2016/01/11(月) - 09:11
スポーツMCとして各種自転車イベントで活躍する、MCアケさんのインドネシア自転車旅行記・後編。世界遺産を巡る道中で触れた現地の人々の底抜けの温かさと優しさ。その旅路を女性らしい視点でつづります。
当日の朝、目覚めて外に出てみると、雨季で連日大雨だったのに晴れてる! 奇跡は起きた! 自転車の神様ありがとう! 朝6時にジョグジャ一番の繁華街マリオボロ通りからスタート。出発する前に写真を1枚(なぜかみんな私のマネをして同じポーズしてくれています)。
ボロブドゥール寺院までは、市内から片道約42km。雨季とは思えないほど雲のない青空が、にやにやしてしまうほど気持ち良い。ただ、ずっとゆるい登りなのと、気温が30度以上で暑くてバテバテ…。前を引いてくれているマウンテンバイクの友達が、これまた速い(汗)。
でも、道は思っていた以上に舗装されていて走りやすい。昼から雨が降るかもしれないというので、ハイペースで向かいます。道中、「ジョグジャの富士山」ともいわれるムラピ山もくっきり見えましたが、ほぼノンストップゆえ写真は撮れませんでした。
さすがに世界遺産の中へは自転車を持って入れないので、急遽同行した彼らの友達が自転車を全員分預かってくれるという。さすが、ローカルだ。そこからすぐに、夢にまで見た、世界遺産ボロブドゥールが目の前にドーンと現れたのです。
うわーーー! 行けたらいいなと思っていた場所へついに来た!! 階段を上った先は、世界最大級の仏教遺跡、壮大な石造の建築物ボロブドゥール。
実はこのボロブドゥール、とてもミステリアスな遺跡です。建造後1000年以上も密林の中で火山灰に埋もれていたそうです。そして1814年に土の中から掘り起こされるまで、ずっと歴史から消え去っていたんです。長い眠りから覚めたボロブドゥール遺跡に関しては、未だ多くの謎が残っているそうで、なんだかこの場所へ来ると神秘的な空気を感じました。
目の前に広がるボロブドゥールを眺めながら、今、自分がなぜこの場所に自転車で、昨日出会ったばかりの友達と一緒に来ているんだろう? 突然不思議な気持ちでいっぱいになりました。自転車を通して知り合ったことが、わずか1日でこんな絆になるなんて。ただただ感動です。
行きは街の中を走ったけど、帰りは別のルートを案内してもらいました。のんびりと緑の中を走ります。ローカルだからこそ知っている道。地元の友達って最強です! きっと、観光で来て車で走っていたら、名前もないようなローカルロードを走ることもないんだろうな。とても幸せな体験です。
本当に暑くてヘロヘロになりながらホテルに戻ると、走行距離は約90km。ああ、キツかったけどめっちゃ楽しかったなぁ。
夜はゆっくり…する訳もなく(笑)、まだまだラストナイトということで、仲間たちと再合流してジョグジャカルタのデ◯ズニー? 王宮クラトン前の広場アルンスラタンへ。
写真は広場内に何十台もあった乗り物。実は、見た目は車だけど、足元にはペダルがついているのだ。しかしこの電飾は、まるでエレクトリカルパレードなみの豪華さ(笑)。しかも、自分の携帯をつないで漕ぎながら音楽を大音量で流せるという優れものなのだ。広場内をただグルグル回るだけなんだけど、大人も子供も大興奮! まるで一帯がディスコみたいだ。音楽が好きなインドネシア人ならですね。
朝6時に出発したこの日は長く、部屋に戻って来たのは深夜2時をまわっていました。次の日も、朝7時に起きて、ジョグジャ市内へ朝食ライドからのポタリングへ出発です。
ホテルを出てみたら、今日はカッコイイBROMPTON女子も来てくれていました。本当にありがたいこと。朝ご飯は、ソトという日本でいうとお汁多めのお粥みたいな感じのもの。味付けも優しくて本当に美味しい。飛行機の時間まで市内の観光地を、自転車 jalan−jalan(現地の言葉で「散歩」という意味です)。
目の前に見えて来たのは、1765年に建てられた水の離宮Water Castle「タマン・サリ」。古都らしい風情が残る細い路地裏を移動できるのも自転車ならでは。インドネシアを代表する伝統工芸品バティック(ろうけつ染め)を手作りしている方の姿も。賑やかな街中とは違う、ゆったりした時間の流れを感じながら、ジョグジャカルタの名所である王宮へ到着しました。
本当ならば、車やバイク、ベチャに乗って移動するところを、こうやって自分の自転車に乗りながら、ゆっくりと地元目線で観光地を回るなんて、なんて贅沢な気分なんでしょう。なんだかずっと前からこの場所にいるような気すらしてくるから不思議。ゆったりと自転車に乗るから、ゆったりとした街に溶け込めるのだと思うのです。
飛行機の時間が近づいてきた。空港へ向かおうとすると、ジョグジャに来てから初めてのスコールが降りだした。途中友達の家へ寄り、土砂降りの雨が止むのを待ってみたけど、なかなか止まない。途中に寄った友達のお母さんが、雨合羽やカバンを入れる防水バック、靴が濡れないようにビーチサンダルまで渡してくれた。至れり尽くせりだ。
私は「自転車もあるしタクシーで空港まで行くよ」と言ったのに、「いやいや大丈夫! 送るから」と。少し雨が弱くなった時を見計らって、雨に打たれながらバイクの後ろに乗る。前には、もう一人の友達が私の重い自転車を肩に担ぎながらバイクに乗っている。
雨に打たれながら空港まで、約30分。もう…何だか…ここまでしてもらって、自分には何がお返し出来るのか…見返りをまるで求めない思いやりや優しさに胸が締め付けられるような思いで、空港に到着。言葉では言い表せない胸一杯の気持ちになり、たまらず「とりあえずガソリン代だけもらって」とお金を差し出すと、すかさず、「いらない! 僕たちは友達でしょ また遊びにおいで」と…。
あかん! 涙腺崩壊。
まるで ウルルン滞在記だ。私、号泣…。ありがとう、ありがとう。ほんまにありがとう。伝えきれない感謝の気持ちが溢れ出た。こうやって思い出していてもまた泣きそうです(笑)。
一緒にいたのは、たった3日間。空港に到着してからずっと優しさをもらいっぱなし。日本には「おもてなし」と言う言葉があるけれど、彼らが突然やってきた日本人の私に残してくれたのは、それ以上ありったけの思いやりでした。自転車に乗るときも危なくないように、とても気を遣ってくれたし、言葉もとても分かりやすく話してくれたんだった。
自転車が繋いでくれた縁は、きっとこれからも続いていくんだろうな。いや、続けなきゃ。日本とインドネシアはとても離れているけれど、友達が出来たことでなんだか近いように感じる。距離の感覚なんてそんなもんなんだろな。
まさか自転車一台でこんなに世界が広がるなんて。ガイド本には決して載っていない、特別な道や時間がそこにはあるはずです。足元から、車輪レベルでその土地の景色や生活を楽しむこと。
自転車の楽しみ方は人それぞれ。「旅」というと、◯◯一周とか、◯万キロ横断という壮大なイメージがあるかもしれません。でも実際大人になって仕事も生活もある中、そこまでの時間を用意するのは少し難しい。
ならば、3泊や4泊でもいいんです。今までの旅に自転車をプラスするだけで、その旅はきっと何倍も深みを増したものになるでしょう。一度は海外自転車旅! 心からオススメします。日本でも「旅と自転車」をテーマにした、イベントをやりたいな。
私がインドネシアで経験したような出会いを日本のサイクリストみんなに経験して欲しい。逆に海外のサイクリストの方が日本で自転車旅している時は、何かお手伝いできる環境であってほしいと心から思います。
日本とインドネシアを自転車で繋ぐ架け橋になりたい。そんな思いから今回、仕事を必死に調整し、自転車語学プチ留学へ行くことにしました。年末12月30日から2016年1月19日までの約3週間、再び自転車と共にインドネシア、ジャワ島へ向かいます。現地ではどんなローカル旅が待っているのか。安否確認もかねて?(笑)動画でもお届けできればと思います。
最後に。インドネシアの言葉で好きな言葉を。
「Di mana tanah dipijak di situ langit dijunjung」 ー 直訳すると、どこの土地や場所にいても、そこのすべての物を大切にしなければならないということ。つまりは、「郷に入れば郷に従え」。私がいつも旅を楽しむうえで一番大切にしていることです。
みなさんにとって自転車を通じてたくさんの良い出会いがありますように。
MCアケ(竹内明美)さん プロフィール
兵庫県生まれ。スキー場のゲレンデDJとしてスポーツ現場を経験後、スノーボードやジェットスキー、自転車、マラソン等に携わる。現在はスポーツMCとして全国各地で旅と自転車をテーマに活躍中。
本人もロードバイクに乗り、特にインドネシアライドへと毎年遠征し、ローカルライダーと交流しながら日本の魅力を伝えている。レースやイベントで関わった土地や山へ積極的に走りに行き、自らの体験をMCに生かす「実走MC」としての一面も。景色を楽しみながら高い山にチャレンジする「ポタリングヒルクライム」が大好き。ジャパンカップやJプロツアー、各種自転車イベントでのDJ、MC業を務めた。6人兄妹で育った人懐っこいキャラクター。
ブログ アケまして☆ありがとう
当日の朝、目覚めて外に出てみると、雨季で連日大雨だったのに晴れてる! 奇跡は起きた! 自転車の神様ありがとう! 朝6時にジョグジャ一番の繁華街マリオボロ通りからスタート。出発する前に写真を1枚(なぜかみんな私のマネをして同じポーズしてくれています)。
ボロブドゥール寺院までは、市内から片道約42km。雨季とは思えないほど雲のない青空が、にやにやしてしまうほど気持ち良い。ただ、ずっとゆるい登りなのと、気温が30度以上で暑くてバテバテ…。前を引いてくれているマウンテンバイクの友達が、これまた速い(汗)。
でも、道は思っていた以上に舗装されていて走りやすい。昼から雨が降るかもしれないというので、ハイペースで向かいます。道中、「ジョグジャの富士山」ともいわれるムラピ山もくっきり見えましたが、ほぼノンストップゆえ写真は撮れませんでした。
さすがに世界遺産の中へは自転車を持って入れないので、急遽同行した彼らの友達が自転車を全員分預かってくれるという。さすが、ローカルだ。そこからすぐに、夢にまで見た、世界遺産ボロブドゥールが目の前にドーンと現れたのです。
うわーーー! 行けたらいいなと思っていた場所へついに来た!! 階段を上った先は、世界最大級の仏教遺跡、壮大な石造の建築物ボロブドゥール。
実はこのボロブドゥール、とてもミステリアスな遺跡です。建造後1000年以上も密林の中で火山灰に埋もれていたそうです。そして1814年に土の中から掘り起こされるまで、ずっと歴史から消え去っていたんです。長い眠りから覚めたボロブドゥール遺跡に関しては、未だ多くの謎が残っているそうで、なんだかこの場所へ来ると神秘的な空気を感じました。
目の前に広がるボロブドゥールを眺めながら、今、自分がなぜこの場所に自転車で、昨日出会ったばかりの友達と一緒に来ているんだろう? 突然不思議な気持ちでいっぱいになりました。自転車を通して知り合ったことが、わずか1日でこんな絆になるなんて。ただただ感動です。
行きは街の中を走ったけど、帰りは別のルートを案内してもらいました。のんびりと緑の中を走ります。ローカルだからこそ知っている道。地元の友達って最強です! きっと、観光で来て車で走っていたら、名前もないようなローカルロードを走ることもないんだろうな。とても幸せな体験です。
本当に暑くてヘロヘロになりながらホテルに戻ると、走行距離は約90km。ああ、キツかったけどめっちゃ楽しかったなぁ。
夜はゆっくり…する訳もなく(笑)、まだまだラストナイトということで、仲間たちと再合流してジョグジャカルタのデ◯ズニー? 王宮クラトン前の広場アルンスラタンへ。
写真は広場内に何十台もあった乗り物。実は、見た目は車だけど、足元にはペダルがついているのだ。しかしこの電飾は、まるでエレクトリカルパレードなみの豪華さ(笑)。しかも、自分の携帯をつないで漕ぎながら音楽を大音量で流せるという優れものなのだ。広場内をただグルグル回るだけなんだけど、大人も子供も大興奮! まるで一帯がディスコみたいだ。音楽が好きなインドネシア人ならですね。
朝6時に出発したこの日は長く、部屋に戻って来たのは深夜2時をまわっていました。次の日も、朝7時に起きて、ジョグジャ市内へ朝食ライドからのポタリングへ出発です。
ホテルを出てみたら、今日はカッコイイBROMPTON女子も来てくれていました。本当にありがたいこと。朝ご飯は、ソトという日本でいうとお汁多めのお粥みたいな感じのもの。味付けも優しくて本当に美味しい。飛行機の時間まで市内の観光地を、自転車 jalan−jalan(現地の言葉で「散歩」という意味です)。
目の前に見えて来たのは、1765年に建てられた水の離宮Water Castle「タマン・サリ」。古都らしい風情が残る細い路地裏を移動できるのも自転車ならでは。インドネシアを代表する伝統工芸品バティック(ろうけつ染め)を手作りしている方の姿も。賑やかな街中とは違う、ゆったりした時間の流れを感じながら、ジョグジャカルタの名所である王宮へ到着しました。
本当ならば、車やバイク、ベチャに乗って移動するところを、こうやって自分の自転車に乗りながら、ゆっくりと地元目線で観光地を回るなんて、なんて贅沢な気分なんでしょう。なんだかずっと前からこの場所にいるような気すらしてくるから不思議。ゆったりと自転車に乗るから、ゆったりとした街に溶け込めるのだと思うのです。
飛行機の時間が近づいてきた。空港へ向かおうとすると、ジョグジャに来てから初めてのスコールが降りだした。途中友達の家へ寄り、土砂降りの雨が止むのを待ってみたけど、なかなか止まない。途中に寄った友達のお母さんが、雨合羽やカバンを入れる防水バック、靴が濡れないようにビーチサンダルまで渡してくれた。至れり尽くせりだ。
私は「自転車もあるしタクシーで空港まで行くよ」と言ったのに、「いやいや大丈夫! 送るから」と。少し雨が弱くなった時を見計らって、雨に打たれながらバイクの後ろに乗る。前には、もう一人の友達が私の重い自転車を肩に担ぎながらバイクに乗っている。
雨に打たれながら空港まで、約30分。もう…何だか…ここまでしてもらって、自分には何がお返し出来るのか…見返りをまるで求めない思いやりや優しさに胸が締め付けられるような思いで、空港に到着。言葉では言い表せない胸一杯の気持ちになり、たまらず「とりあえずガソリン代だけもらって」とお金を差し出すと、すかさず、「いらない! 僕たちは友達でしょ また遊びにおいで」と…。
あかん! 涙腺崩壊。
まるで ウルルン滞在記だ。私、号泣…。ありがとう、ありがとう。ほんまにありがとう。伝えきれない感謝の気持ちが溢れ出た。こうやって思い出していてもまた泣きそうです(笑)。
一緒にいたのは、たった3日間。空港に到着してからずっと優しさをもらいっぱなし。日本には「おもてなし」と言う言葉があるけれど、彼らが突然やってきた日本人の私に残してくれたのは、それ以上ありったけの思いやりでした。自転車に乗るときも危なくないように、とても気を遣ってくれたし、言葉もとても分かりやすく話してくれたんだった。
自転車が繋いでくれた縁は、きっとこれからも続いていくんだろうな。いや、続けなきゃ。日本とインドネシアはとても離れているけれど、友達が出来たことでなんだか近いように感じる。距離の感覚なんてそんなもんなんだろな。
まさか自転車一台でこんなに世界が広がるなんて。ガイド本には決して載っていない、特別な道や時間がそこにはあるはずです。足元から、車輪レベルでその土地の景色や生活を楽しむこと。
自転車の楽しみ方は人それぞれ。「旅」というと、◯◯一周とか、◯万キロ横断という壮大なイメージがあるかもしれません。でも実際大人になって仕事も生活もある中、そこまでの時間を用意するのは少し難しい。
ならば、3泊や4泊でもいいんです。今までの旅に自転車をプラスするだけで、その旅はきっと何倍も深みを増したものになるでしょう。一度は海外自転車旅! 心からオススメします。日本でも「旅と自転車」をテーマにした、イベントをやりたいな。
私がインドネシアで経験したような出会いを日本のサイクリストみんなに経験して欲しい。逆に海外のサイクリストの方が日本で自転車旅している時は、何かお手伝いできる環境であってほしいと心から思います。
日本とインドネシアを自転車で繋ぐ架け橋になりたい。そんな思いから今回、仕事を必死に調整し、自転車語学プチ留学へ行くことにしました。年末12月30日から2016年1月19日までの約3週間、再び自転車と共にインドネシア、ジャワ島へ向かいます。現地ではどんなローカル旅が待っているのか。安否確認もかねて?(笑)動画でもお届けできればと思います。
最後に。インドネシアの言葉で好きな言葉を。
「Di mana tanah dipijak di situ langit dijunjung」 ー 直訳すると、どこの土地や場所にいても、そこのすべての物を大切にしなければならないということ。つまりは、「郷に入れば郷に従え」。私がいつも旅を楽しむうえで一番大切にしていることです。
みなさんにとって自転車を通じてたくさんの良い出会いがありますように。
MCアケ(竹内明美)さん プロフィール
兵庫県生まれ。スキー場のゲレンデDJとしてスポーツ現場を経験後、スノーボードやジェットスキー、自転車、マラソン等に携わる。現在はスポーツMCとして全国各地で旅と自転車をテーマに活躍中。
本人もロードバイクに乗り、特にインドネシアライドへと毎年遠征し、ローカルライダーと交流しながら日本の魅力を伝えている。レースやイベントで関わった土地や山へ積極的に走りに行き、自らの体験をMCに生かす「実走MC」としての一面も。景色を楽しみながら高い山にチャレンジする「ポタリングヒルクライム」が大好き。ジャパンカップやJプロツアー、各種自転車イベントでのDJ、MC業を務めた。6人兄妹で育った人懐っこいキャラクター。
ブログ アケまして☆ありがとう
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