2019/06/09(日) - 16:57
富士北麓、スバルラインを舞台に開催された第16回Mt.富士ヒルクライム。海外からの強力な刺客を破り、佐々木遼(Team GOCHI)が57分43秒で新王者となった。
16年目を迎えたMt.富士ヒルクライム photo:So.Isobe
1万人を越える参加者を数え、名実共に日本一のヒルクライムイベントとして定着したMt.富士ヒルクライム。8月に行われる乗鞍とならび、日本中のヒルクライマー達の目標となる大会だ。過去大会や他大会の実績を考慮して集められた主催者選抜クラスのトロフィーはヒルクライマー達の憧れだ。
16年目を迎えた今大会。受付を行う大会前日には恒例となったエキスポが行われ、多くの参加ブースが集まったほか、ショートタイムトライアルなども催され盛り上がったようだ。
大きな期待を集めたジョン・エブセン(デンマーク) photo:So.Isobe
さて、大会当日は生憎の空模様。先月の陽差しと暑さが嘘のような肌寒さとなった。会場では、下山のための防寒グッズをしっかりと預けるようにアナウンスが流れていた。
田中裕士(グランペール)による大会記録が生み出された昨年も同様の天気だったが、今年は輪をかけて気温が低いようにも感じる。果たして、この天候が吉と出るのか凶と出るのか。
Mt.富士ヒルクライム2019 主催者選抜クラスのリアルスタート photo:Naoki.Yasuoka
スバルラインの料金所ゲートを通っていく photo:Naoki.Yasuoka
今年の主催者選抜クラスは少し雰囲気が異なった。昨年の台湾の太魯閣KOMチャレンジにおいてローレンス・テンダムやヤン・バケランツらを破って優勝しているジョン・エブセン(デンマーク)がスタートラインについているのだ。主催者選抜にはKOMチャレンジを走った経験を持つ選手も多く、その強さを実感しているだけに、もっぱらの下馬評は「エブセンが持っていくだろう」というもの。
午前7時、黒船と共にスタートした主催者選抜クラス。計測開始地点を越え、スバルラインの料金所ゲートをくぐり抜けて、25kmの戦いのゴングを鳴らしたのは、大野拓也(OVERHEAT天照)。
ファーストアタックを成功させた大野拓也(OVERHEAT天照) この日何度も仕掛けた photo:Naoki.Yasuoka
序盤はまだまだ大きな集団で進む photo:Naoki.Yasuoka
森本誠(GOKISO)、加藤大貴(COUGUMMA)らが抜け出しを試みる photo:Naoki.Yasuoka
アタックをチェックするジョン・エブセン photo:Naoki.Yasuoka
昨年も「どうせなら目立てれば!」と序盤から積極的に逃げ続けていた大野が今年もファーストアタックを成功させる。武田祥典(天童市役所)や嘉瀬峻介(LinkTouhoku)、そして森本誠(GOKISO)が牽引する集団が1合目を越えたあたりで吸収するも、大野はそのまましばらく先頭を牽き続ける余裕を見せた。
散発的なアタックはあるものの、大野や森本、嘉瀬、加藤大貴(COUGUMMA)らが先頭でペースを保ち、しばらく集団は一つのまま進んでいく。エブセンは前にこそ出ないものの、先頭から6番手以内のポジションをキープし睨みを効かせる構え。
集団のペースをコントロールする森本誠(GOKISO) photo:Naoki.Yasuoka
中盤に単独逃げを敢行した池田隆人(Team ZWC) photo:Naoki.Yasuoka
3合目を過ぎたあたりで、池田隆人(Team ZWC)が単独アタックを決める。スルスルと抜けだした池田を追う選手は現れず、あっという間に15秒ほどの差をつけることに成功する。独走態勢に持ち込んだ池田だったが、太鼓の応援で知られる大沢を過ぎた4合目付近で吸収されることになった。
池田を吸収した集団から、入れ替わりに抜け出したのが本命のエブセン。「下見して、ここでアタックしようと決めていた」という残り6km地点でアタック。そこに大野が合流するもじりじりと離されてしまう。身体を大きく揺らしながら飛ぶように駆けるエブセンは、霧を味方につけそのまま山岳スプリット区間を単独先頭で通過し、平坦区間へ。
霧の中大野を振り切り独走に持ち込んだジョン・エブセン(デンマーク) photo:Naoki.Yasuoka
エブセンを追う佐々木遼(Team GOCHI) photo:Naoki.Yasuoka
独走態勢を築いたジョン・エブセン(デンマーク) photo:Naoki.Yasuoka
このまま独走勝利を挙げるかと思われたが、平坦区間でローテーションを回してきた後続集団が残り300mでエブセンをキャッチ。そしてそのままの勢いで抜き去り、スプリントへと持ちこまれた。
深い霧の中からフィニッシュに現れたのは7名に絞られた先頭集団。最後のスプリントで加藤の番手から仕掛けた佐々木遼(Team GOCHI)が伸びた。何度も噛み締めるようなガッツポーズでフィニッシュした佐々木。悪天候の中であったが、57分43秒と昨年に迫るフィニッシュタイムで新王者となった。
何度も噛み締めるようなガッツポーズでフィニッシュした佐々木遼(Team GOCHI) photo:Naoki.Yasuoka
「大きなタイトルを獲れたのは初めてで、夢のよう。まさか勝てるとは思っていなかったので。いつも一緒に練習していて、いつも負かされている(笑)加藤さんをマークしていて、最後の局面でも食らいついていったら、勝っていた。正直、必死すぎてあまり展開も覚えてないくらい」と佐々木。
「ディフェンディングチャンピオンの田中さんが目標で、憧れだったのでこのタイトルは特別。このままの勢いで乗鞍も狙いたいし、来年の富士の2連覇も狙いたいですね。前人未踏の成績を残してみたい」と野望を口にした。
新王者となった佐々木遼(Team GOCHI) photo:So.Isobe
プレゼンターのダミアーノ・クネゴと新王者となった佐々木遼(Team GOCHI) photo:So.Isobe
シャンパンファイトで勝利を祝った photo:So.Isobe
注目されていたジョン・エブセンは、58分2秒でフィニッシュしたものの、下山誘導に従わず、先導車進入以前に単独での下山を行ったため、大会禁止事項違反により失格処分となった。以下は、エブセンのコメントとなる。
「昨日の段階で下見をしていて、5.9km地点でアタックをしようと決めていた。序盤は高速で進み、決めていたポイントでアタック。一人が付いてきたけどすぐに千切れたので一人旅になった。霧で視界が取れない中独走を続け、残り2kmの段階で振り返っても誰も見えなかった。
勝ったと思ったけど、残り300mで7〜8人の集団に一気に追い抜かれた。確認できていなかったので何で彼らが追いついてきたのか全く理解できなかった。多分高速セクションだったので単独では分が悪かったんだろう。あまりにも寒くて下山を待っていられなかったことで失格になってしまったけれど、そもそもレース中に追い抜かれていたのでいずれにしても勝てていなかった」
text&photo:Naoki.Yasuoka
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1万人を越える参加者を数え、名実共に日本一のヒルクライムイベントとして定着したMt.富士ヒルクライム。8月に行われる乗鞍とならび、日本中のヒルクライマー達の目標となる大会だ。過去大会や他大会の実績を考慮して集められた主催者選抜クラスのトロフィーはヒルクライマー達の憧れだ。
16年目を迎えた今大会。受付を行う大会前日には恒例となったエキスポが行われ、多くの参加ブースが集まったほか、ショートタイムトライアルなども催され盛り上がったようだ。
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さて、大会当日は生憎の空模様。先月の陽差しと暑さが嘘のような肌寒さとなった。会場では、下山のための防寒グッズをしっかりと預けるようにアナウンスが流れていた。
田中裕士(グランペール)による大会記録が生み出された昨年も同様の天気だったが、今年は輪をかけて気温が低いようにも感じる。果たして、この天候が吉と出るのか凶と出るのか。
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今年の主催者選抜クラスは少し雰囲気が異なった。昨年の台湾の太魯閣KOMチャレンジにおいてローレンス・テンダムやヤン・バケランツらを破って優勝しているジョン・エブセン(デンマーク)がスタートラインについているのだ。主催者選抜にはKOMチャレンジを走った経験を持つ選手も多く、その強さを実感しているだけに、もっぱらの下馬評は「エブセンが持っていくだろう」というもの。
午前7時、黒船と共にスタートした主催者選抜クラス。計測開始地点を越え、スバルラインの料金所ゲートをくぐり抜けて、25kmの戦いのゴングを鳴らしたのは、大野拓也(OVERHEAT天照)。
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昨年も「どうせなら目立てれば!」と序盤から積極的に逃げ続けていた大野が今年もファーストアタックを成功させる。武田祥典(天童市役所)や嘉瀬峻介(LinkTouhoku)、そして森本誠(GOKISO)が牽引する集団が1合目を越えたあたりで吸収するも、大野はそのまましばらく先頭を牽き続ける余裕を見せた。
散発的なアタックはあるものの、大野や森本、嘉瀬、加藤大貴(COUGUMMA)らが先頭でペースを保ち、しばらく集団は一つのまま進んでいく。エブセンは前にこそ出ないものの、先頭から6番手以内のポジションをキープし睨みを効かせる構え。
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池田を吸収した集団から、入れ替わりに抜け出したのが本命のエブセン。「下見して、ここでアタックしようと決めていた」という残り6km地点でアタック。そこに大野が合流するもじりじりと離されてしまう。身体を大きく揺らしながら飛ぶように駆けるエブセンは、霧を味方につけそのまま山岳スプリット区間を単独先頭で通過し、平坦区間へ。
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このまま独走勝利を挙げるかと思われたが、平坦区間でローテーションを回してきた後続集団が残り300mでエブセンをキャッチ。そしてそのままの勢いで抜き去り、スプリントへと持ちこまれた。
深い霧の中からフィニッシュに現れたのは7名に絞られた先頭集団。最後のスプリントで加藤の番手から仕掛けた佐々木遼(Team GOCHI)が伸びた。何度も噛み締めるようなガッツポーズでフィニッシュした佐々木。悪天候の中であったが、57分43秒と昨年に迫るフィニッシュタイムで新王者となった。
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「大きなタイトルを獲れたのは初めてで、夢のよう。まさか勝てるとは思っていなかったので。いつも一緒に練習していて、いつも負かされている(笑)加藤さんをマークしていて、最後の局面でも食らいついていったら、勝っていた。正直、必死すぎてあまり展開も覚えてないくらい」と佐々木。
「ディフェンディングチャンピオンの田中さんが目標で、憧れだったのでこのタイトルは特別。このままの勢いで乗鞍も狙いたいし、来年の富士の2連覇も狙いたいですね。前人未踏の成績を残してみたい」と野望を口にした。
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注目されていたジョン・エブセンは、58分2秒でフィニッシュしたものの、下山誘導に従わず、先導車進入以前に単独での下山を行ったため、大会禁止事項違反により失格処分となった。以下は、エブセンのコメントとなる。
「昨日の段階で下見をしていて、5.9km地点でアタックをしようと決めていた。序盤は高速で進み、決めていたポイントでアタック。一人が付いてきたけどすぐに千切れたので一人旅になった。霧で視界が取れない中独走を続け、残り2kmの段階で振り返っても誰も見えなかった。
勝ったと思ったけど、残り300mで7〜8人の集団に一気に追い抜かれた。確認できていなかったので何で彼らが追いついてきたのか全く理解できなかった。多分高速セクションだったので単独では分が悪かったんだろう。あまりにも寒くて下山を待っていられなかったことで失格になってしまったけれど、そもそもレース中に追い抜かれていたのでいずれにしても勝てていなかった」
text&photo:Naoki.Yasuoka
Mt.富士ヒルクライム2019 主催者選抜クラス リザルト
1位 | 佐々木遼(Team GOCHI) | 0:57:43 | |
2位 | 濵野巧勝(BREZZA-KAMIHAGI) | 0:57:45 | +0:00:01 |
3位 | 西村育人(-) | 0:57:45 | +0:00:02 |
4位 | 加藤大貴(COWGUMMA) | 0:57:46 | +0:00:03 |
5位 | 大野拓也(OVERHEAT天照) | 0:57:46 | +0:00:03 |
6位 | 森本誠(GOKISO) | 0:57:46 | +0:00:03 |
7位 | 宿谷英男(BEARBELL) | 0:57:47 | +0:00:03 |
8位 | 大島浩明(グランペール) | 0:57:53 | +0:00:10 |
9位 | 布留川恒太朗(天照) | 0:57:55 | +0:00:12 |
10位 | 嘉瀬峻介(Link Touhoku) | 0:57:56 | +0:00:13 |
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