2017/05/24(水) - 09:06
いよいよ到来したサイクリングシーズン。今回は東京からアクセスしやすい自転車天国、群馬県の西側「西毛」を舞台に編集部の新人2名がお邪魔してきた。後編は今回のライドの目玉の一つと考えていた「仙ヶ滝」からスタート。その観光的価値とは如何に。前編はこちら
鋭角に切り落とされたような岩肌から落ちる水の流れに心が洗われる
安中市が誇るべき新幹線駅、安中榛名駅にて、とりあえず必要な写真は撮れたので、次の目的地、仙ヶ滝に向かうことに。ここからは短いアップダウンが続く厳しいコースレイアウトだ。走るとなると水を得た魚のように活き活きとしだすムラタに対し、体力がめっきり落ちてしまった私にとっては我慢の区間となった。まったく非常にうらやましい。
走り応えのあるアップダウンをこなして行くと仙ヶ滝の案内表示が次々と現れる。ここまで案内表示を設置するということは、要するに仙ヶ滝が安中市もとい旧松井田町を代表する観光資源たる証だ。私も幼きころに祖母に連れられ見に行ったことがあるが、確か非常に良い雰囲気の中にある滝であった思い出がある。
「落石注意のため滝つぼめぐり禁止」だそうだ
この距離感を素人カメラマンの我々がどうやって魅力的な写真にできようか
熟考の結果生み出された写真がこれだ
そんな曖昧な記憶をもとに、安中榛名駅の選考ミスを取り返せると淡い期待を感じながら仙ヶ滝に到着。九十九川の上流に位置し15メートルの落差を誇る仙ヶ滝は、戦国時代、ここに身を投じて死したという松井田城城主の娘「お仙」の伝説から名を付けられた滝。そのためか滝の裏側には悲運の死を遂げた彼女の霊を慰めるため石仏も祀られている。
岩が切り落とされたような、いわゆるフォトジェニックな場所で、記憶通り雰囲気が良くパワースポットっぽい場所であったのだが、悲しいことに落石の危険があるということで滝つぼに近づくことが出来ないようになってしまっていた。本来であれば滝の裏側まで周ることができ、ダイナミックな写真が撮れるはずであったが、ここでも誤算を生んでしまった。ただ忘れないで頂きたいのが、今回のスポットの中で、ここ仙ヶ滝は眼鏡橋と並ぶ重要スポットのつもりだったのだ。雰囲気はホントに良いので是非近くを通ったら寄ってみて欲しい。
横川までの林道を行く
ここからは軽井沢への入り口でもある横川に向けて林道を走る。林道と言っても舗装は非常に綺麗で、緩やかな登り勾配が続く私のお気に入りの道だ。横川までの道のりというと、地図では国道18号を行くしかないため、碓氷峠に行きたいが、国道の交通量は避けたい時には良く通っていたのだ。夏場は周りより5度くらい温度が低い気がするのも好きな理由の一つだ。そんな林の中を淡々と走り、上信越自動車道の上を越えると横川の町並みが現れる。
具沢山の峠の釜めしは天皇に献上したこともある由緒正しい駅弁
峠の釜めしを販売する「おぎのや」は創業は明治18年というから驚きだ
横川駅の駐車場には軽井沢行きの線路の痕が今も残る
ということでやっとのお昼御飯タイムだ。そしてメニューは横川を代表するグルメ。おぎのやの「峠の釜めし」。今でこそ電車で群馬から軽井沢に行くならば北陸新幹線を使うしか方法はないのだが、かつてはここから碓氷峠を越える普通電車があった横川駅。その峠越えのお伴として「あたたかくて、家庭的な楽しいお弁当」をコンセプトに1958年に誕生した駅弁が「峠の釜めし」だ。
秘伝のダシで炊きこまれたご飯に鶏肉、ごぼう、椎茸、筍、栗、うずらの卵と杏子を添えた釜めしは食べるたびに違った味を楽しめる。懐かしいような素朴な味わいに、初めて食べた人でも思わず「変わらないな」なんて感想が出てしまうことだろう。私としては杏子が食べ進める途中のアクセントになって好みだった。器は回収もしているが持ち帰ってもお米が1号炊ける優れ物。私は持ち帰ってごはん茶碗にすることにした。
静寂な水面が美しい碓氷湖
腹ごしらえも済み、いよいよ群馬ライドのメインディッシュ、碓氷峠に向かことに。日本の峠100選にも選ばれる碓氷峠は実はその途中にいくつかの見どころポイントを含んでいる。その一つが坂本ダムとそのダム湖である碓氷湖だ。碓氷川と中尾川の合流点を堰き止めて作られた碓氷湖は、1994年に完成した比較的新しい人工湖。そのためか周辺施設は非常に綺麗に整備してあり、全周1.2kmの遊歩道も整備されている車で来るべきプレイスだ。
それでも自転車で来てみたのは群馬ライドは山の写真ばっかりなので、水系の写真もあったほうがいいだろうという配慮からだ。その目論みは見事に当たり、結構いい写真が撮れたと新人同士で思っているのだ。実際に碓氷湖は一見ありきたりの湖に見えるが、そんな侘しい雰囲気ではなく、遠くになんやら洒落た橋も見えるし、近くを走ったら寄っても損はない。ちなみに秋に来ると紅葉が凄く綺麗なのと、ダムカードはお隣の霧積ダムでないともらえないので要注意だ。
そこまで大きくない坂本ダムだが水の流れは目で追いたくなるのが人間というもの
碓氷峠に戻り少し登ると次に見えてくるのが碓氷第三橋梁、通称「眼鏡橋」。碓氷川にかかるレンガ造りの4連アーチの橋は明治26年に完成した歴史的遺産だ。横川駅から軽井沢駅までを繋ぐ旧信越本線の橋梁の一つで昭和38年に現代的な電車の運行を可能にした碓氷新線が出来るまで使用された。現存するレンガ造りの橋の中では国内最大ということでユネスコ世界遺産への登録を目指している。
世界遺産登録を目指している眼鏡橋
眼鏡橋の上には上がることができ物思いにふけることが出来る
レンガ造りのアーチデザインが明治時代を感じさせる
橋の上には階段で登ることが出来るようになっており、横川から碓氷峠の途中駅だった熊ノ平駅まで「アプトの道」という遊歩道が整備されている。流石にビンディングシューズなので、トレッキングこそしないかったが、橋の上からは碓氷峠のペンで書いたようなヘアピンカーブが望める。また眼鏡橋の両サイドにある隧道は明かりがあるもの結構暗く、少し不気味悪い雰囲気を醸し出していた。
眼鏡橋を越えると後は軽井沢まで緩やかな勾配だが、永遠とも思える登坂が続く。国道18号にあたる碓氷峠はイヤヨ(184)の碓氷峠とも呼ばれており、184のコーナーを持つことで有名な難所である。そのため各コーナーには番号がふられ、自転車で登る際はこのコーナー番号を目安に登ることが出来る。
碓氷峠を登っているとカモシカに遭遇
碓氷峠には184個のカーブがあることで有名だ
遂に長野県に上陸
だがしかし、いかんせん184個もあるため、その多さにうんざりする程だ。流石にクライマーを自負するムラタも心折れたらしく半分を過ぎたところからペースダウン。2人でのんびりサイクリングペースで登った。しかし残り20を過ぎた当たりからムラタがペースアップ。レーサーの血が騒ぐのかラストはしっかり強度を上げてフィニッシュしたいらしい。私も負けじと付いて行ってみるが、やはり無理だ。途中から姿が見えなくなってしまった。
「気付いたらいなくなっていた」と話すムラタと合流。気付いたらじゃなくて気付くつもりもなかったんじゃ?という疑問を噛み殺し共に長野県に上陸。最後のお目当てクレープ屋さんにもしばらくして到着した。軽井沢駅から旧軽井沢の方向に向かう途中にある「珈琲黒庚」は私のオススメのクレープ屋さん。生クリーム入りを注文するとフルーツがこれでもかと盛られなかなか食べ応えがあるが特徴で、軽井沢に走りに来ると毎回ここでクレープを食べて帰るのが甘党男子たる私の決まりだった。
あの有名な物語に出てくる待ち合わせ場所として知る人ぞ知る電話ボックス
フルーツ満載で嬉しくなっちゃう私は女子か
珈琲黒庚は私の行きつけのクレープ屋さん
私がいつも食べるのはチョコバナナ生クリームなのだが、アーモンドも追加したいというムラタの要望を受諾し、チョコバナナアーモンド生クリームをチョイス。東京に来てからというもの行く回数も減ってしまっていたが、久しぶりの軽井沢クレープはいつも通りのモチモチ生地で大変美味だった。しかしムラタ曰く「クレープは観光地ならどこにでもあるのでは?」という一言をもらってしまった。確かにそんな気もするが、私の中ではクレープは軽井沢の名物スイーツだ。
最後、知る人ぞ知るノスタルジーな電話ボックスを撮影。本来ならここから碓氷峠をダウンヒルし、横川から輪行で高崎駅まで帰る予定だったが、日が沈んでしまい、タイムリミットにて軽井沢から新幹線で高崎駅へ。在来線にちょこっとならサイクルジャージでもいいかなと思っていたところだったので、少し恥ずかしい思いをすることになってしまった。しかし軽井沢から東京まで乗り換えなしということは、そういった輪行ライドプランを立てても良いだろう。
時間の関係で軽井沢から帰ります
東京から新幹線で1時間以内の片田舎、群馬ライドはどうだっただろうか。都会と比べると交通量も少なく豊富な地形バリエーションで圧倒的とも言えるライド環境が存在する群馬。車で来ても、電車で来ても魅力的なライドプランが立てられるのではないだろうか。もちろん温泉も沢山あるので泊まりがけのプランニングも良いだろう。私としてまだまだ群馬の魅力を1%も紹介しきれていないためシリーズ化を編集長に打診したいところだ。
text:Kosuke.Kamata
photo:Yuto.Murata
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安中市が誇るべき新幹線駅、安中榛名駅にて、とりあえず必要な写真は撮れたので、次の目的地、仙ヶ滝に向かうことに。ここからは短いアップダウンが続く厳しいコースレイアウトだ。走るとなると水を得た魚のように活き活きとしだすムラタに対し、体力がめっきり落ちてしまった私にとっては我慢の区間となった。まったく非常にうらやましい。
走り応えのあるアップダウンをこなして行くと仙ヶ滝の案内表示が次々と現れる。ここまで案内表示を設置するということは、要するに仙ヶ滝が安中市もとい旧松井田町を代表する観光資源たる証だ。私も幼きころに祖母に連れられ見に行ったことがあるが、確か非常に良い雰囲気の中にある滝であった思い出がある。
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そんな曖昧な記憶をもとに、安中榛名駅の選考ミスを取り返せると淡い期待を感じながら仙ヶ滝に到着。九十九川の上流に位置し15メートルの落差を誇る仙ヶ滝は、戦国時代、ここに身を投じて死したという松井田城城主の娘「お仙」の伝説から名を付けられた滝。そのためか滝の裏側には悲運の死を遂げた彼女の霊を慰めるため石仏も祀られている。
岩が切り落とされたような、いわゆるフォトジェニックな場所で、記憶通り雰囲気が良くパワースポットっぽい場所であったのだが、悲しいことに落石の危険があるということで滝つぼに近づくことが出来ないようになってしまっていた。本来であれば滝の裏側まで周ることができ、ダイナミックな写真が撮れるはずであったが、ここでも誤算を生んでしまった。ただ忘れないで頂きたいのが、今回のスポットの中で、ここ仙ヶ滝は眼鏡橋と並ぶ重要スポットのつもりだったのだ。雰囲気はホントに良いので是非近くを通ったら寄ってみて欲しい。
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ここからは軽井沢への入り口でもある横川に向けて林道を走る。林道と言っても舗装は非常に綺麗で、緩やかな登り勾配が続く私のお気に入りの道だ。横川までの道のりというと、地図では国道18号を行くしかないため、碓氷峠に行きたいが、国道の交通量は避けたい時には良く通っていたのだ。夏場は周りより5度くらい温度が低い気がするのも好きな理由の一つだ。そんな林の中を淡々と走り、上信越自動車道の上を越えると横川の町並みが現れる。
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秘伝のダシで炊きこまれたご飯に鶏肉、ごぼう、椎茸、筍、栗、うずらの卵と杏子を添えた釜めしは食べるたびに違った味を楽しめる。懐かしいような素朴な味わいに、初めて食べた人でも思わず「変わらないな」なんて感想が出てしまうことだろう。私としては杏子が食べ進める途中のアクセントになって好みだった。器は回収もしているが持ち帰ってもお米が1号炊ける優れ物。私は持ち帰ってごはん茶碗にすることにした。
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それでも自転車で来てみたのは群馬ライドは山の写真ばっかりなので、水系の写真もあったほうがいいだろうという配慮からだ。その目論みは見事に当たり、結構いい写真が撮れたと新人同士で思っているのだ。実際に碓氷湖は一見ありきたりの湖に見えるが、そんな侘しい雰囲気ではなく、遠くになんやら洒落た橋も見えるし、近くを走ったら寄っても損はない。ちなみに秋に来ると紅葉が凄く綺麗なのと、ダムカードはお隣の霧積ダムでないともらえないので要注意だ。
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眼鏡橋を越えると後は軽井沢まで緩やかな勾配だが、永遠とも思える登坂が続く。国道18号にあたる碓氷峠はイヤヨ(184)の碓氷峠とも呼ばれており、184のコーナーを持つことで有名な難所である。そのため各コーナーには番号がふられ、自転車で登る際はこのコーナー番号を目安に登ることが出来る。
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「気付いたらいなくなっていた」と話すムラタと合流。気付いたらじゃなくて気付くつもりもなかったんじゃ?という疑問を噛み殺し共に長野県に上陸。最後のお目当てクレープ屋さんにもしばらくして到着した。軽井沢駅から旧軽井沢の方向に向かう途中にある「珈琲黒庚」は私のオススメのクレープ屋さん。生クリーム入りを注文するとフルーツがこれでもかと盛られなかなか食べ応えがあるが特徴で、軽井沢に走りに来ると毎回ここでクレープを食べて帰るのが甘党男子たる私の決まりだった。
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最後、知る人ぞ知るノスタルジーな電話ボックスを撮影。本来ならここから碓氷峠をダウンヒルし、横川から輪行で高崎駅まで帰る予定だったが、日が沈んでしまい、タイムリミットにて軽井沢から新幹線で高崎駅へ。在来線にちょこっとならサイクルジャージでもいいかなと思っていたところだったので、少し恥ずかしい思いをすることになってしまった。しかし軽井沢から東京まで乗り換えなしということは、そういった輪行ライドプランを立てても良いだろう。
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text:Kosuke.Kamata
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