2017/09/20(水) - 08:58
ヨーロッパでのサイクリングツアーなどを開催しているフェローサイクルのブエルタ・ア・エスパーニャ観戦ツアーにCW編集部員のカマタが帯同。ブエルタ3週目となる計9日間のレポートをお届けします。
「いつかは現地で…」なんて言葉は日本の自転車ロードレースファンの間でよく言われる言葉だが、実際に見に行った人なんてのはほとんどいないのが現状だろう。それは当たり前で、サイクルロードレースの本場ヨーロッパと言うのは日本人にとってアジアやアメリカよりも馴染みのない地域だからだ。
海外旅行と言ったらグアム、韓国、台湾、東南アジアで、ハワイに行けるならちょっとリッチなんて金銭感覚が一般的なセンターな世の中。アメリカ本土やヨーロッパなんてのは一生の内に一度行ければ良いもんだと思っている人も多いだろう。だがしかし貴方がサイクルロードレースを好きであるならば話は別だ。ヨーロッパでのトップレース観戦は絶対にその後の自転車人生を豊かにするし、最高の体験となるだろう。少なくとも私にとって今回の帯同はそういった価値のあるものとなった。
今回CWの新入編集部員カマタがお邪魔したのはサイクリスト向けツアーを多数企画しているフェローサイクルのブエルタ・ア・エスパーニャへの観戦ツアー。9月4日(月)から9月12日(火)までの9日間の日程で、ブエルタ3週目の第16ステージから最終第21ステージまでを観戦できるというものだ。
旅の始まりは羽田空港から。9月4日(火)の朝10時に出発ロビーにある団体カウンターへ集合し参加者の方々と初の顔合わせ。今回の参加者は計6名。ご夫婦が2組と男性が2名というメンバーだ。それにフェローサイクルの添乗員、神崎さんと私カマタが加わり計8名で行動する。男性2名は関西空港からの出発ということでマドリードでの合流だ。
羽田で合流したご夫婦2組は、以前からフェローサイクルの観戦ツアーに参加している中村夫妻と小林夫妻。2組とも毎年グランツールを観戦しに行くということでヨーロッパ旅行も慣れたもの。その上、ツアーでよく顔を合わせるという4人は顔馴染みだとか。どちらの夫婦も今回のブエルタを最後に引退するコンタドールを応援したいがため参加を決めたとのことで、その表情は期待に満ち溢れていた。
かく言う私は全てが初めてで期待と言うよりは不安の方が大きい初日。グランツール観戦はもちろん、ヨーロッパへ行くこと、ましてや1人取材自体が初めてなのだ。正直スペイン語はもちろん、英語も全然出来ない。そんな私の力みが入った挨拶とテンパり気味の撮影によって、この旅最初の集合写真は硬めの表情となってしまった。
まだまだ序盤だから盛り返せると言い聞かせながら保安検査場をクリア。ターミナルで1番端っこの106B搭乗口からルフトハンザ航空の飛行機に乗り込む。12時間5分の飛行を終え、ミュンヘン空港に到着。ここでマドリード行きに乗り換え2時間半のフライトである。このあたりから日本語は全く通じなくなるため、英語力を問われる事となるが、私はCAさんの「Would you like coffee or tea?」が聞き取れず、隣のスペイン人姉妹に笑われてしまった。最低限の中学英語は出来るようにしておこう。
そのまま現地時間の9月4日(月)21時半ごろにマドリードに到着。到着ロビーではスペインでの案内役を努めてくれる現地のツアー会社、バイクスペインのロベルトさんが待ち構えていた。今回のツアーはこのバイクスペイン全面協力のもと、かなりのVIP待遇が受けられるのもポイントの1つ。そのため移動は全てロベルトさんが運転する車で行われ、公共交通機関を利用するといったストレスは無い。
夜遅いというのにニッコニコなロベルトさんとのフレンドリーな挨拶を済ませ、他のターミナルに到着していた関西組の石川さん、伊藤さんとも合流。ここから最初の宿がある街、パンプローナまで移動する。3時間のドライブを経て、翌9月5日(火)の深夜1時半に宿に到着した。翌日はいよいよ第16ステージの観戦である。皆長い移動の疲れを取るため足早に部屋に入って行ったのであった。
9月5日(火)は7時半に起床。前日の疲れが残っているかと思いきや、泥のように眠った事もあって、清々しい気持ちで朝を迎えられた。初のグランツール観戦に向けて幸先いいスタートだ。そしてスペイン初の食事となるホテルでの朝食を頂く。ビュッフェ形式となっており、パンチェッタやプロシュート(生ハム)、ハムやチーズ各種にじゃがいも入りのオムレツやスクランブルエッグなどが並ぶ。
特に驚いたのがオレンジジュースの生搾り機があること。グラスを置いてボタンを押すと上にあるオレンジが機械の中で絞られて新鮮生搾りオレンジジュースが頂けるのだ。非常に美味しかったので私は4杯も飲んでしまった。また生ハムが定番食材なのもスペインの特徴。日本では生ハムのサンドイッチというと高級そうな気がしてしまうが、こちらならパンの上に豪勢に盛り付け、オリーブオイルを垂らすというおしゃれな食べ方もできるのだ。
朝食を終え、9時にホテルロビーに集合。ここでブエルタの各ステージに設営されるVIPエリア=ヴィラージュに入ることが出来るパスをもらう。各人の名前が入ったパスはそれだけで記念になるだろう。そのパスを握りしめ車に乗り込む。今日はまだレースのスタートまで時間があるため、パンプローナの街を観光することに。
スペイン北部に位置するパンプローナはナバーラ州の中央部に位置する州都。毎年7月に開催されるスペイン3大祭りの1つ、サン・フェルミン祭(通称、牛追い祭り)の舞台として知られ、闘牛場はもちろん、各所に闘牛グッズショップがある。自転車乗り的には、ツール・ド・フランス5勝のミゲル・インデュライン生誕の地でもあり、2012年ブエルタ開幕の地でもある。中村夫妻はそのレース観戦に来たのだとか。そんな歴史ある街も私にとっては初めてのヨーロッパの街。見るもの全てが目新しくて、シャッターを切りすぎてしまった。後で写真整理が大変だったのは言うまでもない。
牛追いの街をぐるりと観光し、今日のレーススタート地点であるナバラ・サーキットに移動。同じナバラ県であるため1時間かからない程度で到着した。第16ステージとなる本日のレースは40.2kmの個人タイムトライアルだ。そのため観戦場所は選手のウォーミングアップが見られるスタート地点がベストとなる。普段なら散り散りになるチームカーやチームバスも勢揃いするため、会場は普段のロードレースステージに比べ華やかだ。
最初の選手がスタートするまで時間があるため、一行はひとまずビラージュへ。中ではレモンビールやソフトドリンクといった飲み物やフルーツが振る舞われる。ローラー台を使ったイベントやお料理教室など様々な催しものも行われているため大盛況だ。中には床屋もあるため、スタート前の選手が散髪するなど、珍しい光景も見られる。
ヴィラージュの外にもブースが立っており、ツールでもお馴染みのカルフールブースではお菓子や飲み物がこれでもかと貰える。そして最後にはセガフレードのコーヒーも1杯頂ける。
そこからチームバスがある場所に向かうと1番大きな人だかりが出来ていたのがトレック・セガフレードだ。皆、スペインの英雄、アルベルト・コンタドールを一目見ようと集まったらしいが、スタートまでまだまだ時間があるため来ていないとのこと。その次に人が集まっていたのがチームスカイである。マイヨ・ロホのクリストファー・フルーム擁するビックチームは他とは違う移動式の2階建てハウスを今日のために用意しており、さながらスカイ宮殿といった様子だ。財力の違いを目の当たりにした。
スタート地点の方に行くと、テレビでよく見るチームカーがずらりと並び、ルーフ上にはスペアバイクが満載されている。かなり近くまで近づくことが出来るため、写真撮影し放題だ。その裏のパドックでは黙々と選手たちがウォーミングアップを行っている様子を見学する事ができる。もう既に選手たちはレースモードなため積極的にサインなどを求めることは出来ないが、非常に近い位置で見ることが出来る。
そうこうしている内に第一走者がスタートし、レースがスタート。3週目のタイムトライアルレースということで、総合圏外とステージを狙わない選手にとっては消化試合となるため、序盤はそこまで白熱した空気ではない。ただ、そんな圏外の選手たちであっても一流選手であるため身のこなしやスタイルは非常にスマート。ともかく格好いいのである。
レースも後半に差し掛かると、総合上位陣がホテルからこのスタート地点であるナバラサーキットに到着し、ウォーミングアップを開始。1番沢山の人が集まっていたのがチームスカイのフルームだ。スカイ宮殿の1階で見世物のようにローラーを回していたのが印象的だった。その他の有力選手はパドックで黙々とウォーミングアップ。人垣が何重にもなると見えなくなるため、そんなに人は集まらず大混雑という感じではない。
ウォーミングアップを終えると、いよいよ総合トップ10の選手がスタートラインに立つ。このクラスの選手になると他の多くの選手とは違い、ヘリコプターが上空待機し、白バイが1選手につき4台。それにチームカー、審判カー、TVカメラバイク、プレスフォトバイクとかなりの大所帯でやってくるのだ。自転車1台がこれだけの車両を引き連れる姿は日本では見られない光景だろうし、かなり迫力がある。ブエルタの規模の大きさを象徴するシーンだ。
中でも沢山の車両を引き連れ、沿道からも大きな声援を受けていたのがアルベルト・コンタドールだ。現役最後のタイムトライアルということもあって、その走りは気迫に満ち溢れていた。また絶対王者フルームの走りも際立つ。このステージを制したマイヨ・ロホはコンタドールに負けずとも劣らない軍勢を引き連れ、灼熱のナバラサーキットを駆け抜けていったのである。
総合トップのフルームがスタートすればナバラサーキットとはお別れ。皆一目散に次のステージに向け移動する。今日だけではなくレースは続くのだ。この撤退スピードの速さもブエルタもとい、グランツールの特徴だろう。我々もフルームを見送り車にダッシュ。少しでも渋滞を避けるために足早にナバラサーキットを後にした。
ここから次の宿、サンタンデールの街まで3時間のドライブ。沢山のチームバスや関係車両と共に目的地を目指す。レース会場以外でもこういった車両を多く目にするため、テンションは上がりっぱなしだし、自分も大会の一部になれたようで嬉しい。途中ハイウェイのパーキングで休憩。といってもスペインのパーキングは日本のサービスエリアのようにお店が充実している訳ではなく、ガソリンスタンドにコンビニエンスストアがくっついただけの施設。特に不自由しなかったし日本はサービス過多なんじゃないかと思いを巡らす。
しばらく走り、海が見え始めたところでサンタンデールに到着。中心地から少し郊外にあるホテル・サン・ミランが今日、明日の宿となる。チェックインは添乗員の神崎さんが全てこなしてくれるため、スペイン語が満足に喋れなくても安心だ。鍵を受け取り荷物を部屋に置いてホテルの1階で食事を取る。メニューはシンプルなステーキ。ぺろりと食し、明日へ備えるため今日は早めに就寝することに。レースは毎日やっているのだから。
次回のレポートでは第17ステージとなった旅の3日目をお届けします。
vol.2はこちら
text&photo:Kosuke.Kamata
「いつかは現地で…」なんて言葉は日本の自転車ロードレースファンの間でよく言われる言葉だが、実際に見に行った人なんてのはほとんどいないのが現状だろう。それは当たり前で、サイクルロードレースの本場ヨーロッパと言うのは日本人にとってアジアやアメリカよりも馴染みのない地域だからだ。
海外旅行と言ったらグアム、韓国、台湾、東南アジアで、ハワイに行けるならちょっとリッチなんて金銭感覚が一般的なセンターな世の中。アメリカ本土やヨーロッパなんてのは一生の内に一度行ければ良いもんだと思っている人も多いだろう。だがしかし貴方がサイクルロードレースを好きであるならば話は別だ。ヨーロッパでのトップレース観戦は絶対にその後の自転車人生を豊かにするし、最高の体験となるだろう。少なくとも私にとって今回の帯同はそういった価値のあるものとなった。
今回CWの新入編集部員カマタがお邪魔したのはサイクリスト向けツアーを多数企画しているフェローサイクルのブエルタ・ア・エスパーニャへの観戦ツアー。9月4日(月)から9月12日(火)までの9日間の日程で、ブエルタ3週目の第16ステージから最終第21ステージまでを観戦できるというものだ。
旅の始まりは羽田空港から。9月4日(火)の朝10時に出発ロビーにある団体カウンターへ集合し参加者の方々と初の顔合わせ。今回の参加者は計6名。ご夫婦が2組と男性が2名というメンバーだ。それにフェローサイクルの添乗員、神崎さんと私カマタが加わり計8名で行動する。男性2名は関西空港からの出発ということでマドリードでの合流だ。
羽田で合流したご夫婦2組は、以前からフェローサイクルの観戦ツアーに参加している中村夫妻と小林夫妻。2組とも毎年グランツールを観戦しに行くということでヨーロッパ旅行も慣れたもの。その上、ツアーでよく顔を合わせるという4人は顔馴染みだとか。どちらの夫婦も今回のブエルタを最後に引退するコンタドールを応援したいがため参加を決めたとのことで、その表情は期待に満ち溢れていた。
かく言う私は全てが初めてで期待と言うよりは不安の方が大きい初日。グランツール観戦はもちろん、ヨーロッパへ行くこと、ましてや1人取材自体が初めてなのだ。正直スペイン語はもちろん、英語も全然出来ない。そんな私の力みが入った挨拶とテンパり気味の撮影によって、この旅最初の集合写真は硬めの表情となってしまった。
まだまだ序盤だから盛り返せると言い聞かせながら保安検査場をクリア。ターミナルで1番端っこの106B搭乗口からルフトハンザ航空の飛行機に乗り込む。12時間5分の飛行を終え、ミュンヘン空港に到着。ここでマドリード行きに乗り換え2時間半のフライトである。このあたりから日本語は全く通じなくなるため、英語力を問われる事となるが、私はCAさんの「Would you like coffee or tea?」が聞き取れず、隣のスペイン人姉妹に笑われてしまった。最低限の中学英語は出来るようにしておこう。
そのまま現地時間の9月4日(月)21時半ごろにマドリードに到着。到着ロビーではスペインでの案内役を努めてくれる現地のツアー会社、バイクスペインのロベルトさんが待ち構えていた。今回のツアーはこのバイクスペイン全面協力のもと、かなりのVIP待遇が受けられるのもポイントの1つ。そのため移動は全てロベルトさんが運転する車で行われ、公共交通機関を利用するといったストレスは無い。
夜遅いというのにニッコニコなロベルトさんとのフレンドリーな挨拶を済ませ、他のターミナルに到着していた関西組の石川さん、伊藤さんとも合流。ここから最初の宿がある街、パンプローナまで移動する。3時間のドライブを経て、翌9月5日(火)の深夜1時半に宿に到着した。翌日はいよいよ第16ステージの観戦である。皆長い移動の疲れを取るため足早に部屋に入って行ったのであった。
9月5日(火)は7時半に起床。前日の疲れが残っているかと思いきや、泥のように眠った事もあって、清々しい気持ちで朝を迎えられた。初のグランツール観戦に向けて幸先いいスタートだ。そしてスペイン初の食事となるホテルでの朝食を頂く。ビュッフェ形式となっており、パンチェッタやプロシュート(生ハム)、ハムやチーズ各種にじゃがいも入りのオムレツやスクランブルエッグなどが並ぶ。
特に驚いたのがオレンジジュースの生搾り機があること。グラスを置いてボタンを押すと上にあるオレンジが機械の中で絞られて新鮮生搾りオレンジジュースが頂けるのだ。非常に美味しかったので私は4杯も飲んでしまった。また生ハムが定番食材なのもスペインの特徴。日本では生ハムのサンドイッチというと高級そうな気がしてしまうが、こちらならパンの上に豪勢に盛り付け、オリーブオイルを垂らすというおしゃれな食べ方もできるのだ。
朝食を終え、9時にホテルロビーに集合。ここでブエルタの各ステージに設営されるVIPエリア=ヴィラージュに入ることが出来るパスをもらう。各人の名前が入ったパスはそれだけで記念になるだろう。そのパスを握りしめ車に乗り込む。今日はまだレースのスタートまで時間があるため、パンプローナの街を観光することに。
スペイン北部に位置するパンプローナはナバーラ州の中央部に位置する州都。毎年7月に開催されるスペイン3大祭りの1つ、サン・フェルミン祭(通称、牛追い祭り)の舞台として知られ、闘牛場はもちろん、各所に闘牛グッズショップがある。自転車乗り的には、ツール・ド・フランス5勝のミゲル・インデュライン生誕の地でもあり、2012年ブエルタ開幕の地でもある。中村夫妻はそのレース観戦に来たのだとか。そんな歴史ある街も私にとっては初めてのヨーロッパの街。見るもの全てが目新しくて、シャッターを切りすぎてしまった。後で写真整理が大変だったのは言うまでもない。
牛追いの街をぐるりと観光し、今日のレーススタート地点であるナバラ・サーキットに移動。同じナバラ県であるため1時間かからない程度で到着した。第16ステージとなる本日のレースは40.2kmの個人タイムトライアルだ。そのため観戦場所は選手のウォーミングアップが見られるスタート地点がベストとなる。普段なら散り散りになるチームカーやチームバスも勢揃いするため、会場は普段のロードレースステージに比べ華やかだ。
最初の選手がスタートするまで時間があるため、一行はひとまずビラージュへ。中ではレモンビールやソフトドリンクといった飲み物やフルーツが振る舞われる。ローラー台を使ったイベントやお料理教室など様々な催しものも行われているため大盛況だ。中には床屋もあるため、スタート前の選手が散髪するなど、珍しい光景も見られる。
ヴィラージュの外にもブースが立っており、ツールでもお馴染みのカルフールブースではお菓子や飲み物がこれでもかと貰える。そして最後にはセガフレードのコーヒーも1杯頂ける。
そこからチームバスがある場所に向かうと1番大きな人だかりが出来ていたのがトレック・セガフレードだ。皆、スペインの英雄、アルベルト・コンタドールを一目見ようと集まったらしいが、スタートまでまだまだ時間があるため来ていないとのこと。その次に人が集まっていたのがチームスカイである。マイヨ・ロホのクリストファー・フルーム擁するビックチームは他とは違う移動式の2階建てハウスを今日のために用意しており、さながらスカイ宮殿といった様子だ。財力の違いを目の当たりにした。
スタート地点の方に行くと、テレビでよく見るチームカーがずらりと並び、ルーフ上にはスペアバイクが満載されている。かなり近くまで近づくことが出来るため、写真撮影し放題だ。その裏のパドックでは黙々と選手たちがウォーミングアップを行っている様子を見学する事ができる。もう既に選手たちはレースモードなため積極的にサインなどを求めることは出来ないが、非常に近い位置で見ることが出来る。
そうこうしている内に第一走者がスタートし、レースがスタート。3週目のタイムトライアルレースということで、総合圏外とステージを狙わない選手にとっては消化試合となるため、序盤はそこまで白熱した空気ではない。ただ、そんな圏外の選手たちであっても一流選手であるため身のこなしやスタイルは非常にスマート。ともかく格好いいのである。
レースも後半に差し掛かると、総合上位陣がホテルからこのスタート地点であるナバラサーキットに到着し、ウォーミングアップを開始。1番沢山の人が集まっていたのがチームスカイのフルームだ。スカイ宮殿の1階で見世物のようにローラーを回していたのが印象的だった。その他の有力選手はパドックで黙々とウォーミングアップ。人垣が何重にもなると見えなくなるため、そんなに人は集まらず大混雑という感じではない。
ウォーミングアップを終えると、いよいよ総合トップ10の選手がスタートラインに立つ。このクラスの選手になると他の多くの選手とは違い、ヘリコプターが上空待機し、白バイが1選手につき4台。それにチームカー、審判カー、TVカメラバイク、プレスフォトバイクとかなりの大所帯でやってくるのだ。自転車1台がこれだけの車両を引き連れる姿は日本では見られない光景だろうし、かなり迫力がある。ブエルタの規模の大きさを象徴するシーンだ。
中でも沢山の車両を引き連れ、沿道からも大きな声援を受けていたのがアルベルト・コンタドールだ。現役最後のタイムトライアルということもあって、その走りは気迫に満ち溢れていた。また絶対王者フルームの走りも際立つ。このステージを制したマイヨ・ロホはコンタドールに負けずとも劣らない軍勢を引き連れ、灼熱のナバラサーキットを駆け抜けていったのである。
総合トップのフルームがスタートすればナバラサーキットとはお別れ。皆一目散に次のステージに向け移動する。今日だけではなくレースは続くのだ。この撤退スピードの速さもブエルタもとい、グランツールの特徴だろう。我々もフルームを見送り車にダッシュ。少しでも渋滞を避けるために足早にナバラサーキットを後にした。
ここから次の宿、サンタンデールの街まで3時間のドライブ。沢山のチームバスや関係車両と共に目的地を目指す。レース会場以外でもこういった車両を多く目にするため、テンションは上がりっぱなしだし、自分も大会の一部になれたようで嬉しい。途中ハイウェイのパーキングで休憩。といってもスペインのパーキングは日本のサービスエリアのようにお店が充実している訳ではなく、ガソリンスタンドにコンビニエンスストアがくっついただけの施設。特に不自由しなかったし日本はサービス過多なんじゃないかと思いを巡らす。
しばらく走り、海が見え始めたところでサンタンデールに到着。中心地から少し郊外にあるホテル・サン・ミランが今日、明日の宿となる。チェックインは添乗員の神崎さんが全てこなしてくれるため、スペイン語が満足に喋れなくても安心だ。鍵を受け取り荷物を部屋に置いてホテルの1階で食事を取る。メニューはシンプルなステーキ。ぺろりと食し、明日へ備えるため今日は早めに就寝することに。レースは毎日やっているのだから。
次回のレポートでは第17ステージとなった旅の3日目をお届けします。
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