2018/07/04(水) - 15:45
スイス、グレンヒェンを拠点とするスイスのスポーツバイク専業ブランド、BMC。2019モデル発表会&テストライドイベントが6月、チューリヒ湖近郊において開催された。
2019モデルの目玉となるのがエアロモデルの「Timemachine Road(タイムマシン・ロード)」だ。4月に急逝したBMC社のオーナー、アンディ・リース氏が、地元サイクリストたちのコミュニティのためにオープンさせたサイクルショップ「AR Cycling(アンディ・リースサイクリング)」においてプレゼンテーションが開かれた。2012年の同シリーズのデビューから6年、大きく刷新された新TMR(コードネーム)がベールを脱いだ。
新世代のTimemachine ROADは、先代同様エアロダイナミクスにフォーカスして設計されたエアロロードバイクだ。まず目を引くのはボトル周りの造形とデザインだろう。2本のボトルを保持するボトルケージにあたるパーツがフレームと一体化され、ボトルを包み込むかのようにデザインされている。かつ、2本のボトルとBBの間の空間もカバーで覆われている。それがもちろん空気抵抗削減のために設計されたものだということはすぐに理解できる。
ほぼホリゾンタル(トップチューブが水平)のフレームの、各チューブシェイプもエアロダイナミクスに基づいてデザインされ、クラウン下部やリアタイヤとの隙間を埋める流麗なデザイン。そしてステム一体型に見えるウィング形状のハンドルバーシステムやヘッド&コラム部も高度にインテグレートされている。
「Timemachine ROADはBMC史上もっとも速いロードバイク」と技術指揮を執ったステファン・クライスト氏は言う。「究極のインテグレーション(統合)設計を施し、パワー伝達性、スピードへの対応力を突き詰めて開発され、ローリングコースでの速さ、巡航性、加速性を高めるためのエアロダイナミクスを追求して設計された」。
エアロダイナミクスを突き詰めるにおいてフォーカスした3つのポイントは、チューブシェイプ、ボトル&ダウンチューブの形状の融合、そしてディスクブレーキを使用した際の空気抵抗を軽減することだったという。開発にあたっては、CFD(数値流体力学)シミュレーション、トラック(ピスト競技場)における走行テスト、風洞実験の3つの試験を繰り返し、フォルムを煮詰めていく方法がとられた。
ナロータイプ(幅の狭い)のフォークブレード、取り付け位置の下がったドロップシートステー、ヘッドチューブ下部からダウンチューブへの統合された造形とともに、各チューブシェイプは空気抵抗値の面でベストが追求された。ボトルケージとフレームを一体化させたようなユニークな「エアロモジュールシステム」は、2本のボトルを取り付けることを前提とし、使わない(装着しない)状態よりもエアロダイナミクスに優れているという。ボトル1本より2本、そして下部のストレージ(ツール)ケースの3つをすべて取り付けた状態がもっとも空気抵抗値が低く、速く走れるのだという。
「ICSエアロコックピット」と呼ぶハンドルシステムは、エアロパフォーマンスとインテグレーション、フィット&アジャスタビリティ(調整性)をキーポイントとして開発されたハンドルシステムだ。これは
Roadmachineですでにお馴染みのケーブル内蔵ステム&コラムのエアロ化をさらに推し進めたようなシステムで、新設計の翼状ハンドルは上下の角度調整も可能で、かつケーブル類はハンドル周りに一切露出しない。前面投影面積は小さくとも、調整幅を備えることで十分なフィットが可能で、かつ快適さ(振動吸収性)や操作性も考慮して設計されている。
ホイールはスピードライドに対応するべくディープリムに25〜28mmタイヤの組み合わせを想定。フロントのディスクブレーキ部は露出するケーブル部にエアロカバーを施して空気抵抗を削減。ナロータイプ(幅の狭い)のフォークブレード、取り付け位置の下がったドロップシートステーにより、フレーム980g、フォーク410g(サイズ:54)の重量に仕上がる。
ボトル&ケージ&ストレージ部を含むフレーム、ハンドルシステム、シートピラーにより構成する「Module」をフレームセットの基本とし、47cm, 51cm, 54cm, 56cm, 58cm, 61cmの6サイズ展開となる。
プロジェクトマネジャーのマート・オッテン氏は言う。「目指したのはスーパーカーのようなバイク。快適にツーリングできるGTカーと、速さのみを追求したレースカー両方の”いいとこどり”をしたようなスーパーカー的なスポーツバイク。とても速く走れ、スポーティで機敏なハンドリング、なめらかで目を引く流麗なスタイリングを持つバイク。一日乗っても疲れない快適さをもち、速く走ることを愉しむことができるバイク」。
ダウンチューブ側のボトルを抜けば、内蔵されたDi2ジャンクションが見える(シマノDi2搭載バイクの場合)。それさえダウンチューブとボトルケージに隠れることでエアロ効果を高めつつ、アクセスしやすさを兼ね備える。
ボトル下部とBBの隙間をカバーで埋めるように装着されるストレージシステムには、スペアチューブとタイヤレバー、CO2ボンベ一本を内包するケースが収まる。ボトル2本とストレージシステムを取り付けた状態が、もっともエアロダイナミクスに優れるという。
「ストレージも、中にそのキットがちょうど収まるサイズに設計してある。ミニマルなため隙間は無く、振動でカラカラ音がすることもない。たとえケース内に何も入れなくても、ボトルにドリンクを入れなくても、ボトルもストレージも付けた状態がもっともエアロ効果が高く、速く走れる」。UCIレースで使用する際には規定によりストレージを外す必要があるため、BMCレーシングの選手は外してレースを走ることになる。
インジェクションカーボンによるボトル周りのモジュラーシステムとストレージはボトル&ケージブランドのエリート社(イタリア)とのコラボによるTMR専用品だ。あえてボトルは(空気抵抗の少ない)専用品とせず、一般のボトルが使用できるのもポイントだ。
一体型に見えるハンドルも、ハンドルとステムが別体式の構造だ。ハンドルの送り・しゃくりの角度調整やステム交換ができ、ステム先端に取り付ける専用ブラケットにより各社のサイクルコンピュータやアクションカムが無駄なく装着できる。ステムは自社で開発されたCNC製法により高い強度と軽量性をもつ、ケーブル内蔵式のインテグレーテッドステムだ。
フルカーボンのエアロハンドル上部の翼形状は、握り心地を重視した範囲の太さと幅に収め、かつスプリントをかけるような左右に振る動きでも腕の内側に当たらない形状が計算されている。つまり、エアロを追求しつつも使いやすさを損なうような形状、設計は排除してある。
トラックでの走行試験において、Timemachine ROAD01とTeammachineSLR01Discとの比較走行実験を実施。その結果、タイプの異なる3人のライダーによる40km/h巡航時において、6〜12wのパワー低減につながっていることが実証されたという。また、屋外走行で横風に吹かれる状況を想定した風洞実験においては、ヨー角において0°のとき−11.5w、15°のときに−19.5wのパワー低減効果が実証されたという。
エアロダイナミクスが数値として実証されたと同時に、スーパーカーと同じように乗りやすさや快適性にもこだわった新Timemachine ROAD。もうひとつの開発テーマは「ライド・オールデイロング」つまり一日中乗れる快適性を持つこと。7月7日に開幕するツール・ド・フランスにも投入され、世界最高峰のレースでデビューする予定だ。
※現時点での国内取扱い予定なし(興味のある方はお早めにお近くのBMC正規代理店までお問い合わせ下さい)
2019モデルの目玉となるのがエアロモデルの「Timemachine Road(タイムマシン・ロード)」だ。4月に急逝したBMC社のオーナー、アンディ・リース氏が、地元サイクリストたちのコミュニティのためにオープンさせたサイクルショップ「AR Cycling(アンディ・リースサイクリング)」においてプレゼンテーションが開かれた。2012年の同シリーズのデビューから6年、大きく刷新された新TMR(コードネーム)がベールを脱いだ。
徹底したインテグレーションとエアロダイナミクス設計で誕生したTMR
新世代のTimemachine ROADは、先代同様エアロダイナミクスにフォーカスして設計されたエアロロードバイクだ。まず目を引くのはボトル周りの造形とデザインだろう。2本のボトルを保持するボトルケージにあたるパーツがフレームと一体化され、ボトルを包み込むかのようにデザインされている。かつ、2本のボトルとBBの間の空間もカバーで覆われている。それがもちろん空気抵抗削減のために設計されたものだということはすぐに理解できる。
ほぼホリゾンタル(トップチューブが水平)のフレームの、各チューブシェイプもエアロダイナミクスに基づいてデザインされ、クラウン下部やリアタイヤとの隙間を埋める流麗なデザイン。そしてステム一体型に見えるウィング形状のハンドルバーシステムやヘッド&コラム部も高度にインテグレートされている。
「Timemachine ROADはBMC史上もっとも速いロードバイク」と技術指揮を執ったステファン・クライスト氏は言う。「究極のインテグレーション(統合)設計を施し、パワー伝達性、スピードへの対応力を突き詰めて開発され、ローリングコースでの速さ、巡航性、加速性を高めるためのエアロダイナミクスを追求して設計された」。
エアロダイナミクスを突き詰めるにおいてフォーカスした3つのポイントは、チューブシェイプ、ボトル&ダウンチューブの形状の融合、そしてディスクブレーキを使用した際の空気抵抗を軽減することだったという。開発にあたっては、CFD(数値流体力学)シミュレーション、トラック(ピスト競技場)における走行テスト、風洞実験の3つの試験を繰り返し、フォルムを煮詰めていく方法がとられた。
ナロータイプ(幅の狭い)のフォークブレード、取り付け位置の下がったドロップシートステー、ヘッドチューブ下部からダウンチューブへの統合された造形とともに、各チューブシェイプは空気抵抗値の面でベストが追求された。ボトルケージとフレームを一体化させたようなユニークな「エアロモジュールシステム」は、2本のボトルを取り付けることを前提とし、使わない(装着しない)状態よりもエアロダイナミクスに優れているという。ボトル1本より2本、そして下部のストレージ(ツール)ケースの3つをすべて取り付けた状態がもっとも空気抵抗値が低く、速く走れるのだという。
「ICSエアロコックピット」と呼ぶハンドルシステムは、エアロパフォーマンスとインテグレーション、フィット&アジャスタビリティ(調整性)をキーポイントとして開発されたハンドルシステムだ。これは
Roadmachineですでにお馴染みのケーブル内蔵ステム&コラムのエアロ化をさらに推し進めたようなシステムで、新設計の翼状ハンドルは上下の角度調整も可能で、かつケーブル類はハンドル周りに一切露出しない。前面投影面積は小さくとも、調整幅を備えることで十分なフィットが可能で、かつ快適さ(振動吸収性)や操作性も考慮して設計されている。
ホイールはスピードライドに対応するべくディープリムに25〜28mmタイヤの組み合わせを想定。フロントのディスクブレーキ部は露出するケーブル部にエアロカバーを施して空気抵抗を削減。ナロータイプ(幅の狭い)のフォークブレード、取り付け位置の下がったドロップシートステーにより、フレーム980g、フォーク410g(サイズ:54)の重量に仕上がる。
ボトル&ケージ&ストレージ部を含むフレーム、ハンドルシステム、シートピラーにより構成する「Module」をフレームセットの基本とし、47cm, 51cm, 54cm, 56cm, 58cm, 61cmの6サイズ展開となる。
速く、しかし実用的に。「目指したのはスーパーカーのようなバイク」
プロジェクトマネジャーのマート・オッテン氏は言う。「目指したのはスーパーカーのようなバイク。快適にツーリングできるGTカーと、速さのみを追求したレースカー両方の”いいとこどり”をしたようなスーパーカー的なスポーツバイク。とても速く走れ、スポーティで機敏なハンドリング、なめらかで目を引く流麗なスタイリングを持つバイク。一日乗っても疲れない快適さをもち、速く走ることを愉しむことができるバイク」。
ダウンチューブ側のボトルを抜けば、内蔵されたDi2ジャンクションが見える(シマノDi2搭載バイクの場合)。それさえダウンチューブとボトルケージに隠れることでエアロ効果を高めつつ、アクセスしやすさを兼ね備える。
ボトル下部とBBの隙間をカバーで埋めるように装着されるストレージシステムには、スペアチューブとタイヤレバー、CO2ボンベ一本を内包するケースが収まる。ボトル2本とストレージシステムを取り付けた状態が、もっともエアロダイナミクスに優れるという。
「ストレージも、中にそのキットがちょうど収まるサイズに設計してある。ミニマルなため隙間は無く、振動でカラカラ音がすることもない。たとえケース内に何も入れなくても、ボトルにドリンクを入れなくても、ボトルもストレージも付けた状態がもっともエアロ効果が高く、速く走れる」。UCIレースで使用する際には規定によりストレージを外す必要があるため、BMCレーシングの選手は外してレースを走ることになる。
インジェクションカーボンによるボトル周りのモジュラーシステムとストレージはボトル&ケージブランドのエリート社(イタリア)とのコラボによるTMR専用品だ。あえてボトルは(空気抵抗の少ない)専用品とせず、一般のボトルが使用できるのもポイントだ。
一体型に見えるハンドルも、ハンドルとステムが別体式の構造だ。ハンドルの送り・しゃくりの角度調整やステム交換ができ、ステム先端に取り付ける専用ブラケットにより各社のサイクルコンピュータやアクションカムが無駄なく装着できる。ステムは自社で開発されたCNC製法により高い強度と軽量性をもつ、ケーブル内蔵式のインテグレーテッドステムだ。
フルカーボンのエアロハンドル上部の翼形状は、握り心地を重視した範囲の太さと幅に収め、かつスプリントをかけるような左右に振る動きでも腕の内側に当たらない形状が計算されている。つまり、エアロを追求しつつも使いやすさを損なうような形状、設計は排除してある。
インペック・ラボ、実走、トラック試験で実証されたデータ
開発においてはBMCレーシングの選手から一般サイクリストまで、様々なタイプのライダーを想定してテスト行ったという。名高い開発施設「impec lab(インペック・ラボ)」があるBMC本社のそばには250mトラックを備えた室内競技場があり、いつでも実走テストができる施設が整っているという。スイスの選手ステファン・キュングとミヒャエル・シェアーは開発ライダーとして中心的な役割を担った。そして元プロ選手で現在BMCレーシングのチームリエゾン(調整役)を仕事とするステファノ・カッタイ氏を含め、トラック、風洞実験棟を使っての実証事件を繰り返して新TMRのエアロダイナミクス形状は煮詰められた。トラックでの走行試験において、Timemachine ROAD01とTeammachineSLR01Discとの比較走行実験を実施。その結果、タイプの異なる3人のライダーによる40km/h巡航時において、6〜12wのパワー低減につながっていることが実証されたという。また、屋外走行で横風に吹かれる状況を想定した風洞実験においては、ヨー角において0°のとき−11.5w、15°のときに−19.5wのパワー低減効果が実証されたという。
エアロダイナミクスが数値として実証されたと同時に、スーパーカーと同じように乗りやすさや快適性にもこだわった新Timemachine ROAD。もうひとつの開発テーマは「ライド・オールデイロング」つまり一日中乗れる快適性を持つこと。7月7日に開幕するツール・ド・フランスにも投入され、世界最高峰のレースでデビューする予定だ。
Timemachine Road 01 ONE(Shimano Dura Ace Di2完成車)
※現時点での国内取扱い予定なし(興味のある方はお早めにお近くのBMC正規代理店までお問い合わせ下さい)
Timemachine Road 01 TWO(SRAM RED eTap HRD完成車)
価格 | 1,200,000円+税 9月より入荷予定 |
Timemachine Road 01 THREE(Shimano Ultegra Di2完成車)
価格 | 1,000,000円+税 9月より入荷予定 |
Timemachine Road 01 MOD(Module)
価格 | 540,000円+税 9月より入荷予定 |
Module Spec
フレーム | Aerodynamic 01 Premium Carbon Frame, Aero Module, TCC Speed |
フォーク | Aerodynamic 01 Premium Carbon Fork, Integrated Aero Cover, ICS Aero, TCC Speed |
シートポスト | BMC Aero post, 01 Premium Carbon |
サイズ | 47, 51, 54, 56(THREE, MODULEのみ) |
フレーム重量 | 980g(54サイズ、ダイレクトマウントハンガー含む) |
フォーク重量 | 410g |
シートポスト重量 | 190g |
スルーアクスル | ウルトラライトスルーアクスル (F&R=55g) 規格 F:12x100mm、R:12x142mm |
ヘッド | 1-1/8" - 1-1/4"テーパー |
シートポストオフセット | 0, 15, 30mm |
ボトムブラケット | PF86 |
ディスクブレーキ台座 | フラットマウント F:160mm、R:140/160mm |
タイヤクリアランス | 25mm〜28mm |
ICS Aero - Aerodynamic Integrated Cockpit System | |
ステム長 | 100, 110, 120, 130mm |
ハンドル幅 | 400, 420, 440mm |
備考/装備 | +-9°ローテーションアジャスト Garmin/GoProマウント(Wahooは別途アダプターが必要) |