2009/08/24(月) - 23:56
プリンスには、ピナレロだけに独占供給される東レ製50トンカーボンが使われているが、このドグマには ―驚くことなかれ― なんと60トンという超高弾性炭素繊維が採用されている。一般的にカーボンは、弾性率が高くなるほど高性能とされているから、素材の素性を一聞しただけでも、ドグマのなんたるかに思いを馳せるのは容易い。
速やかな増速を乗り手に促し、そのうえ長くパワーをかけ続けることができるこの特性は、ドグマの完成度の顕在とすることができるだろう。絶妙な剛性配分によって実現したデジタル感溢れたパワー変換フィーリングも相まって、乗り手のレベルや状況に、ドグマは決して左右されない。
ドグマにおける高弾性カーボンの使用は、むやみやたらな軽量・高剛性化に向けられているのではなく、軽さと剛性の高次元でのバランスを求めるための方法論だったのだろう。60トンと聞いて「ガチガチに硬いプロ仕様」という先入観をもって乗ったが、適度な剛性感で乗りやすい。現代のカーボンバイクは今でも十分以上に軽くて硬いのだから、総体的なバランスをとることを考えて設計したほうが確かに賢いやり方といえる。アルミフレーム隆盛時にいち早くカーボンバックに取り組んだピナレロの進取の気性は、今でもしっかり健在だということだろう。
応力解析の賜物という左右非対称デザインの恩恵は、乗っているぶんには感じられない。しかし、ペダリングで生じているであろう微妙な車体の捩れやブレ、それに起因する数値的効率の低下はしっかり補正されているはずで、それがドグマの持つ絶妙なライディングフィールに繋がっていると思われる。
左右への切り返しが続くコーナーなどでは、わずかな体重移動だけで忠実にバイクが向きを変えてくれるのが楽しい。フレームジオメトリー自体は安定志向のものだから、むやみな軽さもない。おまけに重量的には軽いクセに、乗り手の過度な入力や外的要因によるブレにも過敏には反応しない程度の懐の広さを持っている。だからダウンヒルでもまったく不安感がない。このダウンヒルとコーナリング性能の高さは誰もが体感できるものだ。
ある程度の重量を持つ宿命のモーターサイクルなどとは違い、スポーツバイクの過度な軽さは運動性に対してむしろ害だと個人的には思うが、ドグマに限ってはそれが当てはまらない。もっともこの感覚は、きっとピナレロの全車種に共通しているのだろうが。
レースはもちろん、グランフォンドに代表されるロングライドなどでの使用も視野にあるというドグマのキャラクターは、先代以上に高く評価されることだろう。(桜沢淳樹・バイクジャーナリスト)
適度な剛性感が乗り手のペダリングをサポートする
フレーム質量の小ささを実感しつつ、徐々にスピードを上げていく。やや重めのギアに入れた頃に、ドグマの適度な剛性感に気づく。過度な硬さを排除したBB周りの設定が、乗り手のペダリングパワーの大小に関わらず、長くバイクを加速させ続けてくれる印象だ。速やかな増速を乗り手に促し、そのうえ長くパワーをかけ続けることができるこの特性は、ドグマの完成度の顕在とすることができるだろう。絶妙な剛性配分によって実現したデジタル感溢れたパワー変換フィーリングも相まって、乗り手のレベルや状況に、ドグマは決して左右されない。
ドグマにおける高弾性カーボンの使用は、むやみやたらな軽量・高剛性化に向けられているのではなく、軽さと剛性の高次元でのバランスを求めるための方法論だったのだろう。60トンと聞いて「ガチガチに硬いプロ仕様」という先入観をもって乗ったが、適度な剛性感で乗りやすい。現代のカーボンバイクは今でも十分以上に軽くて硬いのだから、総体的なバランスをとることを考えて設計したほうが確かに賢いやり方といえる。アルミフレーム隆盛時にいち早くカーボンバックに取り組んだピナレロの進取の気性は、今でもしっかり健在だということだろう。
応力解析の賜物という左右非対称デザインの恩恵は、乗っているぶんには感じられない。しかし、ペダリングで生じているであろう微妙な車体の捩れやブレ、それに起因する数値的効率の低下はしっかり補正されているはずで、それがドグマの持つ絶妙なライディングフィールに繋がっていると思われる。
場面に囚われない軽快なハンドリング、変わらぬ反応
全方向的に節度感を持ったヘッド周りとフロントフォークは、シッティングはもちろんダンシングでも、まったく変わることのない反応を示し、バイクが行く先を惑うことはない。積層の仕方で剛性調整が可能なカーボンを使っている以上、かくも異形なフロントフォークを作る必要はないとは思うが、それはともかく、ドグマのフロント周りの振る舞いの良さには、乗るたびいつも驚かされる。熟成なったオンダフォークの振動減衰性はもちろん至極良好だ。ステム一体型のMOstカーボンハンドルバーとの組み合わせは、その小さな質量を武器に、軽快なハンドリングを演出してくれる。左右への切り返しが続くコーナーなどでは、わずかな体重移動だけで忠実にバイクが向きを変えてくれるのが楽しい。フレームジオメトリー自体は安定志向のものだから、むやみな軽さもない。おまけに重量的には軽いクセに、乗り手の過度な入力や外的要因によるブレにも過敏には反応しない程度の懐の広さを持っている。だからダウンヒルでもまったく不安感がない。このダウンヒルとコーナリング性能の高さは誰もが体感できるものだ。
ある程度の重量を持つ宿命のモーターサイクルなどとは違い、スポーツバイクの過度な軽さは運動性に対してむしろ害だと個人的には思うが、ドグマに限ってはそれが当てはまらない。もっともこの感覚は、きっとピナレロの全車種に共通しているのだろうが。
レースはもちろん、グランフォンドに代表されるロングライドなどでの使用も視野にあるというドグマのキャラクターは、先代以上に高く評価されることだろう。(桜沢淳樹・バイクジャーナリスト)
提供:ピナレロジャパン Text:Atsuki.Sakurazawa 制作:シクロワイアード