2014/11/03(月) - 09:25
10月25日、さいたま新都心にて開催されたツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。20万人を集めた昨年にも増して多くの観客が沿道に詰めかけたに今大会の模様を、サブイベントや現地の様子、そして日本人スタッフとして今大会の運営に携わったA.S.O.アタシェドプレスの山崎健一さんへのインタビューと共に振り返る。
史上初めて「ツール・ド・フランス」の名を冠して開催されるフランス国外の大会として、国内はもとより、アジア全体やヨーロッパからも大きな注目を集めるツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。世界中にスポーツサイクルを広めたいとするツール主催者A.S.O(アモリー・スポール・オルガニザシヨン)と、自転車で地域振興を図りたいさいたま市及び埼玉県の思惑が一致して開催に至ったイベントだ。
ファンの熱気と日本人のホスピタリティーを体感した昨大会出場選手たちからの評判がプロ選手たちの間で噂になり、今年は更に豪華なスター選手たちが集結。そして台風で開催が危ぶまれた昨年とは異なり、雲ひとつない見事な秋晴れのもとでの開催となった。(レースの詳細や前日イベント等の詳細はこちらの記事インデックスから)
前週に開催されたジャパンカップの熱気そのままに、高層ビルや1日平均40,000人以上が利用するJRさいたま新都心駅などを臨む1周3.1kmのコース沿いには20万人を集めた昨年よりも更に多くの観戦に訪れた。やはり気軽にアクセスできることから、熱心なファンというよりも自転車に興味を持ち始めたという層が大半。中には駅のポスターやたまたま通りかかってという方も少なくないはずだが、そんな方たちも自転車レースの魅力を知ってもらえる良い機会となったはず。
それでも、チームジャージやフラッグ、ボードを持参という方は決して少なくない。そして、新城幸也(ユーロップカー)や別府史之(トレックファクトリーレーシング)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)、マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)らには大きな歓声が飛んだ。裾野が広がる一方で、中腹に当たる熱心なファンも着実に増えている証拠といえそうだ。
また、盛り上がりを見せたのは沿道のみならず、さいたまスーパーアリーナとJRさいたま新都心駅の間に位置するけやきひろばで開催された「さいたまるしぇ」も同じ。さいたま市内に居を構えるフランス料理店や、ワインを取り扱う酒店などが出展し、ローストチキン、生ハム、フォアグラのステーキ、ワインなどの良い匂いが会場を包み込んだ。そして、会場の真ん中で本場フランスの大道芸人が見慣れない楽器で演奏し、至るところでトリコロールがはためくなど雰囲気も充分。正にさいたまがフランス色に染まった一日であった。
加えて、もう一箇所のサブイベントである「サイクルフェスタ」も多くの来場者を集めた。さいたまクリテチームが使用するバイクブランドをメインに、ピナレロ、フォーカス、トレック、アンカー、スコット、コーダーブルームなど多数の自転車系ブランドが出展し、試乗会を開催。どのブースでも常に順番待ちが列が絶えなかった。
また、今大会のオフィシャルスポンサーで、ツール・ド・フランスのリーダージャージでもお馴染みのルコックスポルティフは生地やカッティングなど市販品とは大幅に仕様が異なる「本物」のマイヨ・ジョーヌを展示。その他にも、グローブライドブースにはフォーカスを使用するAG2Rの来日メンバー全員分のサインボードが展示されたり、ジャイアントブースにはキッテルのサイン入りマイヨジョーヌが展示され、写真に収める来場者も多かった。
この盛り上がりはレースが終わった後も続き、レース中はスポンサーのみ入場が許されたアリーナ内の特設コースには、憧れのスター選手たちをひと目でも多く見ようとファンが続々と押し寄せてきた。それに応える様にファンサービスに務めたのはフレームやキッテル、マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)ら。また、キッテルはその熱狂ぶりを「なんて表せば良いのかわからない。信じられないくらい熱心なファンが多くて最高だ」と自身のinstagramでコメントしている。
さて、今年も大盛況に終わったツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。日本側のスタッフとして昨年の第1回大会より運営に携わるA.S.O.アタシェドプレスの山崎健一さんに、その意義や思いを訊いた。
「ふらっと見に行ける身近さこそがツールのエッセンスであり自転車レース普及のヒント」山崎健一さん(A.S.O.アタシェドプレス)
まず昨年は悪天候の中での開催でしたが、今年は晴れてくれたことが何より良かったというのがスタッフとしての本音です(笑)。前回はいきなりの開催ということで知名度が低かったのですが、2回目ということで沢山の方に注目頂き、そして前回大会をさらに上回る多くの方々に来場して頂きました。
フランス本国を含めてですが、さいたま市ほどの都市圏で開催されるレースは世界的にもほとんど存在しませんし、電車を降りて直ぐの場所でレースが見れるというのは貴重です。都市圏に住んでいる方であれば、会場近くで前泊せずとも、朝起きてふらっと行ける場所でレースが行われているというところに都市型クリテリウムの意義があると感じています。
また、今回が初めての試みとなったアリーナ内のコースもかなり特徴的ですし、選手たちもすごく驚いていました。日本と同じく自転車競技が盛んでないシンガポールや香港で同じ規模レースを開催したらさいたまクリテ同様に盛り上がることでしょう。そういう意味では世界からの注目度も非常に高いですね。
その華やかさの一方で、サンダル履きの近所にお住まいの方や小さなお子さんなど、我々が目標としていた普段は自転車レースに興味のない層の方々に「ふらっ」と見に来てもらうこともできました。また、老若男女問わず幅広い年齢層の方に観戦して頂けたのも良かったですね。
実はこれこそがツール・ド・フランスのエッセンスなのです。世界最大のレースと言われてもフランス国内では「近所を通るから試しに行ってみるか」というぐらいにツールは身近でお手軽。日本人にとっての盆踊りのようなイベントと云えるのではないでしょうか。ただ単にレースを開催するだけでは無く、ツール・ド・フランスという文化を輸入することも大会の目標であり、それが実現できました。日本で自転車競技を普及させる上では非常にインパクトの強い大会になったと思います。
国内における自転車競技はまだまだメジャースポーツと位置付けではないですし、華やかにショーアップされたレースもこれまで無かったと思います。その中で、ツールと同じ手法でレースを開催するということは国内で活動する選手たちの多くが衝撃を覚えたはずです。そして、そのファンである子どもたちが華やかなレースを走る国内選手たちに憧れて、自転車競技を始めてくれれば、嬉しいですね。
ちなみに海外招待選手からの評判も良いようで、プロトンの中でも「日本は良いぞ」と話題になっていると噂を耳にしました。ただし、32人しか来日できないので、日本に行くためにステージ優勝なりツールで活躍したいという選手もいるそうですよ(笑)。
来年の開催可否を含め現段階では将来的なことについて何も決まっていません。ただ、世界の一流ライダーが参加する華やかなレースを開催することで沢山の観客の方に来場頂けて、喜んで頂けるということも分かってきましたし、可能な限り続けて行きたいとは考えています。兎にも角にも、世界中にもっと自転車レースを広めたいというA.S.O.と、国内の自転車レースシーンを盛り上げたいという関係者の思惑が一致して開催されたのがさいたまクリテリウム。今大会をきっかけに自転車に興味をもって頂き、その中から少しでも多くの方に競技をはじめて貰えたら幸いですね。
目玉であるはずのアリーナ内コースが一般客に公開されなかった点や、観客の誘導など様々な問題点も浮き彫りとなったが、結果としては自転車レース普及の一助となったことは間違いないツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。現時点では未定というが、第3回大会の開催に期待したい。
text:Yuya.Yamamoto
photo:Kei.Tsuji, Makoto.AYANO, Yuya.Yamamoto
史上初めて「ツール・ド・フランス」の名を冠して開催されるフランス国外の大会として、国内はもとより、アジア全体やヨーロッパからも大きな注目を集めるツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。世界中にスポーツサイクルを広めたいとするツール主催者A.S.O(アモリー・スポール・オルガニザシヨン)と、自転車で地域振興を図りたいさいたま市及び埼玉県の思惑が一致して開催に至ったイベントだ。
ファンの熱気と日本人のホスピタリティーを体感した昨大会出場選手たちからの評判がプロ選手たちの間で噂になり、今年は更に豪華なスター選手たちが集結。そして台風で開催が危ぶまれた昨年とは異なり、雲ひとつない見事な秋晴れのもとでの開催となった。(レースの詳細や前日イベント等の詳細はこちらの記事インデックスから)
前週に開催されたジャパンカップの熱気そのままに、高層ビルや1日平均40,000人以上が利用するJRさいたま新都心駅などを臨む1周3.1kmのコース沿いには20万人を集めた昨年よりも更に多くの観戦に訪れた。やはり気軽にアクセスできることから、熱心なファンというよりも自転車に興味を持ち始めたという層が大半。中には駅のポスターやたまたま通りかかってという方も少なくないはずだが、そんな方たちも自転車レースの魅力を知ってもらえる良い機会となったはず。
それでも、チームジャージやフラッグ、ボードを持参という方は決して少なくない。そして、新城幸也(ユーロップカー)や別府史之(トレックファクトリーレーシング)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)、マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)らには大きな歓声が飛んだ。裾野が広がる一方で、中腹に当たる熱心なファンも着実に増えている証拠といえそうだ。
また、盛り上がりを見せたのは沿道のみならず、さいたまスーパーアリーナとJRさいたま新都心駅の間に位置するけやきひろばで開催された「さいたまるしぇ」も同じ。さいたま市内に居を構えるフランス料理店や、ワインを取り扱う酒店などが出展し、ローストチキン、生ハム、フォアグラのステーキ、ワインなどの良い匂いが会場を包み込んだ。そして、会場の真ん中で本場フランスの大道芸人が見慣れない楽器で演奏し、至るところでトリコロールがはためくなど雰囲気も充分。正にさいたまがフランス色に染まった一日であった。
加えて、もう一箇所のサブイベントである「サイクルフェスタ」も多くの来場者を集めた。さいたまクリテチームが使用するバイクブランドをメインに、ピナレロ、フォーカス、トレック、アンカー、スコット、コーダーブルームなど多数の自転車系ブランドが出展し、試乗会を開催。どのブースでも常に順番待ちが列が絶えなかった。
また、今大会のオフィシャルスポンサーで、ツール・ド・フランスのリーダージャージでもお馴染みのルコックスポルティフは生地やカッティングなど市販品とは大幅に仕様が異なる「本物」のマイヨ・ジョーヌを展示。その他にも、グローブライドブースにはフォーカスを使用するAG2Rの来日メンバー全員分のサインボードが展示されたり、ジャイアントブースにはキッテルのサイン入りマイヨジョーヌが展示され、写真に収める来場者も多かった。
この盛り上がりはレースが終わった後も続き、レース中はスポンサーのみ入場が許されたアリーナ内の特設コースには、憧れのスター選手たちをひと目でも多く見ようとファンが続々と押し寄せてきた。それに応える様にファンサービスに務めたのはフレームやキッテル、マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)ら。また、キッテルはその熱狂ぶりを「なんて表せば良いのかわからない。信じられないくらい熱心なファンが多くて最高だ」と自身のinstagramでコメントしている。
さて、今年も大盛況に終わったツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。日本側のスタッフとして昨年の第1回大会より運営に携わるA.S.O.アタシェドプレスの山崎健一さんに、その意義や思いを訊いた。
「ふらっと見に行ける身近さこそがツールのエッセンスであり自転車レース普及のヒント」山崎健一さん(A.S.O.アタシェドプレス)
まず昨年は悪天候の中での開催でしたが、今年は晴れてくれたことが何より良かったというのがスタッフとしての本音です(笑)。前回はいきなりの開催ということで知名度が低かったのですが、2回目ということで沢山の方に注目頂き、そして前回大会をさらに上回る多くの方々に来場して頂きました。
フランス本国を含めてですが、さいたま市ほどの都市圏で開催されるレースは世界的にもほとんど存在しませんし、電車を降りて直ぐの場所でレースが見れるというのは貴重です。都市圏に住んでいる方であれば、会場近くで前泊せずとも、朝起きてふらっと行ける場所でレースが行われているというところに都市型クリテリウムの意義があると感じています。
また、今回が初めての試みとなったアリーナ内のコースもかなり特徴的ですし、選手たちもすごく驚いていました。日本と同じく自転車競技が盛んでないシンガポールや香港で同じ規模レースを開催したらさいたまクリテ同様に盛り上がることでしょう。そういう意味では世界からの注目度も非常に高いですね。
その華やかさの一方で、サンダル履きの近所にお住まいの方や小さなお子さんなど、我々が目標としていた普段は自転車レースに興味のない層の方々に「ふらっ」と見に来てもらうこともできました。また、老若男女問わず幅広い年齢層の方に観戦して頂けたのも良かったですね。
実はこれこそがツール・ド・フランスのエッセンスなのです。世界最大のレースと言われてもフランス国内では「近所を通るから試しに行ってみるか」というぐらいにツールは身近でお手軽。日本人にとっての盆踊りのようなイベントと云えるのではないでしょうか。ただ単にレースを開催するだけでは無く、ツール・ド・フランスという文化を輸入することも大会の目標であり、それが実現できました。日本で自転車競技を普及させる上では非常にインパクトの強い大会になったと思います。
国内における自転車競技はまだまだメジャースポーツと位置付けではないですし、華やかにショーアップされたレースもこれまで無かったと思います。その中で、ツールと同じ手法でレースを開催するということは国内で活動する選手たちの多くが衝撃を覚えたはずです。そして、そのファンである子どもたちが華やかなレースを走る国内選手たちに憧れて、自転車競技を始めてくれれば、嬉しいですね。
ちなみに海外招待選手からの評判も良いようで、プロトンの中でも「日本は良いぞ」と話題になっていると噂を耳にしました。ただし、32人しか来日できないので、日本に行くためにステージ優勝なりツールで活躍したいという選手もいるそうですよ(笑)。
来年の開催可否を含め現段階では将来的なことについて何も決まっていません。ただ、世界の一流ライダーが参加する華やかなレースを開催することで沢山の観客の方に来場頂けて、喜んで頂けるということも分かってきましたし、可能な限り続けて行きたいとは考えています。兎にも角にも、世界中にもっと自転車レースを広めたいというA.S.O.と、国内の自転車レースシーンを盛り上げたいという関係者の思惑が一致して開催されたのがさいたまクリテリウム。今大会をきっかけに自転車に興味をもって頂き、その中から少しでも多くの方に競技をはじめて貰えたら幸いですね。
目玉であるはずのアリーナ内コースが一般客に公開されなかった点や、観客の誘導など様々な問題点も浮き彫りとなったが、結果としては自転車レース普及の一助となったことは間違いないツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。現時点では未定というが、第3回大会の開催に期待したい。
text:Yuya.Yamamoto
photo:Kei.Tsuji, Makoto.AYANO, Yuya.Yamamoto
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