2016/10/17(月) - 09:05
ピナレロの生まれ故郷・北イタリアのトレヴィーゾに滞在し、“街の自転車屋さん”としても愛されるピナレロの魅力を目の当たりにした日向さん。大会前日の試走会では往年の名選手インデュラインと楽しく走り、いよいよラ・ピナ サイクリングマラソン(以下、ラ・ピナ)の当日を迎えました。(前日編はこちらから。)
日向さん、人生初!回収車におびえながら走る
結果から先に申し上げますと、日向さん、無事にラ・ピナを完走できました~!! ……なんて書くと、「あれっ?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。日本でも数多くのグランフォンドやロングライドを走り、2015年にはエタップ・デュ・ツールに参加して、距離142km・累計獲得標高4,000m超もの難関ステージを好タイムで完走した経験を持つ日向さんにとって、ラ・ピナ(距離158km・累計獲得標高約2,600m)完走は余裕だろうと。
実は、日向さん自身もそう思っていたひとり。しかし、この大会はそんなに甘くなかったのです。「標高差では測れない奥深さが本場のグランフォンドにはありました」と日向さん。ラ・ピナを振り返り、「回収車から逃げ続けた一日」と笑います。
人気の秘密は苦しくも楽しいコースにあり!
ラ・ピナのスタートはピナレロ本店前から。古都の静かな街並みを数千人のライダーたちが埋め尽くします。「ひとつの自転車メーカーが主催するイベントに、こんなに大勢の人が集まることに驚きました!」と日向さん。しかし、人気の秘密はまさにそこにあるのです。
“自転車を愛し、自転車を知り尽くしている”ピナレロが主催する大会だから、まずなんといってもコースがおもしろい! ヴェネト平野から始まり、ブドウ畑の美しい丘陵地を経て、険しい山岳へ向かう……ピナレロを生み育んだ北イタリアの自然と文化をたっぷり堪能できるコースレイアウトは完璧(コースは数年に一度大きく変わります)。さらに、城壁のある街中からスタートする大会はグランフォンドの本場イタリアでもごくわずか。歴史的建造物の中から走り始める特別感もラ・ピナの魅力のひとつなのです。
序盤は集団走行でヴェネト平野を快走!
7時30分、にぎやかなイタリア語のカウントダウンで大会がスタート! ラッキーにもすぐに自分のペースに合う集団を見つけた日向さん、まずは集団で平地を激走します。その巡航速度たるや、約50km/h近く!!前後左右を囲まれ、肩がぶつかりそうな至近距離で走りながら、「日本では一列走行で前後の集団走行は練習できても、左右が近い状態はなかなか体験できなかったので楽しい! それに楽ちん!」とさっそく猛者っぷりを発揮。
そんな日向さんが驚いたのは、集団の形が風の動きによって変わることでした。「アマチュアの大会とは思えない見事さ!」。そうなのです、集団のなかを高スピードで走っていても怖さを感じなかったのは、イタリアのライダーたちが集団走行に慣れていたから。
一見ただのお腹が出たおじさんでも“走り方”を知っているのは、さすが“自転車は文化”のお国柄! 「言葉はわからなくても気持ちが通じたのを感じました!」と日向さん。ラ・ピナに挑戦する日向さんに感じてほしかったのはコレ! 集団でうまく走れたときの一体感こそ、グランフォンドの醍醐味なのです。
日本の坂バカの底力を見せつける!が……
ブドウ畑のなかを縫うように走る道は狭く、コースが上りに入ったこともあり、集団のスピードはガクッとダウン。「自転車から降りて待つ場面もありました」と日向さん。しかし、少しずつ前が進んできたところで巻き返し、上りで抜かされることはほとんどなかったそう! さすが日本が誇る坂バカです。
しかし、日向さんを苦しめたのが苦手の下り。上りで抜かした人にも、下りで追い抜かれ、「この大会で私がいちばん遅いかも、と思うほどドンドン抜かされました……」。モデルが本業ですから、“けがをしない”を主眼においた下りは正解。しかし、下り区間が終わった後に単独走になってしまうことが、日向さんの走りをさらに苦しくしました。
加えて日向さんを追い詰めたのが大会当日の暑さと、厳しく設定された足切り時間。関門に間に合わなければ、より短いメディオフォンドへと回されてしまうのは本場のグランフォンドではよくあること。「とにかく必死だったので、“ひとり旅”のときの記憶はあまりありません(笑)」。
日向さんのグランフォンド分析 「完走に必要なのはロードバイクの総合力」
しかし、上り坂となればまたも力を発揮する日向さん。ジロ・デ・イタリアの舞台になったこともある、グランフォンドコース最大の難所とされるサンボルド峠を「むしろ楽しんじゃいました」とはさすが!
そんな日向さんは、グランフォンドに求められるライダー像を、「平坦では集団走行し、坂を適度な速さで上り、かつスムーズに下れる人」とご明察。「昨年参加したエタップ・デュ・ツールは、山岳コースのすごさを体感させるため、『ひとりでも多くの人に走らせよう』という意図を感じました。上りの耐性があれば完走の確率は高いでしょう。一方、本場イタリアのグランフォンドは、足切り時間に間に合わなければ、容赦なくメディオフォンドに回すか、回収車に促されます。“ロードバイクにおける総合力”が高い人でないと完走は厳しいのです!」。
最終関門を越え、ゴールへ向けてラストスパート!
地元の人たちによるホスピタリティに溢れたエイドステーションもラ・ピナの魅力。しかし、日向さんがやっとの思いでエイドに着くと、「回収車が扉を開けて待ち構えている!」。回収されることだけは絶対に避けたかったので休憩もそこそこに出発。
なんとか最後の峠を下り終え、「逃げ切った~♪」と安心していると……今度は地元警察が待ち構えて、日向さんを停めようとする! 「言葉がわからないフリして突き進んじゃおうかな」とたくらむ日向さん。しかし、この警察官たちは「君たちは遅いから集団で走りなさい」と、近くの参加者を集めてグループを作ってくれたのでした。
ところが、「集団走行でラクできる!」と思ったのもつかの間、よく見れば先頭はオートバイ。もう足が残っていないのに、残りの20km近くを40km/h巡航で走らされるという地獄絵図……。「チギれたら回収されるかもしれない!」の思いだけを原動力に、日向さん、吐きそうになりながらラストスパート!
日向さん、グランフォンドに目覚める!
「もう走れない」と思っても、終わりが近づくと力がわいてくるもの。歴史のある城門をくぐって、感動のゴールを果たした日向さん。ゴール後には、前をひいてくれた中国人男性にお礼を言い、握手を交わしました。「走り終わったあと、頭のなかは真っ白状態。これまででいちばん過酷なイベントでした」。あの日向さんがここまで言う大会! みなさん、参加したくなってきたでしょう。
「去年の私では、足切りにあって完走できなかったように思います」と日向さん。「これまでは、体力・気合い・根性で走ってきた部分がありましたが、自転車のキャリアが長くなるにつれて、ラクに走る技術が自然と身についていたのかもしれません」。
とはいえ、ちょっぴり悔しさも残る初挑戦となった日向さん。「後半は、『もう自転車やだよ~』と本気で思っていましたからね」と笑います。「でもいまは『また本場のグランフォンドを走りたい!』と思っている自分が不思議です」。過酷さもまた、ラ・ピナの魅力のひとつ。グランフォンドに目覚めた日向さんのこれからの活躍に要注目です!
日向さん、相棒のピナ太(DOGMA F8)を語る
日向さんのラ・ピナ完走を支えたDOGMA F8。「ピナレロの方から『ピナレロのバイクはグランフォンドを想定して作られている』と聞いても、じつのところ私はピンと来ていませんでした」と日向さん。というのも、日本で体験していたグランフォンドは「山岳が多いロングライド」だったから。
しかし、「本場のグランフォンドは、山岳登坂はもちろん、集団走行あり、“ひとり旅”ありの一筋縄ではいかないものでした。グランフォンドを想定して作られたピナレロのバイクは、『オールラウンダー』。しかもそれは『特徴のないバイク』ではなくて、『どんな状況にも強いバイク』だったんです」とベタ惚れ。ラ・ピナを通じて、日向さんとピナ太の信頼関係はますます強くなったようです。
photo:Tomohiro Hoshino
日向さん、人生初!回収車におびえながら走る
結果から先に申し上げますと、日向さん、無事にラ・ピナを完走できました~!! ……なんて書くと、「あれっ?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。日本でも数多くのグランフォンドやロングライドを走り、2015年にはエタップ・デュ・ツールに参加して、距離142km・累計獲得標高4,000m超もの難関ステージを好タイムで完走した経験を持つ日向さんにとって、ラ・ピナ(距離158km・累計獲得標高約2,600m)完走は余裕だろうと。
実は、日向さん自身もそう思っていたひとり。しかし、この大会はそんなに甘くなかったのです。「標高差では測れない奥深さが本場のグランフォンドにはありました」と日向さん。ラ・ピナを振り返り、「回収車から逃げ続けた一日」と笑います。
人気の秘密は苦しくも楽しいコースにあり!
ラ・ピナのスタートはピナレロ本店前から。古都の静かな街並みを数千人のライダーたちが埋め尽くします。「ひとつの自転車メーカーが主催するイベントに、こんなに大勢の人が集まることに驚きました!」と日向さん。しかし、人気の秘密はまさにそこにあるのです。
“自転車を愛し、自転車を知り尽くしている”ピナレロが主催する大会だから、まずなんといってもコースがおもしろい! ヴェネト平野から始まり、ブドウ畑の美しい丘陵地を経て、険しい山岳へ向かう……ピナレロを生み育んだ北イタリアの自然と文化をたっぷり堪能できるコースレイアウトは完璧(コースは数年に一度大きく変わります)。さらに、城壁のある街中からスタートする大会はグランフォンドの本場イタリアでもごくわずか。歴史的建造物の中から走り始める特別感もラ・ピナの魅力のひとつなのです。
序盤は集団走行でヴェネト平野を快走!
7時30分、にぎやかなイタリア語のカウントダウンで大会がスタート! ラッキーにもすぐに自分のペースに合う集団を見つけた日向さん、まずは集団で平地を激走します。その巡航速度たるや、約50km/h近く!!前後左右を囲まれ、肩がぶつかりそうな至近距離で走りながら、「日本では一列走行で前後の集団走行は練習できても、左右が近い状態はなかなか体験できなかったので楽しい! それに楽ちん!」とさっそく猛者っぷりを発揮。
そんな日向さんが驚いたのは、集団の形が風の動きによって変わることでした。「アマチュアの大会とは思えない見事さ!」。そうなのです、集団のなかを高スピードで走っていても怖さを感じなかったのは、イタリアのライダーたちが集団走行に慣れていたから。
一見ただのお腹が出たおじさんでも“走り方”を知っているのは、さすが“自転車は文化”のお国柄! 「言葉はわからなくても気持ちが通じたのを感じました!」と日向さん。ラ・ピナに挑戦する日向さんに感じてほしかったのはコレ! 集団でうまく走れたときの一体感こそ、グランフォンドの醍醐味なのです。
日本の坂バカの底力を見せつける!が……
ブドウ畑のなかを縫うように走る道は狭く、コースが上りに入ったこともあり、集団のスピードはガクッとダウン。「自転車から降りて待つ場面もありました」と日向さん。しかし、少しずつ前が進んできたところで巻き返し、上りで抜かされることはほとんどなかったそう! さすが日本が誇る坂バカです。
しかし、日向さんを苦しめたのが苦手の下り。上りで抜かした人にも、下りで追い抜かれ、「この大会で私がいちばん遅いかも、と思うほどドンドン抜かされました……」。モデルが本業ですから、“けがをしない”を主眼においた下りは正解。しかし、下り区間が終わった後に単独走になってしまうことが、日向さんの走りをさらに苦しくしました。
加えて日向さんを追い詰めたのが大会当日の暑さと、厳しく設定された足切り時間。関門に間に合わなければ、より短いメディオフォンドへと回されてしまうのは本場のグランフォンドではよくあること。「とにかく必死だったので、“ひとり旅”のときの記憶はあまりありません(笑)」。
日向さんのグランフォンド分析 「完走に必要なのはロードバイクの総合力」
しかし、上り坂となればまたも力を発揮する日向さん。ジロ・デ・イタリアの舞台になったこともある、グランフォンドコース最大の難所とされるサンボルド峠を「むしろ楽しんじゃいました」とはさすが!
そんな日向さんは、グランフォンドに求められるライダー像を、「平坦では集団走行し、坂を適度な速さで上り、かつスムーズに下れる人」とご明察。「昨年参加したエタップ・デュ・ツールは、山岳コースのすごさを体感させるため、『ひとりでも多くの人に走らせよう』という意図を感じました。上りの耐性があれば完走の確率は高いでしょう。一方、本場イタリアのグランフォンドは、足切り時間に間に合わなければ、容赦なくメディオフォンドに回すか、回収車に促されます。“ロードバイクにおける総合力”が高い人でないと完走は厳しいのです!」。
最終関門を越え、ゴールへ向けてラストスパート!
地元の人たちによるホスピタリティに溢れたエイドステーションもラ・ピナの魅力。しかし、日向さんがやっとの思いでエイドに着くと、「回収車が扉を開けて待ち構えている!」。回収されることだけは絶対に避けたかったので休憩もそこそこに出発。
なんとか最後の峠を下り終え、「逃げ切った~♪」と安心していると……今度は地元警察が待ち構えて、日向さんを停めようとする! 「言葉がわからないフリして突き進んじゃおうかな」とたくらむ日向さん。しかし、この警察官たちは「君たちは遅いから集団で走りなさい」と、近くの参加者を集めてグループを作ってくれたのでした。
ところが、「集団走行でラクできる!」と思ったのもつかの間、よく見れば先頭はオートバイ。もう足が残っていないのに、残りの20km近くを40km/h巡航で走らされるという地獄絵図……。「チギれたら回収されるかもしれない!」の思いだけを原動力に、日向さん、吐きそうになりながらラストスパート!
日向さん、グランフォンドに目覚める!
「もう走れない」と思っても、終わりが近づくと力がわいてくるもの。歴史のある城門をくぐって、感動のゴールを果たした日向さん。ゴール後には、前をひいてくれた中国人男性にお礼を言い、握手を交わしました。「走り終わったあと、頭のなかは真っ白状態。これまででいちばん過酷なイベントでした」。あの日向さんがここまで言う大会! みなさん、参加したくなってきたでしょう。
「去年の私では、足切りにあって完走できなかったように思います」と日向さん。「これまでは、体力・気合い・根性で走ってきた部分がありましたが、自転車のキャリアが長くなるにつれて、ラクに走る技術が自然と身についていたのかもしれません」。
とはいえ、ちょっぴり悔しさも残る初挑戦となった日向さん。「後半は、『もう自転車やだよ~』と本気で思っていましたからね」と笑います。「でもいまは『また本場のグランフォンドを走りたい!』と思っている自分が不思議です」。過酷さもまた、ラ・ピナの魅力のひとつ。グランフォンドに目覚めた日向さんのこれからの活躍に要注目です!
日向さん、相棒のピナ太(DOGMA F8)を語る
日向さんのラ・ピナ完走を支えたDOGMA F8。「ピナレロの方から『ピナレロのバイクはグランフォンドを想定して作られている』と聞いても、じつのところ私はピンと来ていませんでした」と日向さん。というのも、日本で体験していたグランフォンドは「山岳が多いロングライド」だったから。
しかし、「本場のグランフォンドは、山岳登坂はもちろん、集団走行あり、“ひとり旅”ありの一筋縄ではいかないものでした。グランフォンドを想定して作られたピナレロのバイクは、『オールラウンダー』。しかもそれは『特徴のないバイク』ではなくて、『どんな状況にも強いバイク』だったんです」とベタ惚れ。ラ・ピナを通じて、日向さんとピナ太の信頼関係はますます強くなったようです。
photo:Tomohiro Hoshino
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