2015/12/28(月) - 11:53
最先端素材”グラフェン”の採用により進化を遂げたヴィットリアの新型レーシングタイヤ。その主要5モデルを乗り比べた今中大介さんのインプレ総括を紹介しよう。特に現役時代から厚い信頼を寄せ、今回の大刷新を経てもなおヴィットリアの中枢を担うであろうCORSAを中心に語って頂いた。
長年ヴィットリアを愛用してきた今中大介さんが、グラフェン採用の新型タイヤを語る
昔もヴィットリア以外のタイヤメーカーはありましたが、種類を選べるという点ではヴィットリアしかありませんでした。そしてヨーロッパのレースシーンを根底から支えているという意味で安心感があり、私はアマチュア時代から好きで使いはじめました。そして、プロになってからもシマノレーシングからポルティまで、ずっとヴィットリアを使用してきました。『定番プロダクツの性能に間違いは無い』という信頼感の高さも長年使用する理由です。
今中さんが2ヶ月間試用した新型CORSAのプロトタイプ。製品版と同じだがロゴが入っていない
写真のCORSA SC従来モデルと比較すると、新型CORSAは見た目の変化も大きい 今回のインプレッションでは全体的に「新しさ」を感じることができました。その中でも特に大きな進化を遂げたのが「CORSA」ですね。今回の乗り比べに先行してプロトタイプのCORSAオープンチューブラーを受け取り、サイドウォールの色がこれまでのCORSAと異なっていることにまず気づきました。「何か大きな違いを打ち出してきたんだな」という印象を受けましたね。
そして、円周方向に溝を切った新しいトレッドパターンがどう効いてくるのかな? という期待感がありました。ただ、あまりに変化が大きかったことから、期待と同じぐらいの不安もあり、昔からヴィットリアを使い続けて来た親心的に「大丈夫かな?これが本当にヴィットリアなの?」とも思いました。実際にCORSAをホイールに装着してみても、これまでとは質感が異なっていました。
私はダウンヒルのスピード感が好きで自転車を始めた人間で、どうしても下りでは攻めたくなってしまいます。ですから、タイヤにはハイスピードでコーナリングした際の「張りの強さ」を求めます。23cであれば7.5Barからスタートして、空気圧を上げながら自分の適正値を探すのですが、8Bar入れてもボヨンボヨンと腰砕けするタイヤは好みません。
実際にテストを始めて、まず驚いたのが「張り」の強さです。CORSA CXと同じ細いリム幅のホイールに装着した場合だけでも、張りが強くなっていることを実感できました。加えて新型CORSAにはしなやかそうにも感じとることができました。
Pave CGなどと同じく、ケブラーで補強したコットンケーシングを採用
「コンパウンドに加え、ケーシングも大きく変化しています」とはヴィットリア・ジャパンの藤井隆士さん(右) 荒れた路面から来る大きな変形のみならず、タイヤが「接地して・離れて」を高速で繰り返すなかでの小さな変形にも言えることなのですが、変形してから元の形に戻るまでの時間が早いと感じました。これこそが「張りの強さ」であり、剛性が高いといっても単に硬いだけというわけではありません。
張りが強い一方で、しなやかな乗り味はこれまでのタイヤにはない不思議なものであり、最初は何が影響しているのかがわかりませんでした。そこでヴィットリア・ジャパンに質問してみると、グラフェンを添加したコンパウンドに加えて、これまでのCORSA CXとはケーシングも異なるとの回答を得ました。ケブラーで補強したコットンケーシングが大きな働きをしているのでしょう。従来モデルとはほぼ同じ重量でも、トレッドが厚くなっているとのことですから、その影響があるのかもしれません。
ですから、乗ってすぐに不安が解消され、自分の中での評価がガラリと替わりました。触った感触でもグリップ感があるし、実際に乗ってみるとコーナーでの安心感が増しています。
「そわそわ」とした接地感の希薄さが無く、グリップの状態を常に自然に把握できるので、思いっきって攻めることができますね。加えてCORSA CXは滑り出した後の挙動が若干不安定でしたが、新型CORSAなら滑り出した後もグリップし続けるため、コントロールしやすい点も大きく進化したポイントといえるでしょう。
確かに高グリップに振ったタイヤは安心感はありますが、走りが重く、転がらないため、あまり食指が伸びません。現役時代の私は、選手タイプがクライマーからスプリンターに、末はパンチャー型に変化したのですが、それは選手としてのチーム内での役割の変化であり、次第にスピードが求められるようになったので、コーナーでも直進でも速いCORSAはもともと私にピッタリでした。それが更に進化したとあって、より自分好みのタイヤになってくれました。
「接地面に神経が行き届いているかのよう。路面状況を手に取るように感じることができる」」
代わりに振動吸収性はトレードオフになってしまっているのかもしれませんが、8Barで走っても、意識すれば分かるほどの僅かな差です。しかし、バイクとしてトータルで考えれば、現代のホイールとフレームは振動吸収性が高くなっているため、気にするほどではないでしょう。
触感でも従来品との違いを見極めようとする今中さん バイク全体で振動吸収性を確保できるのなら、タイヤからのロードインフォメーションは多いほうが良いでしょうし、気圧を高めに設定することで何か新しい発見ができるかも知れません。新型CORSAは、接地面に神経が行き届いているかのごとく、路面状況を手に取るように感じることができます。
新型CORSAは、高圧で走ることでより魅力を引き出せるタイヤだと私は感じています。もちろん一概に全ての人に当てはまるわけではないので、各自が個々にあった選択をすれば良いのですが。
いくら剛性が高いタイヤとは言えども、振動吸収性を求めて低圧にしてしまうと腰砕けになってしまい、本来のグリップが発揮できなくなってしまいます。ハイスピードで走っている場合ですが、鈴鹿や茂木のような摩擦係数の高いサーキットですら、低圧ですとコーナリングでヒヤッとすることもあります。再三になりますが、新型CORSAは安心感を高めるためにも高圧にすべきだと考えます。
杉目やヤスリ目ではなく、円周方向の溝だけとしたシンプルかつ斬新なトレッドパターン ケーシングと同じく、円周方向の溝のみとしたシンプルなトレッドパターンも重要な役割を果たしていますね。他ブランドの複雑なトレッドパターンと比較するとシンプル過ぎるようにも見えますし、絶対的なグリップは落とす方向ではあるのですが、トレッド表面を僅かによじれさせ、スキール音とあわせて意図的に限界を感じやすくしているのでしょう。
また、センターとサイドで溝同士の間隔を変えることで、バンク角に応じたよじれを生み出している点も特徴ですね。
これによって、コーナーをスムーズかつ最速で抜けるための「引きずり」が行いやすい点も新型CORSAの大きなポイントでしょう。もちろんスムーズな減速が重要なのですが、実際にカーブの中ではブレーキを当てながら前後を引きずらせつつグリップさせる必要がありますから。
ロゴレターのために一部で溝が途切れていたりと、少し疑問に思う点もありますが、ヴィットリアがハイエンドタイヤにシンプルなトレッドパターンを持ってきたということは、それだけ大きな意味合いがあるのでしょう。
新型CORSAは、総じて安心感が高くて耐久性も高いという、レーシングモデルに求められるバランスを真に追求したタイヤといえるでしょう。粘りつくようなコンパウンドを採用したタイヤと比べれば、グリップの絶対値で勝るわけでは無いのですが、自然な感覚で使えて、転がりも軽く、これまで同様にブレーキング性能に対して不安がない。これからロードでもディスクブレーキが台頭してくると、強い制動力を受け止めることのできる、そして耐久性がより高いタイヤが必要になってくることでしょうが、そういった状況に一石を投じるようなタイヤになっています。
ヴィットリア CORSA (クリンチャー)
ヴィットリア RUBINO PRO
ヴィットリア RUBINO PRO SPEED
「RUBINO PRO」シリーズについては、「CORSA」シリーズと比較すれば明確な性能差があるものの、確実に性能が向上しています。特に「RUBINO PRO」の進化の幅は大きなものがあります。「RUBINO PRO SPEED」については、しなやかな分だけに高圧にセッティングしてあげる必要があります。低圧ですと腰砕けになってしまいますが、高圧にしても跳ねないですし、快適性も損なわれません。そして何より軽さが持ち味であり、エンデューロやヒルクライムでは武器となってくれるはずです。
インプレッション総括 「定番製品の大刷新に驚いた」
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そして、円周方向に溝を切った新しいトレッドパターンがどう効いてくるのかな? という期待感がありました。ただ、あまりに変化が大きかったことから、期待と同じぐらいの不安もあり、昔からヴィットリアを使い続けて来た親心的に「大丈夫かな?これが本当にヴィットリアなの?」とも思いました。実際にCORSAをホイールに装着してみても、これまでとは質感が異なっていました。
私はダウンヒルのスピード感が好きで自転車を始めた人間で、どうしても下りでは攻めたくなってしまいます。ですから、タイヤにはハイスピードでコーナリングした際の「張りの強さ」を求めます。23cであれば7.5Barからスタートして、空気圧を上げながら自分の適正値を探すのですが、8Bar入れてもボヨンボヨンと腰砕けするタイヤは好みません。
「まず驚いたのが『張り』の強さ ケブラーで補強したコットンケーシングの働きが大きい」
実際にテストを始めて、まず驚いたのが「張り」の強さです。CORSA CXと同じ細いリム幅のホイールに装着した場合だけでも、張りが強くなっていることを実感できました。加えて新型CORSAにはしなやかそうにも感じとることができました。
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張りが強い一方で、しなやかな乗り味はこれまでのタイヤにはない不思議なものであり、最初は何が影響しているのかがわかりませんでした。そこでヴィットリア・ジャパンに質問してみると、グラフェンを添加したコンパウンドに加えて、これまでのCORSA CXとはケーシングも異なるとの回答を得ました。ケブラーで補強したコットンケーシングが大きな働きをしているのでしょう。従来モデルとはほぼ同じ重量でも、トレッドが厚くなっているとのことですから、その影響があるのかもしれません。
ですから、乗ってすぐに不安が解消され、自分の中での評価がガラリと替わりました。触った感触でもグリップ感があるし、実際に乗ってみるとコーナーでの安心感が増しています。
「そわそわ」とした接地感の希薄さが無く、グリップの状態を常に自然に把握できるので、思いっきって攻めることができますね。加えてCORSA CXは滑り出した後の挙動が若干不安定でしたが、新型CORSAなら滑り出した後もグリップし続けるため、コントロールしやすい点も大きく進化したポイントといえるでしょう。
「接地面に神経が行き届いているかのよう。路面状況を手に取るように感じることができる」
確かに高グリップに振ったタイヤは安心感はありますが、走りが重く、転がらないため、あまり食指が伸びません。現役時代の私は、選手タイプがクライマーからスプリンターに、末はパンチャー型に変化したのですが、それは選手としてのチーム内での役割の変化であり、次第にスピードが求められるようになったので、コーナーでも直進でも速いCORSAはもともと私にピッタリでした。それが更に進化したとあって、より自分好みのタイヤになってくれました。
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いくら剛性が高いタイヤとは言えども、振動吸収性を求めて低圧にしてしまうと腰砕けになってしまい、本来のグリップが発揮できなくなってしまいます。ハイスピードで走っている場合ですが、鈴鹿や茂木のような摩擦係数の高いサーキットですら、低圧ですとコーナリングでヒヤッとすることもあります。再三になりますが、新型CORSAは安心感を高めるためにも高圧にすべきだと考えます。
「新トレッドパターンは、意図的にグリップ限界点を感じやすくしている」
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ロゴレターのために一部で溝が途切れていたりと、少し疑問に思う点もありますが、ヴィットリアがハイエンドタイヤにシンプルなトレッドパターンを持ってきたということは、それだけ大きな意味合いがあるのでしょう。
新型CORSAは、総じて安心感が高くて耐久性も高いという、レーシングモデルに求められるバランスを真に追求したタイヤといえるでしょう。粘りつくようなコンパウンドを採用したタイヤと比べれば、グリップの絶対値で勝るわけでは無いのですが、自然な感覚で使えて、転がりも軽く、これまで同様にブレーキング性能に対して不安がない。これからロードでもディスクブレーキが台頭してくると、強い制動力を受け止めることのできる、そして耐久性がより高いタイヤが必要になってくることでしょうが、そういった状況に一石を投じるようなタイヤになっています。
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「RUBINO PRO」シリーズについては、「CORSA」シリーズと比較すれば明確な性能差があるものの、確実に性能が向上しています。特に「RUBINO PRO」の進化の幅は大きなものがあります。「RUBINO PRO SPEED」については、しなやかな分だけに高圧にセッティングしてあげる必要があります。低圧ですと腰砕けになってしまいますが、高圧にしても跳ねないですし、快適性も損なわれません。そして何より軽さが持ち味であり、エンデューロやヒルクライムでは武器となってくれるはずです。
提供:ヴィットリア・ジャパン 製作:シクロワイアード