2013/06/17(月) - 11:03
今回のプレスキャンプでは2日間に渡ってテストライドをすることができた。初日のコースは"あの"ストラーデ・ビアンケ。未舗装路に白い砂利が乗っていることから、イタリア語で白い道と呼ばれるタフなコースで、春先に開催されるワンデイレースの舞台にもなっている有名なグラベルロードだ。
2日目はトスカーナ州シエナ近郊の舗装路がメイン。キャノンデール・プロサイクリングからはテッド・キング、ファビオ・サバティーニが同行してくれ、贅沢でエキサイティングなライディングとなった。
我々メディアに用意されたバイクはSRAMの最新コンポーネント、リア11段変速になったRED22にSiSL2クランク、VISION METRON40ホイールがアッセンブルされた、まさに最新鋭。フォークとバックステー、シートチューブやパワーピラミッド部はまるで工芸品のよう。湾曲やねじれが女性的な雰囲気を漂わせ、まだペダルを一漕ぎもしていないのに、所有欲をかきたてられる。
アップライトなポジションを可能にするために非常に分厚いヘッドキャップがセットされているが、これにはまさかのフロントライトが内蔵されている。「システムインテグレーションもとうとうここまで来たか!」と感じさせられた。もちろん、薄い通常のトップキャップも使用可能なのだが。タイヤの空気圧は6.5BARでテストに臨んだ。
凹凸の激しい路面とその上に敷き詰められた砂利が進路を縦、横、斜めとあらゆる方向へ妨害してくるのだが、フレキシブルに可動するフォークとステーが常にタイヤを接地させようとシッカリ仕事をしてくれる。おかげでハイトルクで踏み込んでも後輪が横滑りすることはなく、ハンドルは常に予定通りの進路に向いてくれた。
肝心の快適性だが、今まで私が経験してきたどのバイクよりも高い。時折現れる深さ10cm、直径30cmほどの穴(ストラーデ・ビアンケにはこのような穴が無数に開いている)、砂によるノイズ、小石や小さなギャップによる振動を受けても直進安定性は非常に高く、操舵性も失われることはなかった。サドルに腰を乗せたままで落ち着いて舵を取ることができる。さすがに穴を乗り越えると衝撃は感じるが、シートチューブやオフセットしたフォークが衝撃を緩和してくれているのだろう。小さなギャップや路面ノイズは、SAVE PLUSの機構により、そのほとんどがサドルに達する前に打ち消される。
舗装路といっても日本ほど滑らかな路面ではない。大型トラックが頻繁に往来する、細かなめくれだらけの幹線道路が延々と続いているイメージだ。もっとも印象的だったのは振動吸収性と減衰性の両方が際立っていたこと。筆者も含め周囲のジャーナリスト達も皆同じ印象を抱いたようだ。
タイヤの空気圧は決して低くはなかったが、路面の上空数mmを浮遊しているかのようなフィーリング。高周波振動がステーを伝う道中でゼロになっていく。SAVE PLUSを考案したエンジニアの狙い通りの働きをしている。月並みな表現ではあるが、まさに「魔法の絨毯」である。
平坦路でギアを上げて巡航速度を増してみても、SiSL2クランクから伝えられたトルクをパワーピラミッドが漏らすことなく推進力に変換しているようだ。二又に別れたシートチューブがBBハンガーの余計な動きを防ぎ、チェーンステーが速やかにしなりと戻りを繰り返し、心地よい加速を生み出す。
スプリント性能も高い。これはガッチリとしたヘッド周りと剛性に富んだフロントフォークのなせる業だろう。振動は伝えないが、硬さは非常にハイレベル。下ハンドルを握りこんで左右に振り回しても素早く返ってくる。一心不乱にもがいても、ラインからぶれることなく一直線に進むほど。優れた捻れ剛性のおかげでダウンヒルも得意で、リアの路面追従性と相まって舗装路ではプロ選手と一緒になって下りを楽しむことができた。
いたずらにカーボン繊維の弾性率を下げたり、単に柔らかく作って振動吸収性を上げたフレームではなく、剛性と快適性のそれぞれが活きるような工作が施されているので、振動や衝撃がカットされ無理なくスピードが出せる。気持ちよく高速走行ができるこのバイクこそ、正しい“快適系”なのだ。
次ページでは開発関係者とサガンから得られたインタビューを公開する。
2日目はトスカーナ州シエナ近郊の舗装路がメイン。キャノンデール・プロサイクリングからはテッド・キング、ファビオ・サバティーニが同行してくれ、贅沢でエキサイティングなライディングとなった。
滑らかな曲線が多用された艶かしいシルエット
我々メディアに用意されたバイクはSRAMの最新コンポーネント、リア11段変速になったRED22にSiSL2クランク、VISION METRON40ホイールがアッセンブルされた、まさに最新鋭。フォークとバックステー、シートチューブやパワーピラミッド部はまるで工芸品のよう。湾曲やねじれが女性的な雰囲気を漂わせ、まだペダルを一漕ぎもしていないのに、所有欲をかきたてられる。
アップライトなポジションを可能にするために非常に分厚いヘッドキャップがセットされているが、これにはまさかのフロントライトが内蔵されている。「システムインテグレーションもとうとうここまで来たか!」と感じさせられた。もちろん、薄い通常のトップキャップも使用可能なのだが。タイヤの空気圧は6.5BARでテストに臨んだ。
滑るような走り出しと衝撃をたくみに捌く快適性
バイクにまたがり一踏みしただけで、力強い剛性感を伴った滑るようなゼロスタートに驚かされた。快適性を重視したフレームというのは、まずたわみをもってライダーを迎え入れるのだという経験からくる先入観を完全に覆されたのだ。アウターギアを踏み続けると、適度なしなりと戻りを繰り返しながら巡航速度に達していく。幅広になったBBと、その直上にある双胴のシートチューブがトルクを的確に受け止めているのだ。そして、「コイツは純粋なレーシングバイクだ」と、認識を改め、ストラーデ・ビアンケの悪路へと突入した。凹凸の激しい路面とその上に敷き詰められた砂利が進路を縦、横、斜めとあらゆる方向へ妨害してくるのだが、フレキシブルに可動するフォークとステーが常にタイヤを接地させようとシッカリ仕事をしてくれる。おかげでハイトルクで踏み込んでも後輪が横滑りすることはなく、ハンドルは常に予定通りの進路に向いてくれた。
肝心の快適性だが、今まで私が経験してきたどのバイクよりも高い。時折現れる深さ10cm、直径30cmほどの穴(ストラーデ・ビアンケにはこのような穴が無数に開いている)、砂によるノイズ、小石や小さなギャップによる振動を受けても直進安定性は非常に高く、操舵性も失われることはなかった。サドルに腰を乗せたままで落ち着いて舵を取ることができる。さすがに穴を乗り越えると衝撃は感じるが、シートチューブやオフセットしたフォークが衝撃を緩和してくれているのだろう。小さなギャップや路面ノイズは、SAVE PLUSの機構により、そのほとんどがサドルに達する前に打ち消される。
お互いが邪魔しあうこと無い剛性、そして快適性
未舗装路でも快適に、スピードを保って走ることができた。だが、真のスピードと快適性は舗装路を走ることでさらに実感できた。舗装路といっても日本ほど滑らかな路面ではない。大型トラックが頻繁に往来する、細かなめくれだらけの幹線道路が延々と続いているイメージだ。もっとも印象的だったのは振動吸収性と減衰性の両方が際立っていたこと。筆者も含め周囲のジャーナリスト達も皆同じ印象を抱いたようだ。
タイヤの空気圧は決して低くはなかったが、路面の上空数mmを浮遊しているかのようなフィーリング。高周波振動がステーを伝う道中でゼロになっていく。SAVE PLUSを考案したエンジニアの狙い通りの働きをしている。月並みな表現ではあるが、まさに「魔法の絨毯」である。
平坦路でギアを上げて巡航速度を増してみても、SiSL2クランクから伝えられたトルクをパワーピラミッドが漏らすことなく推進力に変換しているようだ。二又に別れたシートチューブがBBハンガーの余計な動きを防ぎ、チェーンステーが速やかにしなりと戻りを繰り返し、心地よい加速を生み出す。
スプリント性能も高い。これはガッチリとしたヘッド周りと剛性に富んだフロントフォークのなせる業だろう。振動は伝えないが、硬さは非常にハイレベル。下ハンドルを握りこんで左右に振り回しても素早く返ってくる。一心不乱にもがいても、ラインからぶれることなく一直線に進むほど。優れた捻れ剛性のおかげでダウンヒルも得意で、リアの路面追従性と相まって舗装路ではプロ選手と一緒になって下りを楽しむことができた。
いたずらにカーボン繊維の弾性率を下げたり、単に柔らかく作って振動吸収性を上げたフレームではなく、剛性と快適性のそれぞれが活きるような工作が施されているので、振動や衝撃がカットされ無理なくスピードが出せる。気持ちよく高速走行ができるこのバイクこそ、正しい“快適系”なのだ。
次ページでは開発関係者とサガンから得られたインタビューを公開する。
提供:キャノンデール・ジャパン text:神宮司 高広