2009/07/05(日) - 00:29
「あそこにあるのはカーボンハンドルだよな。今度はあれを試すぞ。」
メタボ会長が悪魔の置き土産を残してから3日が過ぎ、編集部の業務も少しだけ落ち着いてきた。
「明後日の編集会議までに、会長のハンドル交換済ませないとまずくないですか?」
前回、台風直撃を誘導した編集部員がバツ悪そうな表情でモジモジと言い出した。
みんなソノ話題には触れないようにしてはいたものの、誰かがやらなきゃしょうがない。結果、私が重い腰を上げざるを得ない空気が編集部に垂れこめる。
パーツ棚にカーボンハンドルバーを取りに行った私の目に中古のコンポパーツ達が飛び込んできた。
多少ホコリを被っているものの、昨年まで現役バリバリで使われていたスグレモノ達である。
「もう一度、思い切り走り回りたいよ」寂しげな彼らが切なく語り掛けて来る。
そんな彼等を眺めていると
「コンポ・ホイールに手を入れればレースユーズにも十分対応できそうですね。」
以前、インプレを担当してくれたライダーの言葉が再び、悪魔の囁きを私に奏でる。
「どーせなら、全部変えちゃおっか?」
私の提案に編集部内がパッと明るくなる。そう、ここに居る人間は全員元を正せば自転車バカの集団なのである。
そうと決まれば、話も動きも速かった。連日の編集作業の時とは全員が別人のような笑顔で取り組んでいる。
倉庫の奥を引っ掻き回してワイヤー類を探し当てては、着々と組み付けてゆく。彼らの輝く眼差しを見てると、微笑ましく穏やかな気持ちになる。
ふと、以前本社に呼び出された時のメタボ会長の一言が頭に蘇った。
「君たちを見てると仕事が辛そうに見えるけど、仕事って苦しむもんじゃなく楽しむもんだぞ。編集部全体が今の仕事を心から楽しめるように頑張ってみな。それさえできれば何も言わない。その時は勝手に編集部の赤字は無くなってる筈だから。」
まさに今の彼らの姿を暗示してた?
この雰囲気で全員が日々の作業に取り組めれば、作業効率は日常のそれとは比べのものにならない事は明白である。言われてみれば、メタボ会長はいつも楽しそうだ。
いやいや、騙されないと固く誓ったじゃないか!
そんな私の心中などお構いなしに、無邪気な笑顔を絶やすことなく編集部員たちの作業は続く。ほんの1時間でパーツ組込作業が終了。間髪入れずに恒例の試乗会が始まる。
「おいおい。君たち仕事は大丈夫なのかな?」
思わずメタボ会長のような言葉を発しそうになる自分に気づき複雑な気持ちになる。
まさかこの私までアノ人の思考回路に近づき始めているのでは?
イヤイヤ!この私に限ってそんな事は有り得ない!はずだ。。。
仕事は楽しむものだ!とメタボ会長も言ってたじゃないか。
チョット都合良過ぎる?とも思ったが、試乗会の誘惑には誰も勝てない。
「これならマジでヒルクライムいけるんじゃない?」
「軽快そのもの!シフトストレスも無いからガンガン回せる。」
「真面目に速いよ。これ欲しいかも。」
「カーボンハンドルだけで振動がかなり軽減されてる。」
もう品評会は止まらない。
自分たちで組み込んだバイクは常に称賛の対象となる。
この楽しさを覚えると、チューンアップが止められなくのだ。
正直な感想を述べると、完全な別物としか表現できない。車体重量も8.8kgにまで抑えられ、購入当初のもたつき感は完全に払拭され、ダイレクトに答える事しかできないロードレーサーに生まれ変わっていた。この子を連れて何処かの大会に参加したくなる衝動にすら駆られる。
こんな素晴らしい子なのに、メタボ会長にとっては、猫に小判。ブタ(会長?)に真珠。でしかないのだが。。
とにかく、これでいつ会長が来ても安心である。
編集会議の資料まとめは明日にして、今日は早く帰ろう。
次回は、続きそう。
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
(プロフィール)
メタボ会長
身長 172cm
体重 87kg
体脂肪率 27%
当サイト運営法人の代表取締役。
高校3年まで野球に明け暮れ、大学時代にオートバイのロードレースに夢中になり卒業後、メーカー系チームに所属し全日本選手権に3年間出場。鳴かず飛ばずで所属チームを解雇され、その後、着々と太り続ける典型的な中年体型オヤジ。
タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。
メタボ会長が悪魔の置き土産を残してから3日が過ぎ、編集部の業務も少しだけ落ち着いてきた。
「明後日の編集会議までに、会長のハンドル交換済ませないとまずくないですか?」
前回、台風直撃を誘導した編集部員がバツ悪そうな表情でモジモジと言い出した。
みんなソノ話題には触れないようにしてはいたものの、誰かがやらなきゃしょうがない。結果、私が重い腰を上げざるを得ない空気が編集部に垂れこめる。
パーツ棚にカーボンハンドルバーを取りに行った私の目に中古のコンポパーツ達が飛び込んできた。
多少ホコリを被っているものの、昨年まで現役バリバリで使われていたスグレモノ達である。
「もう一度、思い切り走り回りたいよ」寂しげな彼らが切なく語り掛けて来る。
そんな彼等を眺めていると
「コンポ・ホイールに手を入れればレースユーズにも十分対応できそうですね。」
以前、インプレを担当してくれたライダーの言葉が再び、悪魔の囁きを私に奏でる。
「どーせなら、全部変えちゃおっか?」
私の提案に編集部内がパッと明るくなる。そう、ここに居る人間は全員元を正せば自転車バカの集団なのである。
そうと決まれば、話も動きも速かった。連日の編集作業の時とは全員が別人のような笑顔で取り組んでいる。
倉庫の奥を引っ掻き回してワイヤー類を探し当てては、着々と組み付けてゆく。彼らの輝く眼差しを見てると、微笑ましく穏やかな気持ちになる。
ふと、以前本社に呼び出された時のメタボ会長の一言が頭に蘇った。
「君たちを見てると仕事が辛そうに見えるけど、仕事って苦しむもんじゃなく楽しむもんだぞ。編集部全体が今の仕事を心から楽しめるように頑張ってみな。それさえできれば何も言わない。その時は勝手に編集部の赤字は無くなってる筈だから。」
まさに今の彼らの姿を暗示してた?
この雰囲気で全員が日々の作業に取り組めれば、作業効率は日常のそれとは比べのものにならない事は明白である。言われてみれば、メタボ会長はいつも楽しそうだ。
いやいや、騙されないと固く誓ったじゃないか!
そんな私の心中などお構いなしに、無邪気な笑顔を絶やすことなく編集部員たちの作業は続く。ほんの1時間でパーツ組込作業が終了。間髪入れずに恒例の試乗会が始まる。
「おいおい。君たち仕事は大丈夫なのかな?」
思わずメタボ会長のような言葉を発しそうになる自分に気づき複雑な気持ちになる。
まさかこの私までアノ人の思考回路に近づき始めているのでは?
イヤイヤ!この私に限ってそんな事は有り得ない!はずだ。。。
仕事は楽しむものだ!とメタボ会長も言ってたじゃないか。
チョット都合良過ぎる?とも思ったが、試乗会の誘惑には誰も勝てない。
「これならマジでヒルクライムいけるんじゃない?」
「軽快そのもの!シフトストレスも無いからガンガン回せる。」
「真面目に速いよ。これ欲しいかも。」
「カーボンハンドルだけで振動がかなり軽減されてる。」
もう品評会は止まらない。
自分たちで組み込んだバイクは常に称賛の対象となる。
この楽しさを覚えると、チューンアップが止められなくのだ。
正直な感想を述べると、完全な別物としか表現できない。車体重量も8.8kgにまで抑えられ、購入当初のもたつき感は完全に払拭され、ダイレクトに答える事しかできないロードレーサーに生まれ変わっていた。この子を連れて何処かの大会に参加したくなる衝動にすら駆られる。
こんな素晴らしい子なのに、メタボ会長にとっては、猫に小判。ブタ(会長?)に真珠。でしかないのだが。。
とにかく、これでいつ会長が来ても安心である。
編集会議の資料まとめは明日にして、今日は早く帰ろう。
次回は、続きそう。
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
(プロフィール)
メタボ会長
身長 172cm
体重 87kg
体脂肪率 27%
当サイト運営法人の代表取締役。
高校3年まで野球に明け暮れ、大学時代にオートバイのロードレースに夢中になり卒業後、メーカー系チームに所属し全日本選手権に3年間出場。鳴かず飛ばずで所属チームを解雇され、その後、着々と太り続ける典型的な中年体型オヤジ。
タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。