2020/11/10(火) - 20:00
グラインデューロの開催地、信越・斑尾高原に「ジロ グラベル バイクパーク斑尾」が来春誕生する。キャンプができるエリアからいつでも走れるグラベルコースを楽しめる。お披露目イベントで実際に走ってみた体験レポートでお伝えする。
自然林が堪能できるコース。落ち葉たっぷりで素晴らしい雰囲気だ photo:MakotoAYANO
昨年開催されたGRINDURO。その舞台となった長野県の信越地方、斑尾高原スキー場周辺エリアにジロがプロデュースするGIRO Gravel Bike Park Madarao(ジロ グラベル バイクパーク斑尾)が誕生する。来春のオープンを目標に、11月に開催されたオープニングイベントとコース試走会に参加してきたレポートでその概要を紹介しよう。
明るい林の広場でのオープンエアのプレゼンが心地よい photo:MakotoAYANO
長野県北部と新潟県にまたがる信越エリアは、2つの国立公園、雄大な流れの千曲川や点在する湖沼に囲まれ、冬には世界有数の豪雪地となる。昨年開催されたグラインデューロJAPANの拠点となった斑尾高原スキー場周辺はブナなどの原生林が広がる自然豊かな高原で、森の中のシングルトラック、林道や峠道、田園風景の広がるグラベルロードまで日本特有の空気感を感じることのできる道が無数にあるエリア。多くの温泉、守り続けられる伝統産業、稲作、ローカル特有の食文化、酒蔵が点在するなど、自然からの恵みを受け、そこに敬意を払いつつ生きる人々のカルチャーを感じることができる場所だ。
プロジェクトをすすめたダイアテックの増田さん(左)と加納さん(右) photo:MakotoAYANO
焚き火で暖を取りながらプレゼンを伺った photo:MakotoAYANO
そんなグラインデューロとグラベルの聖地とも言える場所に「ジロ グラベル バイクパーク斑尾」が誕生する。グラインデューロの主催者でありメインスポンサーであるヘルメットメーカーのジロの日本代理店ダイアテック株式会社(京都府)が発案し、昨年来、信越エリア広域にわたる団体などとともにパークづくりをすすめてきたという。
静かな森のなか、オープンエアで開催されたプレゼンテーション。自然を満喫できる明るい林間の広場自体がパークの一部であり、コースの一部が通り、テント泊ができるキャンプ場エリアとなっているとのこと。このプロジェクトのために3ヶ月間に渡って斑尾に住み込んで作業したというダイアテックの担当者、加納さんと増田さんが中心になって案内してくれた。
信越自然郷アクティビティセンターの浅野さん photo:MakotoAYANO
GIRO Gravel Bike Park Madarao photo:MakotoAYANO
グラベルパークの拠点は斑尾マウンテンリゾート、斑尾高原スキー場のエリア内にあり、レストハウスなどのメイン施設と斑尾高原ホテルの間の林間にキャンプ場にもなるその広場がある。テントを張ってゆったりと過ごしながら、土の上での自転車遊びを手軽に楽しめるレイアウト。コースは人工的なものでなく、踏み固められた草の無い小路(トレイル)がつけられている程度。なるべく自然の中を走っているように感じられるようルートを作っていくことを心がけているとか。
明るいキャンプエリアからコースが始まる photo:MakotoAYANO
スキー場内のこのトレイルのみがパークとなるわけでなく、スキー場の外のエリア一帯にトレイルが広がっている。もともとこの一帯はトレランやハイキングが盛んであり、グラインデューロで使われたようなトレイルや林道までを含めてがパークという構想で、普段から自転車で走れるよう、地権者とコンセンサス(合意)を取り交わすことを含めて整備が進められているのだ。つまりこの地域一帯と、林道や峠道、田園風景の広がるグラベルロードなど、周辺の様々な道がグラベルバイクパークに含まれていくという可能性があるのだ。
GIRO Gravel Bike Park Madarao コースのエントランス photo:MakotoAYANO
グラベルパークのコース整備および拡充は今後3年をかけて行われ、キャンパーが楽しめ、キッズが楽しめ、最終的にはコアなライダーが満足できる内容のコースに仕立てられる計画だという。「斑尾高原ふるさとの森」を中心に、周辺のトレイルを活用する仕組みづくりをすすめる。そして一歩外へ出て、アドベンチャー感、ワクワク感のあるトレイルを感じてもらうことをコンセプトに、入門者でもガイド付きで楽しめたり、コアな人なら自由に走ってもらうことで利用して欲しいという。
キャンプ場近くのコースは難易度が低く、初心者のスキルアップにも最適だ
「もっとも、グラベルライドの遊び方の根本はダートの上を自由に自転車で遊ぶこと。難しい決まりはなく、乗る自転車のジャンルも決まっていない。純粋な気持ちで土の上で童心に帰り遊びたいだけ。この思いを胸に、グラベルバイクパークと周辺のグラベルやトレイルにて自転車のジャンルを問わず楽しんでいいただけるように進化させていきます」と加納さん、増田さんは話す。
斑尾マウンテンリゾートのキャンプ場は気持ちのいい空間だ photo:MakotoAYANO
「キャンプ場周りで遊べるエリアとコースを造りました。キャンプにきた人が気軽に土の上を自転車で走ることを楽しめるように。コアな人には物足りないけど、初心者や子どもたちが安全に楽しめるように。そしてキャンプ場の外へ出れば、コアな上級者も満足できるような、グラインデューロのコースにもなったようなトレイルが無数に広がっている。家族と一緒に来て、『お父さんは外のグラベルを走ってきます』で、子どもたちはスキー場内のパークで遊ぶことができるし、ハイキングやジップラインでも遊べます」。
ゲレンデ外は自然の山域であるため管理されてはいない。しかし発信式のGPSを貸与することでトラッキング(追跡)が可能。サイクリストがどこに居るかを把握することができるため、遭難事故を防ぐ安全管理も可能になる。
トレイルの権利問題はオフロードバイクに常についてまわる問題だが、加納さん増田さんは次のように話す。「この一帯に無数にある歩くためのトレイルとバイクが共存できないかと話を進めています。ハイカーとバイカーがリスペクトしあい、気持ちよくトレイルをシェアして使えるような仕組みづくりを考えていきたい」。
グラベルパークを利用するには、おもに以下の手順を踏むことになる。
1. 斑尾高原スキー場でチケットを購入
2. 保険に加入していることをチェック
3. 受付にて走行上の注意点を説明、バイクのインスペクションを行う
4. ナンバープレートorリストバンドを配布。緊急連絡先の記載
5. GPSをレンタル貸与(居場所の把握のため)
6. ライド終了後は受付へ。GPSを返却することで入退場を管理
ダイアテックの加納さん グラインデューロ開催からこの構想が膨らんだ photo:MakotoAYANOパークの営業開始は来春。豪雪地帯だけに雪が消え、グラベルコースの準備が整うゴールデンウィーク明けになるだろうとの予想だ。オープン期間はグリーンシーズンからスキー場の準備に入る11月上旬頃までと、自然環境が左右することになる。まだ利用料等の詳細は未定だが、使用料の一部をコースの維持管理に当てるような仕組みを考えているとのことだ。
「グラインデューロがそうであるように、トレイルを使用することで発生する収益をトレイル保全のために役立てる。パークの入場料、使用料金をいただきますが、その一部をトレイルの維持管理費に充当していく方法を考えています」と加納さん。
自然がたっぷり体感できる斑尾高原スキー場のゲレンデ photo:MakotoAYANO
「信越はもともとトレランの聖地であって、普段から山遊びに自然のトレイルが活用されてきました。新潟県にも渡る広域で、各市町村が協力しあって土の上での遊びを楽しむ活動を推進しています。この土地に入ってみるとトレイルだらけで、温泉もあり、風景や文化もとても日本的で素晴らしい。そしてこちらがやりたいことを全面的に受け止めてくれます」と加納さん。
このエリアでのアウトドア活動を振興する信越自然郷アクティビティセンターの浅野さんは次のように話す。「信越は長野のなかでもいちばん北に位置し、斑尾山の半分が長野、半分が新潟県です。原生林の森が広がる多様性のある自然に、雪国文化をもつ里山の暮らしが残っている魅力的なエリアです。10年前からトレイルランの大会も盛んに開催されてきました。自然を楽しんで遊ぶ姿勢に積極的で、トレランを楽しむ人などが協力金を払ってトレイルをシェアし、自らが楽しむ環境を維持するといった取り組みも進んでいます。そうした動きを「斑尾モデル」として先進的に取り組んでいきたいと考えています。
「斑尾高原ふるさとの森」には所々に案内表示があった photo:MakotoAYANO
サイクリングを使ったアクティビティ振興にも積極的で、信越五高原ロングライド開催やスキーゲレンデで楽しむMTBダウンヒル『雪チャリナイター』もあります。サイクリングマップ作成やサイクルステーションの設置、ガイドツアーやレンタルE-bikeでのツーリングなども活用が進んでいます。初めてのグラインデューロで斑尾を選んでいただきました。信越エリアの良さを知ってもらう近道は、四季を通じて自然に親しんでもらうこと。山やダートで遊んでもらうことには自信があります」。
ゲレンデのスロープにつけられたダウンヒルコース photo:MakotoAYANO
スキー場内エリアのキャンプ場周辺のコースは緩やかなゲレンデ内のスラローム的なコース。初心者ならここでオフロードバイクの基本を身につけるライドレッスンが可能だし、キッズでも安全に楽しめる難易度だ。スキーリフトのあるスロープにはバンクやバームのつけられたスイッチバックのダウンヒルコースもあり、グラベルバイクのタイヤでもこなせる路面であるためスピードとスリルが味わえる。MTB初心者ならテクニカルなライドが楽しめる。
落ち葉をかき分けて進む「斑尾高原ふるさとの森」 photo:MakotoAYANO
ゲレンデの周辺には「斑尾高原ふるさとの森」が広がっており、歩いても散策の楽しめるトレイルだ。ブナなどの自然林の雰囲気がよく、落ち葉が積もった小路をバイクでサクサクと走るのは気持ちいい。ハイカーはほとんど居ないが、もし会ったなら下車して驚かすことなく挨拶をしよう。
ゲレンデを離れてオフロードに入っていけば、林道やトレイルが数多く存在する。所々に「信越トレイル」の道標があり、舗装路、簡易舗装の林道、森のなかのシングルトラック、農作業道、集落と集落をつなぐ生活道など、あらゆるトレイルがつながっている。遠景には志賀高原や野尻湖、黒姫山に妙高など、グラインデューロで見覚えのある風景は、その主要コース沿いに展開する。
ひび割れた舗装路のグラベルを走る photo:MakotoAYANO
路面は良好で、ガレ場は少なく、土系の道でも石が無いので細身のタイヤでも十分楽しめる。今回はグラインデューロを走った経験から33Cタイヤ装着のシクロクロスバイクで走ってみたが、問題なく楽しめた。タイヤが太くても快適だろうが、細いタイヤでもまったく不安なく走れるコンディション。初心者ならMTBでも安心だろうが、レトロなロードバイクで走った参加者も居たので、丈夫なタイヤならロードタイヤでもなんとかOK。もちろんグラベルバイクを選ぶのは最良の選択だ。ウェットなら粘りのあるやっかいな土質になる。
ゲレンデからグラベルへと走り出していく photo:MakotoAYANO
高原だけにアップダウンは多い。下り基調でグラベルを楽しむようルートを選択することはオススメで、標高差を稼ぐ(あるいはキャンプ場に戻る)際に舗装路を選ぶのは楽なアイデアだ。ルートに精通したガイドと一緒に走れば楽しめるだろうし、GPSなどガジェットを使いこなして未知なる道を探す技術とアンテナ、そして脚力を備えたグラベルライド上級者なら無限にルートを開拓できるだろう。
グラインデューロでも走ったハーフパイプ状のご機嫌ダウンヒル photo:MakotoAYANO
のどかな里の風景をつなぐ生活道のグラベル photo:MakotoAYANO
コンビニ等はほぼ無く、ライド中の補給食は十分に。あらかじめルート上の蕎麦の名店などはチェックしておきたい。ライド後はキャンプ場から徒歩でいける斑尾高原ホテルにいい温泉あり。もちろん周辺に充実しているホテルやペンション泊もオススメで、バイクウェルカムな宿泊施設を選定する提携プロジェクトも進んでいる。
グラインデューロでも前を通った神社で一休み photo:MakotoAYANO
浅野さんが勤務する飯山駅前にある信越自然郷アクティビティセンターではE-bikeを含む各種スポーツバイクのレンタルやテント、レインウェア、トレッキングシューズなどアウトドアスポーツに必要なグッズをレンタルできる他、ガイドツアーもアレンジしてくれるので頼れる存在。
世界のグラベルイベントを走ったダイアテックの増田さん photo:MakotoAYANO
グラベルツーリングを走るバイクはちょっとお気楽なセッティングだ photo:MakotoAYANO
日本で初めてのグラベルバイクパークという試み。加納さんは「数年で終了してしまう施設にしたくはなくて、末永く楽しめる施設にしていきます」と話す。日本でのトレイルライドは常に問題がつきまとう。すべての土地に地権者が居て、その場を借りて走るということになるからだ。トレランやハイカーとの関係や、オーバーユースの問題もある。それらの諸問題をクリアする方向で調整が進むこのグラベルパーク一帯は、他の土地に住む人が気軽にバイクを持って走りに行けるフィールドになるということ。クラブの仲間のライドや、サイクルショップのライドイベントなどにも好適だろう。遠くとも足を運ぶだけの価値があるフィールドと土地の魅力が詰まっている。
湧き水に立ち寄ってボトルに給水する photo:MakotoAYANO
グラインデューロの参加賞だったソックスを履いた参加者も photo:MakotoAYANO
ハイカーや山菜採りの人と出会ったら自転車を降りて挨拶するのがマナー photo:MakotoAYANO
舗装路も走ってグラベルをつないでいく photo:MakotoAYANO
来年、「ジロ グラベル バイクパーク斑尾」は日本での初戦で開幕するグラインデューロの開催(6月5日)の前後には正式オープンとなる予定だ。ぜひ仲間と誘い合わせて走りに行ってみてほしい。
イメージムービー
photo&text:Makoto.AYANO
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昨年開催されたGRINDURO。その舞台となった長野県の信越地方、斑尾高原スキー場周辺エリアにジロがプロデュースするGIRO Gravel Bike Park Madarao(ジロ グラベル バイクパーク斑尾)が誕生する。来春のオープンを目標に、11月に開催されたオープニングイベントとコース試走会に参加してきたレポートでその概要を紹介しよう。
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長野県北部と新潟県にまたがる信越エリアは、2つの国立公園、雄大な流れの千曲川や点在する湖沼に囲まれ、冬には世界有数の豪雪地となる。昨年開催されたグラインデューロJAPANの拠点となった斑尾高原スキー場周辺はブナなどの原生林が広がる自然豊かな高原で、森の中のシングルトラック、林道や峠道、田園風景の広がるグラベルロードまで日本特有の空気感を感じることのできる道が無数にあるエリア。多くの温泉、守り続けられる伝統産業、稲作、ローカル特有の食文化、酒蔵が点在するなど、自然からの恵みを受け、そこに敬意を払いつつ生きる人々のカルチャーを感じることができる場所だ。
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そんなグラインデューロとグラベルの聖地とも言える場所に「ジロ グラベル バイクパーク斑尾」が誕生する。グラインデューロの主催者でありメインスポンサーであるヘルメットメーカーのジロの日本代理店ダイアテック株式会社(京都府)が発案し、昨年来、信越エリア広域にわたる団体などとともにパークづくりをすすめてきたという。
静かな森のなか、オープンエアで開催されたプレゼンテーション。自然を満喫できる明るい林間の広場自体がパークの一部であり、コースの一部が通り、テント泊ができるキャンプ場エリアとなっているとのこと。このプロジェクトのために3ヶ月間に渡って斑尾に住み込んで作業したというダイアテックの担当者、加納さんと増田さんが中心になって案内してくれた。
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グラベルパークの拠点は斑尾マウンテンリゾート、斑尾高原スキー場のエリア内にあり、レストハウスなどのメイン施設と斑尾高原ホテルの間の林間にキャンプ場にもなるその広場がある。テントを張ってゆったりと過ごしながら、土の上での自転車遊びを手軽に楽しめるレイアウト。コースは人工的なものでなく、踏み固められた草の無い小路(トレイル)がつけられている程度。なるべく自然の中を走っているように感じられるようルートを作っていくことを心がけているとか。
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スキー場内のこのトレイルのみがパークとなるわけでなく、スキー場の外のエリア一帯にトレイルが広がっている。もともとこの一帯はトレランやハイキングが盛んであり、グラインデューロで使われたようなトレイルや林道までを含めてがパークという構想で、普段から自転車で走れるよう、地権者とコンセンサス(合意)を取り交わすことを含めて整備が進められているのだ。つまりこの地域一帯と、林道や峠道、田園風景の広がるグラベルロードなど、周辺の様々な道がグラベルバイクパークに含まれていくという可能性があるのだ。
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グラベルパークのコース整備および拡充は今後3年をかけて行われ、キャンパーが楽しめ、キッズが楽しめ、最終的にはコアなライダーが満足できる内容のコースに仕立てられる計画だという。「斑尾高原ふるさとの森」を中心に、周辺のトレイルを活用する仕組みづくりをすすめる。そして一歩外へ出て、アドベンチャー感、ワクワク感のあるトレイルを感じてもらうことをコンセプトに、入門者でもガイド付きで楽しめたり、コアな人なら自由に走ってもらうことで利用して欲しいという。
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「もっとも、グラベルライドの遊び方の根本はダートの上を自由に自転車で遊ぶこと。難しい決まりはなく、乗る自転車のジャンルも決まっていない。純粋な気持ちで土の上で童心に帰り遊びたいだけ。この思いを胸に、グラベルバイクパークと周辺のグラベルやトレイルにて自転車のジャンルを問わず楽しんでいいただけるように進化させていきます」と加納さん、増田さんは話す。
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「キャンプ場周りで遊べるエリアとコースを造りました。キャンプにきた人が気軽に土の上を自転車で走ることを楽しめるように。コアな人には物足りないけど、初心者や子どもたちが安全に楽しめるように。そしてキャンプ場の外へ出れば、コアな上級者も満足できるような、グラインデューロのコースにもなったようなトレイルが無数に広がっている。家族と一緒に来て、『お父さんは外のグラベルを走ってきます』で、子どもたちはスキー場内のパークで遊ぶことができるし、ハイキングやジップラインでも遊べます」。
ゲレンデ外は自然の山域であるため管理されてはいない。しかし発信式のGPSを貸与することでトラッキング(追跡)が可能。サイクリストがどこに居るかを把握することができるため、遭難事故を防ぐ安全管理も可能になる。
トレイルの権利問題はオフロードバイクに常についてまわる問題だが、加納さん増田さんは次のように話す。「この一帯に無数にある歩くためのトレイルとバイクが共存できないかと話を進めています。ハイカーとバイカーがリスペクトしあい、気持ちよくトレイルをシェアして使えるような仕組みづくりを考えていきたい」。
グラベルパークを利用するには、おもに以下の手順を踏むことになる。
1. 斑尾高原スキー場でチケットを購入
2. 保険に加入していることをチェック
3. 受付にて走行上の注意点を説明、バイクのインスペクションを行う
4. ナンバープレートorリストバンドを配布。緊急連絡先の記載
5. GPSをレンタル貸与(居場所の把握のため)
6. ライド終了後は受付へ。GPSを返却することで入退場を管理
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「グラインデューロがそうであるように、トレイルを使用することで発生する収益をトレイル保全のために役立てる。パークの入場料、使用料金をいただきますが、その一部をトレイルの維持管理費に充当していく方法を考えています」と加納さん。
■きっかけはグラインデューロ トレランに親しむ土地柄がマッチした
このグラベルバイクパーク構想の発端はもちろんグラインデューロ開催がきっかけとなった。イベント開催地を探していた主催者側の条件と、この一帯のアウトドアツーリズムを振興する飯山市観光協会や信越自然郷アクティビティセンターの方向性がマッチし、意気投合。イベント時だけでなく日常的にグラベルライドを楽しめるような環境づくりがスタートした。
「信越はもともとトレランの聖地であって、普段から山遊びに自然のトレイルが活用されてきました。新潟県にも渡る広域で、各市町村が協力しあって土の上での遊びを楽しむ活動を推進しています。この土地に入ってみるとトレイルだらけで、温泉もあり、風景や文化もとても日本的で素晴らしい。そしてこちらがやりたいことを全面的に受け止めてくれます」と加納さん。
このエリアでのアウトドア活動を振興する信越自然郷アクティビティセンターの浅野さんは次のように話す。「信越は長野のなかでもいちばん北に位置し、斑尾山の半分が長野、半分が新潟県です。原生林の森が広がる多様性のある自然に、雪国文化をもつ里山の暮らしが残っている魅力的なエリアです。10年前からトレイルランの大会も盛んに開催されてきました。自然を楽しんで遊ぶ姿勢に積極的で、トレランを楽しむ人などが協力金を払ってトレイルをシェアし、自らが楽しむ環境を維持するといった取り組みも進んでいます。そうした動きを「斑尾モデル」として先進的に取り組んでいきたいと考えています。
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サイクリングを使ったアクティビティ振興にも積極的で、信越五高原ロングライド開催やスキーゲレンデで楽しむMTBダウンヒル『雪チャリナイター』もあります。サイクリングマップ作成やサイクルステーションの設置、ガイドツアーやレンタルE-bikeでのツーリングなども活用が進んでいます。初めてのグラインデューロで斑尾を選んでいただきました。信越エリアの良さを知ってもらう近道は、四季を通じて自然に親しんでもらうこと。山やダートで遊んでもらうことには自信があります」。
■グラベルコースを試走して感じたこと
お披露目プレゼンの後、参加した関係者で実際にコースを走りに行ってみた。私の場合は昨年のグラインデューロを走り、その前日もコース周辺の試走で台風で短縮される前のコースを実際に走ることができた。そのとき走ったルートが今回案内してもらった多く含まれていた。
スキー場内エリアのキャンプ場周辺のコースは緩やかなゲレンデ内のスラローム的なコース。初心者ならここでオフロードバイクの基本を身につけるライドレッスンが可能だし、キッズでも安全に楽しめる難易度だ。スキーリフトのあるスロープにはバンクやバームのつけられたスイッチバックのダウンヒルコースもあり、グラベルバイクのタイヤでもこなせる路面であるためスピードとスリルが味わえる。MTB初心者ならテクニカルなライドが楽しめる。
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ゲレンデの周辺には「斑尾高原ふるさとの森」が広がっており、歩いても散策の楽しめるトレイルだ。ブナなどの自然林の雰囲気がよく、落ち葉が積もった小路をバイクでサクサクと走るのは気持ちいい。ハイカーはほとんど居ないが、もし会ったなら下車して驚かすことなく挨拶をしよう。
ゲレンデを離れてオフロードに入っていけば、林道やトレイルが数多く存在する。所々に「信越トレイル」の道標があり、舗装路、簡易舗装の林道、森のなかのシングルトラック、農作業道、集落と集落をつなぐ生活道など、あらゆるトレイルがつながっている。遠景には志賀高原や野尻湖、黒姫山に妙高など、グラインデューロで見覚えのある風景は、その主要コース沿いに展開する。
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路面は良好で、ガレ場は少なく、土系の道でも石が無いので細身のタイヤでも十分楽しめる。今回はグラインデューロを走った経験から33Cタイヤ装着のシクロクロスバイクで走ってみたが、問題なく楽しめた。タイヤが太くても快適だろうが、細いタイヤでもまったく不安なく走れるコンディション。初心者ならMTBでも安心だろうが、レトロなロードバイクで走った参加者も居たので、丈夫なタイヤならロードタイヤでもなんとかOK。もちろんグラベルバイクを選ぶのは最良の選択だ。ウェットなら粘りのあるやっかいな土質になる。
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高原だけにアップダウンは多い。下り基調でグラベルを楽しむようルートを選択することはオススメで、標高差を稼ぐ(あるいはキャンプ場に戻る)際に舗装路を選ぶのは楽なアイデアだ。ルートに精通したガイドと一緒に走れば楽しめるだろうし、GPSなどガジェットを使いこなして未知なる道を探す技術とアンテナ、そして脚力を備えたグラベルライド上級者なら無限にルートを開拓できるだろう。
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コンビニ等はほぼ無く、ライド中の補給食は十分に。あらかじめルート上の蕎麦の名店などはチェックしておきたい。ライド後はキャンプ場から徒歩でいける斑尾高原ホテルにいい温泉あり。もちろん周辺に充実しているホテルやペンション泊もオススメで、バイクウェルカムな宿泊施設を選定する提携プロジェクトも進んでいる。
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浅野さんが勤務する飯山駅前にある信越自然郷アクティビティセンターではE-bikeを含む各種スポーツバイクのレンタルやテント、レインウェア、トレッキングシューズなどアウトドアスポーツに必要なグッズをレンタルできる他、ガイドツアーもアレンジしてくれるので頼れる存在。

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日本で初めてのグラベルバイクパークという試み。加納さんは「数年で終了してしまう施設にしたくはなくて、末永く楽しめる施設にしていきます」と話す。日本でのトレイルライドは常に問題がつきまとう。すべての土地に地権者が居て、その場を借りて走るということになるからだ。トレランやハイカーとの関係や、オーバーユースの問題もある。それらの諸問題をクリアする方向で調整が進むこのグラベルパーク一帯は、他の土地に住む人が気軽にバイクを持って走りに行けるフィールドになるということ。クラブの仲間のライドや、サイクルショップのライドイベントなどにも好適だろう。遠くとも足を運ぶだけの価値があるフィールドと土地の魅力が詰まっている。
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
来年、「ジロ グラベル バイクパーク斑尾」は日本での初戦で開幕するグラインデューロの開催(6月5日)の前後には正式オープンとなる予定だ。ぜひ仲間と誘い合わせて走りに行ってみてほしい。
イメージムービー
photo&text:Makoto.AYANO
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