2014/09/09(火) - 19:59
日本初上陸。その言葉にドキドキするのは私だけでないはず。今世界で注目を集める人気のMTBレース「エンデューロ」が、この夏日本において初めて開催された。トレンドに敏感なMTBライダーが多く集まった「乗鞍MTBエンデューロ」の様子を紹介しよう。
8月31日(日)に乗鞍高原内のアウトドアレクリエーション施設、いがやレクリエーションランドをメイン会場として行われた乗鞍MTBエンデューロ。国内初開催となる形式のレースだけに、多くのMTBライダーの注目を集めていた大会には約200名が集まった。
エンデューロとはなんだ?という方もいらっしゃるだろう。名前だけ聞けばサーキットなどでリレー形式で周回数を競う耐久レースを想像する人もいるだろう。今、世界的に一大ブームを巻き起こしているエンデューロは、それとは全く違う形式のレースだ。
エンデューロは、例えるならば自動車のラリーレースの様なイベント。ダウンヒルのタイムを競う、計測区間となる複数のスペシャルステージ(SS)と、そのスペシャルステージの間をつなぐ非計測区間となるリエゾンからなる。
基本的には下りのレースなのだが、そのスタート地点に着くまでの登りも指定されたスタート時刻までにこなさないといけないので、完全なDHバイクだと少し辛い部分もある。
体力、バイクコントロール、判断力といったMTBに必要な能力が総合的に必要とされることや、ガチガチのレースとはまた異なる独特の雰囲気が人気を博し、欧米を中心に盛り上がりを見せているカテゴリーなのだ。
乗鞍MTBエンデューロには2つのSS区間が設けられた。1つ目の「FOXステージ」と名付けられたSS区間は、善五郎の滝付近から下っていく、距離は約1.5km、下り108mのダブルトラック。
2つ目の「CANONNDALEステージ」は、いがやレクリエーションランド内のシングルトラックと、乗鞍バイクパークをつなぐ距離1.3kmの中に、登り返しを含む標高差100mのコースだ。
前日に受付を済ませた参加者たちは、駐車場で準備を整え、各々事前に定められた時刻に従ってスタート地点となるメイン会場のステージへと集まってくる。ロードレースやクロスカントリーの大会のように、一斉にスタートするのではなく、30秒ごとに一人づつステージからスタートしていく。
スタート前には1人づつMCに紹介され、ひとりひとりがフィーチャーされる。そして、人垣の中をSS区間に向かってこぎだすのだ。最初のSS区間となるFOXステージまでは、約4.3km、200mアップのリエゾン区間。リエゾン区間とはいえ、翌週に行われる「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」のコースを1kmほど走る、登りごたえのあるコースだ。
そんなリエゾン区間を、一人であるいはチームで、それぞれ登っていく。途中には矢印看板が設置されており、迷う心配はほとんどない。
FOXステージからのスタート時間も参加者ごとに決められているが、そこまで厳しい制限タイムでもないので、安心して登っていくことができる。スタート時間が来る前に、プロテクターやこれまで背負ってきたフルフェイスメットを装着し、準備するライダーもちらほら。
スタート時間がくるたび、ひとり、またひとりとスタートを切っていくライダーたち。
FOXステージの前半区間は勾配が緩く、タイムを出したいのならば積極的にコギを入れて行かないといけない。
そして、半分を過ぎたところからはコーステープで仕切られたスラロームがダウンヒルコースらしいテクニカルなセクションを下っていく。このセクションをいかにスムーズにクリアするかでタイムが大きく違ってくるポイントだ。
そして、スラローム区間を過ぎてもう少し下ると、FOXゲートがライダーを出迎えてくれる。ここで計測区間はひとまず終了だ。
行きとは異なるルートを通って再びメイン会場へと戻っていくライダーたち。ひとまずお昼休憩ということで、一度メイン会場で休憩時間が設けられている。
いったん全ての参加者がメイン会場にもどってから、後半のキャノンデールステージにむけてもう一度スタートしていく。中間発表されたFOXステージの結果が貼られた掲示板には人だかりが絶えなかった。
キャノンデールステージまでのリエゾン区間は非常に短いため、ほとんどの参加者は休憩時間を利用して準備を整えた状態で、スタート地点へと向かっていく。
キャノンデールステージはFOXステージとはまた異なる趣のコースとなり、前半のシングルトラック区間と後半の乗鞍バイクパーク、そしてその間をつなぐ登り返し区間から構成されている。
完全なDHマシンであれば登り返しが厳しく、クロカンバイクであればバイクパークのコースで不利になってしまうような機材選択の面白さもあるテクニカルなコースだ。
登り返しで上げきってしまうと下りで辛くなってしまうが、モガかなければ良いタイムはありえない。登り返しを終えると、乗鞍バイクパークの下りに入っていく。
もともとスキー場だったゲレンデに設置された20以上のバームは松本市が設置し、乗鞍観光協会の青年部が管理するもの。あまり知られていないことだが、しっかりと整備されたコースは普段から自由に走ることができるのだ。
コーナーが多い乗鞍バイクパーク内のコースは、コーナー後にコギを入れて速度にのせるか、コーナーの脱出速度を保つ走り方をするか、選手それぞれが得意とする走り方が表れやすいレイアウト。コギを多用するライダーにとっては登り返しからゴールまで、休む暇の無いコースだ。
このバリエーション豊かなコースを制したのは、日本でただひとりワールドエンデューロシリーズに参戦している永田隼也(アキ・ファクトリーチーム)。FOXステージを2分15秒、CANNNDALEステージを2分49秒と両ステージともにトップタイムを叩き出し、貫禄を見せつけた。
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と、このように書くといかにもレースというイメージかもしれないが、実際のところイベントの雰囲気はもっとユルイ。
機材ひとつとっても、オールマウンテン系バイクはもちろんのこと、DHバイクで出る人もいれば、リジッドのXCバイクの人も、はたまたファットバイクのライダーもちらほら。
新しい種目ということもあり、「とりあえず持っているもので出てみよう」というスタイルが普通で、走り方もクロカンっぽい人と、DHっぽい人と、なんとなくわかるのも面白い。
もちろん強いのは登りも下りも速いライダーで、機材もいわゆる「エンデューロバイク」が有利なのは確かなのだが、自分の持てる力と機材でいかにトライしていくか、というのもまた楽しみの一つだろう。
上位入賞を狙うようなライダーにとってはエンデューロはれっきとしたレースだが、普通のライダーにとっては「山遊び」そのもの。大会が終わった後に参加者のみなさんに少しお話を伺ってみたところ、皆さん一様に「楽しかった!また来年も来たいです!」と語ってくれたのが印象的だった。
他の地域でも開催が検討されているというウワサもチラホラ流れているエンデューロ。MTBの楽しさをギュッと詰め込んだエンデューロが日本で根付くかは、これからというところ。
でも、乗鞍MTBエンデューロに集った人たちの笑顔を見ていると、必ず日本でも受け入れられるだけのポテンシャルを秘めていると感じる。手持ちのMTBで充分その魅力を味わうことができる敷居の低いイベントだけに、少しでも興味が出たらぜひともチャレンジしてはいかがだろうか。
乗鞍MTBエンデューロ2014ラップアップ公式ムービー
text&photo:Naoki.YASUOKA
8月31日(日)に乗鞍高原内のアウトドアレクリエーション施設、いがやレクリエーションランドをメイン会場として行われた乗鞍MTBエンデューロ。国内初開催となる形式のレースだけに、多くのMTBライダーの注目を集めていた大会には約200名が集まった。
エンデューロとはなんだ?という方もいらっしゃるだろう。名前だけ聞けばサーキットなどでリレー形式で周回数を競う耐久レースを想像する人もいるだろう。今、世界的に一大ブームを巻き起こしているエンデューロは、それとは全く違う形式のレースだ。
エンデューロは、例えるならば自動車のラリーレースの様なイベント。ダウンヒルのタイムを競う、計測区間となる複数のスペシャルステージ(SS)と、そのスペシャルステージの間をつなぐ非計測区間となるリエゾンからなる。
基本的には下りのレースなのだが、そのスタート地点に着くまでの登りも指定されたスタート時刻までにこなさないといけないので、完全なDHバイクだと少し辛い部分もある。
体力、バイクコントロール、判断力といったMTBに必要な能力が総合的に必要とされることや、ガチガチのレースとはまた異なる独特の雰囲気が人気を博し、欧米を中心に盛り上がりを見せているカテゴリーなのだ。
乗鞍MTBエンデューロには2つのSS区間が設けられた。1つ目の「FOXステージ」と名付けられたSS区間は、善五郎の滝付近から下っていく、距離は約1.5km、下り108mのダブルトラック。
2つ目の「CANONNDALEステージ」は、いがやレクリエーションランド内のシングルトラックと、乗鞍バイクパークをつなぐ距離1.3kmの中に、登り返しを含む標高差100mのコースだ。
前日に受付を済ませた参加者たちは、駐車場で準備を整え、各々事前に定められた時刻に従ってスタート地点となるメイン会場のステージへと集まってくる。ロードレースやクロスカントリーの大会のように、一斉にスタートするのではなく、30秒ごとに一人づつステージからスタートしていく。
スタート前には1人づつMCに紹介され、ひとりひとりがフィーチャーされる。そして、人垣の中をSS区間に向かってこぎだすのだ。最初のSS区間となるFOXステージまでは、約4.3km、200mアップのリエゾン区間。リエゾン区間とはいえ、翌週に行われる「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」のコースを1kmほど走る、登りごたえのあるコースだ。
そんなリエゾン区間を、一人であるいはチームで、それぞれ登っていく。途中には矢印看板が設置されており、迷う心配はほとんどない。
FOXステージからのスタート時間も参加者ごとに決められているが、そこまで厳しい制限タイムでもないので、安心して登っていくことができる。スタート時間が来る前に、プロテクターやこれまで背負ってきたフルフェイスメットを装着し、準備するライダーもちらほら。
スタート時間がくるたび、ひとり、またひとりとスタートを切っていくライダーたち。
FOXステージの前半区間は勾配が緩く、タイムを出したいのならば積極的にコギを入れて行かないといけない。
そして、半分を過ぎたところからはコーステープで仕切られたスラロームがダウンヒルコースらしいテクニカルなセクションを下っていく。このセクションをいかにスムーズにクリアするかでタイムが大きく違ってくるポイントだ。
そして、スラローム区間を過ぎてもう少し下ると、FOXゲートがライダーを出迎えてくれる。ここで計測区間はひとまず終了だ。
行きとは異なるルートを通って再びメイン会場へと戻っていくライダーたち。ひとまずお昼休憩ということで、一度メイン会場で休憩時間が設けられている。
いったん全ての参加者がメイン会場にもどってから、後半のキャノンデールステージにむけてもう一度スタートしていく。中間発表されたFOXステージの結果が貼られた掲示板には人だかりが絶えなかった。
キャノンデールステージまでのリエゾン区間は非常に短いため、ほとんどの参加者は休憩時間を利用して準備を整えた状態で、スタート地点へと向かっていく。
キャノンデールステージはFOXステージとはまた異なる趣のコースとなり、前半のシングルトラック区間と後半の乗鞍バイクパーク、そしてその間をつなぐ登り返し区間から構成されている。
完全なDHマシンであれば登り返しが厳しく、クロカンバイクであればバイクパークのコースで不利になってしまうような機材選択の面白さもあるテクニカルなコースだ。
登り返しで上げきってしまうと下りで辛くなってしまうが、モガかなければ良いタイムはありえない。登り返しを終えると、乗鞍バイクパークの下りに入っていく。
もともとスキー場だったゲレンデに設置された20以上のバームは松本市が設置し、乗鞍観光協会の青年部が管理するもの。あまり知られていないことだが、しっかりと整備されたコースは普段から自由に走ることができるのだ。
コーナーが多い乗鞍バイクパーク内のコースは、コーナー後にコギを入れて速度にのせるか、コーナーの脱出速度を保つ走り方をするか、選手それぞれが得意とする走り方が表れやすいレイアウト。コギを多用するライダーにとっては登り返しからゴールまで、休む暇の無いコースだ。
このバリエーション豊かなコースを制したのは、日本でただひとりワールドエンデューロシリーズに参戦している永田隼也(アキ・ファクトリーチーム)。FOXステージを2分15秒、CANNNDALEステージを2分49秒と両ステージともにトップタイムを叩き出し、貫禄を見せつけた。
[
と、このように書くといかにもレースというイメージかもしれないが、実際のところイベントの雰囲気はもっとユルイ。
機材ひとつとっても、オールマウンテン系バイクはもちろんのこと、DHバイクで出る人もいれば、リジッドのXCバイクの人も、はたまたファットバイクのライダーもちらほら。
新しい種目ということもあり、「とりあえず持っているもので出てみよう」というスタイルが普通で、走り方もクロカンっぽい人と、DHっぽい人と、なんとなくわかるのも面白い。
もちろん強いのは登りも下りも速いライダーで、機材もいわゆる「エンデューロバイク」が有利なのは確かなのだが、自分の持てる力と機材でいかにトライしていくか、というのもまた楽しみの一つだろう。
上位入賞を狙うようなライダーにとってはエンデューロはれっきとしたレースだが、普通のライダーにとっては「山遊び」そのもの。大会が終わった後に参加者のみなさんに少しお話を伺ってみたところ、皆さん一様に「楽しかった!また来年も来たいです!」と語ってくれたのが印象的だった。
他の地域でも開催が検討されているというウワサもチラホラ流れているエンデューロ。MTBの楽しさをギュッと詰め込んだエンデューロが日本で根付くかは、これからというところ。
でも、乗鞍MTBエンデューロに集った人たちの笑顔を見ていると、必ず日本でも受け入れられるだけのポテンシャルを秘めていると感じる。手持ちのMTBで充分その魅力を味わうことができる敷居の低いイベントだけに、少しでも興味が出たらぜひともチャレンジしてはいかがだろうか。
乗鞍MTBエンデューロ2014ラップアップ公式ムービー
text&photo:Naoki.YASUOKA
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