2016/09/06(火) - 08:53
『TRACK TOP TOKYO 2016』イベントレポートの後編は、胸熱のドキュメンタリー映画『パーソナル・ゴールド』、ブリヂストンサイクルが送り出した歴代オリンピックバイク、そして当イベントのハブとも言える50m木製バンクにフォーカス。
映画『パーソナル・ゴールド』
28日は15時から上映されたドキュメンタリー『パーソナル・ゴールド(Personal Gold)』。プランもない予算もない、どこかで聞いたようなナイナイ尽くしの中、団体追い抜き(チームパシュート)の米国代表選手である自分の妻を、オリンピックの舞台に送り出そうと立ち上がる夫たち。デジタルガジェットとそこから生まれるデータを読み取り、専門家の協力を得ながら分析し、彼女たちのトレーニングや生活に取り込んでいく。
「環境が整わないからと言って、やらない理由にはならない」と言うセリフが心に響く。そうして様々な葛藤や紆余曲折を経て、ついにはロンドン五輪で銀メダルを獲得。書けばシンプルな成功ストーリーだけれど、その中身はリアル。
27日の上映後に行われたチームブリヂストン・アンカー所属の一丸尚伍選手によるトークショーでは「まさに今僕らが置かれている状況が、この映画の彼女たちに近い」と語っていたそうで、東京オリンピックに向けた日本の自転車選手達のプレッシャーや危機感がその一言だけでも感じ取れた。自転車に限らず、何らかの競技に触れている時間が長い人ほど、胸に熱いものがこみ上げてくる事は間違いない。
上映が終わると弊誌の磯部が「3分20秒を切る!」と言って木製バンクへと乗り込んでいった。子供も走るわずか50mのショートトラックで何をどうするのか。タイム計測ないし。
木製可動型バンク『TERRABANK』
このイベントの目玉の一つ、アジア初の50m木製可動型バンク。その輪の中心にはブリヂストンのロゴを奢ったトラックバイクT9R、その奥にはフリーDJブース。このバンクは幅が狭いがゆえ、前走者を追い抜く際には紳士な振る舞いが要求される、自転車教育にもうってつけのコース…とまで言うと言い過ぎか。筆者も無料貸出サービスをしていたアンカーのシクロクロスをお借りして映画の前に乗ってみた。
すぐにやってくるコーナーのおかげでスピードは出過ぎない。コーナーの傾斜角も程よく、初心者でも周回しながらバンクの持つ特性が理解出来、遠心力を利用したコーナリングが楽しめる。
もちろん傾斜が緩いとは言え、コーナーに入ったら下手に減速しない方が安全。適切な角度と速度で入れば、内側のペダルがコースにつく事もないため、ペダルを踏み、トラクションをかけながら回って行ける。そんな感じで楽しくなって、ついつい映画の上映直前までグルグル回り続けてしまった。取材で来ていることもすっかり忘れて…。
なお、上映後に意気込んでいた弊誌磯部はマディソンごっこをしていた。映画の競技はパシュートじゃなかったっけ。3分20秒切りは記憶の彼方に。
オリンピック代表選手のバイク
TERRABANKの横には、当イベントの協賛社であるブリヂストンサイクルが送り出したオリンピック日本代表選手達の使用バイクが、当時のセッティングのまま展示されていた。田代恭崇選手のロードバイクは、STIレバーの位置も本人が調整したままだそうで、正面からよく見ると左右のポジションが違っている。
一方、鈴木雷太選手のバイクも興味深い。当時は現場でただ一人使い、大笑いされたと言うディスクブレーキも今やMTB界において必須の存在に。チェーンステーの間にあるブリッヂも現場で切除したのだとか。そんな鈴木雷太さんのぶっ飛びエピソード、詳しくはあんかーちょうちんで読んでいただきたい。
短い休憩を挟みつつ、会話やバンクでの走りを楽しんでいるとあっという間に終了時刻の18時になった。
当イベントのキュレーターを務めた澤隆志さんに話を伺うと、今回は倉庫と組立式の木製バンクが使えることを知り、それで何かやってみようと言うところからスタート。そこから知人でもあるショップさん達に声をかけ、ブリヂストンサイクルが協賛する形で実現に至ったと言う。
「バンクと言うとどうしてもピスト系の人達中心のイベントに思われがちですが、そうではなくて大人も子供も、いろんなジャンルの自転車好きが集まって、幅広く、かつ緩く盛り上がれるイベントを作りたかった。初めての試みで、何もないところから単独協賛してくれたブリヂストンサイクルさんには本当に感謝しています。」とは澤さんの談。
また、澤さんとブリヂストンサイクル双方が「次回は協賛やブースが増えて個々の負担を減らしつつ、より盛り上がるといいですね」と口を揃えており、今後のイベントの発展に同じような想いを抱いている点が印象に残った。次なる展開を楽しみに待ちたい。
text:Yuichiro Hosoda
photo:Yuichiro Hosoda, So Isobe
映画『パーソナル・ゴールド』
28日は15時から上映されたドキュメンタリー『パーソナル・ゴールド(Personal Gold)』。プランもない予算もない、どこかで聞いたようなナイナイ尽くしの中、団体追い抜き(チームパシュート)の米国代表選手である自分の妻を、オリンピックの舞台に送り出そうと立ち上がる夫たち。デジタルガジェットとそこから生まれるデータを読み取り、専門家の協力を得ながら分析し、彼女たちのトレーニングや生活に取り込んでいく。
「環境が整わないからと言って、やらない理由にはならない」と言うセリフが心に響く。そうして様々な葛藤や紆余曲折を経て、ついにはロンドン五輪で銀メダルを獲得。書けばシンプルな成功ストーリーだけれど、その中身はリアル。
27日の上映後に行われたチームブリヂストン・アンカー所属の一丸尚伍選手によるトークショーでは「まさに今僕らが置かれている状況が、この映画の彼女たちに近い」と語っていたそうで、東京オリンピックに向けた日本の自転車選手達のプレッシャーや危機感がその一言だけでも感じ取れた。自転車に限らず、何らかの競技に触れている時間が長い人ほど、胸に熱いものがこみ上げてくる事は間違いない。
上映が終わると弊誌の磯部が「3分20秒を切る!」と言って木製バンクへと乗り込んでいった。子供も走るわずか50mのショートトラックで何をどうするのか。タイム計測ないし。
木製可動型バンク『TERRABANK』
このイベントの目玉の一つ、アジア初の50m木製可動型バンク。その輪の中心にはブリヂストンのロゴを奢ったトラックバイクT9R、その奥にはフリーDJブース。このバンクは幅が狭いがゆえ、前走者を追い抜く際には紳士な振る舞いが要求される、自転車教育にもうってつけのコース…とまで言うと言い過ぎか。筆者も無料貸出サービスをしていたアンカーのシクロクロスをお借りして映画の前に乗ってみた。
すぐにやってくるコーナーのおかげでスピードは出過ぎない。コーナーの傾斜角も程よく、初心者でも周回しながらバンクの持つ特性が理解出来、遠心力を利用したコーナリングが楽しめる。
もちろん傾斜が緩いとは言え、コーナーに入ったら下手に減速しない方が安全。適切な角度と速度で入れば、内側のペダルがコースにつく事もないため、ペダルを踏み、トラクションをかけながら回って行ける。そんな感じで楽しくなって、ついつい映画の上映直前までグルグル回り続けてしまった。取材で来ていることもすっかり忘れて…。
なお、上映後に意気込んでいた弊誌磯部はマディソンごっこをしていた。映画の競技はパシュートじゃなかったっけ。3分20秒切りは記憶の彼方に。
オリンピック代表選手のバイク
TERRABANKの横には、当イベントの協賛社であるブリヂストンサイクルが送り出したオリンピック日本代表選手達の使用バイクが、当時のセッティングのまま展示されていた。田代恭崇選手のロードバイクは、STIレバーの位置も本人が調整したままだそうで、正面からよく見ると左右のポジションが違っている。
一方、鈴木雷太選手のバイクも興味深い。当時は現場でただ一人使い、大笑いされたと言うディスクブレーキも今やMTB界において必須の存在に。チェーンステーの間にあるブリッヂも現場で切除したのだとか。そんな鈴木雷太さんのぶっ飛びエピソード、詳しくはあんかーちょうちんで読んでいただきたい。
短い休憩を挟みつつ、会話やバンクでの走りを楽しんでいるとあっという間に終了時刻の18時になった。
当イベントのキュレーターを務めた澤隆志さんに話を伺うと、今回は倉庫と組立式の木製バンクが使えることを知り、それで何かやってみようと言うところからスタート。そこから知人でもあるショップさん達に声をかけ、ブリヂストンサイクルが協賛する形で実現に至ったと言う。
「バンクと言うとどうしてもピスト系の人達中心のイベントに思われがちですが、そうではなくて大人も子供も、いろんなジャンルの自転車好きが集まって、幅広く、かつ緩く盛り上がれるイベントを作りたかった。初めての試みで、何もないところから単独協賛してくれたブリヂストンサイクルさんには本当に感謝しています。」とは澤さんの談。
また、澤さんとブリヂストンサイクル双方が「次回は協賛やブースが増えて個々の負担を減らしつつ、より盛り上がるといいですね」と口を揃えており、今後のイベントの発展に同じような想いを抱いている点が印象に残った。次なる展開を楽しみに待ちたい。
text:Yuichiro Hosoda
photo:Yuichiro Hosoda, So Isobe
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