8月2日(土)、茨城県つくば市、筑波山周辺を舞台にチャンピオンシステムが主催するロングライドイベント「ヒートキャラバンつくば」。大会名から察せられるように猛暑(ヒート)の中チーム(キャラバン)単位の参加となり、仲間と助け合いながら走っていくというコンセプトの大会の様子をレポートしよう。



標高差3000mを駆け抜けたHeat Caravan Tsukuba標高差3000mを駆け抜けたHeat Caravan Tsukuba
ある日、編集部にかかってきた一本の電話。チャンピオンシステムのあべ木さんからの電話が告げたのは「Heat Caravan Tsukuba(ヒートキャラバンつくば)」への参加依頼。あべ木さんはアパレルブランドのチャンピオンシステム・ジャパン代表であり、ご存知シクロクロス東京のプロデューサーでもある人。面白いイベントを創りだすクリエイターだ。初めてのこのイベントの内容をひと通り聞いて、「少しスケジュールを確認して折り返します」と告げて電話を切った。正直に言おう。行きたくなかったのだ...。

なぜって、電話で聞かされたコースの概要がハードすぎるのだ。走行距離100km。これは問題ない。他のロングライド取材では150km以上のコースも走ったこともあるし、取材ではないにしろ200km以上走ったこともある。問題は獲得標高だ。なんと3,000mもの標高差を駆け上がるというのだ。しかも100kmで。尻込みしてしまった私を誰が責められようか。だが悲しいかな、ツール・ド・フランス帰りの編集長は一言、こう告げた。「行って来い。」

問題はもうひとつ。この大会はチームで助け合いながら走るというもの。編集部を見渡してみる。誰も目を合わそうとしてくれない。薄情者め。だがそうもいっていられない。焼き肉を餌にどうにか説き伏せ、3人の編集部員を確保した。3人分の焼き肉代も無くなってしまったのは仕方のないことだ。不可抗力、必要経費なのだ。が、経理のお姉さんには笑顔で領収書を突き返された。南無。

Heat Caravanを走ったバイクと装備
キャノンデール スーパーシックスEVOキャノンデール スーパーシックスEVO
走るルートがプレインストールされたガーミンEDGE810JとVIRBが装着されていた走るルートがプレインストールされたガーミンEDGE810JとVIRBが装着されていた フリーには28Tを用いた。細いチェーンステーが特徴的だフリーには28Tを用いた。細いチェーンステーが特徴的だ


さて、私たちメディア班4人は、キャノンデール・ジャパンより貸与されるバイクの調整のため、前日入り。用意されたのはオールラウンドレーサーのSUPER SIX EVO。エンデュランスモデルのSYNAPSEではないが、バランスのとれた乗り味をもったロードバイクだ。

ハンドルには、ガーミンのGPSサイコン、EDJE810Jとアクションカメラ、VIRBが取り付けられていた。事前にコースのルートデータがインストールされたEDGE810Jのナビゲーションをもとに、当日は走っていくこととなった。加えて、C projectの選手らが使用するのと同じLASのメット、アディダスのアイウエア、チャンピオンシステムのジャージが用意されており、過酷なライドへの準備はばっちり。ここでSYNAPSEでなくSUPER SIX EVOである理由がピンときた。C projectのレプリカ仕様で走れるというわけだ。

イベントでのインプレッションをレポートに先駆けて書き記しておくと、シマノ・アルテグラとマヴィック・アクシウムを装備したSUPER SIX EVOは、間違いなく優秀なバイクだった。カーボンが異なる上級モデルのHi-Modのキレこそ無いものの、ダンシングの軽やかさ、フォーク周りのガッシリ感、突き上げの無さなど、何をとっても30万円というプライスを考えれば、「買い」の一言に尽きると思う。ちょっぴりホイールが重く感じたが、それでも100km、3000mアップを走るのに何の不満すら覚えなかった。

西薗選手による腹筋講座西薗選手による腹筋講座 多くの人が前夜祭に参加した多くの人が前夜祭に参加した


前日の夕方からは、つくば市内のイタリアンレストランを貸し切っての前夜祭が開催された。会場には翌日にタフコースにチャレンジする猛者(?)たちと、それをサポートするC project、Champion System Japanチームの面々が集まって料理とお酒に舌鼓。この前夜祭、チャンピオンシステムユーザーならば誰でも参加費無料という太っ腹企画で、西薗選手によるトレーニング理論講座や翌日のコース説明など、内容充実のアットホームな雰囲気を楽しむことができた。

参加者のみなさん参加者のみなさん
MAVICカーがサポートにつくMAVICカーがサポートにつく いよいよ出発だいよいよ出発だ


真珠湾攻撃の際、”攻撃せよ”の暗号が「ニイタカヤマノボレ」だったのは有名な史実であるが、”攻撃中止、直ちに帰投”を意味するのは「ツクバヤマハレ」だったのはあまり知られていない。大会当日、午前6時。真っ青な空を眺めながら、そんな益体もないことをつらつらと考えながら、集合場所へと向かう。

北関東のサイクリストのメッカ、不動峠にほど近い位置にある平沢駐車場には、すでにチャンピオンシステムさんのチームカーが設営を始めていた。雲ひとつない青空の下、続々と参加者の車が集まってくる。車からはみんなおそろいのチームウエアに身を包んだ参加者たちが続々と降りてきて、一体感のある空気が出来上がっていく。

不動峠を登っていく不動峠を登っていく 田園風景の中を走っていく田園風景の中を走っていく

木陰が多いコースだった木陰が多いコースだった つかの間の平坦区間つかの間の平坦区間


車から降りた途端、30度を超える気温が襲いかかり、「これはツクバヤマハレだな。」などと胸中で独りごとを言いながらも、準備を始める。スタートは7時、制限時間は10時間。時速10kmで走り続ければ間に合う計算だ。まあ、なんとかなるだろう、そう考えながら最初の登りである不動峠へと突入していく。

前後で出発したチームとつかず離れず登っていく。この1本勝負だけではなく、この後に登りはいくつもあるのだ。先を急ぐことはない、と分かっていてもなぜかペースが上がってしまうのはサイクリストの悲しい性。頂上につくころには、息が上がっている編集部チーム。わかったからそんな目でこっちを見ないでほしい。

途中にはパラグライダーの離陸場所もあった途中にはパラグライダーの離陸場所もあった
ハンググライダーの人たちがたくさんおられたハンググライダーの人たちがたくさんおられた そのまま飛び出せそうな風景そのまま飛び出せそうな風景


一路、裏不動峠を下り次の登りに入っていく。下っては登り、登っては下り。だんだんと脚が削られていくが、日影が多いコースのおかげでなんとか走っていく。途中、チャンピオンシステムバンによるエイドに立ち寄り、水とバナナやクッキーといった補給を受ける。

他にも、いくつかある湧水ポイントではもれなく給水を怠らない。道路脇の温度表示板には42℃と、目を疑いたくなるような数字が掲示されている。脱水症状や熱中症にならないようにこまめに水を飲み、水をかけ登りをこなしていく。日も高くなりきったころ、道沿いにあったコンビニに吸い込まれるようにして立ち寄ると、他のチームもお昼ご飯を食べていた。

エイドステーションでは補給を怠らないエイドステーションでは補給を怠らない コンビニで昼食中コンビニで昼食中

冷やしジャージはじめました冷やしジャージはじめました 小川で思う存分身体を冷却する小川で思う存分身体を冷却する


編集部チームも、思い思いに昼食を摂り後半戦へ向けて走りだしていく。だがコース上の日影が減ったことで容赦ない陽射しが襲いかかってくる。頭がクラクラと痛くなってくるほどで、少しまずいかな、と感じるほど。熱中症になりかけになった私の前に、涼しげにながれる小川が現れた時は、迷わず飛び込んでいた。

裸足になって、カメラや携帯を置いて川で水浴びをする。身体の中にこもった熱が冷やされていくのがわかる。再び走りだすと、さっきまでの不調が嘘のように脚が回る。その勢いで風返し峠をクリアし、筑波スカイラインを越えて裏不動峠を登れば、もう少しでゴールだ。

MAVICカーがサポートしてくれるMAVICカーがサポートしてくれる こんなサポートはめったにありません。こんなサポートはめったにありません。

日なたではジリジリとした暑さが襲う日なたではジリジリとした暑さが襲う 最後の登り、裏不動峠をクリアしてへとへとのチーム最後の登り、裏不動峠をクリアしてへとへとのチーム

他のチームもゴールしてきました他のチームもゴールしてきました 完走を祝ってソフトクリームで乾杯完走を祝ってソフトクリームで乾杯


もう一度スカイラインを登りきり、ロープウェイの駅があるつつじヶ丘展望所まで辿りつけば長いライドも終わりだ。つつじヶ丘の売店で引き換えたソフトクリームをぱくつきながら完走のよろこびと、無事にゴールに辿りつけた安堵をチーム員と分かち合う。

走りだす前は、最後まで走り切ることができるのか不安でいっぱいだったが、予想以上の猛暑により、実際に走りだしてみると想像よりもハードなイベントとなった「Heat Caravan Tsukuba」。それでも走り続けることができたのは、やっぱりチームメイトの存在あってこそ。いつもソロで走っているという人も、チームの門をたたいてみては?

text:Naoki,YASUOKA
photo:So.Isobe

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