2015/01/20(火) - 13:06
専用パーツが揃ってきたことから、多くのバイクブランドが徐々にラインナップに取り入れ始めているディスクブレーキロード。流行に囚われない製品開発を行ってきたフェルトもその流れを取入れ、コンフォートロード「Z」シリーズをベースとした「Z2 Disc」を2015モデルとしてリリースした。
現行の「Z」シリーズが登場したのは2013年のこと。「ロングライドにおける走破性の追求と低速域での優れた安定性の実現」をコンセプトに、瞬間的な速さよりも、いかに高いパフォーマンスを長時間引き出すかという点にフォーカス。ピュアレーシングモデル「F」シリーズのテクノロジーをそのままに快適性を高めたコンフォートロードだ。
現代のロードバイクデザインの基本に倣い、主に振動吸収性を担うのが弓なりに弧を描くトップチューブから、シートステー、フレーム上部だ。特にこだわって設計されたのがシートステーだ。他ブランドが扁平断面を用いる一方で、フェルトは耐久性を考えオーソドックスな丸断面としつつ、シートステーを寝かせることで衝撃が加わった際にしなりやすくさせている。
さらにリアエンドをオフセットさせることでチェーンステーがよりしなやかに可動する。一方のフロント側はオーソドックスで、一見硬そうなストレートシェイプのブレード形状を採用しながらも、カーボンの積層を最適化することで左右の剛性を高めつつ、縦方向にのみしなやかさを出すことに成功した。
そして、ジオメトリーも優れた快適性の実現に貢献。「F」シリーズとトップチューブ長が同一のサイズで比較するとスタックは15mmも高く、リラックスしたライディングポジションが実現可能に。これにより、ロードバイクに乗り始めたばかりのビギナーや、前傾の深い姿勢で長距離を走った際に生じやすい体幹や首の過度な疲労や痛みの発生を軽減している。
アップライトになったことで乗車時の重心が高くなったものの、ジオメトリーを最適化することでそれを帳消しに。トップチューブ長が同一の「F」シリーズと比較して、ヘッド角を0.5°寝かせ、リアセンタ、ホイールベース、フォークオフセットをそれぞれ7mm、22mm、5mmずつ延長。「Z」シリーズのユーザーの多くがメインの速度域とする時速15~30kmの安定性を向上させ、低速域でのふらつきを抑制した。
もちろん、ロードバイクとしての基本的な運動性能を兼ね備えている「Z」シリーズ。特にボトムブラケット周りの設計にこだわり、シェル内部には何重にも補強を入れて蜂の巣のような内部構造とすることで強化。ヘッドチューブからダウンチューブ、チェーンステーにかけてはボリューミーな造形と併せて剛性を高め、軽やかな踏み味を実現した。そして、コンピューターによる解析結果を駆使し、サンプルを用いたテストを繰り返すことで過剰な剛性を削ぐと共に、無駄な部位を排除し、軽量化を図っているのだ。
さて、今回テストする「Z2 Disc」はキャリパーブレーキに対応する標準モデルのZ2と名前や基本的なフォルムこそ共通なものの、その中身はやや異なる。まず素材はZ2が「UHC Advanced」であるのに対して、Z2 Discは敢えてグレードを1つ下げ、T700ベースの「UHC Performance」とした。
これにより走行性能を維持しつつ、ディスクブレーキ対応によって前後のエンド周辺の変形性が低下した分を補い、「Z」シリーズ本来の振動吸収性を確保した。なお、ブレーキ台座はポストマウント規格。その他、ヘッドチューブは下側1.5インチのテーパード設計とし、ディスクの強力な制動力に対応している。
コンフォートバイクという分野においても、長いノウハウを蓄積してきたフェルトが満を持して送り出す「Z2 Disc」。振動吸収性と走行性能のバランスに注目して、2015ラインナップの中でも特に注目すべき新型モデルの走りを検証してみよう。
「快適性重視ながら予想以上に軽快な走り ディスクの性能を充分に引き出せている1台」
Zシリーズというとコンフォートモデルというイメージを持っていましたが、実際に乗ってみると予想以上に軽快に走ってくれるバイクでした。快適性を重視する一方で走りが犠牲になっているバイクも少なくない中、Z2 Discは力をかけるとダイレクトに反応してくれますし、踏み込んだ分だけ前に進んでくれる高い剛性を持っています。
平地と登り、どちらも軽快なフィーリングでした。中速域からの加速性能に優れていており、直進安定性を重視したジオメトリーながら、ダンシングでも気持ちよく登って行くことができます。巡航性については30km/h半ばほどが心地よく、エンデューロ系のレースであれば充分に楽しめるだけの乗り味ですね。
そして、フロントフォークの仕上がりの良さも走行性能の高さに貢献していますね。一見したところブレードがやや細身にも感じますが、ディスクブレーキのストッピングパワーに負けてしまう様なことはありませんし、充分にブレーキのポテンシャルを引き出せています。またオイルラインの内蔵処理などしっかりと作りこまれていますね。UCI規格のロードレースでは今のところ、ディスクブレーキは使用できませんが、プロのユースにも耐え得るはずです。
ヘッドチューブはフロントフォークと剛性バランスがとれています。下りのコーナーでも狙ったラインをトレースすることができました。ダウンヒルが苦手なライダーでも安心して下りコーナーを走ることができるでしょう。
もちろん、振動吸収性は犠牲にされていません。特定の部位というよりもバイク全体をしならせることでショックを吸収している様に感じました。ある程度のスピードでグラベルロードを走行してみましたが、車体が跳ねてラインが乱れることはありませんでした。今回、23Cのタイヤがアッセンブルされていましたが、より幅が広いタイヤをアッセンブルすることで、コンフォート性能はより高めることができます。
このフレーム性能を考慮するにコストパフォーマンスは良好です。やはり、油圧ブレーキと電動コンポーネントの組み合わせがベストでしょう。ホイールは使用目的に合わせて選択したいです。フレームの軽快さを活かす方向性ならば軽量ホイールを、グラベルツーリングを意識するならば手組ホイールがマッチするでしょう。
最小サイズで510となっていますが、少ない力で高い制動力を得られるディスクブレーキ対応という点では女性にこそ最適な1台ではないでしょうか。また、レースに出ないけど1人で淡々と自分のペースでツーリングするライダーや、エンデューロなどのホビーレースにも参加してみたいという中級ライダーにピッタリなバイクですね。
「キャリパーと遜色ない制動感 雨でも走る熱心なサイクリストやブルベライダーにオススメ」
ロングディスタンス系の安定感と優れたパワー伝達性を兼ね備えるバイクです。快適性を追求すると踏み味が柔らかくなってしまうというイメージを持っていましたが、いい意味で予想を裏切られる剛性感を備えていました。力を入れた分だけ進んでくれるという、非常に気持ちいい乗り味です。車重を感じさせないほど走りに軽快さがありました。
これは使用されているカーボン素材が硬くて上質のためでしょう。意外にもBB周りが硬く、力をかけたときもウィップしづらいという性格があります。独特な剛性感を備えているため登りでも気持ちよく進んでくれるバイクですね。緩斜面ならばスイスイと登ってくれます。一般的にはコンフォートバイクが苦手とする急勾配の登りでも軽いギアをハイケイデンスで回すことで思い通りに進んでくれます。下りのコーナリングもコンフォート系の中ではシャープなイメージで、アンダーステアを感じることはないでしょう。
このバイクは速度域が低いところから、20~30km/hといった中速域、高速域まで安定感が強く、車体が落ち着いて前進していくため、巡航がしやすいですね。まるでTTバイクのようです。ペダリングの回転数を低めにすることで、ブラケットポジションや上ハンを持つポジションでも車体がふらつきづらいですね。
もちろん振動吸収性が犠牲にされているわけでもありません。まるでシクロクロスバイクのように悪路も走れてしまうと思わせる安心感がありました。リアとフォーク先端の上下方向の剛性バランスが優れていて、路面から弾かれること無く、路面を捉え続けてくれます。
トピックとしてあげられるディスクブレーキに関しては、キャリパーブレーキと比較してもコントロール性など違和感を感じずに操作することができました。メカニックとしての視点から見た場合、車輪交換さえなければキャリパータイプと大きな違いはありません。車輪交換時のローターの位置の微調整が必要となるなど課題が挙げられますが、全く新しいものとして覚えていく楽しみはありますね。
ロングディスタンス系の最高峰グレードの軽さと走行性を手にすることができるバイクです。ディスクブレーキはリムへの負担を減らすことができるので、雨の日でも走行するストイックな方やブルベライダーがその性能を発揮できるでしょう。また、レースではなく色んな所へ快適に走りに行きたいというツーリストにもおススメです。
ロードバイク本来の高い運動性能と快適性を両立 ディスクブレーキ採用の2015最注目モデル
現行の「Z」シリーズが登場したのは2013年のこと。「ロングライドにおける走破性の追求と低速域での優れた安定性の実現」をコンセプトに、瞬間的な速さよりも、いかに高いパフォーマンスを長時間引き出すかという点にフォーカス。ピュアレーシングモデル「F」シリーズのテクノロジーをそのままに快適性を高めたコンフォートロードだ。
現代のロードバイクデザインの基本に倣い、主に振動吸収性を担うのが弓なりに弧を描くトップチューブから、シートステー、フレーム上部だ。特にこだわって設計されたのがシートステーだ。他ブランドが扁平断面を用いる一方で、フェルトは耐久性を考えオーソドックスな丸断面としつつ、シートステーを寝かせることで衝撃が加わった際にしなりやすくさせている。
さらにリアエンドをオフセットさせることでチェーンステーがよりしなやかに可動する。一方のフロント側はオーソドックスで、一見硬そうなストレートシェイプのブレード形状を採用しながらも、カーボンの積層を最適化することで左右の剛性を高めつつ、縦方向にのみしなやかさを出すことに成功した。
そして、ジオメトリーも優れた快適性の実現に貢献。「F」シリーズとトップチューブ長が同一のサイズで比較するとスタックは15mmも高く、リラックスしたライディングポジションが実現可能に。これにより、ロードバイクに乗り始めたばかりのビギナーや、前傾の深い姿勢で長距離を走った際に生じやすい体幹や首の過度な疲労や痛みの発生を軽減している。
アップライトになったことで乗車時の重心が高くなったものの、ジオメトリーを最適化することでそれを帳消しに。トップチューブ長が同一の「F」シリーズと比較して、ヘッド角を0.5°寝かせ、リアセンタ、ホイールベース、フォークオフセットをそれぞれ7mm、22mm、5mmずつ延長。「Z」シリーズのユーザーの多くがメインの速度域とする時速15~30kmの安定性を向上させ、低速域でのふらつきを抑制した。
もちろん、ロードバイクとしての基本的な運動性能を兼ね備えている「Z」シリーズ。特にボトムブラケット周りの設計にこだわり、シェル内部には何重にも補強を入れて蜂の巣のような内部構造とすることで強化。ヘッドチューブからダウンチューブ、チェーンステーにかけてはボリューミーな造形と併せて剛性を高め、軽やかな踏み味を実現した。そして、コンピューターによる解析結果を駆使し、サンプルを用いたテストを繰り返すことで過剰な剛性を削ぐと共に、無駄な部位を排除し、軽量化を図っているのだ。
さて、今回テストする「Z2 Disc」はキャリパーブレーキに対応する標準モデルのZ2と名前や基本的なフォルムこそ共通なものの、その中身はやや異なる。まず素材はZ2が「UHC Advanced」であるのに対して、Z2 Discは敢えてグレードを1つ下げ、T700ベースの「UHC Performance」とした。
これにより走行性能を維持しつつ、ディスクブレーキ対応によって前後のエンド周辺の変形性が低下した分を補い、「Z」シリーズ本来の振動吸収性を確保した。なお、ブレーキ台座はポストマウント規格。その他、ヘッドチューブは下側1.5インチのテーパード設計とし、ディスクの強力な制動力に対応している。
コンフォートバイクという分野においても、長いノウハウを蓄積してきたフェルトが満を持して送り出す「Z2 Disc」。振動吸収性と走行性能のバランスに注目して、2015ラインナップの中でも特に注目すべき新型モデルの走りを検証してみよう。
インプレッション
「快適性重視ながら予想以上に軽快な走り ディスクの性能を充分に引き出せている1台」
吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)
Zシリーズというとコンフォートモデルというイメージを持っていましたが、実際に乗ってみると予想以上に軽快に走ってくれるバイクでした。快適性を重視する一方で走りが犠牲になっているバイクも少なくない中、Z2 Discは力をかけるとダイレクトに反応してくれますし、踏み込んだ分だけ前に進んでくれる高い剛性を持っています。平地と登り、どちらも軽快なフィーリングでした。中速域からの加速性能に優れていており、直進安定性を重視したジオメトリーながら、ダンシングでも気持ちよく登って行くことができます。巡航性については30km/h半ばほどが心地よく、エンデューロ系のレースであれば充分に楽しめるだけの乗り味ですね。
そして、フロントフォークの仕上がりの良さも走行性能の高さに貢献していますね。一見したところブレードがやや細身にも感じますが、ディスクブレーキのストッピングパワーに負けてしまう様なことはありませんし、充分にブレーキのポテンシャルを引き出せています。またオイルラインの内蔵処理などしっかりと作りこまれていますね。UCI規格のロードレースでは今のところ、ディスクブレーキは使用できませんが、プロのユースにも耐え得るはずです。
ヘッドチューブはフロントフォークと剛性バランスがとれています。下りのコーナーでも狙ったラインをトレースすることができました。ダウンヒルが苦手なライダーでも安心して下りコーナーを走ることができるでしょう。
もちろん、振動吸収性は犠牲にされていません。特定の部位というよりもバイク全体をしならせることでショックを吸収している様に感じました。ある程度のスピードでグラベルロードを走行してみましたが、車体が跳ねてラインが乱れることはありませんでした。今回、23Cのタイヤがアッセンブルされていましたが、より幅が広いタイヤをアッセンブルすることで、コンフォート性能はより高めることができます。
このフレーム性能を考慮するにコストパフォーマンスは良好です。やはり、油圧ブレーキと電動コンポーネントの組み合わせがベストでしょう。ホイールは使用目的に合わせて選択したいです。フレームの軽快さを活かす方向性ならば軽量ホイールを、グラベルツーリングを意識するならば手組ホイールがマッチするでしょう。
最小サイズで510となっていますが、少ない力で高い制動力を得られるディスクブレーキ対応という点では女性にこそ最適な1台ではないでしょうか。また、レースに出ないけど1人で淡々と自分のペースでツーリングするライダーや、エンデューロなどのホビーレースにも参加してみたいという中級ライダーにピッタリなバイクですね。
「キャリパーと遜色ない制動感 雨でも走る熱心なサイクリストやブルベライダーにオススメ」
中村仁(Hi-Bike)
ロングディスタンス系の安定感と優れたパワー伝達性を兼ね備えるバイクです。快適性を追求すると踏み味が柔らかくなってしまうというイメージを持っていましたが、いい意味で予想を裏切られる剛性感を備えていました。力を入れた分だけ進んでくれるという、非常に気持ちいい乗り味です。車重を感じさせないほど走りに軽快さがありました。これは使用されているカーボン素材が硬くて上質のためでしょう。意外にもBB周りが硬く、力をかけたときもウィップしづらいという性格があります。独特な剛性感を備えているため登りでも気持ちよく進んでくれるバイクですね。緩斜面ならばスイスイと登ってくれます。一般的にはコンフォートバイクが苦手とする急勾配の登りでも軽いギアをハイケイデンスで回すことで思い通りに進んでくれます。下りのコーナリングもコンフォート系の中ではシャープなイメージで、アンダーステアを感じることはないでしょう。
このバイクは速度域が低いところから、20~30km/hといった中速域、高速域まで安定感が強く、車体が落ち着いて前進していくため、巡航がしやすいですね。まるでTTバイクのようです。ペダリングの回転数を低めにすることで、ブラケットポジションや上ハンを持つポジションでも車体がふらつきづらいですね。
もちろん振動吸収性が犠牲にされているわけでもありません。まるでシクロクロスバイクのように悪路も走れてしまうと思わせる安心感がありました。リアとフォーク先端の上下方向の剛性バランスが優れていて、路面から弾かれること無く、路面を捉え続けてくれます。
トピックとしてあげられるディスクブレーキに関しては、キャリパーブレーキと比較してもコントロール性など違和感を感じずに操作することができました。メカニックとしての視点から見た場合、車輪交換さえなければキャリパータイプと大きな違いはありません。車輪交換時のローターの位置の微調整が必要となるなど課題が挙げられますが、全く新しいものとして覚えていく楽しみはありますね。
ロングディスタンス系の最高峰グレードの軽さと走行性を手にすることができるバイクです。ディスクブレーキはリムへの負担を減らすことができるので、雨の日でも走行するストイックな方やブルベライダーがその性能を発揮できるでしょう。また、レースではなく色んな所へ快適に走りに行きたいというツーリストにもおススメです。
提供:ライトウェイプロダクツジャパン 編集:シクロワイアード