2020/01/15(水) - 11:44
2009年に華々しく発表されたコンセプトモデルを踏襲するエアロロードが2018年にモデルチェンジを果たしたONE(ワン)。双胴ダウンチューブ、エアロヒンジデザインのヘッドチューブ/フォーク、専用設計の一体ハンドルなど、独創的なデザインを盛り込むファクターの代表作をテストした。
ファクターを語る上で外せないのが、今回紹介するONEだ。独創的な機構を多数盛り込んだファクターの処女作兼コンセプトモデル「001」(2009年発表)から進化を続ける双胴ダウンチューブのエアロロードであり、特徴的なデザインはブランドのアイコンとも言える。
ハイパフォーマンスカーや航空宇宙産業に関わるイギリスの「bf1systems」社がマクラーレンと共に作り上げた「001」は、アストンマーティンとコラボレーションした世界限定77台のモデル「One-77 Cycle」(2011年)、ブランド初の量産モデル「Vis Vires」(2013年)と進化を重ね、かつてトッププロ選手として活躍したバーデン・クック氏と、台湾でトップブランドのカーボンバイク製造を担う工場のオーナー、ロブ・ギティス氏によって独立を果たした後も、2014年には初のUCI適合モデル「ONE(ヒンジヘッド)」と「ONE-S(ノーマルヘッド)」へ進化を果たした。イギリス籍のワンプロサイクリングやフランス籍のアージェードゥーゼルへの供給や、日本国内での正規入荷開始によって認知度が高まったのもこのタイミングだ。
ONEの、ひいてはファクターのアイデンティティとしてVis Viresより受け継がれるのが双胴ダウンチューブ「Twin Vane」。ダウンチューブに設けられた割りにフロントホイール/タイヤが巻き上げた空気を流し乱流を低減するもので、一般的な丸チューブと比較し約23倍もの空力効果を発揮するという。
新型ONEのダウンチューブは同社のTTバイク「SLiCK」開発で得たノウハウをもとにアップデートが加えられ、「Twin Vane EVO」に進化。空力効果に加えヘッドとBB周りの剛性強化にも貢献している。
特に変化量が大きいのがBB周りだ。ダウンチューブからチェーンステーまで流れるように繋がるパワフルなボトムラインになったほか、BBシェル幅を広げたことで横剛性を向上させた。縦長断面形状のチェーンステー剛性と相まって大幅なパワー伝達性能向上を果たしたという。
「OTIS(One Total Integration System)」と呼ばれるテクノロジーもONEの大きな特徴だ。ヒンジフォーク、ヘッド、ブラックインクのステム一体型ハンドルを1つのシステムとして開発を行うことで、前方投影面積を縮小させつつつ、プロ選手のスプリントに耐えられる剛性を獲得。当然ディスクブレーキ版のケーブル/ホース類は完全内装を実現した。なお一体ハンドルは6mmボルト4本で直接フォークにマウントする仕組みだ。
エアロに関して言及すると、フォーククラウンとヘッドチューブ、ダウンチューブの一体化デザインを推し進めたほか、スタンスを広く取り横剛性向上と空気抵抗削減を叶えたフォークを採用。シートチューブはリアタイヤを覆うような形状を採用したほか、フォークと同じくホイールとの間隔を広げることで空気の”抜け”を確保した。なお25~28mm幅のタイヤを装着した際に空力特性が最大化されるよう設計されていることも触れておこう。
ファクターの他モデルと同じく、ONEは同時開発のブラックインク製一体ハンドルと専用のガーミン用マウント、シートポスト、セラミックスピード製ボトムブラケット、ファクターロゴ入りバーテープとエンドキャップなど各種小物類が付属するフレームセットで販売される。ステム長90〜130mm、ハンドル幅380〜440mmの中から好きな組み合わせを選べることもポイントだ。
真っ先に感じた加速の良さは、BB周辺の設計が生み出すもの。もちろんホイールの効果もあるでしょうが、ギュッと路面を捉えながらロスなく速度を乗せられるし、キープできます。50km/h、60km/hと高速域に達しても剛性感は失われませんし、登りだって悪くない。新興ブランドではあるものの、レースバイクを良く理解している人たちが作ったバイクなんだな、と思わされました。
ヘッドとフォークの作りが独特ですが、ハンドリング自体はやや直進安定性寄りでニュートラルと言える範疇です。ダウンヒルを超機敏に攻め込むための味付けではないものの、扱いにくさはありません。最近のエアロロード全般に言えることですが、ハンドル切れ角はある程度でストップするので、細かいUターンはできません。
走りも良いですが、あとはやはり特徴的なフレーム設計ですよね。ケーブルやワイヤーが一切露出しないのはもちろん、ユニークだし、カッコ良い。30km/h以上の速度域になると空力が効いていることもよく分かります。独創的なデザインと走りをテクノロジーで結びつけていることに感心しましたね。
まず乗っているユーザーを見かけないバイクですし、このバイクを乗ることで生まれる所有欲は相当なものでしょう。見た目だけじゃない、きちんと設計された完成度の高いバイクです。
踏み込んだ時には加速感が長く続くので、ロングスプリントのようなアタックを仕掛ける場面ですごく良い。ただしフロントフォークを中心に硬めの設計となっているので、荒れた路面で弾かれるのを防ぐには少し重たいギアで大きなトルクを掛けながら走ることが求められます。上手く走らせる上ではある程度のペダリングスキルが必要でしょう。
専用のステム一体型ハンドルは適度なしなりで振動を吸収してくれますが、その一方硬いフロントフォークとの組み合わせが生む、ワンテンポ遅れてついてくる僅かな癖を感じました。もちろん味付けの範疇なのですぐに慣れることができましたし、硬いフォークの割りに腕や肩への負担も少ないというメリットもあります。ステム長とハンドル幅の組み合わせが複数選べるのも良いポイントですが、やはり別体式に比べて調整ができないぶん、やはりポジションが固まっている経験者向けのバイクと言えます。
今回試乗車のホイールはジップ404でしたが、私がこのバイクに乗るならオールラウンドに使える40mm程度のハイトのホイールにしたい。乗り心地を改善する上でもチューブレスを選びたいので、例えばカンパニョーロのBORA WTO45などは良い選択肢かもしれません。
各社のフレーム設計思想が似てきている今、こういう見た目にも乗り味も個性のあるバイクは面白いですよね。良い選択肢になると思います。
ブランドを象徴する独創的エアロロード、ONE
ファクターを語る上で外せないのが、今回紹介するONEだ。独創的な機構を多数盛り込んだファクターの処女作兼コンセプトモデル「001」(2009年発表)から進化を続ける双胴ダウンチューブのエアロロードであり、特徴的なデザインはブランドのアイコンとも言える。
ハイパフォーマンスカーや航空宇宙産業に関わるイギリスの「bf1systems」社がマクラーレンと共に作り上げた「001」は、アストンマーティンとコラボレーションした世界限定77台のモデル「One-77 Cycle」(2011年)、ブランド初の量産モデル「Vis Vires」(2013年)と進化を重ね、かつてトッププロ選手として活躍したバーデン・クック氏と、台湾でトップブランドのカーボンバイク製造を担う工場のオーナー、ロブ・ギティス氏によって独立を果たした後も、2014年には初のUCI適合モデル「ONE(ヒンジヘッド)」と「ONE-S(ノーマルヘッド)」へ進化を果たした。イギリス籍のワンプロサイクリングやフランス籍のアージェードゥーゼルへの供給や、日本国内での正規入荷開始によって認知度が高まったのもこのタイミングだ。
2018年にデビューした第5世代
今回取り上げる「ONE」は、2018年にデビューした、上記系譜の5代目に当たる最新形だ。リムに加えて主流となったディスクブレーキが加わり、ヘッドチューブ/フォークは全てエアロヒンジデザインに統一。ケーブル類のフル内装化はもちろんのこと、フレーム全体の設計も空力と走行性能向上を見据えて大幅なブラッシュアップが行われている。ONEの、ひいてはファクターのアイデンティティとしてVis Viresより受け継がれるのが双胴ダウンチューブ「Twin Vane」。ダウンチューブに設けられた割りにフロントホイール/タイヤが巻き上げた空気を流し乱流を低減するもので、一般的な丸チューブと比較し約23倍もの空力効果を発揮するという。
新型ONEのダウンチューブは同社のTTバイク「SLiCK」開発で得たノウハウをもとにアップデートが加えられ、「Twin Vane EVO」に進化。空力効果に加えヘッドとBB周りの剛性強化にも貢献している。
特に変化量が大きいのがBB周りだ。ダウンチューブからチェーンステーまで流れるように繋がるパワフルなボトムラインになったほか、BBシェル幅を広げたことで横剛性を向上させた。縦長断面形状のチェーンステー剛性と相まって大幅なパワー伝達性能向上を果たしたという。
「OTIS(One Total Integration System)」と呼ばれるテクノロジーもONEの大きな特徴だ。ヒンジフォーク、ヘッド、ブラックインクのステム一体型ハンドルを1つのシステムとして開発を行うことで、前方投影面積を縮小させつつつ、プロ選手のスプリントに耐えられる剛性を獲得。当然ディスクブレーキ版のケーブル/ホース類は完全内装を実現した。なお一体ハンドルは6mmボルト4本で直接フォークにマウントする仕組みだ。
エアロに関して言及すると、フォーククラウンとヘッドチューブ、ダウンチューブの一体化デザインを推し進めたほか、スタンスを広く取り横剛性向上と空気抵抗削減を叶えたフォークを採用。シートチューブはリアタイヤを覆うような形状を採用したほか、フォークと同じくホイールとの間隔を広げることで空気の”抜け”を確保した。なお25~28mm幅のタイヤを装着した際に空力特性が最大化されるよう設計されていることも触れておこう。
ファクターの他モデルと同じく、ONEは同時開発のブラックインク製一体ハンドルと専用のガーミン用マウント、シートポスト、セラミックスピード製ボトムブラケット、ファクターロゴ入りバーテープとエンドキャップなど各種小物類が付属するフレームセットで販売される。ステム長90〜130mm、ハンドル幅380〜440mmの中から好きな組み合わせを選べることもポイントだ。
ONE DISC インプレッション
藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店)
「見た目だけじゃない、きちんと設計された完成度の高いバイク」
とても気持ちの良いバイクですね。剛性バランスに優れているので、スピード域を問わず、若干のしなり感を伴いつつもパワーロスなく加速してくれます。高いエアロ効果も体感できましたし、高速域に達した時もハンドリングは安定していて不安がありません。見た目もカッコ良いし、面白い一台だと感じます。真っ先に感じた加速の良さは、BB周辺の設計が生み出すもの。もちろんホイールの効果もあるでしょうが、ギュッと路面を捉えながらロスなく速度を乗せられるし、キープできます。50km/h、60km/hと高速域に達しても剛性感は失われませんし、登りだって悪くない。新興ブランドではあるものの、レースバイクを良く理解している人たちが作ったバイクなんだな、と思わされました。
ヘッドとフォークの作りが独特ですが、ハンドリング自体はやや直進安定性寄りでニュートラルと言える範疇です。ダウンヒルを超機敏に攻め込むための味付けではないものの、扱いにくさはありません。最近のエアロロード全般に言えることですが、ハンドル切れ角はある程度でストップするので、細かいUターンはできません。
走りも良いですが、あとはやはり特徴的なフレーム設計ですよね。ケーブルやワイヤーが一切露出しないのはもちろん、ユニークだし、カッコ良い。30km/h以上の速度域になると空力が効いていることもよく分かります。独創的なデザインと走りをテクノロジーで結びつけていることに感心しましたね。
まず乗っているユーザーを見かけないバイクですし、このバイクを乗ることで生まれる所有欲は相当なものでしょう。見た目だけじゃない、きちんと設計された完成度の高いバイクです。
藤野智一(なるしまフレンド)
「硬めで加速が長続きする、玄人向けのレーサーバイク」
これまでファクターのバイクは試乗会で少し乗った程度でしたが、今回しっかりテストできたので色々と理解できました。ONEは全体的に硬めに味付けされていて、レースバイクの中でもかなり脚がある人向け。それだけに乗り手の気持ちに素直に応えているバイクだと感じます。軽いバイクではありませんが、硬さゆえの反応性に優れているのでヒルクライムでも違和感なく使えそうですね。踏み込んだ時には加速感が長く続くので、ロングスプリントのようなアタックを仕掛ける場面ですごく良い。ただしフロントフォークを中心に硬めの設計となっているので、荒れた路面で弾かれるのを防ぐには少し重たいギアで大きなトルクを掛けながら走ることが求められます。上手く走らせる上ではある程度のペダリングスキルが必要でしょう。
専用のステム一体型ハンドルは適度なしなりで振動を吸収してくれますが、その一方硬いフロントフォークとの組み合わせが生む、ワンテンポ遅れてついてくる僅かな癖を感じました。もちろん味付けの範疇なのですぐに慣れることができましたし、硬いフォークの割りに腕や肩への負担も少ないというメリットもあります。ステム長とハンドル幅の組み合わせが複数選べるのも良いポイントですが、やはり別体式に比べて調整ができないぶん、やはりポジションが固まっている経験者向けのバイクと言えます。
今回試乗車のホイールはジップ404でしたが、私がこのバイクに乗るならオールラウンドに使える40mm程度のハイトのホイールにしたい。乗り心地を改善する上でもチューブレスを選びたいので、例えばカンパニョーロのBORA WTO45などは良い選択肢かもしれません。
各社のフレーム設計思想が似てきている今、こういう見た目にも乗り味も個性のあるバイクは面白いですよね。良い選択肢になると思います。
ファクター ONE
フレームサイズ | 46、49、52、54、56、58、61 |
ハンドルバーステムサイズ | ハンドルバー:380/400/420/440 ステム:90/100/110/120/130mm |
シートポスト | オフセット 0mm / 25mm |
BB規格 | BB right(シマノクランク用シム / スラムGXPクランク用シム選択可) |
付属品 | ヘッドセット、CeramicSpeed BB、GARMIN用コンピュータマウント、バーテープ |
税抜価格 | 580,000円 |
インプレライダープロフィール
藤澤優(ワイズロード上野アサゾー店)
大学時代に浅田顕監督の元で経験を積んだ後、スペインへ遠征し2年半ほど本場ヨーロッパのロードレースに挑戦。トップ選手らとしのぎを削った経験を活かし、トレーニングやレース機材のアドバイスを得意とする。現在はワイズロードの中でも最もロードに特化した「上野アサゾー店」の店長を務める。店内に所狭しと並んだ3万~4万点ものパーツを管理し、スモールパーツからマニアックな製品まであらゆるロードレーサーのニーズを満たすラインアップを揃える。
ワイズロード上野アサゾー店
CWレコメンドショップページ
92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
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大学時代に浅田顕監督の元で経験を積んだ後、スペインへ遠征し2年半ほど本場ヨーロッパのロードレースに挑戦。トップ選手らとしのぎを削った経験を活かし、トレーニングやレース機材のアドバイスを得意とする。現在はワイズロードの中でも最もロードに特化した「上野アサゾー店」の店長を務める。店内に所狭しと並んだ3万~4万点ものパーツを管理し、スモールパーツからマニアックな製品まであらゆるロードレーサーのニーズを満たすラインアップを揃える。
ワイズロード上野アサゾー店
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92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
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提供:トライスポーツ、制作:シクロワイアード編集部