2018/09/27(木) - 12:01
ツアーオブジャパンのいなべステージの舞台となる三重県北部のいなべ市で、9月16日、サイクリングイベント「いなべヴェロフェスタ」が開かれた。3度の飯と自転車に乗ることが同じぐらい大好きな三重県出身のライター・浅野真則が“いなヴェロ”の魅力に迫るべく、実走レポートをお届けする。
“いなヴェロ”は酒池肉林状態&走行距離自由なサイクルイベント!?
「チェックポイントでいなべのグルメが振る舞われて、その種類もボリュームもすごいんです! グルメを満喫したら、消費カロリー<摂取カロリーになるかも!?」
いなべヴェロフェスタ、通称“いなヴェロ”に今回もゲストライダーとして参加したキナンサイクリングチームの中島康晴選手の言葉だ。しかも、特定のルートが定められているわけでなく、どのように走ってもよいし、必ずしもすべてのチェックポイントを回らなくても無事に帰ってくれば完走証がもらえるのだという。いわば「酒池肉林状態(もちろん酒はない)&走行距離自由」なユルめのサイクリングイベントなのだ。自転車に乗ることと同じぐらい三度の飯も好きな筆者は、取材という大義名分が立つとはいえ、イベントが楽しみで仕方なかった。
スタート地点はいなべ市梅林公園。ツアーオブジャパン(TOJ)いなべステージのフィニッシュ地点だ。午前8時のスタートに向けて、続々と参加者が集まってくる。前日までの雨もほぼ上がり、天気はくもり。スタート地点付近には30分ほど前には早くも自転車がたくさん並んでいたが、レースのようなピリピリした空気は一切ない。参加者の多くはロードバイクに乗っているが、ディスクブレーキロードもかなり多かったし、MTBやママチャリで走る人もいた。フラットペダル&スニーカーという出で立ちの人や、仮装を楽しむ人までいる。
午前8時に参加者が続々とスタート。筆者もスタートする皆さんを撮影してからゆるゆるとスタートした。
“イナベルグ”を越えたらさっそくチェックポイントでグルメ!
普段はロングライドとは無縁で、どちらかというとレース系のサイクリストを自負する筆者だから、今回の取材でもなるべく厳しいルートを走ろうと考えていた。まずスタート地点から向かったのは、いなべステージ屈指の難所とされる最大勾配17%の上り、通称“イナベルグ”だ。別にこのルートを通る必要はないし、実際にほとんどのサイクリストはここを避けていたように思う。
しかし、筆者に言わせれば、TOJのコースを走れるのもこのイベントの魅力のひとつ。ろくにウォームアップもせずにいきなりイナベルグに臨むのは少々無謀だったかもしれないが、楽しんだ者勝ちだからこれでいいのだ。
イナベルグからKOMに至る上りを肩で息をしながら上りきり、息を整えながら下っていると、わずか数kmで最初のエイドステーション兼チェックポイントが現れた。川原自治会だ。いなべ産のブランド豚・さくらポークのメンチカツやおにぎり、団子などが振る舞われていた。
「まだ数kmしか走ってないのに!」と驚く筆者をよそに、長蛇の列を作って多くの参加者が振る舞いを受け、さっそくいなべのグルメに舌鼓を打っていた。振る舞いをする地元の女性によると「さくらポークのメンチカツは市内でも販売されているが、ライドにやってきた人が揚げたてを食べられる機会はあまりない」のだそうだ。こんな話を聞くと食べたくなるが、撮影していたら予定より時間が押してしまい泣く泣く断念。チェックポイントを訪れた証となるリストバンドだけ巻いてもらい、後ろ髪を引かれる思いで出発した。
いなべステージのコースを途中までたどり、郊外の田園地帯を抜けて国道306号へ。このあたりは少し雨がぱらついたが、涼しかったので意外にアップダウンが多いコースも気持ちよく走れた。続くチェックポイントはマスの釣り堀・サンクチュアリだ。ここでは先着20人で自分で釣ったマスを塩焼きにして食べられるという催しが行われたが、筆者は間に合わなかった。そう、いなヴェロでは時間限定のグルメがさまざまなチェックポイントで用意されていて、1回参加しただけではすべてを楽しみ尽くすことはできないし、限定グルメを味わうには緻密な戦略を立てることも必要なのだ。
自転車をそのまま持ち込めるサイクルトレインでワープもできる!
他にもカレーなどが振る舞われてはいたが、お目当ての鮎の塩焼きは時間が合わずゲットできなかったので、またしてもリストバンドだけ巻いてもらって出発。とぼとぼと次のチェックポイント、三岐鉄道三岐線の終点・西藤原駅へ向かった。
同駅と近鉄富田駅(四日市市)を結ぶ同線では、自転車をそのまま列車内に持ち込めるサイクルパス(いわゆるサイクルトレイン)が毎日運行されていて、西藤原―三里間は混雑時以外はいつでも自転車を持ち込める(近鉄富田駅を除く三里―大矢知間は土日祝日の9時から16時までと春・夏・冬の長期休暇中のみ利用可能)。この日は駅で配られるリストバンドが乗車券の代わりになり、3駅先の伊勢治田駅までサイクルパスに乗車することができるという特別企画が実施されていた。筆者が到着したのは、まさに列車が西藤原駅に到着しようとしているところだった。
サイクリストには鉄道好きが多いというのが個人的な印象だが、やはり多くの方がサイクルパスに乗ろうと順番を待っていた。電車に乗れる人数は限られていたので、過去に個人的に利用したことのある筆者は今回は乗車しないことにし、列車に乗り込む様子や出発前の車内の様子だけ撮影させてもらった。
ここではリストバンドを受け取らなかったため、「すべてのチェックポイントのリストバンドを集める」という密かな目標はここでかなわなくなってしまった。それでも無事に帰着さえすれば完走扱いにはなる。このイベント独自のシステムに何だか救われた気がした。
電車が出発する少し前に西藤原駅から伊勢治田駅方面に南下。途中の西野尻駅の少し先までは緩やかに上り、その後は伊勢治田駅方面まで緩やかに下る。この区間は電車と併走して追いかけっこする形になったが、下り基調の道を走るのは爽快なので、これはこれでよかった。サイクルパスに乗るなら、個人的には伊勢治田駅から西藤原駅方面の列車を利用するのがおすすめだ。
続いて向かったのは、青川峡キャンピングパーク。員弁川の支流・青川沿いの道を上流に向けて走るが、この道が緩やかな上り。朝のうちは時折雨がぱらつく天気で涼しいぐらいだったのに、11時近くになると晴れて体感温度も上がってきた。ボトルの水もグングン減っていく。
キャンピングパークに着いたら、リストバンドを巻いてもらってまず水を補給。レモン果汁が入っているようで、さわやかな酸味が気分をリフレッシュしてくれた。このエイドでは地元の菓子店のマドレーヌと酒まんが200個ずつ用意されていたが、どちらもまだ残っていて、並ばなくてもゲットできた。マドレーヌを選んで一口ほおばると、優しい甘さが体に染み渡って行くのを感じる。ぺろりと平らげて人心地着いたら元気がみなぎってきた。腹が減っては走れないのだ。
茶どころ・三重らしいチェックポイントにインスタ映えするカフェも
今度は今まで上ってきた道を下っていく。見通しもよく実に爽快だ。あまりの気持ちよさにうっかりミスコースしそうになってしまった。今回はガーミンのEDGE500シリーズにルートを入れて簡易ナビを利用していたが、こういうときはやっぱりモノクロでもいいので地図が表示されるモデルがほしいと思う。
さらに国道306号に出ると、見通しのよい直線の下りが現れた! ブラケット先端を上から握って深い前傾姿勢をとる「スフィンクススタイル」でバビューンと下る。この下りが延々と続いたらいいのに、という思いは叶わず、あっという間に国道421号との交差点へ。ここから石榑峠方面に進路をとり、緩やかな上りを1kmほど進むと、次のチェックポイント、マル信緑香園が現れた。
この店は地元のお茶屋さんなのだが、大会の関係者にうかがったところおすすめのチェックポイントのひとつだという。というのも、地元産のかぶせ茶・石榑茶を使ったお茶はもちろん、石榑茶を贅沢に使ったかき氷、石榑茶を使ったバームクーヘンやキャンディーなどが振る舞われるのだ。しかも、かき氷は大・中・小とボリュームも選べるという。かき氷は長蛇の列だったので、お茶とバームクーヘンとキャンディーだけいただくことに。冷たいお茶がおいしくて体にしみた。
ちなみに全国茶生産団体連合会の調査によると、三重県はお茶の生産量が全国3位の茶どころで、茶摘みの1週間ほど前から茶の木を遮光幕で覆ってうまみを増すかぶせ茶の生産では日本一なのだ。その中でも、この緑香園は140年続く老舗。過去には天皇陛下に煎茶を献上したこともあるそう。もし次回以降いなヴェロに参加される方がいたら、このチェックポイントには何が何でも立ち寄っていただきたいと個人的には思う。
マル信緑香園をあとにし、国道421号を東へ。このイベント一番のインスタ映えスポットと事前に聞いていたエイドステーション兼チェックポイントのパティスリーカフェ・こんま亭が右手に現れた。お店の駐車場から自転車と人があふれんばかりの大盛況だ。なぜインスタ映えスポットかというと、イナヴェロ随一の様々なスイーツや超巨大なシュークリーム・いなべのキャベツがあるからだ。
しかしここでも時間が合わず、お目当てのいなべのキャベツにはお目にかかれないという大失態を演じてしまった。次回こそはいなべのキャベツを堪能できるように、時間を調整したいものだ。
それでもミートパイやほろほろ食感の焼き菓子、ゼリーなど次々といろいろなお菓子が登場してきたので、ここぞとばかりにいろいろなお菓子をおいしくいただいた。いや、正直に言うと調子に乗って食べ過ぎてしまった。
「この調子で食べ続けると、明らかに摂取カロリーオーバーになるな……」
ライド前に中島選手に聞いていた話は本当だったのだ。
いなべそばと限定の地元産果物や野菜入りジェラートに舌鼓!
こんま亭のスイーツを堪能していたら、予定より大幅に長居してしまった。まだ撮影が残っているというのにまずい。若干焦るが、次は三重県の特産品が味わえるスペシャルポイント・デンソー大安製作所なので立ち寄らないわけにはいかない。
スペシャルポイントは同工場の敷地内の広場にある。この日は特別に工場内を自転車で走ることができるのだ。広場に着くと、同日開催の「美し国みえグルメフェア(三重のグルメ&物産展)」と小学生向け自転車イベント「キッズヴェロフェスタ」が開かれていて、家族連れで賑わっている。
スペシャルポイントでリストバンドとグルメの引換券を受け取り、グルメフェスタの会場を一通り見て回る。グルメは四日市とんてきや亀山みそ焼きうどん、名張牛汁、松阪鶏焼肉などから選べるようになっていた。いろいろと迷った結果、四日市とんてきをいただくことに。ここまでスイーツを沢山食べていたので、豚肉とニンニクをウスターソースベースのたれに絡めてソテーしたガッツリ系肉料理が染み渡るほどおいしい!
さて、帰ろうかと思ったら、いなべそばの屋台の前で男性に「そばもぜひ食べていってください!」と声をかけられた。なんといなべ市の副市長・吉田桂治さんだった。そこで冷たいそばもいただくことに。いなべ市では米の減反政策でそばに転作する農家が増えたそうで、そういえばここに来る途中にもそば畑が広がっていた。ここで振る舞われているいなべそばは、地元の有志が地元のそば粉を使って手打ちしたものだそうで、そばの香りものどごしの良さも見事だった。あまりのおいしさにぺろっと平らげてしまった。1杯300円で販売されていたが、都会で食べたら1000円はくだらないのではないか。
満腹になったところで、腹ごなしがてら次のチェックポイント・ふれあいの駅うりぼうを目指す。三岐鉄道北勢線の大泉駅に併設されている地元の野菜や特産品を販売する施設で、水とリストバンドをゲットして早々に出発しようと思ったら、「もうすぐ時間限定のジェラートが出てきますよ」と係の方が教えてくださった。そういえば今日はことごとく時間限定グルメは空振りに終わっているので、ここは味わうしかない! 時間? なんとかなるさ!
5分ほどでお待ちかねのジェラートが出てきた。味は焼き芋、梨、トマト、麦茶、とうもろこしなど5種類以上あり、いずれも地元で取れた作物を使っているそうだ。筆者は梨をゲット。たまたまこのエイドで出会ったキナンサイクリングチームの中島選手が焼き芋を食べていたので、一口ずつ分けあいっこして食べた。梨はさっぱりとした甘さでおいしかったが、焼き芋も芋の風味が濃厚で美味だった。また違う味にもチャレンジしたいなぁ、と思いつつ、また時間が押してしまったので先を急ぐことに。
最後に待っていた険しい上りと普段は走れないダム沿いの道
かなり時間が押してしまったので、残りのチェックポイントは写真映えのする中里ダムに立ち寄ることをマストにして、それ以外は基本的にスルーする方針にしてペースアップ。しかし、ガーミンに事前に入れていたコースは思いのほか上りが多くて、ペースが上がらず、しかも道に迷ってしまって気持ちばかり焦る。山の中にあったカエル様のチェックポイントで思いがけず知り合いに会ったのだが、ゆっくりお話しする時間も取れずに出発。アップダウンを繰り返す道を快調に飛ばしていると、山の神・森本誠さんとすれ違った。確かこのあたりで練習することもあると言っていたはずだ。
三岐鉄道北勢線の阿下喜駅前にある阿下喜温泉のチェックポイントを経て、国道306号に出た。ここから中里ダム入り口まではずっと道沿いに行けばいい道は上り基調だが、もうミスルートすることはないので気が楽だ。しかし、行く手を阻むように向かい風が吹いていた。上り坂に向かい風……最後まで自転車の神様は試練を与えたまうのか。こうなったら維持できる限界ギリギリのペースで走るのみ。何だかトレーニングみたいになってきた。
中里ダムのチェックポイントに着いたのは午後3時前。リストバンドとダムカードをゲットし、ダム沿いの写真映えする一直線の管理用道路でカメラを構え、通過していく参加者を撮影。これで写真も何とか撮れ、少し肩の荷が下りた。
梅林公園に着いたときには午後3時を少し回っていたけれど、何とか完走できた。写真撮影のために行ったり来たりしたうえ、道に迷ったりしたため、最短距離で回れば75kmほどで走れるところを115kmも走っていた。ちなみにチェックポイントは14カ所中11カ所回ることができた。
“いなヴェロ”は今回700人の定員がわずか3日で埋まり、参加者の多くがリピーターだったというが、走り終えてみてその理由がよく分かる。いなヴェロやその舞台であるいなべ市の魅力は、1回走ったぐらいではとうてい味わい尽くせないからだ。ルートが自由だからこそ、今回のルートを仮に逆に回ったらまた違うグルメが味わえるはずなのだ。
次回はもっと綿密にルートとチェックポイントに立ち寄る順番も練って、時間限定のグルメも味わいたいな――。帰ってきたばかりだが、すでに気持ちは次回の“いなヴェロ”に出る気満々になっている。
text&photo:Masanori.Asano
“いなヴェロ”は酒池肉林状態&走行距離自由なサイクルイベント!?
「チェックポイントでいなべのグルメが振る舞われて、その種類もボリュームもすごいんです! グルメを満喫したら、消費カロリー<摂取カロリーになるかも!?」
いなべヴェロフェスタ、通称“いなヴェロ”に今回もゲストライダーとして参加したキナンサイクリングチームの中島康晴選手の言葉だ。しかも、特定のルートが定められているわけでなく、どのように走ってもよいし、必ずしもすべてのチェックポイントを回らなくても無事に帰ってくれば完走証がもらえるのだという。いわば「酒池肉林状態(もちろん酒はない)&走行距離自由」なユルめのサイクリングイベントなのだ。自転車に乗ることと同じぐらい三度の飯も好きな筆者は、取材という大義名分が立つとはいえ、イベントが楽しみで仕方なかった。
スタート地点はいなべ市梅林公園。ツアーオブジャパン(TOJ)いなべステージのフィニッシュ地点だ。午前8時のスタートに向けて、続々と参加者が集まってくる。前日までの雨もほぼ上がり、天気はくもり。スタート地点付近には30分ほど前には早くも自転車がたくさん並んでいたが、レースのようなピリピリした空気は一切ない。参加者の多くはロードバイクに乗っているが、ディスクブレーキロードもかなり多かったし、MTBやママチャリで走る人もいた。フラットペダル&スニーカーという出で立ちの人や、仮装を楽しむ人までいる。
午前8時に参加者が続々とスタート。筆者もスタートする皆さんを撮影してからゆるゆるとスタートした。
“イナベルグ”を越えたらさっそくチェックポイントでグルメ!
普段はロングライドとは無縁で、どちらかというとレース系のサイクリストを自負する筆者だから、今回の取材でもなるべく厳しいルートを走ろうと考えていた。まずスタート地点から向かったのは、いなべステージ屈指の難所とされる最大勾配17%の上り、通称“イナベルグ”だ。別にこのルートを通る必要はないし、実際にほとんどのサイクリストはここを避けていたように思う。
しかし、筆者に言わせれば、TOJのコースを走れるのもこのイベントの魅力のひとつ。ろくにウォームアップもせずにいきなりイナベルグに臨むのは少々無謀だったかもしれないが、楽しんだ者勝ちだからこれでいいのだ。
イナベルグからKOMに至る上りを肩で息をしながら上りきり、息を整えながら下っていると、わずか数kmで最初のエイドステーション兼チェックポイントが現れた。川原自治会だ。いなべ産のブランド豚・さくらポークのメンチカツやおにぎり、団子などが振る舞われていた。
「まだ数kmしか走ってないのに!」と驚く筆者をよそに、長蛇の列を作って多くの参加者が振る舞いを受け、さっそくいなべのグルメに舌鼓を打っていた。振る舞いをする地元の女性によると「さくらポークのメンチカツは市内でも販売されているが、ライドにやってきた人が揚げたてを食べられる機会はあまりない」のだそうだ。こんな話を聞くと食べたくなるが、撮影していたら予定より時間が押してしまい泣く泣く断念。チェックポイントを訪れた証となるリストバンドだけ巻いてもらい、後ろ髪を引かれる思いで出発した。
いなべステージのコースを途中までたどり、郊外の田園地帯を抜けて国道306号へ。このあたりは少し雨がぱらついたが、涼しかったので意外にアップダウンが多いコースも気持ちよく走れた。続くチェックポイントはマスの釣り堀・サンクチュアリだ。ここでは先着20人で自分で釣ったマスを塩焼きにして食べられるという催しが行われたが、筆者は間に合わなかった。そう、いなヴェロでは時間限定のグルメがさまざまなチェックポイントで用意されていて、1回参加しただけではすべてを楽しみ尽くすことはできないし、限定グルメを味わうには緻密な戦略を立てることも必要なのだ。
自転車をそのまま持ち込めるサイクルトレインでワープもできる!
他にもカレーなどが振る舞われてはいたが、お目当ての鮎の塩焼きは時間が合わずゲットできなかったので、またしてもリストバンドだけ巻いてもらって出発。とぼとぼと次のチェックポイント、三岐鉄道三岐線の終点・西藤原駅へ向かった。
同駅と近鉄富田駅(四日市市)を結ぶ同線では、自転車をそのまま列車内に持ち込めるサイクルパス(いわゆるサイクルトレイン)が毎日運行されていて、西藤原―三里間は混雑時以外はいつでも自転車を持ち込める(近鉄富田駅を除く三里―大矢知間は土日祝日の9時から16時までと春・夏・冬の長期休暇中のみ利用可能)。この日は駅で配られるリストバンドが乗車券の代わりになり、3駅先の伊勢治田駅までサイクルパスに乗車することができるという特別企画が実施されていた。筆者が到着したのは、まさに列車が西藤原駅に到着しようとしているところだった。
サイクリストには鉄道好きが多いというのが個人的な印象だが、やはり多くの方がサイクルパスに乗ろうと順番を待っていた。電車に乗れる人数は限られていたので、過去に個人的に利用したことのある筆者は今回は乗車しないことにし、列車に乗り込む様子や出発前の車内の様子だけ撮影させてもらった。
ここではリストバンドを受け取らなかったため、「すべてのチェックポイントのリストバンドを集める」という密かな目標はここでかなわなくなってしまった。それでも無事に帰着さえすれば完走扱いにはなる。このイベント独自のシステムに何だか救われた気がした。
電車が出発する少し前に西藤原駅から伊勢治田駅方面に南下。途中の西野尻駅の少し先までは緩やかに上り、その後は伊勢治田駅方面まで緩やかに下る。この区間は電車と併走して追いかけっこする形になったが、下り基調の道を走るのは爽快なので、これはこれでよかった。サイクルパスに乗るなら、個人的には伊勢治田駅から西藤原駅方面の列車を利用するのがおすすめだ。
続いて向かったのは、青川峡キャンピングパーク。員弁川の支流・青川沿いの道を上流に向けて走るが、この道が緩やかな上り。朝のうちは時折雨がぱらつく天気で涼しいぐらいだったのに、11時近くになると晴れて体感温度も上がってきた。ボトルの水もグングン減っていく。
キャンピングパークに着いたら、リストバンドを巻いてもらってまず水を補給。レモン果汁が入っているようで、さわやかな酸味が気分をリフレッシュしてくれた。このエイドでは地元の菓子店のマドレーヌと酒まんが200個ずつ用意されていたが、どちらもまだ残っていて、並ばなくてもゲットできた。マドレーヌを選んで一口ほおばると、優しい甘さが体に染み渡って行くのを感じる。ぺろりと平らげて人心地着いたら元気がみなぎってきた。腹が減っては走れないのだ。
茶どころ・三重らしいチェックポイントにインスタ映えするカフェも
今度は今まで上ってきた道を下っていく。見通しもよく実に爽快だ。あまりの気持ちよさにうっかりミスコースしそうになってしまった。今回はガーミンのEDGE500シリーズにルートを入れて簡易ナビを利用していたが、こういうときはやっぱりモノクロでもいいので地図が表示されるモデルがほしいと思う。
さらに国道306号に出ると、見通しのよい直線の下りが現れた! ブラケット先端を上から握って深い前傾姿勢をとる「スフィンクススタイル」でバビューンと下る。この下りが延々と続いたらいいのに、という思いは叶わず、あっという間に国道421号との交差点へ。ここから石榑峠方面に進路をとり、緩やかな上りを1kmほど進むと、次のチェックポイント、マル信緑香園が現れた。
この店は地元のお茶屋さんなのだが、大会の関係者にうかがったところおすすめのチェックポイントのひとつだという。というのも、地元産のかぶせ茶・石榑茶を使ったお茶はもちろん、石榑茶を贅沢に使ったかき氷、石榑茶を使ったバームクーヘンやキャンディーなどが振る舞われるのだ。しかも、かき氷は大・中・小とボリュームも選べるという。かき氷は長蛇の列だったので、お茶とバームクーヘンとキャンディーだけいただくことに。冷たいお茶がおいしくて体にしみた。
ちなみに全国茶生産団体連合会の調査によると、三重県はお茶の生産量が全国3位の茶どころで、茶摘みの1週間ほど前から茶の木を遮光幕で覆ってうまみを増すかぶせ茶の生産では日本一なのだ。その中でも、この緑香園は140年続く老舗。過去には天皇陛下に煎茶を献上したこともあるそう。もし次回以降いなヴェロに参加される方がいたら、このチェックポイントには何が何でも立ち寄っていただきたいと個人的には思う。
マル信緑香園をあとにし、国道421号を東へ。このイベント一番のインスタ映えスポットと事前に聞いていたエイドステーション兼チェックポイントのパティスリーカフェ・こんま亭が右手に現れた。お店の駐車場から自転車と人があふれんばかりの大盛況だ。なぜインスタ映えスポットかというと、イナヴェロ随一の様々なスイーツや超巨大なシュークリーム・いなべのキャベツがあるからだ。
しかしここでも時間が合わず、お目当てのいなべのキャベツにはお目にかかれないという大失態を演じてしまった。次回こそはいなべのキャベツを堪能できるように、時間を調整したいものだ。
それでもミートパイやほろほろ食感の焼き菓子、ゼリーなど次々といろいろなお菓子が登場してきたので、ここぞとばかりにいろいろなお菓子をおいしくいただいた。いや、正直に言うと調子に乗って食べ過ぎてしまった。
「この調子で食べ続けると、明らかに摂取カロリーオーバーになるな……」
ライド前に中島選手に聞いていた話は本当だったのだ。
いなべそばと限定の地元産果物や野菜入りジェラートに舌鼓!
こんま亭のスイーツを堪能していたら、予定より大幅に長居してしまった。まだ撮影が残っているというのにまずい。若干焦るが、次は三重県の特産品が味わえるスペシャルポイント・デンソー大安製作所なので立ち寄らないわけにはいかない。
スペシャルポイントは同工場の敷地内の広場にある。この日は特別に工場内を自転車で走ることができるのだ。広場に着くと、同日開催の「美し国みえグルメフェア(三重のグルメ&物産展)」と小学生向け自転車イベント「キッズヴェロフェスタ」が開かれていて、家族連れで賑わっている。
スペシャルポイントでリストバンドとグルメの引換券を受け取り、グルメフェスタの会場を一通り見て回る。グルメは四日市とんてきや亀山みそ焼きうどん、名張牛汁、松阪鶏焼肉などから選べるようになっていた。いろいろと迷った結果、四日市とんてきをいただくことに。ここまでスイーツを沢山食べていたので、豚肉とニンニクをウスターソースベースのたれに絡めてソテーしたガッツリ系肉料理が染み渡るほどおいしい!
さて、帰ろうかと思ったら、いなべそばの屋台の前で男性に「そばもぜひ食べていってください!」と声をかけられた。なんといなべ市の副市長・吉田桂治さんだった。そこで冷たいそばもいただくことに。いなべ市では米の減反政策でそばに転作する農家が増えたそうで、そういえばここに来る途中にもそば畑が広がっていた。ここで振る舞われているいなべそばは、地元の有志が地元のそば粉を使って手打ちしたものだそうで、そばの香りものどごしの良さも見事だった。あまりのおいしさにぺろっと平らげてしまった。1杯300円で販売されていたが、都会で食べたら1000円はくだらないのではないか。
満腹になったところで、腹ごなしがてら次のチェックポイント・ふれあいの駅うりぼうを目指す。三岐鉄道北勢線の大泉駅に併設されている地元の野菜や特産品を販売する施設で、水とリストバンドをゲットして早々に出発しようと思ったら、「もうすぐ時間限定のジェラートが出てきますよ」と係の方が教えてくださった。そういえば今日はことごとく時間限定グルメは空振りに終わっているので、ここは味わうしかない! 時間? なんとかなるさ!
5分ほどでお待ちかねのジェラートが出てきた。味は焼き芋、梨、トマト、麦茶、とうもろこしなど5種類以上あり、いずれも地元で取れた作物を使っているそうだ。筆者は梨をゲット。たまたまこのエイドで出会ったキナンサイクリングチームの中島選手が焼き芋を食べていたので、一口ずつ分けあいっこして食べた。梨はさっぱりとした甘さでおいしかったが、焼き芋も芋の風味が濃厚で美味だった。また違う味にもチャレンジしたいなぁ、と思いつつ、また時間が押してしまったので先を急ぐことに。
最後に待っていた険しい上りと普段は走れないダム沿いの道
かなり時間が押してしまったので、残りのチェックポイントは写真映えのする中里ダムに立ち寄ることをマストにして、それ以外は基本的にスルーする方針にしてペースアップ。しかし、ガーミンに事前に入れていたコースは思いのほか上りが多くて、ペースが上がらず、しかも道に迷ってしまって気持ちばかり焦る。山の中にあったカエル様のチェックポイントで思いがけず知り合いに会ったのだが、ゆっくりお話しする時間も取れずに出発。アップダウンを繰り返す道を快調に飛ばしていると、山の神・森本誠さんとすれ違った。確かこのあたりで練習することもあると言っていたはずだ。
三岐鉄道北勢線の阿下喜駅前にある阿下喜温泉のチェックポイントを経て、国道306号に出た。ここから中里ダム入り口まではずっと道沿いに行けばいい道は上り基調だが、もうミスルートすることはないので気が楽だ。しかし、行く手を阻むように向かい風が吹いていた。上り坂に向かい風……最後まで自転車の神様は試練を与えたまうのか。こうなったら維持できる限界ギリギリのペースで走るのみ。何だかトレーニングみたいになってきた。
中里ダムのチェックポイントに着いたのは午後3時前。リストバンドとダムカードをゲットし、ダム沿いの写真映えする一直線の管理用道路でカメラを構え、通過していく参加者を撮影。これで写真も何とか撮れ、少し肩の荷が下りた。
梅林公園に着いたときには午後3時を少し回っていたけれど、何とか完走できた。写真撮影のために行ったり来たりしたうえ、道に迷ったりしたため、最短距離で回れば75kmほどで走れるところを115kmも走っていた。ちなみにチェックポイントは14カ所中11カ所回ることができた。
“いなヴェロ”は今回700人の定員がわずか3日で埋まり、参加者の多くがリピーターだったというが、走り終えてみてその理由がよく分かる。いなヴェロやその舞台であるいなべ市の魅力は、1回走ったぐらいではとうてい味わい尽くせないからだ。ルートが自由だからこそ、今回のルートを仮に逆に回ったらまた違うグルメが味わえるはずなのだ。
次回はもっと綿密にルートとチェックポイントに立ち寄る順番も練って、時間限定のグルメも味わいたいな――。帰ってきたばかりだが、すでに気持ちは次回の“いなヴェロ”に出る気満々になっている。
text&photo:Masanori.Asano
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