2019/07/03(水) - 15:08
日本最大のヒルクライムイベント「Mt.富士ヒルクライム」(以下、富士ヒルクライム)。その中から、主催者によって選ばれたクライマーたちが出走した「主催者選抜クラス」の上位陣の愛車を紹介しよう。
佐々木遼(Team GOCHI)スペシャライズド S-works Tarmac
7名のスプリントを制して王座を射止めた佐々木さん。その走りを支えたのがスペシャライズドのオールラウンドレーサーであるS-works Tarmacだ。最新モデルではなく1世代前のモデルとなるが、現在のスペシャライズドバイクの方向性を決定づけた「ライダーファーストエンジニアード」を最初に採用した歴史的な名車だ。
いわゆる飛び道具的な軽量パーツは使用せず、オーソドックスなパーツで組み上げられているのが特徴的。「まず完走しないと話にならないので、あまり信頼できないようなパーツは使わないようにしているんです」と佐々木さん。
「ひとつ挙げるならビッグプーリーですね、アウターローでも抵抗が少なくてヒルクライムにはぴったりなんですよ」という。フレームのチョイスについては「剛性バランスがちょうど良くて、ホイールもベストマッチでした。とにかく踏みやすいんです」とのことだ。
フォークには"No more hero be what you wannna be”というデカールが。「座右の銘というか、越えるべきは憧れる人の背中、という意味なんです」と言う。練習仲間でもある田中さん(昨年の富士ヒル覇者)をいつか越えたいという佐々木さんの思いが詰まったフレーズだ。
濵野巧勝(BREZZA-KAMIHAGI)トレック EMONDA SLR
「もう少しだったので、めちゃくちゃ悔しいです」とスプリントで2位に入った口惜しさを滲ませた濱野さん。ここまでいけると思っていなかった、という濱野さんだが、愛車はその言葉とは裏腹に妥協のないヒルクライム仕様。
フレームはトレックの超軽量モデルのEMONDA SLR。昨年の富士ヒルと乗鞍のウィニングバイクでもあるヒルクライマー御用達の一台をベースに軽量パーツを組み合わせており、なんと重量は5.3kgほどという。
ホイールはaxライトネス、ハンドルはTHMカーボネス、ステムはエクストラライトと、信頼性と軽量性を両立するブランドで揃えつつ、フロントシングルとすることで更に重量を削減している。クランクはQUARQで、チェーンリングはローターのQ-RINGSの50T。
「これが踏めなければ負けるという覚悟でした。特に富士ヒルはラストの平坦もあるので、重めのギア比がマッチすると思ったんです」とのこと。また、こだわりはビッグプーリーにも及んでいる。「セラミックスピードなんですが、旧型のほうが抵抗削減率が高いようで、あえて9000系を使用しているんです」とのことだ。
タイヤはヴィットリアのCORSA SPEEDを2日前に新調したという。「EMONDAはとにかく軽くて、反応性も良いので最高です」と濱野さん。来年もこだわりぬいた愛車と共にリベンジへ挑戦する姿が見られるはずだ。
加藤大貴(COWGUMMA)タイム ZXRS
序盤から集団前方で積極的に展開してきた加藤さんの走りを支えるのは、ピンクのタイム ZXRS。ツール・ド・おきなわなどを幾度も制した実績を持つフレンチエアロレーサーは、国内のホビーレーサーから高い人気を集めてきた1台だ。
ピンクのカラーリングは限定販売のカラーモデルなのかと思いきや、なんとオリジナルでペイントしたのだという。「チームジャージのカラーに合わせて、知り合いのペイント屋さんに塗ってもらったんです。ロゴも塗装で仕上げてもらってるんですよ」と加藤さん。「タイムが好きで他にも2台持っているんで。自分の走り方に全体的な剛性感がぴったりで、重量よりもライドフィールを重視して選んでいます」とバイクチョイスの理由を教えてくれた。
ホイールがライトウェイトの軽量モデルであるギップフェルシュトルムであるほかは、パーツ構成はオーソドックスなもの。ヒルクライムレースだからといって特別なパーツを使用しないのは、普段のフィーリングから変わらないように、というこだわりでもあるという。
メインコンポーネントは9000系DURA-ACEだが、クランクのみR9100系DURA-ACEとなっている。その理由は「R9100系のほうが剛性があるので、こちらにしました」とのこと。「これからもタイム一筋でいきます!」と言う加藤さん。これからも最高の相棒との活躍に注目だ。
大野拓也(OVERHEAT天照)メリダ SCULTURA 9000
昨年に続き、序盤から最終盤まで常に仕掛け続けた大野さん。そのアグレッシブな走りに応えたのが、メリダの軽量クライミングバイクであるSCULTURA 9000だ。フレーム重量720gのCF5フレームに、最新のR9100系DURA-ACEを組み合わせたクライミングバイクで今年も大きな存在感を示した。
「他の軽量バイクに比べるとリーズナブルですから」とフレームチョイスの理由を語る。ホイールもジップの軽量モデル202を使用する。「10sフリーなので、10sフリー対応の11sスプロケを使ってるんですよ」とのことだ。
タイヤはヴィットリアのCORSA SPEED。「転がりが最高に軽いですね!」と大絶賛の1本だ。ポジションは少しアップライトなセッティング。「呼吸をしやすいように意識しています。ヒルクライム用だからというわけではなく、もう一台のバイクもポジションは同じですね」と大野さん。
サドルはプロロゴのフルカーボンモデルにしたり、使わないボトルケージのネジを外したりするなど、軽量化にも余念はない。毎年仕掛け続けるその姿は、チームメイトにも伝播しているようで、今年は天照のメンバーがアタックを繰り返す姿が多く見られた。果敢に攻め続けるパナッシュ溢れる走りでこれからもヒルクライムシーンを盛り上げてほしいですね
text:Naoki.Yasuoka
photo:So.Isobe
佐々木遼(Team GOCHI)スペシャライズド S-works Tarmac
7名のスプリントを制して王座を射止めた佐々木さん。その走りを支えたのがスペシャライズドのオールラウンドレーサーであるS-works Tarmacだ。最新モデルではなく1世代前のモデルとなるが、現在のスペシャライズドバイクの方向性を決定づけた「ライダーファーストエンジニアード」を最初に採用した歴史的な名車だ。
いわゆる飛び道具的な軽量パーツは使用せず、オーソドックスなパーツで組み上げられているのが特徴的。「まず完走しないと話にならないので、あまり信頼できないようなパーツは使わないようにしているんです」と佐々木さん。
「ひとつ挙げるならビッグプーリーですね、アウターローでも抵抗が少なくてヒルクライムにはぴったりなんですよ」という。フレームのチョイスについては「剛性バランスがちょうど良くて、ホイールもベストマッチでした。とにかく踏みやすいんです」とのことだ。
フォークには"No more hero be what you wannna be”というデカールが。「座右の銘というか、越えるべきは憧れる人の背中、という意味なんです」と言う。練習仲間でもある田中さん(昨年の富士ヒル覇者)をいつか越えたいという佐々木さんの思いが詰まったフレーズだ。
濵野巧勝(BREZZA-KAMIHAGI)トレック EMONDA SLR
「もう少しだったので、めちゃくちゃ悔しいです」とスプリントで2位に入った口惜しさを滲ませた濱野さん。ここまでいけると思っていなかった、という濱野さんだが、愛車はその言葉とは裏腹に妥協のないヒルクライム仕様。
フレームはトレックの超軽量モデルのEMONDA SLR。昨年の富士ヒルと乗鞍のウィニングバイクでもあるヒルクライマー御用達の一台をベースに軽量パーツを組み合わせており、なんと重量は5.3kgほどという。
ホイールはaxライトネス、ハンドルはTHMカーボネス、ステムはエクストラライトと、信頼性と軽量性を両立するブランドで揃えつつ、フロントシングルとすることで更に重量を削減している。クランクはQUARQで、チェーンリングはローターのQ-RINGSの50T。
「これが踏めなければ負けるという覚悟でした。特に富士ヒルはラストの平坦もあるので、重めのギア比がマッチすると思ったんです」とのこと。また、こだわりはビッグプーリーにも及んでいる。「セラミックスピードなんですが、旧型のほうが抵抗削減率が高いようで、あえて9000系を使用しているんです」とのことだ。
タイヤはヴィットリアのCORSA SPEEDを2日前に新調したという。「EMONDAはとにかく軽くて、反応性も良いので最高です」と濱野さん。来年もこだわりぬいた愛車と共にリベンジへ挑戦する姿が見られるはずだ。
加藤大貴(COWGUMMA)タイム ZXRS
序盤から集団前方で積極的に展開してきた加藤さんの走りを支えるのは、ピンクのタイム ZXRS。ツール・ド・おきなわなどを幾度も制した実績を持つフレンチエアロレーサーは、国内のホビーレーサーから高い人気を集めてきた1台だ。
ピンクのカラーリングは限定販売のカラーモデルなのかと思いきや、なんとオリジナルでペイントしたのだという。「チームジャージのカラーに合わせて、知り合いのペイント屋さんに塗ってもらったんです。ロゴも塗装で仕上げてもらってるんですよ」と加藤さん。「タイムが好きで他にも2台持っているんで。自分の走り方に全体的な剛性感がぴったりで、重量よりもライドフィールを重視して選んでいます」とバイクチョイスの理由を教えてくれた。
ホイールがライトウェイトの軽量モデルであるギップフェルシュトルムであるほかは、パーツ構成はオーソドックスなもの。ヒルクライムレースだからといって特別なパーツを使用しないのは、普段のフィーリングから変わらないように、というこだわりでもあるという。
メインコンポーネントは9000系DURA-ACEだが、クランクのみR9100系DURA-ACEとなっている。その理由は「R9100系のほうが剛性があるので、こちらにしました」とのこと。「これからもタイム一筋でいきます!」と言う加藤さん。これからも最高の相棒との活躍に注目だ。
大野拓也(OVERHEAT天照)メリダ SCULTURA 9000
昨年に続き、序盤から最終盤まで常に仕掛け続けた大野さん。そのアグレッシブな走りに応えたのが、メリダの軽量クライミングバイクであるSCULTURA 9000だ。フレーム重量720gのCF5フレームに、最新のR9100系DURA-ACEを組み合わせたクライミングバイクで今年も大きな存在感を示した。
「他の軽量バイクに比べるとリーズナブルですから」とフレームチョイスの理由を語る。ホイールもジップの軽量モデル202を使用する。「10sフリーなので、10sフリー対応の11sスプロケを使ってるんですよ」とのことだ。
タイヤはヴィットリアのCORSA SPEED。「転がりが最高に軽いですね!」と大絶賛の1本だ。ポジションは少しアップライトなセッティング。「呼吸をしやすいように意識しています。ヒルクライム用だからというわけではなく、もう一台のバイクもポジションは同じですね」と大野さん。
サドルはプロロゴのフルカーボンモデルにしたり、使わないボトルケージのネジを外したりするなど、軽量化にも余念はない。毎年仕掛け続けるその姿は、チームメイトにも伝播しているようで、今年は天照のメンバーがアタックを繰り返す姿が多く見られた。果敢に攻め続けるパナッシュ溢れる走りでこれからもヒルクライムシーンを盛り上げてほしいですね
text:Naoki.Yasuoka
photo:So.Isobe
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