2017/10/28(土) - 09:01
ヨーロッパでのサイクリングツアーなどを開催しているフェローサイクルのブエルタ・ア・エスパーニャ観戦ツアーにCW編集部員のカマタが帯同。遂に最終日となるマドリードでの第21ステージの模様をお伝えしよう。vol.5はこちら
アングリル峠でコンタドールの歴史的とも言えるステージ優勝を見届けた翌日となる旅の7日目。ここまで見守ってきたブエルタ・ア・エスパーニャも残すところマドリードの最終ステージを残すのみとなった。今日は午前中マドリードを観光し、午後にレース観戦&表彰式を見る予定だ。
ということでホテルが変わったので、朝食を紹介しよう。といってもあまり代わり映えしないのだが、一応首都たるマドリードだからか、サラダやパンの種類などは少し豊富になった印象。それにしてもこのスペインスタンダードの朝食がここに来て慣れてきた感がある。この食事も今日で終わりかと思うとちょっと寂しいところ。甘いパンとしょっぱいパンチェッタ(生ハム)を交互に食べるのがちょっと好きになってきていた。
食事を摂ったら街に繰り出す。今回はとある事情で地下鉄に乗り移動。ということでスペインの地下鉄事情も少しレポートしよう。切符は当たり前だが券売機で購入。クレジットカードも対応しているため便利だ。画面には日本語は無いものの、英語は選択出来るため、スペイン語が全く無理でも私のように中学高校で英語をサボっていなければどうにかなるだろう。
改札は日本のオフィスとかにあるような透明なポリカーボネートが横に開くゲート。そこから階段かエスカレーターで下に降りればホームだ。電光掲示板には残り何分で電車が来るのかが表示されるため分かりやすい。ただ、時刻表通りには電車が来ない事も多いため時間には余裕を持って行動しなければいけないので注意が必要だ。
いよいよ電車が来るぞとトンネルの方を見ていると、やたら遅い電車が現れる。それこそ人の歩く速さほどのスピードで入線してくるのだ。日本の鉄道に慣れているため軽くカルチャーショックを受けてしまった。のっそりと止まり扉が開く。車内に入ると外人と日本人の身長差から来る設計の違いなのか結構広く感じる。モノレールのように連結部分も広く取られているため尚更そう感じるのだろう。吊革が無く、真ん中にパイプがあるのスタイルもいかにも海外の地下鉄といった様相で面白い。因みにスピードは入線時だけ遅いようだ。しばらくして目的地であるスペイン銀行駅に着いた。
地下から地上に上がると既に道路にはバリケードが設置されており、交通規制が始まっている模様。ここからマドリード観光をしたいところだが、今日は皆自由に行動しているため、私は石川さん伊藤さんのマドリード観光に同行させて頂くことにした。どこか目的地があるというわけではないとのことでふらふら街を歩くことに。
まず最初に出会したのが鍋をドラムに見立ててストリートパフォーマンスをするおじさん。「そんなの東京にもいるじゃないか」と皆さん思うかもしれないが、非常に演奏レベルが高いのだ。リズムも正確だしシンバルの足使いも見たこと無いテクニックで圧巻の一言。シンバル収集家の伊藤さんと食い入るように見てしまった。
それと、このマドリードでやっと撮影することが出来たのがコース脇に設置されるバナーのための穴あけ作業。実はテレビでよく見るバナーはドリルで直接、道路に穴を開けて固定しているのだ。ここまで毎日この作業自体は見ていたものの、ドリルで穴あけをするシーンを写真で撮れたのはこれが初めてのこととなった。
ここでお土産屋さんに入る。スペインの首都であるマドリードではそこら中にお土産屋さんがあるのが特徴で、観光都市として成り立っている事がわかる。置いてあるのはマドリードグッズとこの地を本拠地にする世界的なサッカーチーム”レアルマドリード”のグッズだ。途中、コフィディスの建物も発見。自転車チームやレースにスポンサードすることで知られるコフィディスだが、業務内容はいわゆる消費者金融というやつだ。何とも言えない自転車業界の闇の1つである。
それにしても街全体が非常にお洒落である。今回のブエルタツアーではサンタンデールとヒホンというどちらもその地方を代表する街を歩いたが、やはりマドリードが1番華やかだろう。もちろん人が多いのもあるだろうが、建物の美しさ、ちょっとした路地のお洒落具合は他の街よりも断然レベルが高い。そんなことを考えながら歩いているとマヨール広場という四方を建物に囲まれた場所にたどり着いた。
ここマヨール広場は15世紀から続くマドリードの広場で、主に商業の中心地として市場が開かれていた場所。それ以外には闘牛やサッカーの試合、公開処刑や異端審問など様々な用途に使われたそうだ。周りは3階建ての建物に囲まれており、9箇所あるアーチを通って中に入る事が出来るいかにもヨーロッパらしいタイプの広場だ。現在は観光地としてバルやレストラン、お土産屋さんが立ち並ぶ定番スポットとなっている。
ここで小腹が空いたということでバルにて暫し休憩。サンタンデールの2日目に食べたタコが忘れられないということでタコとポテトの料理を注文。燦々と日差しが降り注ぐ陽気の中、ビールと共に頂く。タコ料理はスペインでの定番らしく、ここのお店も美味しい。柔らかく程よい塩気でビールによく合う味わいだ。因みにタコはスペイン語でプルポ(pulpo)というらしい。ちょっと可愛い。
ここで今回の感想をお二人に聞いた。現地での海外レース観戦は3回目という石川さんは2回ツールを見に行き、ブエルタは今回が初という。「ブエルタはツールと比べると選手も近いし見るポイントもたくさんある。観戦者向けのレース。それにこの値段で連日VIPゾーンにも走れるなんてツールでは考えられない。もうブエルタに病みつきですね。それにスペインはご飯が美味しいのも良い。これは他の人には教えたくないです!」と語ってくれた。
対して伊藤さんは自転車歴こそ20年と長いものの、海外レース観戦はこれが初めて。「初めての海外レース観戦でしたが、VIP観戦やコンタドールのサインなどこんなに美味しい思いをさせてもらった。友人に背中を押してもらいやって来たスペインで、最初はこの金額も高いと思っていたけど、今はそんなこと全然思わないです。昨日のアングリル峠は臨場感も凄かったですし、皆で盛り上がって、日本ではあんな体験はできないですね。」と楽しめたようだ。
色々お話を聞けたところで、マドリードに来たら抑えておかなければならないだろうスポットであるマドリード王宮までとことこ歩く。徒歩10分もしない道だが、道中には日本にはない面白いお店がいっぱいなので、何か購入しなくても立ち止まってしまう。しばらくすれば王宮へ到着。今は王族が住んでいる訳ではないとのことだが、いまだ国の行事に使用される由緒正しい場所だ。サンタンデールの街で見たお城とは比べ物にならない大きさであった。
それにしてもマドリードは日本人が多い。今まで日本人どころかスペイン人以外が全然いない街ばっかりだったため、少し嬉しい。一通り観光も済んだところで王宮からレースの行われる中心地へ戻ると中村夫妻と小林夫妻に遭遇。昨日にアングリル峠を制したコンタドールが1面を飾っている新聞をゲットしたとのことで見せてくれた。ここで皆さんにも感想を聞いてみた。
グランツールはフジテレビの深夜放送の時代から見ているという小林夫妻はこれが4度目の海外レース観戦「やっぱり昨日のアングリル峠とか雨風吹く環境の辛さ、勾配を身体で感じる事が出来るのが現地観戦の醍醐味ですね。実際に感じるのと画面で見るのは全然違います。車があるのは本当に助かりました。個人だとこんなに色んな所でレースを見ることは出来ないです。
ブエルタは色々緩いって言われるけど、そんなことはなくて、選手の安全を警察の人が常に守っている感じがあります。それでいて、旗を出していても怒られないなど、緩めるところは緩めて、締めるところは締める運営がなされているのが好感持てますね。ブエルタを見に行くと皆、ブエルタを好きになると言うけど、その意味がわかります」と語ってくれた。
2008年のブエルタ第13ステージのアングリル峠で勝利するコンタドールを見て自転車レースに夢中になったという中村夫妻は「今回5回目の海外レース観戦ですが、昨日のアングリル峠は最高でした。私達が自転車レースを本格的に見始めるきっかけとなったアングリル峠をその時に勝利したコンタドールが再び勝利するという、こんなにドラマチックなことはないです。もしも今回フェローサイクルのツアーが無く、車もなかったら麓から歩いて来るつもりだったので、車があるのは心強いですね。
現地でこうやって偉大な選手の引退レースを見に来ると、スペインの人だけじゃなくて世界中の色んな国の人が来るじゃないですか。そういった人たちと一緒にコンタドールが走る姿を見れるということに、世界との一体感を感じられますね。それにスペインは他の国の選手にもブーイングとかしないですし、意地悪じゃないのも良いですね」と中村さんにとって忘れられない体験となったようだ。
そしてコースでは女子のレースが開催中。女子選手と言えどもトップクラスの選手達によるレースであるため、かなりのスピードでコースを駆けていく。最終ステージとなる今日のレースは昼過ぎにスタートし夕方にゴールするスケジュール。プロトンが来るまで観戦し易い場所を探しながらコースの周りを散策。今回は市街地ということで場所取りが重要だ。
いよいよプロトンが周回コースに入ると先頭で入ってきたのはアルベルト・コンタドール。これが最後のUCIレースとなるスペインの偉大な自転車選手をファンの皆は大きな歓声と拍手で迎えた。沿道の大歓声を一身に受けたコンタドールがフィニッシュラインを通過すれば本格的なレースがスタート。やはり周回コースだと何回も選手を見ることができ、観戦がし易い。集団をコントロールするクイックステップフロアーズのトレインが格好良かったのも印象的。ワールドツアーチームのスピード感は申し訳ないが日本では味わえないだろう。
残念ながらゴールシーンが見られる場所ではなかったが、それでもレースの雰囲気が沢山感じ取れた。これでブエルタも終わりだと思うと少し寂しくなってしまう。そのあと交通規制が解除されて、表彰式が始まる。これも表彰式は裏から見るのみとなってしまったが、途中コンタドールが壇上に上がるとアルベルト大合唱が始まったりと皆で盛り上がって楽しい。
レースが終わればスペイン最後となる食事の時間。皆でホテルの前に集合しレストランに向かう。ビールで乾杯し、このブエルタツアーの思い出を皆で話す。早くも皆”ブエルタロス”に陥っているようだ。そんなところに運ばれてきたメニューはアンチョビのマリネ、イカのフリッター、そしてメインは豚の丸焼き肉。これまた量は多いが皮もパリパリで美味しく頂けた。
私にとっても初めてのグランツール観戦となった今回のフェローサイクル ブエルタツアー。正直、現地で見てもテレビの前で見てもそこまで変わらないだろう、変わったとしても50万弱のお金を出す価値まではないだろうと思っていた。だがこのブエルタツアーに帯同させてもらうことで、その考えは180度変わったと言える。現地の臨場感、迫力、観衆との一体感は言葉では言い表せない体験であった。皆さんも自転車を趣味として続けていくのであれば、是非一度は本場に見に行ってみてはいかかだろうか。
text&photo:Kosuke.Kamata
アングリル峠でコンタドールの歴史的とも言えるステージ優勝を見届けた翌日となる旅の7日目。ここまで見守ってきたブエルタ・ア・エスパーニャも残すところマドリードの最終ステージを残すのみとなった。今日は午前中マドリードを観光し、午後にレース観戦&表彰式を見る予定だ。
ということでホテルが変わったので、朝食を紹介しよう。といってもあまり代わり映えしないのだが、一応首都たるマドリードだからか、サラダやパンの種類などは少し豊富になった印象。それにしてもこのスペインスタンダードの朝食がここに来て慣れてきた感がある。この食事も今日で終わりかと思うとちょっと寂しいところ。甘いパンとしょっぱいパンチェッタ(生ハム)を交互に食べるのがちょっと好きになってきていた。
食事を摂ったら街に繰り出す。今回はとある事情で地下鉄に乗り移動。ということでスペインの地下鉄事情も少しレポートしよう。切符は当たり前だが券売機で購入。クレジットカードも対応しているため便利だ。画面には日本語は無いものの、英語は選択出来るため、スペイン語が全く無理でも私のように中学高校で英語をサボっていなければどうにかなるだろう。
改札は日本のオフィスとかにあるような透明なポリカーボネートが横に開くゲート。そこから階段かエスカレーターで下に降りればホームだ。電光掲示板には残り何分で電車が来るのかが表示されるため分かりやすい。ただ、時刻表通りには電車が来ない事も多いため時間には余裕を持って行動しなければいけないので注意が必要だ。
いよいよ電車が来るぞとトンネルの方を見ていると、やたら遅い電車が現れる。それこそ人の歩く速さほどのスピードで入線してくるのだ。日本の鉄道に慣れているため軽くカルチャーショックを受けてしまった。のっそりと止まり扉が開く。車内に入ると外人と日本人の身長差から来る設計の違いなのか結構広く感じる。モノレールのように連結部分も広く取られているため尚更そう感じるのだろう。吊革が無く、真ん中にパイプがあるのスタイルもいかにも海外の地下鉄といった様相で面白い。因みにスピードは入線時だけ遅いようだ。しばらくして目的地であるスペイン銀行駅に着いた。
地下から地上に上がると既に道路にはバリケードが設置されており、交通規制が始まっている模様。ここからマドリード観光をしたいところだが、今日は皆自由に行動しているため、私は石川さん伊藤さんのマドリード観光に同行させて頂くことにした。どこか目的地があるというわけではないとのことでふらふら街を歩くことに。
まず最初に出会したのが鍋をドラムに見立ててストリートパフォーマンスをするおじさん。「そんなの東京にもいるじゃないか」と皆さん思うかもしれないが、非常に演奏レベルが高いのだ。リズムも正確だしシンバルの足使いも見たこと無いテクニックで圧巻の一言。シンバル収集家の伊藤さんと食い入るように見てしまった。
それと、このマドリードでやっと撮影することが出来たのがコース脇に設置されるバナーのための穴あけ作業。実はテレビでよく見るバナーはドリルで直接、道路に穴を開けて固定しているのだ。ここまで毎日この作業自体は見ていたものの、ドリルで穴あけをするシーンを写真で撮れたのはこれが初めてのこととなった。
ここでお土産屋さんに入る。スペインの首都であるマドリードではそこら中にお土産屋さんがあるのが特徴で、観光都市として成り立っている事がわかる。置いてあるのはマドリードグッズとこの地を本拠地にする世界的なサッカーチーム”レアルマドリード”のグッズだ。途中、コフィディスの建物も発見。自転車チームやレースにスポンサードすることで知られるコフィディスだが、業務内容はいわゆる消費者金融というやつだ。何とも言えない自転車業界の闇の1つである。
それにしても街全体が非常にお洒落である。今回のブエルタツアーではサンタンデールとヒホンというどちらもその地方を代表する街を歩いたが、やはりマドリードが1番華やかだろう。もちろん人が多いのもあるだろうが、建物の美しさ、ちょっとした路地のお洒落具合は他の街よりも断然レベルが高い。そんなことを考えながら歩いているとマヨール広場という四方を建物に囲まれた場所にたどり着いた。
ここマヨール広場は15世紀から続くマドリードの広場で、主に商業の中心地として市場が開かれていた場所。それ以外には闘牛やサッカーの試合、公開処刑や異端審問など様々な用途に使われたそうだ。周りは3階建ての建物に囲まれており、9箇所あるアーチを通って中に入る事が出来るいかにもヨーロッパらしいタイプの広場だ。現在は観光地としてバルやレストラン、お土産屋さんが立ち並ぶ定番スポットとなっている。
ここで小腹が空いたということでバルにて暫し休憩。サンタンデールの2日目に食べたタコが忘れられないということでタコとポテトの料理を注文。燦々と日差しが降り注ぐ陽気の中、ビールと共に頂く。タコ料理はスペインでの定番らしく、ここのお店も美味しい。柔らかく程よい塩気でビールによく合う味わいだ。因みにタコはスペイン語でプルポ(pulpo)というらしい。ちょっと可愛い。
ここで今回の感想をお二人に聞いた。現地での海外レース観戦は3回目という石川さんは2回ツールを見に行き、ブエルタは今回が初という。「ブエルタはツールと比べると選手も近いし見るポイントもたくさんある。観戦者向けのレース。それにこの値段で連日VIPゾーンにも走れるなんてツールでは考えられない。もうブエルタに病みつきですね。それにスペインはご飯が美味しいのも良い。これは他の人には教えたくないです!」と語ってくれた。
対して伊藤さんは自転車歴こそ20年と長いものの、海外レース観戦はこれが初めて。「初めての海外レース観戦でしたが、VIP観戦やコンタドールのサインなどこんなに美味しい思いをさせてもらった。友人に背中を押してもらいやって来たスペインで、最初はこの金額も高いと思っていたけど、今はそんなこと全然思わないです。昨日のアングリル峠は臨場感も凄かったですし、皆で盛り上がって、日本ではあんな体験はできないですね。」と楽しめたようだ。
色々お話を聞けたところで、マドリードに来たら抑えておかなければならないだろうスポットであるマドリード王宮までとことこ歩く。徒歩10分もしない道だが、道中には日本にはない面白いお店がいっぱいなので、何か購入しなくても立ち止まってしまう。しばらくすれば王宮へ到着。今は王族が住んでいる訳ではないとのことだが、いまだ国の行事に使用される由緒正しい場所だ。サンタンデールの街で見たお城とは比べ物にならない大きさであった。
それにしてもマドリードは日本人が多い。今まで日本人どころかスペイン人以外が全然いない街ばっかりだったため、少し嬉しい。一通り観光も済んだところで王宮からレースの行われる中心地へ戻ると中村夫妻と小林夫妻に遭遇。昨日にアングリル峠を制したコンタドールが1面を飾っている新聞をゲットしたとのことで見せてくれた。ここで皆さんにも感想を聞いてみた。
グランツールはフジテレビの深夜放送の時代から見ているという小林夫妻はこれが4度目の海外レース観戦「やっぱり昨日のアングリル峠とか雨風吹く環境の辛さ、勾配を身体で感じる事が出来るのが現地観戦の醍醐味ですね。実際に感じるのと画面で見るのは全然違います。車があるのは本当に助かりました。個人だとこんなに色んな所でレースを見ることは出来ないです。
ブエルタは色々緩いって言われるけど、そんなことはなくて、選手の安全を警察の人が常に守っている感じがあります。それでいて、旗を出していても怒られないなど、緩めるところは緩めて、締めるところは締める運営がなされているのが好感持てますね。ブエルタを見に行くと皆、ブエルタを好きになると言うけど、その意味がわかります」と語ってくれた。
2008年のブエルタ第13ステージのアングリル峠で勝利するコンタドールを見て自転車レースに夢中になったという中村夫妻は「今回5回目の海外レース観戦ですが、昨日のアングリル峠は最高でした。私達が自転車レースを本格的に見始めるきっかけとなったアングリル峠をその時に勝利したコンタドールが再び勝利するという、こんなにドラマチックなことはないです。もしも今回フェローサイクルのツアーが無く、車もなかったら麓から歩いて来るつもりだったので、車があるのは心強いですね。
現地でこうやって偉大な選手の引退レースを見に来ると、スペインの人だけじゃなくて世界中の色んな国の人が来るじゃないですか。そういった人たちと一緒にコンタドールが走る姿を見れるということに、世界との一体感を感じられますね。それにスペインは他の国の選手にもブーイングとかしないですし、意地悪じゃないのも良いですね」と中村さんにとって忘れられない体験となったようだ。
そしてコースでは女子のレースが開催中。女子選手と言えどもトップクラスの選手達によるレースであるため、かなりのスピードでコースを駆けていく。最終ステージとなる今日のレースは昼過ぎにスタートし夕方にゴールするスケジュール。プロトンが来るまで観戦し易い場所を探しながらコースの周りを散策。今回は市街地ということで場所取りが重要だ。
いよいよプロトンが周回コースに入ると先頭で入ってきたのはアルベルト・コンタドール。これが最後のUCIレースとなるスペインの偉大な自転車選手をファンの皆は大きな歓声と拍手で迎えた。沿道の大歓声を一身に受けたコンタドールがフィニッシュラインを通過すれば本格的なレースがスタート。やはり周回コースだと何回も選手を見ることができ、観戦がし易い。集団をコントロールするクイックステップフロアーズのトレインが格好良かったのも印象的。ワールドツアーチームのスピード感は申し訳ないが日本では味わえないだろう。
残念ながらゴールシーンが見られる場所ではなかったが、それでもレースの雰囲気が沢山感じ取れた。これでブエルタも終わりだと思うと少し寂しくなってしまう。そのあと交通規制が解除されて、表彰式が始まる。これも表彰式は裏から見るのみとなってしまったが、途中コンタドールが壇上に上がるとアルベルト大合唱が始まったりと皆で盛り上がって楽しい。
レースが終わればスペイン最後となる食事の時間。皆でホテルの前に集合しレストランに向かう。ビールで乾杯し、このブエルタツアーの思い出を皆で話す。早くも皆”ブエルタロス”に陥っているようだ。そんなところに運ばれてきたメニューはアンチョビのマリネ、イカのフリッター、そしてメインは豚の丸焼き肉。これまた量は多いが皮もパリパリで美味しく頂けた。
私にとっても初めてのグランツール観戦となった今回のフェローサイクル ブエルタツアー。正直、現地で見てもテレビの前で見てもそこまで変わらないだろう、変わったとしても50万弱のお金を出す価値まではないだろうと思っていた。だがこのブエルタツアーに帯同させてもらうことで、その考えは180度変わったと言える。現地の臨場感、迫力、観衆との一体感は言葉では言い表せない体験であった。皆さんも自転車を趣味として続けていくのであれば、是非一度は本場に見に行ってみてはいかかだろうか。
text&photo:Kosuke.Kamata
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