2017/04/10(月) - 09:03
「四国一周1000kmサイクリングルート」を発表した愛媛県の企画により結成されたPR隊が旅する四国。連載3弾では高知市街から最南端の足摺岬へと向かう。
愛媛は松山から出発した四国一周1,000kmサイクリングPR隊。香川、徳島を経て高知へ。高知市中心部からスタートする3日目だ。
昨夜、到着時に高知の友人が訪ねてきて、翌朝にはホテルのすぐ前で朝市が開かれることを教えてくれた。朝の温泉でウォームアップした身体の火照りを冷ますべく、外へ出るとすでに素朴な市が並んでいた。
手づくりの農産物やフルーツなど、旅のお供にしたくなる品々がいっぱいだ
デコポンは不揃いで美しくない外見が無農薬と美味しいことの証だ
デコポンに文旦(ぶんたん)などの土佐の柑橘や、榊にそら豆、大きな生姜に干しいもなどなど、地で採れた果物や野菜、日用雑貨まで、市民が主役の朝市はじつに活気があって楽しいものだった。それが県庁のすぐ前に通じる高知市街の中心地なのだから驚きだ。
路面電車の走る高知市街を抜けて県庁へと向かう
PR隊のこの日の一番メニューは高知県庁の表敬訪問だ。路面電車が走る市街地を抜け、歴史情緒溢れる城下町の風景を見ながら高知城の追手門に到着。空は青く澄み渡り、南国土佐の空気感。
高知の老舗サイクルショップ「Cycling Shop ヤマネ」の山根夫妻とKOCHI CTCクラブの皆さんなどが合流してくれた。高知のサイクル界は超ロングライド大会の「四万十無限大ライド」を終えたばかりで、ホットなタイミングだった。
高知のゆるキャラ「カツオ人間」や「坂本龍馬くん」「くろしおくん」もお出迎え。ゆるキャラはやはりここでも活躍のようです(笑)
高知城の追手門前に到着した四国一周サイクリングPR隊一行
高知城の追手門では高知のゆるキャラが迎えてくれた
門田さんのプレゼンに熱心に耳を傾ける岩城副知事
高知県庁で四国一周サイクリングをPRする門田基志さん
県庁に到着した一行に対応してくれたのは岩城孝章副知事ら。門田さんによれば高知県は今までもどの県よりも愛媛県の進める自転車事業に理解があり、連携が取れていた県だという。愛媛が率先して始めたサイクリングロードを示すブルーラインも、高知県内随所にすでに引かれているとか。
岩城副知事は台湾が大好きだということで、PR大使の一青妙さんと大いに話が弾んだ。同席した坂本孝幸県議会議員も日台友好議員連盟会長をつとめられているそうで、一青さんは「ぜひ環島にご一緒しましょう!」と、台湾一周サイクリングへお誘いしていた。坂本氏は「いつか東海岸をサイクリングしたい」と熱いお返事。台湾の東海岸は自然が残された一帯であり、サイクリストにとって素晴らしいエリア。こういった話が県のトップレベルとできるのは、「さすが高知ぜよ!」である。
一青妙さんが岩城副知事に四国一周PRベストを贈呈
岩城副知事、坂本孝幸県議会議員とフラッグをもって記念撮影
Cycling Shop ヤマネの山根夫妻が迎えてくれた
高知城の追手門前を出発するPR隊一行
私も県庁職員に自転車好きの友人が居る。その友人らが「高知ゆるゆるポタリング部」を立ち上げて活動し始めたのを教えてもらった。(フェイスブックページ)また、「ぐるっと高知サイクリングロード」も立ち上がったばかりだとか。高知でも自転車がキテいるようだ。
高知城を出発したPR隊一行は一路四万十川へと向かう。「日本最後の清流」としてあまりに有名な四万十川は、高知西部の内陸を曲がりくねって流れる河川だ。窪川あたりに河口が海につながるが、大部分は海岸線からは遠い。
ホエールウォッチングも可能な海の道ではクジラの像が迎えてくれた。そしてだんだん変なノリに...
高知県内には愛媛県同様のブルーラインが引かれているのを目にする
しかし四国一周モデルルートにこの四万十川は組み込まれている。それは四万十川だからだ。その理由を、門田さんは次のように説明する。
「四国一周は基本的に海岸線を回りますが、ここまできたら誰もが四万十川に沿って走りたいと思うはずです。それも河口を渡るだけではなく、沈下橋の2つ3つは自転車で渡ってみたいと思うはずなんです。他の県では走るのに冗長な半島などは大胆にコースからカットしていますが、四万十川は流れに沿って走るルートを引きました。つまり走るべき、見せるべき四国という考え方でルートを決めているんです」。
四万十川の沈下橋を渡るPR隊一行。サイクリストなら誰もが走ってみたいと夢見る光景だろう
ちょうど海岸線を延々と走ることに飽きのくる頃だろう。と同時に、グルメという観点でも四万十川は走るべきルートなのだと門田さんは言う。「ここまで走ってくると、ずっと海の幸で、魚づくしなんです。刺し身にも飽きが来ているはずです。鰻も魚ですが、そろそろガツンとスタミナのつくものが食べたくなるタイミングです。イノブタなど山の幸もありますから、四万十はグルメという点からも回り道していい場所なんです」。
四万十川の鰻。歯ごたえがあってワイルドな味!
道の駅「四万十とおわ」の紅茶ソフトはなんとも良い香り
確かに四万十川を自転車で渡るのはサイクリストの憧れだろう。キャンプツーリング派なら沈下橋のかかる河原で焚き火をし、テントを張って眠りにつきたい。筆者はかつて四国一周中にそれを実行したことがあるが、満点の星空に、川を棲家とする虫たちの濃密な声を聞きながら眠りについた思い出がある。今なお忘れられない素晴らしい体験だった。もう10年以上の前のことになるが、時間ができたらまたここでひとり過ごしたい、と妄想にふけってしまった。
四万十川流域の道の駅や食堂にはサイクルスタンドが備わっている
四万十川の河沿いを走り、内陸部へと進んでいく
一行の今日の最終目的地は足摺岬。四国の最南端だ。この一帯は植生も変わり、独特の南国風景になる。日が沈む時間に到着し、薄暗くなった足摺岬までの遊歩道を自転車のライトを便りに歩いた。岬から見る視界に開けた太平洋は、地球の丸さを実感できる。
宿は「足摺パシフィックホテル」という名の歴史のあるホテル。昭和を感じさせるレトロな雰囲気がたまらない。皇室一行が泊まったという「ロイヤルスウィート」部屋で過ごす時間も体験できた。
足摺岬のジョン万次郎像前に到着したPR隊の一行。すでに日は沈み薄暗くなっていた
足摺岬灯台を眺める。太平洋に向かって180°以上開けているため地球の丸さを実感
足摺岬灯台とPR隊。これが灯台のポーズだそうです
このホテルも自転車旅行者歓迎の宿だ。ホテル側のご厚意により部屋への自転車持ち込みが可能。この僻地では外に放置したとしても盗難の心配など無さそうなものだが、なによりその心遣いが嬉しい。門田さんらルート設定担当者らは現地のホテルや民宿などを一軒一軒訪ね、自転車旅行者の受け入れに前向きな宿かどうかを確かめているのだそうだ。
「単に施設が整っているかや部屋に自転車を持ち込めるかどうかといったことだけでなく、経営者に本当にサイクリストを歓迎する姿勢があるかどうかも見極めています。将来的にはその心がけがサービスの差になって現れると思っています。ゆくゆくは”サイクリストホテル”を最高とした星やランク付けもして、ガイドやホームページに掲載するなどしていくつもりです」。
足摺パシフィックホテルは自転車歓迎ムード
部屋に自転車の持ち込みが可能だ
ホテルが建つ崖上の露天風呂は太平洋に向かって開けていて、波の音以外は聞こえない静寂に包まれたなか、夜の漁にいそしむ漁船の様子を眺めながらの贅沢な時間を過ごすことができた。最果ての地には独特のロマンが満ちているものだ。旅はいよいよ終りが見えてきた。
明日は、最終目的地の愛媛県松山市を目指して走る。(続く)
photo&text:Makoto.AYANO
photo:Tetsuhiko.Komi/Ehime pref
愛媛は松山から出発した四国一周1,000kmサイクリングPR隊。香川、徳島を経て高知へ。高知市中心部からスタートする3日目だ。
昨夜、到着時に高知の友人が訪ねてきて、翌朝にはホテルのすぐ前で朝市が開かれることを教えてくれた。朝の温泉でウォームアップした身体の火照りを冷ますべく、外へ出るとすでに素朴な市が並んでいた。
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デコポンに文旦(ぶんたん)などの土佐の柑橘や、榊にそら豆、大きな生姜に干しいもなどなど、地で採れた果物や野菜、日用雑貨まで、市民が主役の朝市はじつに活気があって楽しいものだった。それが県庁のすぐ前に通じる高知市街の中心地なのだから驚きだ。
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PR隊のこの日の一番メニューは高知県庁の表敬訪問だ。路面電車が走る市街地を抜け、歴史情緒溢れる城下町の風景を見ながら高知城の追手門に到着。空は青く澄み渡り、南国土佐の空気感。
高知の老舗サイクルショップ「Cycling Shop ヤマネ」の山根夫妻とKOCHI CTCクラブの皆さんなどが合流してくれた。高知のサイクル界は超ロングライド大会の「四万十無限大ライド」を終えたばかりで、ホットなタイミングだった。
高知のゆるキャラ「カツオ人間」や「坂本龍馬くん」「くろしおくん」もお出迎え。ゆるキャラはやはりここでも活躍のようです(笑)
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県庁に到着した一行に対応してくれたのは岩城孝章副知事ら。門田さんによれば高知県は今までもどの県よりも愛媛県の進める自転車事業に理解があり、連携が取れていた県だという。愛媛が率先して始めたサイクリングロードを示すブルーラインも、高知県内随所にすでに引かれているとか。
岩城副知事は台湾が大好きだということで、PR大使の一青妙さんと大いに話が弾んだ。同席した坂本孝幸県議会議員も日台友好議員連盟会長をつとめられているそうで、一青さんは「ぜひ環島にご一緒しましょう!」と、台湾一周サイクリングへお誘いしていた。坂本氏は「いつか東海岸をサイクリングしたい」と熱いお返事。台湾の東海岸は自然が残された一帯であり、サイクリストにとって素晴らしいエリア。こういった話が県のトップレベルとできるのは、「さすが高知ぜよ!」である。
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私も県庁職員に自転車好きの友人が居る。その友人らが「高知ゆるゆるポタリング部」を立ち上げて活動し始めたのを教えてもらった。(フェイスブックページ)また、「ぐるっと高知サイクリングロード」も立ち上がったばかりだとか。高知でも自転車がキテいるようだ。
高知城を出発したPR隊一行は一路四万十川へと向かう。「日本最後の清流」としてあまりに有名な四万十川は、高知西部の内陸を曲がりくねって流れる河川だ。窪川あたりに河口が海につながるが、大部分は海岸線からは遠い。
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しかし四国一周モデルルートにこの四万十川は組み込まれている。それは四万十川だからだ。その理由を、門田さんは次のように説明する。
「四国一周は基本的に海岸線を回りますが、ここまできたら誰もが四万十川に沿って走りたいと思うはずです。それも河口を渡るだけではなく、沈下橋の2つ3つは自転車で渡ってみたいと思うはずなんです。他の県では走るのに冗長な半島などは大胆にコースからカットしていますが、四万十川は流れに沿って走るルートを引きました。つまり走るべき、見せるべき四国という考え方でルートを決めているんです」。
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ちょうど海岸線を延々と走ることに飽きのくる頃だろう。と同時に、グルメという観点でも四万十川は走るべきルートなのだと門田さんは言う。「ここまで走ってくると、ずっと海の幸で、魚づくしなんです。刺し身にも飽きが来ているはずです。鰻も魚ですが、そろそろガツンとスタミナのつくものが食べたくなるタイミングです。イノブタなど山の幸もありますから、四万十はグルメという点からも回り道していい場所なんです」。
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確かに四万十川を自転車で渡るのはサイクリストの憧れだろう。キャンプツーリング派なら沈下橋のかかる河原で焚き火をし、テントを張って眠りにつきたい。筆者はかつて四国一周中にそれを実行したことがあるが、満点の星空に、川を棲家とする虫たちの濃密な声を聞きながら眠りについた思い出がある。今なお忘れられない素晴らしい体験だった。もう10年以上の前のことになるが、時間ができたらまたここでひとり過ごしたい、と妄想にふけってしまった。
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一行の今日の最終目的地は足摺岬。四国の最南端だ。この一帯は植生も変わり、独特の南国風景になる。日が沈む時間に到着し、薄暗くなった足摺岬までの遊歩道を自転車のライトを便りに歩いた。岬から見る視界に開けた太平洋は、地球の丸さを実感できる。
宿は「足摺パシフィックホテル」という名の歴史のあるホテル。昭和を感じさせるレトロな雰囲気がたまらない。皇室一行が泊まったという「ロイヤルスウィート」部屋で過ごす時間も体験できた。
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このホテルも自転車旅行者歓迎の宿だ。ホテル側のご厚意により部屋への自転車持ち込みが可能。この僻地では外に放置したとしても盗難の心配など無さそうなものだが、なによりその心遣いが嬉しい。門田さんらルート設定担当者らは現地のホテルや民宿などを一軒一軒訪ね、自転車旅行者の受け入れに前向きな宿かどうかを確かめているのだそうだ。
「単に施設が整っているかや部屋に自転車を持ち込めるかどうかといったことだけでなく、経営者に本当にサイクリストを歓迎する姿勢があるかどうかも見極めています。将来的にはその心がけがサービスの差になって現れると思っています。ゆくゆくは”サイクリストホテル”を最高とした星やランク付けもして、ガイドやホームページに掲載するなどしていくつもりです」。
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ホテルが建つ崖上の露天風呂は太平洋に向かって開けていて、波の音以外は聞こえない静寂に包まれたなか、夜の漁にいそしむ漁船の様子を眺めながらの贅沢な時間を過ごすことができた。最果ての地には独特のロマンが満ちているものだ。旅はいよいよ終りが見えてきた。
明日は、最終目的地の愛媛県松山市を目指して走る。(続く)
photo&text:Makoto.AYANO
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