2019/07/05(金) - 18:30
キャノンデール2020年モデルで新登場したTOPSTONE CARBONと第3世代SUPERSIX EVOを、本国アメリカ・バーモント州にて試乗。ローンチライドにて感じた2台のインプレッションをそれぞれお届けしよう。
キャノンデール本社があるコネチカット州から車で4~5時間ほど北上したところに位置するバーモント州。カナダとも国境を接しており、山間深い森林が州の大部分を占めた豊かな自然環境もあってスキーやMTBなどのレジャーやリゾートが盛んな地域だ。いわゆる田舎道が多く広がっており、生活道路の一部がもはや未舗装路というような、まさにグラベルロードを試すにはうってつけの場所でTOPSTONE CARBONをテストした。
元プロロード選手でキャノンデールアンバサダーの”テッド・キング”と、元トップシクロクロッサーでオフロード遊びの達人、SLATEやTOPSTONEを始めとするキャノンデールバイクの開発にも深い関わりを持つ”ティム・ジョンソン”らがライドをアテンド。新モデルのプレゼンが行われたロッジからほど近い、テッドの自宅の庭にキャノンデールテントが設置され、メディアの人数分ズラリとバイクが並んだ。
テストバイクはトップモデルであるForce eTap AXS完成車。無線変速のシステムによってスマートなルックスに仕上がる他、ターゲットとする高速グラベルレースにも対応できるフロントダブル仕様で、ホイールもカーボンリムを装備した文句なしのスペックである。身長171cmの筆者はSサイズをチョイス。タイヤの空気圧は40PSI(2.7Bar)にセットし、いざ人生初となるアメリカの本格グラベルへ繰り出す。
ロッジへと戻る約50kmの道のりの中に4つのグラベルセクションを設けてあり、未舗装路の合計距離が20kmにも及ぶルートが組まれた。フラットダートからタイトなシングルトラックまで、バリエーションに富んだオフロードを味わいながらニューバイクの走りを確かめる。
走り始めは舗装路から。グラベルロードにイメージされるダルさは皆無で、平坦であれば30km/hも余裕で出せる軽快な走りを見せてくれる。カーボンフレームによるバイクの軽さや剛性感がはっきり活きているという印象で、ワイドタイヤによる路面抵抗はあれど、一般的なエンデュランスロードとほとんど同じようなフィーリングで乗ることができた。フレームの硬さに偏りがなく、バランスの良い踏み味に仕上がっているのはキャノンデールバイクに共通の美点だ。
良い意味でロードらしい乗り心地を生み出している要因として、SYNAPSEを参考にしたジオメトリーも大いに関係しているだろう。バイクに跨ったときの体の収まりに安心感があり、ハンドル・サドル・ペダルの位置関係が絶妙に調整されていることで、操作性も良くパワーもかけやすいフレームに仕上がっている。ハンドリングに関しては、よく引き合いに出されるCXバイクのそれとは全く異なり、コーナーで切れ込む訳ではなくあくまで直進安定重視という設計だ。
また、上体に余裕が持てるアップライトなポジションはオフロードこそ活きてくる。荒れた路面からの衝撃を体でいなしてあげるのに、肘が適度に曲がっている方が腕をサスペンションのように使えるし、深すぎない前傾姿勢のおかげで体全体でバイクを操ることができるのだ。実際、今回のライドでは砂の浮いたグラベルで後輪をスリップさせたシーンが何度かあったが、オフロードビギナーの私でも落車せず上手く立て直すことができたのはこのバイクのおかげ。加えて、10時間を優に超えるレースとなるダーティカンザなど、長時間のライドを耐え切るには上体がやや起きたリラックスしたポジションこそ有効なのは言うまでもないだろう。
さて、お待ちかねのオフロードに突入してみると、その走りは一層輝きを増したかように驚くほど気持ちよく進んでくれる。体重54kgと成人男性の中では軽い部類に入る筆者でも、明らかにフレームがしなってサスペンションが可動しているのが分かるほど乗り心地がシルキーなのだ。路面からの突き上げで体が跳ねたり衝撃を受けたりがほとんどなく、非常に快適性が高い。大きな振動に対してはKingPinサスペンションが、小さな振動に関してはカーボンレイアップやチューブ形状を含むSAVEテクノロジーがともに上手く作用しており、体に到達する前に打ち消してくれるような感覚だ。
かつ、サスペンション効果によってバイクが常に路面に設置していることで高いトラクションを発揮してくれ、高速で駆けるフラットダートでも安定感は抜群。バイクが暴れず次々とスムーズにペダリングが繋がるので速度維持はしやすく、オフロードをこんなにもロスなく走れるものなのかと感動を覚えた。更には、バイクへの荷重が抜けるダンシング時でも、ペダリングに合わせてリア三角が僅かに可動し、タイヤがグリップを失うことなく走ることができた。ビギナー視点で見れば、テクニックの無さをバイクがカバーしてくれるため純粋にライドに集中して楽しむことができる良さがある。
下手にサスペンションが動いて乗り味がギクシャクしたり、無駄にパワーがスポイルされたりもなくネガティブな要素は見当たらない。快適性と走行性能の両立のために、絶妙にフレームのしなりや剛性感を調整しているなと思わず唸ってしまう作りの良さがあった。オフロード/グラベルカテゴリーで常に先を行くキャノンデールのテクノロジーの高さをまじまじと見せつけられた、そんな1台に仕上がっている。
今回試したアメリカのグラベルは砂が硬く締まったような想像以上にイージーな路面だったが、日本の林道のような小石がゴロゴロした砂利道などでは、さらにサスペンションの効果は大きく効いてきそうな予感。たかだか30mmほどの可動域だがその恩恵は大きく、リアサスを搭載したただの”キワモノ”ではないことは明白だ。確かな走行性能でより速くより楽しいグラベルライドへと駆り立ててくれる、見た目以上に正統派な走りがギュッと詰まった形がこのTOPSTONE CARBONと言えるだろう。
身長171cmで51サイズ、Hi-ModグレードのDura Ace完成車にてテストした。機械式/電動式の両方に対応しているのは歓迎すべき点だが、最新のエアロ事情を鑑みればシフトケーブルも完全内装していればなお良かったと思うところ。大きく形を変えたフレームデザインには賛否両論あるかもしれないが、時代の流れに沿った最新型と思えば納得もいくし、ダウンチューブにロゴがないグラフィックも見慣れてしまえば違和感はない。
小高いロッジからのスタートだったため、まずはダウンヒルから新型EVOの走りを探る。初めて乗るバイクなのに安心感のあるハンドリングで、コーナーでの左右の切り返しは非常にニュートラルな印象。切れ込みすぎるようなシリアスさはなく、フラッグシップながらあらゆるレベルのライダーが楽しめる味付けは、これだけ形を変えても従来モデルから受け継がれていると感じた。
その上で、スルーアクスル化によるエンド剛性強化は、高速域でのラインのトレースのしやすさに寄与しており、前作以上にカッチリした操舵感となった。それでもフロント周りが突っ張るような硬さがないのは、フォークやハンドルに活用されているSAVEテクノロジーのおかげだろう。
しかしながらフォークブレードは太さを増し、リアトライアングルもコンパクトになったおかげかバイク全体で見たときの剛性感は増した印象だ。先代のようなしなやかな進み心地というよりは、たわみやロスのないリニアでエアロロードらしい走りへとイメージチェンジを果たしている。
それでいて軽量高剛性バイクにありがちなパリッと乾いた踏み味ではなく、むしろフィーリングとしてはしっとりしたような優しさがあった。フレームは硬いはずなのに足にはそれを感じさせず、スパルタンな印象がなく乗りやすい。最新のカーボンテクノロジーによって絶妙にバランス調整されている点は、相変わらずのEVOらしさが垣間見える。
さて、下りからの登り返しでグッとパワーをかけると、やはり軽い重量が活きた素早い加速が印象的。エアロフレームになり、かつハンドル周りもボリュームあるルックスではあるものの、バイクの倒し込みにくさはなくダンシングも軽やかだ。しかしヒラヒラとした腰高感や振りのリズムが速いということはない。軽量ではあるもののクライミング専用ではなく、しっかりとオールラウンドな乗り味に仕上がっているのが感じられた。
そんな中今作の一番のポイントは、今までのEVOでは薄かった圧倒的な巡航感。平坦でのスピードの乗りが前作から格段に向上しており、それが即ちエアロダイナミクス強化による恩恵なのだと感じた。ディープリムホイールをアセンブルしたパッケージによるところも大きいだろうが、明らかに小さいパワーで楽に高速巡航できており、次から次へと気持ちよくペダリングが繋がってくれ、前に前にと転がってくれる。走りの質としては完全にエアロロードのそれで、先代リムバージョンからの重量増はあれど総合的に見て”速い”バイクへと進化した点が新型EVOのハイライトと言えるだろう。
それに加えて乗り心地の良さ、快適性の高さも特筆すべきポイント。チェーンステーは前作よりもマッシブな形状で、シートステーもそこまで細身ではないのにも関わらずリアの振動吸収性が際立って良い。チューブレスタイヤなのかと疑ってしまうほどの乗り心地で、路面からの突き上げ感が少なく非常にストレスフリーだ。SAVEテクノロジーを活用し上手くフレームをしならせているのだろうが、このレベルのレーシングバイクでここまでの快適性も両立できるとは、良い意味で予想外な性能アップに驚かされた。
今までのSUPERSIX EVOの延長線上ではなく、見た目も走りもガラリとその雰囲気を一新した、新しい時代を感じさせる1台と言っていいだろう。歴代のSUPERSIXシリーズを愛してやまないファンからすると好みは分かれるかも知れないが、その走りは確かにキャノンデールが誇るフラッグシップに値するもの。誰もが扱いやすく軽く快適で速い、単純明快な走りの良さと完成度の高さはまさしく今作にも受け継がれたSUPERSIX EVOが持つ普遍的な魅力だ。
次項ではTOPSTONE CARBONとSUPERSIX EVOの開発をそれぞれ指揮した、2人の開発者に行ったインタビューをお届け。開発秘話やテクノロジー解説を通して、2台の新作バイクを更に掘り下げていきたい。
TOPSTONE CARBONインプレッション:本場のグラベルでサスペンション効果を体感
リアサスが生み出す圧倒的な快適性、オフロードでのロスのない走りが魅力
キャノンデール本社があるコネチカット州から車で4~5時間ほど北上したところに位置するバーモント州。カナダとも国境を接しており、山間深い森林が州の大部分を占めた豊かな自然環境もあってスキーやMTBなどのレジャーやリゾートが盛んな地域だ。いわゆる田舎道が多く広がっており、生活道路の一部がもはや未舗装路というような、まさにグラベルロードを試すにはうってつけの場所でTOPSTONE CARBONをテストした。
元プロロード選手でキャノンデールアンバサダーの”テッド・キング”と、元トップシクロクロッサーでオフロード遊びの達人、SLATEやTOPSTONEを始めとするキャノンデールバイクの開発にも深い関わりを持つ”ティム・ジョンソン”らがライドをアテンド。新モデルのプレゼンが行われたロッジからほど近い、テッドの自宅の庭にキャノンデールテントが設置され、メディアの人数分ズラリとバイクが並んだ。
テストバイクはトップモデルであるForce eTap AXS完成車。無線変速のシステムによってスマートなルックスに仕上がる他、ターゲットとする高速グラベルレースにも対応できるフロントダブル仕様で、ホイールもカーボンリムを装備した文句なしのスペックである。身長171cmの筆者はSサイズをチョイス。タイヤの空気圧は40PSI(2.7Bar)にセットし、いざ人生初となるアメリカの本格グラベルへ繰り出す。
ロッジへと戻る約50kmの道のりの中に4つのグラベルセクションを設けてあり、未舗装路の合計距離が20kmにも及ぶルートが組まれた。フラットダートからタイトなシングルトラックまで、バリエーションに富んだオフロードを味わいながらニューバイクの走りを確かめる。
走り始めは舗装路から。グラベルロードにイメージされるダルさは皆無で、平坦であれば30km/hも余裕で出せる軽快な走りを見せてくれる。カーボンフレームによるバイクの軽さや剛性感がはっきり活きているという印象で、ワイドタイヤによる路面抵抗はあれど、一般的なエンデュランスロードとほとんど同じようなフィーリングで乗ることができた。フレームの硬さに偏りがなく、バランスの良い踏み味に仕上がっているのはキャノンデールバイクに共通の美点だ。
良い意味でロードらしい乗り心地を生み出している要因として、SYNAPSEを参考にしたジオメトリーも大いに関係しているだろう。バイクに跨ったときの体の収まりに安心感があり、ハンドル・サドル・ペダルの位置関係が絶妙に調整されていることで、操作性も良くパワーもかけやすいフレームに仕上がっている。ハンドリングに関しては、よく引き合いに出されるCXバイクのそれとは全く異なり、コーナーで切れ込む訳ではなくあくまで直進安定重視という設計だ。
また、上体に余裕が持てるアップライトなポジションはオフロードこそ活きてくる。荒れた路面からの衝撃を体でいなしてあげるのに、肘が適度に曲がっている方が腕をサスペンションのように使えるし、深すぎない前傾姿勢のおかげで体全体でバイクを操ることができるのだ。実際、今回のライドでは砂の浮いたグラベルで後輪をスリップさせたシーンが何度かあったが、オフロードビギナーの私でも落車せず上手く立て直すことができたのはこのバイクのおかげ。加えて、10時間を優に超えるレースとなるダーティカンザなど、長時間のライドを耐え切るには上体がやや起きたリラックスしたポジションこそ有効なのは言うまでもないだろう。
さて、お待ちかねのオフロードに突入してみると、その走りは一層輝きを増したかように驚くほど気持ちよく進んでくれる。体重54kgと成人男性の中では軽い部類に入る筆者でも、明らかにフレームがしなってサスペンションが可動しているのが分かるほど乗り心地がシルキーなのだ。路面からの突き上げで体が跳ねたり衝撃を受けたりがほとんどなく、非常に快適性が高い。大きな振動に対してはKingPinサスペンションが、小さな振動に関してはカーボンレイアップやチューブ形状を含むSAVEテクノロジーがともに上手く作用しており、体に到達する前に打ち消してくれるような感覚だ。
かつ、サスペンション効果によってバイクが常に路面に設置していることで高いトラクションを発揮してくれ、高速で駆けるフラットダートでも安定感は抜群。バイクが暴れず次々とスムーズにペダリングが繋がるので速度維持はしやすく、オフロードをこんなにもロスなく走れるものなのかと感動を覚えた。更には、バイクへの荷重が抜けるダンシング時でも、ペダリングに合わせてリア三角が僅かに可動し、タイヤがグリップを失うことなく走ることができた。ビギナー視点で見れば、テクニックの無さをバイクがカバーしてくれるため純粋にライドに集中して楽しむことができる良さがある。
下手にサスペンションが動いて乗り味がギクシャクしたり、無駄にパワーがスポイルされたりもなくネガティブな要素は見当たらない。快適性と走行性能の両立のために、絶妙にフレームのしなりや剛性感を調整しているなと思わず唸ってしまう作りの良さがあった。オフロード/グラベルカテゴリーで常に先を行くキャノンデールのテクノロジーの高さをまじまじと見せつけられた、そんな1台に仕上がっている。
今回試したアメリカのグラベルは砂が硬く締まったような想像以上にイージーな路面だったが、日本の林道のような小石がゴロゴロした砂利道などでは、さらにサスペンションの効果は大きく効いてきそうな予感。たかだか30mmほどの可動域だがその恩恵は大きく、リアサスを搭載したただの”キワモノ”ではないことは明白だ。確かな走行性能でより速くより楽しいグラベルライドへと駆り立ててくれる、見た目以上に正統派な走りがギュッと詰まった形がこのTOPSTONE CARBONと言えるだろう。
SUPERSIX EVOインプレッション:高速エアロオールラウンダーへ進化
よりスムーズなライドフィール、エアロダイナミクスが効いた伸びのある走り
TOPSTONE CARBONを試乗した翌日、メディア一行は再びテストライドへと繰り出す。初代SUPERSIX EVOを愛車としている筆者としては、思い入れの深いバイクだけに非常に楽しみにしていたモデルチェンジだ。午後から雨にも降られるあいにくの天気だったが、終始テンションは上がりっぱなし。アップダウンのある約60kmのコースで、思うままにペダルを踏み込み最新版へアップデートされた走りを確かめる。身長171cmで51サイズ、Hi-ModグレードのDura Ace完成車にてテストした。機械式/電動式の両方に対応しているのは歓迎すべき点だが、最新のエアロ事情を鑑みればシフトケーブルも完全内装していればなお良かったと思うところ。大きく形を変えたフレームデザインには賛否両論あるかもしれないが、時代の流れに沿った最新型と思えば納得もいくし、ダウンチューブにロゴがないグラフィックも見慣れてしまえば違和感はない。
小高いロッジからのスタートだったため、まずはダウンヒルから新型EVOの走りを探る。初めて乗るバイクなのに安心感のあるハンドリングで、コーナーでの左右の切り返しは非常にニュートラルな印象。切れ込みすぎるようなシリアスさはなく、フラッグシップながらあらゆるレベルのライダーが楽しめる味付けは、これだけ形を変えても従来モデルから受け継がれていると感じた。
その上で、スルーアクスル化によるエンド剛性強化は、高速域でのラインのトレースのしやすさに寄与しており、前作以上にカッチリした操舵感となった。それでもフロント周りが突っ張るような硬さがないのは、フォークやハンドルに活用されているSAVEテクノロジーのおかげだろう。
しかしながらフォークブレードは太さを増し、リアトライアングルもコンパクトになったおかげかバイク全体で見たときの剛性感は増した印象だ。先代のようなしなやかな進み心地というよりは、たわみやロスのないリニアでエアロロードらしい走りへとイメージチェンジを果たしている。
それでいて軽量高剛性バイクにありがちなパリッと乾いた踏み味ではなく、むしろフィーリングとしてはしっとりしたような優しさがあった。フレームは硬いはずなのに足にはそれを感じさせず、スパルタンな印象がなく乗りやすい。最新のカーボンテクノロジーによって絶妙にバランス調整されている点は、相変わらずのEVOらしさが垣間見える。
さて、下りからの登り返しでグッとパワーをかけると、やはり軽い重量が活きた素早い加速が印象的。エアロフレームになり、かつハンドル周りもボリュームあるルックスではあるものの、バイクの倒し込みにくさはなくダンシングも軽やかだ。しかしヒラヒラとした腰高感や振りのリズムが速いということはない。軽量ではあるもののクライミング専用ではなく、しっかりとオールラウンドな乗り味に仕上がっているのが感じられた。
そんな中今作の一番のポイントは、今までのEVOでは薄かった圧倒的な巡航感。平坦でのスピードの乗りが前作から格段に向上しており、それが即ちエアロダイナミクス強化による恩恵なのだと感じた。ディープリムホイールをアセンブルしたパッケージによるところも大きいだろうが、明らかに小さいパワーで楽に高速巡航できており、次から次へと気持ちよくペダリングが繋がってくれ、前に前にと転がってくれる。走りの質としては完全にエアロロードのそれで、先代リムバージョンからの重量増はあれど総合的に見て”速い”バイクへと進化した点が新型EVOのハイライトと言えるだろう。
それに加えて乗り心地の良さ、快適性の高さも特筆すべきポイント。チェーンステーは前作よりもマッシブな形状で、シートステーもそこまで細身ではないのにも関わらずリアの振動吸収性が際立って良い。チューブレスタイヤなのかと疑ってしまうほどの乗り心地で、路面からの突き上げ感が少なく非常にストレスフリーだ。SAVEテクノロジーを活用し上手くフレームをしならせているのだろうが、このレベルのレーシングバイクでここまでの快適性も両立できるとは、良い意味で予想外な性能アップに驚かされた。
今までのSUPERSIX EVOの延長線上ではなく、見た目も走りもガラリとその雰囲気を一新した、新しい時代を感じさせる1台と言っていいだろう。歴代のSUPERSIXシリーズを愛してやまないファンからすると好みは分かれるかも知れないが、その走りは確かにキャノンデールが誇るフラッグシップに値するもの。誰もが扱いやすく軽く快適で速い、単純明快な走りの良さと完成度の高さはまさしく今作にも受け継がれたSUPERSIX EVOが持つ普遍的な魅力だ。
次項ではTOPSTONE CARBONとSUPERSIX EVOの開発をそれぞれ指揮した、2人の開発者に行ったインタビューをお届け。開発秘話やテクノロジー解説を通して、2台の新作バイクを更に掘り下げていきたい。
提供:キャノンデール・ジャパン text:Yuto.Murata