね。だからそこからあと2枚、3枚重くして、そこから踏み込んでいける感じです。
―そんな時にヨレであるとか、そういう挙動はどうでしょう?
例えば昔のバイクだと、リアバックが弱かったんですよ。スプリントである程度前荷重になると、BBが過剰に硬くて、バックが遊んじゃう。後輪がこう、ツンツンと横に跳ねちゃうんですね。そうするともうトラクションが全然噛まないで、ツッツッツって言ってるだけなんですよ。
ですがこのバイクだと、前荷重になって踏んでも、自分の力だとBBがわずかにたわむぐらいで、バックが全然動かないんですよね。もう路面を常にこう、ガッと捉えて、わずかにウィップしている感じなので、全然滑る感じはないです。前荷重でもトラクションが常にかかってくれる感じという。
―下りはどうでしょう?
下りでクラウチングフォームを取ると、距離が離れていた前の車にスッとすぐ追いついてしまうんですよ。ストリームにも入らないで。空力はすごい、やっぱりいいのかなと思いますね。
30kmぐらいだと、もしかしたらちょっと分かりづらいかもしれないけれど、レーススピードに向けて、速度が上がっていくとこう、まっすぐシャーンと抜けていくような感じが強いですね。
―コーナリングでは?
コーナリングもすごいいいですね。直進安定性はどっちかというと強い感じなんです。ですが、なにかあった時、そのとっさの動きにはすごく反応する。しかもハンドルがあまり過剰に振れすぎない。パッとは行くけど行き過ぎず、オーバーステアにならないけど動きは早い。ある程度こう、狭い範囲でパッパッって動くような感じなんですね。
ヘッド角とフォークオフセット量の絶妙な感じもあるんですかね。直進安定性は強いんだけども、しっかりコーナリングした時には狙ったラインを行く。切れ込み過ぎないし、アンダーステアにもならない。狙ったところをちゃんとトレースしていくと言うか。
特に日本の路面は歩道があって、車道があって。路側帯があって、舗装が波打ってしまっているところもいっぱいある。そういう場面でヒヤリとすることが少ないと思いますね。
―疲れた時に、扱いにくいことはなさそうですか?
まあ、その人の踏み方と速度にもよりますね。乗るとわかるんですけど、20、25km/hのスピードで走っていてもすごい気持ちいいんです。もうほとんど力を掛けていなくてもサーッと進んでいくので、あとはチョンチョンと力をかけて行けば、どんどん巡航していく。ずっと踏んでなくてもいいんですよね。
だから30km/hぐらいだったら、力がなくなってもとりあえず回していれば、サーッと進んでいくんじゃないかなと思います。ペダルに力が加わっていれば、自転車がアシストしてくれるみたいな。そういう走りが強いと思います。
―改めてどんな人、どんな走り向けでしょうか?
コンセプトはやっぱりレース向けで、国内でレース活動している人だったら、実業団・JBCFの全体的なカテゴリーで充分使えるスペックだと思います。それにオールラウンドにも使えるっていうことなので、ヒルクライムにも対応できると思いますよ。
ホイールを35mmハイト、もしくは33mmぐらいのハイトの低い軽量ホイールにすれば、たぶん6.8kgを下回るので、重量的には充分なのかなと。6.8kgの自転車って結構あるんですが、ディスクブレーキ付きだとあまりないですよね。普通に安心して走れるスペックで、空力性能が良くて、6.8kg前後っていうのはあんまりないと思います。
とにかくね、軽いんですよ。例えば上りの急勾配で軽めのギアで回した時の、車体の振りの軽さと、後ろから押されてくるようなトラクションの感覚がすごくいいんですよね。
で、そこからギアをシフトアップしていって踏んでいっても、力があったらすごく面白いんでしょうね。走る量が落ちている今現在の私では、その前に脚がなくなるんでしょうけど(笑)。
それにこの間、9時間の耐久レースを走ったんですが、そこでもすごくいいのかなって気がします。耐久レースといってもレースですから。交代しながら常にフレッシュな人たちが走るので、やっぱりペースは基本速いんですよね。そういうところにも良さそうですね。
―レースはしない、という方には?
低速で気持ちよくも走れますけど、1番の醍醐味は、大きなパワーをかけた時の、すごく加速する感覚です。これがやっぱりすごくいいんですよ。
レーシングスペックなのにもったいないということではなく、今だとロングライドやブルベを走るなど、何日も走ったりという中では、快適に走れるんじゃないですかね。やっぱり軽いですから、そこのアドバンテージは、非常に大きいと思います。
でも、自分はそんなにガツンと走らないけれど、という人でも、やっぱりどっかに少しでも気持ちがあったりするわけです。抜かれれば悔しくなって、追っかけたり抜き返したりするわけですよ。その時にガンって、力があっただけ踏めば、たぶん40km/hとか簡単に出ちゃう。
その時の満足感は高いと思うんですよね。そのあと疲れちゃってまた抜かされるんですが、「いや、これはすごい」ってなるはずです(笑)。
だから、初めて買うひとの1台目でもいいと思うんです。作っている方のコンセプトは違うのかもしれないですが、誰が乗ってもたぶん、この自転車の美味しいところは味わえる。
―乗り換えるだけでレースは速くなりますかね?
速くなるというよりは進む感覚がすごく強いので、速くなった気になれるんですね。それが数字的にそうなのか、感覚だけなのかはわかりませんが、でも感覚って結構大事なんですよね。
音の感じもなくなるので、それだけでもやっぱりすごく、イケるなって感じがするんですよね。なんだかすごい静かなんですよ。ザワザワしない。何も言わない。余計な音がしない。
今日乗ったところは、結構向かい風だったんです。で、向かい風の下りで踏むと、人間はどうしても空気抵抗が増えちゃうんですが、やっぱり自転車の周り、下回りがこう、前に進んでいく感じがするんですよ。
「下」がなくて抜けていくという感覚が、やっぱり一生懸命走ってる人にとってはすごく大事です。その本当のわずかなところが、まだ踏めるんじゃないかな、って思わせてくれるからなんですね。
だから力があったらあっただけ、どんどん加速すると思うんですよね。そこに到達する前に、今だったらたぶん自分の脚の方がおしまいになる。まだイケるはずなんですよ。もっとスピード出したいなあ、って言っているんです、この子は(笑)。
アンカーを知り尽くした男による、RP9インプレッション
PROFORMAT(推進力最大化解析技術)による綿密なシミュレーション。世界を走るTEAM BRIDGESTONE Cycling選手による圧倒的な脚力と繊細な感覚。そして埼玉県上尾市の自社内カーボンラボによる試作と改善の迅速なプロセス。RP9は、アンカーが持つこれらリソースの連携が作り上げた、真に実践的なレースバイクである。
その実力を確かめるため、1998年にロード全日本チャンピオンを獲得したこともある元レーサー、藤野智一さんにRP9に乗ってもらい、インプレしてもらった。
藤野さんは現在、東京都渋谷区のプロショップ「なるしまフレンド 神宮店」に勤め、日々お客様と接しながら、数々のハイエンドバイクの性能を実際に見極めている。
「お店の中でよく、いろんな自転車を乗り回すんです。狭い店舗の中ですが、ペダリング効率が違うというか、進む感じがもう別格なものは、もはやひと踏みでわかります」という藤野さん。その豊富な経験と確かな感覚でRP9を称する印象的な言葉が「バイクがもっとスピード出したいなあ、って言っている」だった。
「勝てるレースバイク」を目指したRP9に、実際に勝ってきた男は何を感じ取ったのか。RP9のインプレそのものはもちろんのこと、話が進むにつれ深みの出る藤野さんの言葉も、ぜひ堪能して欲しい。
藤野智一(なるしまフレンド) プロフィール
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権を優勝するなど輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。
2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
―まず乗り味、第1印象はどうでした?
よく進みます。踏んだ力を無駄なく推進力に繋げられますね。スムーズな流れ、力の流れを感じます。無駄に踏まず、普通に踏むだけで、自転車がスーッと進んでくれるので、過剰な力を出す必要はないかなと思いますね。
剛性はとても高いと思うんですけど、剛性を感じる前に、自転車が力を前に持っていくので、脚に跳ね返ってくる感じは少ないですね。巡行している時に、少ない力で自転車が進むので、パワーが温存できると思います。この大事な積み重ねが、大きく感じられますね。
―数字的に気がついたところはありましたか?
今使っているパワーメーターは、ペダリングの左右差とかスムーズさが出るんですが、いつも乗っている自転車よりネガティブな数字が低いんですよ。だから効率よくペアリングを回しているんでしょうね。
ペダリングをより綺麗に回せられれば、少ない力でたくさん力を出せる。少ない力で巡航できるし速くも走れる。フレームのパワーロスを抑えている、という言い方ですかね。
―では上りではどうでしょう?
上りも同じですね。踏んだらサーッと自転車が前に進むので、次に踏むまでの間に失速せず、次の踏んだ時のスピードも加わって、上りでも速度を維持しやすい。
だから、ある程度ケイデンスを高く回しても、勾配のきついところでは、そのままスムーズに上ってくれますし、緩い上り斜面では、前がアウターの後ろがセカンドぐらいの重たいギアでも軽く踏んでも前に進んでいくんですね。
―アタック、スプリントなどパワーをかけた時の印象は?
アウターのトップに近いぐらいのギアで、思いっきりスプリントをかけても、やっぱり加速がいい。
「脚は周り切らないだろうな」と思って3枚ぐらいトップに残したギアで掛けても、回り切っちゃうんですよね。だからそこからあと2枚、3枚重くして、そこから踏み込んでいける感じです。
―そんな時にヨレであるとか、そういう挙動はどうでしょう?
例えば昔のバイクだと、リアバックが弱かったんですよ。スプリントである程度前荷重になると、BBが過剰に硬くて、バックが遊んじゃう。後輪がこう、ツンツンと横に跳ねちゃうんですね。そうするともうトラクションが全然噛まないで、ツッツッツって言ってるだけなんですよ。
ですがこのバイクだと、前荷重になって踏んでも、自分の力だとBBがわずかにたわむぐらいで、バックが全然動かないんですよね。もう路面を常にこう、ガッと捉えて、わずかにウィップしている感じなので、全然滑る感じはないです。前荷重でもトラクションが常にかかってくれる感じという。
―下りはどうでしょう?
下りでクラウチングフォームを取ると、距離が離れていた前の車にスッとすぐ追いついてしまうんですよ。ストリームにも入らないで。空力はすごい、やっぱりいいのかなと思いますね。
30kmぐらいだと、もしかしたらちょっと分かりづらいかもしれないけれど、レーススピードに向けて、速度が上がっていくとこう、まっすぐシャーンと抜けていくような感じが強いですね。
―コーナリングでは?
コーナリングもすごいいいですね。直進安定性はどっちかというと強い感じなんです。ですが、なにかあった時、そのとっさの動きにはすごく反応する。しかもハンドルがあまり過剰に振れすぎない。パッとは行くけど行き過ぎず、オーバーステアにならないけど動きは早い。ある程度こう、狭い範囲でパッパッって動くような感じなんですね。
ヘッド角とフォークオフセット量の絶妙な感じもあるんですかね。直進安定性は強いんだけども、しっかりコーナリングした時には狙ったラインを行く。切れ込み過ぎないし、アンダーステアにもならない。狙ったところをちゃんとトレースしていくと言うか。
特に日本の路面は歩道があって、車道があって。路側帯があって、舗装が波打ってしまっているところもいっぱいある。そういう場面でヒヤリとすることが少ないと思いますね。
―疲れた時に、扱いにくいことはなさそうですか?
まあ、その人の踏み方と速度にもよりますね。乗るとわかるんですけど、20、25km/hのスピードで走っていてもすごい気持ちいいんです。もうほとんど力を掛けていなくてもサーッと進んでいくので、あとはチョンチョンと力をかけて行けば、どんどん巡航していく。ずっと踏んでなくてもいいんですよね。
だから30km/hぐらいだったら、力がなくなってもとりあえず回していれば、サーッと進んでいくんじゃないかなと思います。ペダルに力が加わっていれば、自転車がアシストしてくれるみたいな。そういう走りが強いと思います。
―改めてどんな人、どんな走り向けでしょうか?
コンセプトはやっぱりレース向けで、国内でレース活動している人だったら、実業団・JBCFの全体的なカテゴリーで充分使えるスペックだと思います。それにオールラウンドにも使えるっていうことなので、ヒルクライムにも対応できると思いますよ。
ホイールを35mmハイト、もしくは33mmぐらいのハイトの低い軽量ホイールにすれば、たぶん6.8kgを下回るので、重量的には充分なのかなと。6.8kgの自転車って結構あるんですが、ディスクブレーキ付きだとあまりないですよね。普通に安心して走れるスペックで、空力性能が良くて、6.8kg前後っていうのはあんまりないと思います。
とにかくね、軽いんですよ。例えば上りの急勾配で軽めのギアで回した時の、車体の振りの軽さと、後ろから押されてくるようなトラクションの感覚がすごくいいんですよね。
で、そこからギアをシフトアップしていって踏んでいっても、力があったらすごく面白いんでしょうね。走る量が落ちている今現在の私では、その前に脚がなくなるんでしょうけど(笑)。
それにこの間、9時間の耐久レースを走ったんですが、そこでもすごくいいのかなって気がします。耐久レースといってもレースですから。交代しながら常にフレッシュな人たちが走るので、やっぱりペースは基本速いんですよね。そういうところにも良さそうですね。
―レースはしない、という方には?
低速で気持ちよくも走れますけど、1番の醍醐味は、大きなパワーをかけた時の、すごく加速する感覚です。これがやっぱりすごくいいんですよ。
レーシングスペックなのにもったいないということではなく、今だとロングライドやブルベを走るなど、何日も走ったりという中では、快適に走れるんじゃないですかね。やっぱり軽いですから、そこのアドバンテージは、非常に大きいと思います。
でも、自分はそんなにガツンと走らないけれど、という人でも、やっぱりどっかに少しでも気持ちがあったりするわけです。抜かれれば悔しくなって、追っかけたり抜き返したりするわけですよ。その時にガンって、力があっただけ踏めば、たぶん40km/hとか簡単に出ちゃう。
その時の満足感は高いと思うんですよね。そのあと疲れちゃってまた抜かされるんですが、「いや、これはすごい」ってなるはずです(笑)。
だから、初めて買うひとの1台目でもいいと思うんです。作っている方のコンセプトは違うのかもしれないですが、誰が乗ってもたぶん、この自転車の美味しいところは味わえる。
―乗り換えるだけでレースは速くなりますかね?
速くなるというよりは進む感覚がすごく強いので、速くなった気になれるんですね。それが数字的にそうなのか、感覚だけなのかはわかりませんが、でも感覚って結構大事なんですよね。
音の感じもなくなるので、それだけでもやっぱりすごく、イケるなって感じがするんですよね。なんだかすごい静かなんですよ。ザワザワしない。何も言わない。余計な音がしない。
今日乗ったところは、結構向かい風だったんです。で、向かい風の下りで踏むと、人間はどうしても空気抵抗が増えちゃうんですが、やっぱり自転車の周り、下回りがこう、前に進んでいく感じがするんですよ。
「下」がなくて抜けていくという感覚が、やっぱり一生懸命走ってる人にとってはすごく大事です。その本当のわずかなところが、まだ踏めるんじゃないかな、って思わせてくれるからなんですね。
だから力があったらあっただけ、どんどん加速すると思うんですよね。そこに到達する前に、今だったらたぶん自分の脚の方がおしまいになる。まだイケるはずなんですよ。もっとスピード出したいなあ、って言っているんです、この子は(笑)。
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提供:ブリヂストンサイクル
text:Koichiro Nakamura/photo:Nobuhiko Tanabe
text:Koichiro Nakamura/photo:Nobuhiko Tanabe