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今回のスペシャルコンテンツ最終回では、プレゼンテーションに同席した創業者であり、今も第一線で指揮を執るジム・フェルト氏へのインタビューを紹介。2つのニューモデルについて、フェルトについて、そして今後について聞いた。

ジム・フェルトが語る、ニューモデル、ブランド、モノ作り

まずは「FR」と「VR」と車名を変えた意味を教えてもらえますか?

創業者であり、今も第一線で指揮を執るジム・フェルト氏も同席創業者であり、今も第一線で指揮を執るジム・フェルト氏も同席
もともとFシリーズにはFelt Racingの意味が込められていましたが、今回のモデルチェンジは従来のFシリーズの性格こそ引き継いでいますが、完全なるモデルチェンジを行いました。これにより戦闘力を増しています。これを裏付ける上で「Racing」の頭文字であるRをプラスしていました。今までのFとは違うんだよ、ということを車名で表現したかったのです。対してVRは、Variable Roadbikeの頭文字を取りました。

FRのシンプルなデザインについて

ジョークを交えながらインタビューに答えるジム・フェルト氏ジョークを交えながらインタビューに答えるジム・フェルト氏 「シンプルなデザインこそがレースバイクに欠かせない柱となる部分」「シンプルなデザインこそがレースバイクに欠かせない柱となる部分」 私たちがニューモデルをデザインする時、いつも大切にしていることが「目的にベストなバイクを仕上げること」。軽量化を突き詰めるのか、エアロを最重視するのか、快適性なのか。それとも単純にそそるルックスのバイクなのか、価格はどの程度にまで抑えるのか…。開発においては様々な要素が入り込むのですが、あれもこれもと欲張ると結果的に中途半端で、ユーザーの直感に響かない製品になってしまうことが多々あります。

そこへいくと、FRのコンセプトはピュアレーシングであること。そして従来のFシリーズの特徴であったハンドリングを引き継ぎながら、快適性と接地性を高めるという目標がありました。ここにエアロだったり、様々なギミックを加えてしまうと、トータルのバランス性能が破綻しかねません。だからそのためには、直線で構成されたトラディショナルなフレームが欠かせなかったのです。そうすれば余計な重量増を防ぎつつ、剛性も兼ね備えることができる。ここがフェルトのこだわりであり、他のブランドと違う部分。目的を決めたら、なるべくシンプルに、最短距離で答えを導き出すのが我々のやり方です。

だからFRの見た目はFシリーズと大差ありませんが、その内側には、Fシリーズの開発時点では実現できなかった細やかなカーボンチューニングの知識が投入されています。この考えはエアロを追求したIAやTAでも同じで、目的に合わせた最適な形状をフレームの各部に落とし込んでいきました。

FRにはディスクブレーキモデル(日本展開無し)も登場しました。

「2年以内にほとんどのプロレーサーがディスクブレーキに移行する」「2年以内にほとんどのプロレーサーがディスクブレーキに移行する」 2年以内にほとんどのプロレーサーがディスクブレーキに移行すると考えているからです。今はディスクブレーキの使用が一時的に禁止されていますが、機能的には間違いなくキャリパーブレーキよりも優れているのは、MTBの世界で証明された通り。現状では重量増やニュートラルサービス時の対処などデメリットや解決すべき問題はありますが、コンポーネントの改良が進めば重量差も段階的に解消していくでしょう。いざ解禁された場合を踏まえ、レースバイクとしてFRディスクを開発しています。

FRに対するプロ選手の反応はどうでしたか?

「プロからの反応は非常に良かった。供給してすぐのツアー・オブ・カリフォルニアで使ってもらえたんです」「プロからの反応は非常に良かった。供給してすぐのツアー・オブ・カリフォルニアで使ってもらえたんです」 (c)FELT
とても良かったですね。製品版とほぼ同様の最終プロトタイプをヒンカピーチームの選手(ロビン・カーペンター)に渡したタイミングは、彼らの大一番であるツアー・オブ・カリフォルニアの直前でした。普通だったら慣れる上で本番投入には1ヶ月ほど掛かるのですが、ロビンはすぐにカリフォルニアで使うほどに気に入ってくれたんです。バイクの性格自体はFと変化させないことを目標にしていたので、このできごとは嬉しかったですね。また、反応性の向上に関しては非常にポジティブなフィードバックを受け取りました。フェルトにとってプロ選手の声はいつも大切ですし、マーケティングではなく、よりより機材を生み出すことに重きを置いているんです。

現在トップチームへ機材供給していない理由は何でしょうか?

「クリーンな若手を中心とした熱意あるチームとだけ、共に成長していきたい」「クリーンな若手を中心とした熱意あるチームとだけ、共に成長していきたい」 正直な話、戦力の高いチームに機材を供給して、より露出を高めることは簡単です。でもこれは私のポリシーとは違う。今のプロツアーは資金とバイクを提供することだけ。以前と比べてバイクメーカーとの信頼関係は重要視されなくなっています。

私の考えは、クリーンな若手を中心とした熱意あるチームと共に成長していくことにあります。これまで契約してきたスリップストリームやアルゴスは現在どちらもトップチームの一つですが、契約段階ではグランツアーで戦えるレベルにはなかった。しかし両チームは共にフェルトの考えを尊重してくれましたし、そんな彼らへの機材提供をはじめとしたサポートを行い、共に成功してきた経験は将来に向けての素晴らしい糧となりました。

今フェルトがサポートしているヒンカピーチームは、世界的には無名ですが、アメリカでは大きな期待が掛けられている若手チームです。実際に結果も付いてきていますし、フェルトを理解し、開発にも惜しみなく協力してくれます。どこかのトップチームにバイク300台と、6百万ドルという資金をポイっと提供するのは嫌ですが、彼らになら私はサポートをしていきたい。これまでの2チームと同じく、彼らと共にツール・ド・フランスに参加するべく全力を尽くしています。

VRを最も楽しめる遊び方を教えてもらえますか?

「VRに乗れば、新しい世界に出会えるはず」「VRに乗れば、新しい世界に出会えるはず」 (c)FELT
それはもう人の数だけ(笑)!今までのロードバイクでできなかったことが、このVRだったら実現できるんです。キャンプ道具を積んでツーリングに行くもよし、コミューターとして使うのもよし。そして新たな道を切り開くアドベンチャーバイクとして使っても最高です。VRの使い勝手はシクロクロスよりも、MTBよりも、当然ピュアレーサーよりも優れます。

今アメリカではアドベンチャーバイクに対するニーズが高まっていて、これまでロードバイクに乗っていた人たちが乗り換えをしているという実状があります。つまり”ブーム”ですね。アドベンチャーバイクはスポーツサイクルの楽しみ方を提唱する新たなアイディアであり、多様化しているライドスタイルを幅広くカバーできるものなのです。個人的には、今までロードバイクだと躊躇して、MTBだと退屈に感じてしまう道が、VRに乗ったことで楽しくなりました。乗った人を笑顔にさせることがVRの意義でもあります。

FRとも共通する走り心地を感じたのですが、ディスクブレーキ解禁後、例えばフランドルなど石畳のクラシックレースなどでプロ選手がVRを使う可能性はありますか?

アルゴス・シマノがパリ〜ルーベで使用したワンオフのスペシャルバイク「PR」アルゴス・シマノがパリ〜ルーベで使用したワンオフのスペシャルバイク「PR」 (c)Makoto.AYANOリオ五輪のトラック競技のために作った TA FRDリオ五輪のトラック競技のために作った TA FRD (c) ライトウェイプロダクツジャパン現状はまだ現実的には考えていませんが、可能性は大いにあると考えています。ただジオメトリーがプロライダー向けではないため、投入するならば各部の設計を変えた特別品を投入することになるでしょう。

アルゴスにサポートを行っていた際には、「PR」と呼んでいたFベースのスペシャルバイクを制作したことがありましたが、現在でも選手の要望に合わせてカーボンのレイアップを調整し剛性を変化させたりと、信頼できる選手のためであれば苦労は厭いません。ちなみに「PR」はFとほとんど同じ見た目ながら、ホイールベースを伸ばし、カーボンレイアップの調整によって乗り心地を高めたモデルでした。乗り心地という面において、FRの開発上でも参考に取り入れました。

このように細かく調整が可能なほどに、フェルトの持っているカーボンテクノロジーと知識は高いレベルにあります。今ではテニスなどのスポーツや自動車産業など様々な分野でカーボンの普及率が高まっていますが、もともと私が素材屋(イーストン社でアルミの開発指揮を執っていた)なことも手伝って、その経験はトップクラスだと自負しています。

例えばリオ五輪のトラック競技のために作ったTR。空力を考えて左側に駆動系を配置したことが話題ですが、チューブ断面を薄くしたために横剛性の確保が非常に困難な課題でした。そのため従来使用してきたものよりも更にグレードの高いTeXtremeカーボンを使い、各部のレイアップ調整と形状探求を突き詰めました。

アルミニウムに関してはどう捉えていますか?ここ1〜2年でキャノンデールやスペシャライズド、ジャイアントは高性能アルミロードを次々とデビューさせています。

現在スペシャライズドでアルミバイク開発を推し進めている一人がチャック・テシェイラですが、彼は私がイーストンに在籍していた時に同じ開発室にいた人物です(笑)。彼はアルミバイクに革新をもたらしましたし、彼の作るバイクはいつだって素晴らしい走りをしてくれます。スペシャライズドの製品はいつも気になりますね。でも覚えておいて欲しいのは、私だってもともとアルミバイクを開発するのが大好きだっていうこと。期待していて損はないかと思いますよ(笑)。

「日本のユーザーにフェルトの良さを体感して頂きたい」「日本のユーザーにフェルトの良さを体感して頂きたい」
日本のユーザーにお伝えしたいことは、まずレーサーや機材フリークであれば、一度FRを試してみて頂きたいということ。そしてVRは「Endless fun(終わりのない楽しみ)」を提供するバイク。もちろん日本とここアメリカのライド環境が違うことも理解していますが、以前モーターサイクルのエンジニアとして鈴鹿に行った時、周囲にたくさんの自然があるのを見ました。試せる機会があれば、その魅力はすぐに理解してもらえるはず。フェルトとしては様々なプロジェクトが進行中ですから、是非期待しておいてもらえればと思います。
提供:ライトウェイプロダクツジャパン、制作:シクロワイアード編集部