2014/07/26(土) - 09:31
6月20日から22日の3日間、4つのステージで行なわれた、UCIジュニアネイションズカップTrofeo Karlsberg。ドイツの南部で行われた大会のステージ2-2とステージ3の模様をレースに帯同したJCFロード部会の柿木孝之氏によるレポートでお届けする。
ステージ2-2 ※タイムトライアル
夕方からのタイムトライアルでは前半は平坦区間が多く、5km過ぎからの3km弱は車が1台通れる幅しかないアップダウン区間になる。コース全体でみると平坦の得意な選手に有利なコース設定となっている。
強化合宿のタイムトライアルではあまり良い走りを見せていなかった石上だがこの日は非常に良い走りを見せる。前半は抑え気味で入ったが、中盤からはスピードに乗せて狭いコーナーも非常にスムーズにクリアして1分前スタートの選手を抜いてゴールした。
結果はトップから36秒遅れの15位と予想を大幅に上回る順位で、個人総合成績でもネイションズポイント獲得圏内の15位にとどめた。タイムトライアル1位と2位の選手は昼のステージでも石上と一緒に逃げた選手であるが、彼らはタイムトライアルのスペシャリストでもあり3位以下の選手とのタイム差は大きかった。
一方で3位から20位までは大きなタイム差ではなく混戦となった中での石上の15位という成績は評価できる。昼のステージが非常に激しいレースとなったため、逃げた選手にとっても集団で追いかけた選手にとってもダメージが大きく残る中でのタイムトライアルの結果となった。
ステージ2-2 タイムトライアル8.8km
1 KAMNA LENNARD (ドイツ) 11分9秒580
2 BARTA William (アメリカ)7秒差
3 SIVAKOV Pavel(ロシア)23秒差
15石上優大(横浜高)36秒差
47松本祐典(明治大)1分8秒差
52草場啓吾(北桑田高)1分15秒差
75孫崎大樹(北桑田高)1分43秒差
83橋詰丈(昭和第一学園高)1分54秒差
93中村圭佑(昭和第一学園高)2分9秒差
ステージ2-2後の個人総合順位
1 KUMAR Kristjan (スロヴェニア) 4時間24分40
2 DUNBAR Edward(アイルランド)9秒差
3 BRKIC Benjamin(オーストリア)39秒差
15石上優大(横浜高)1分15秒差
33松本祐典(明治大)2分07秒差
51孫崎大樹(北桑田高)3分04秒差
63草場啓吾(北桑田高)7分54秒差
71中村圭佑(昭和第一学園高)10分11秒差
80橋詰丈(昭和第一学園高)15分39秒差
ステージ3 100kmロードレース
最終ステージのこの日は1周20kmのコースを5周する100kmのコースで、勾配の緩い4kmの登りと、急勾配の500mの登りが2か所あり登りの得意な選手に有利なコースにみえるが、平坦区間も長く、総合成績の上位選手が牽制し、リーダーを抱えるスロヴェニアが集団をコントロールして進む場合は、ラスト2周での攻防となり集団スプリントとなる可能性もある。
日本チームとしては個人総合順位でネイションズカップのポイント獲得圏内にいる石上も守りに入らず、前半から総合上位陣が動くならその動きに乗り、後半は自ら登りで攻撃を仕掛けて総合順位のさらなるジャンプアップを狙うこととした。特に橋詰、中村は総合成績では大きく遅れているので、前半から攻撃をかけて逃げに入る動きを求めた。
ラスト1周の長い登りまでで逃げが出来ていない場合は、孫崎のスプリントで勝負する。レース前半は単発的なアタックしか起こらない。ここ2日間のステージとは異なり、総合リーダーを抱えるスロヴェニアがコントロールしてレースは進む。橋詰らも攻撃をかけるが、複数名の逃げは出来ず単発のアタックしか起こらない。
4周目に今大会の登りでは圧倒的な力をみせる総合2位のアイルランドの選手が落車したこともあり、集団は落ち着いた走りになる。ラスト周回の登り入り口では大きな落車が発生して、松本、中村、橋詰、孫崎が巻き込まれる。松本は高速で進む集団に自力で、中村はドイツの選手とともに集団に復帰したが、自転車のダメージが大きかった孫崎、そして橋詰は集団に戻れなかった。
最後の登りが終わってからは集団スプリントの展開となり、ベルギーチームが完全にコントロールして進む。日本チームはスプリンターの孫崎を失ったため、草場のスプリント勝負に変更し、松本、中村、草場で隊列を組んで狙っていく。ラスト2kmの細く曲がるコーナーで松本と中村、草場は別れてしまい、松本と草場は別々に個人でスプリントをすることとなる。
非常にテクニカルなコーナーが続くゴールスプリントでは、ベルギーのMENTEN Milanが優勝し松本が9位、草場が15位に入った。草場と松本の連携がしっかり取れていれば、ステージ6位以内のネイションズポイント圏内でゴール出来ていたこともあり悔いの残るゴールとなった。
個人総合成績では石上が昨日より順位を上げて14位となり、ネイションズポイントを7点獲得し、昨日の1点に加えて今回のレースでは計8点を獲得した。
ステージ3 100km
1 MENTEN Milan (ベルギー) 2時間26分34秒
2 ZVERKO David(スロヴァキア)同タイム
3 KAMNA LENNARD 同タイム
9松本祐典(明治大)同タイム
15草場啓吾(北桑田高)同タイム
43石上優大(横浜高)同タイム
52中村圭佑(昭和第一学園高)1分13秒差
64橋詰丈(昭和第一学園高)7分50秒差
65孫崎大樹(北桑田高)同タイム
最終個人総合順位
1 KUMAR Kristjan (スロヴェニア) 6時間51分14秒
2 DUNBAR Edward(アイルランド)9秒差
3 KAMNA LENNARD ドイツ 35秒差
14石上優大(横浜高)1分15秒差(石上はジュニア1年目の選手の中では個人総合3位)
29松本祐典(明治大)2分7秒差
52草場啓吾(北桑田高)7分54秒差
57孫崎大樹(北桑田高)10分54秒差
59中村圭佑(昭和第一学園高)11分24秒差
67橋詰丈(昭和第一学園高)23分29秒差
今回は日本チームの中から石上がネイションズポイントを獲得したが、石上らが自由に動けるのも最後の集団スプリントの際には日本チームとしてはスプリントを得意とする孫崎に任せられるということも大きい。孫崎は自分で動きたい場面でも、チームの状況または集団スプリントの可能性が高い場合には動けないこともある。
また今回の第3ステージのように石上が落車やメカトラの際には他の選手がホイールを交換することにしたが、トラブルの際に助けてくれるチームメイトがいるという安心感はレースの際には非常に心強い。ネイションズポイントは選手個々がバラバラに動いて簡単に獲得できるものではない。今回は石上がネイションズポイントを獲得したが、これは他の5選手と一緒に日本チームで獲得したネイションズポイントといえる。
今年のジュニアカテゴリーの選手は1996年または1997生まれということで、早生まれの大学1年生から高校2年生までの3学年をまたぐ形になる。その中で年上年下関係なく合宿で競い合い、お互いの長所や短所を理解することで、国際レースでは日本チームとして結果を残すために助け合うことが出来る。そこでの信頼関係はジュニアカテゴリーに留まらず、U23、そしてエリートにも繋がっていく。
今回は積極的に自分達からレース展開に絡んでいき、貴重なネイションズポイントを獲得したのは評価できる。ただまだ世界との力差が大きいということも、勝負に絡めば絡むほど具体的に見えてくる。次のネイションズカップは7月22日からカナダで行われている。
text:JCFロード部会 柿木孝之
ステージ2-2 ※タイムトライアル
夕方からのタイムトライアルでは前半は平坦区間が多く、5km過ぎからの3km弱は車が1台通れる幅しかないアップダウン区間になる。コース全体でみると平坦の得意な選手に有利なコース設定となっている。
強化合宿のタイムトライアルではあまり良い走りを見せていなかった石上だがこの日は非常に良い走りを見せる。前半は抑え気味で入ったが、中盤からはスピードに乗せて狭いコーナーも非常にスムーズにクリアして1分前スタートの選手を抜いてゴールした。
結果はトップから36秒遅れの15位と予想を大幅に上回る順位で、個人総合成績でもネイションズポイント獲得圏内の15位にとどめた。タイムトライアル1位と2位の選手は昼のステージでも石上と一緒に逃げた選手であるが、彼らはタイムトライアルのスペシャリストでもあり3位以下の選手とのタイム差は大きかった。
一方で3位から20位までは大きなタイム差ではなく混戦となった中での石上の15位という成績は評価できる。昼のステージが非常に激しいレースとなったため、逃げた選手にとっても集団で追いかけた選手にとってもダメージが大きく残る中でのタイムトライアルの結果となった。
ステージ2-2 タイムトライアル8.8km
1 KAMNA LENNARD (ドイツ) 11分9秒580
2 BARTA William (アメリカ)7秒差
3 SIVAKOV Pavel(ロシア)23秒差
15石上優大(横浜高)36秒差
47松本祐典(明治大)1分8秒差
52草場啓吾(北桑田高)1分15秒差
75孫崎大樹(北桑田高)1分43秒差
83橋詰丈(昭和第一学園高)1分54秒差
93中村圭佑(昭和第一学園高)2分9秒差
ステージ2-2後の個人総合順位
1 KUMAR Kristjan (スロヴェニア) 4時間24分40
2 DUNBAR Edward(アイルランド)9秒差
3 BRKIC Benjamin(オーストリア)39秒差
15石上優大(横浜高)1分15秒差
33松本祐典(明治大)2分07秒差
51孫崎大樹(北桑田高)3分04秒差
63草場啓吾(北桑田高)7分54秒差
71中村圭佑(昭和第一学園高)10分11秒差
80橋詰丈(昭和第一学園高)15分39秒差
ステージ3 100kmロードレース
最終ステージのこの日は1周20kmのコースを5周する100kmのコースで、勾配の緩い4kmの登りと、急勾配の500mの登りが2か所あり登りの得意な選手に有利なコースにみえるが、平坦区間も長く、総合成績の上位選手が牽制し、リーダーを抱えるスロヴェニアが集団をコントロールして進む場合は、ラスト2周での攻防となり集団スプリントとなる可能性もある。
日本チームとしては個人総合順位でネイションズカップのポイント獲得圏内にいる石上も守りに入らず、前半から総合上位陣が動くならその動きに乗り、後半は自ら登りで攻撃を仕掛けて総合順位のさらなるジャンプアップを狙うこととした。特に橋詰、中村は総合成績では大きく遅れているので、前半から攻撃をかけて逃げに入る動きを求めた。
ラスト1周の長い登りまでで逃げが出来ていない場合は、孫崎のスプリントで勝負する。レース前半は単発的なアタックしか起こらない。ここ2日間のステージとは異なり、総合リーダーを抱えるスロヴェニアがコントロールしてレースは進む。橋詰らも攻撃をかけるが、複数名の逃げは出来ず単発のアタックしか起こらない。
4周目に今大会の登りでは圧倒的な力をみせる総合2位のアイルランドの選手が落車したこともあり、集団は落ち着いた走りになる。ラスト周回の登り入り口では大きな落車が発生して、松本、中村、橋詰、孫崎が巻き込まれる。松本は高速で進む集団に自力で、中村はドイツの選手とともに集団に復帰したが、自転車のダメージが大きかった孫崎、そして橋詰は集団に戻れなかった。
最後の登りが終わってからは集団スプリントの展開となり、ベルギーチームが完全にコントロールして進む。日本チームはスプリンターの孫崎を失ったため、草場のスプリント勝負に変更し、松本、中村、草場で隊列を組んで狙っていく。ラスト2kmの細く曲がるコーナーで松本と中村、草場は別れてしまい、松本と草場は別々に個人でスプリントをすることとなる。
非常にテクニカルなコーナーが続くゴールスプリントでは、ベルギーのMENTEN Milanが優勝し松本が9位、草場が15位に入った。草場と松本の連携がしっかり取れていれば、ステージ6位以内のネイションズポイント圏内でゴール出来ていたこともあり悔いの残るゴールとなった。
個人総合成績では石上が昨日より順位を上げて14位となり、ネイションズポイントを7点獲得し、昨日の1点に加えて今回のレースでは計8点を獲得した。
ステージ3 100km
1 MENTEN Milan (ベルギー) 2時間26分34秒
2 ZVERKO David(スロヴァキア)同タイム
3 KAMNA LENNARD 同タイム
9松本祐典(明治大)同タイム
15草場啓吾(北桑田高)同タイム
43石上優大(横浜高)同タイム
52中村圭佑(昭和第一学園高)1分13秒差
64橋詰丈(昭和第一学園高)7分50秒差
65孫崎大樹(北桑田高)同タイム
最終個人総合順位
1 KUMAR Kristjan (スロヴェニア) 6時間51分14秒
2 DUNBAR Edward(アイルランド)9秒差
3 KAMNA LENNARD ドイツ 35秒差
14石上優大(横浜高)1分15秒差(石上はジュニア1年目の選手の中では個人総合3位)
29松本祐典(明治大)2分7秒差
52草場啓吾(北桑田高)7分54秒差
57孫崎大樹(北桑田高)10分54秒差
59中村圭佑(昭和第一学園高)11分24秒差
67橋詰丈(昭和第一学園高)23分29秒差
今回は日本チームの中から石上がネイションズポイントを獲得したが、石上らが自由に動けるのも最後の集団スプリントの際には日本チームとしてはスプリントを得意とする孫崎に任せられるということも大きい。孫崎は自分で動きたい場面でも、チームの状況または集団スプリントの可能性が高い場合には動けないこともある。
また今回の第3ステージのように石上が落車やメカトラの際には他の選手がホイールを交換することにしたが、トラブルの際に助けてくれるチームメイトがいるという安心感はレースの際には非常に心強い。ネイションズポイントは選手個々がバラバラに動いて簡単に獲得できるものではない。今回は石上がネイションズポイントを獲得したが、これは他の5選手と一緒に日本チームで獲得したネイションズポイントといえる。
今年のジュニアカテゴリーの選手は1996年または1997生まれということで、早生まれの大学1年生から高校2年生までの3学年をまたぐ形になる。その中で年上年下関係なく合宿で競い合い、お互いの長所や短所を理解することで、国際レースでは日本チームとして結果を残すために助け合うことが出来る。そこでの信頼関係はジュニアカテゴリーに留まらず、U23、そしてエリートにも繋がっていく。
今回は積極的に自分達からレース展開に絡んでいき、貴重なネイションズポイントを獲得したのは評価できる。ただまだ世界との力差が大きいということも、勝負に絡めば絡むほど具体的に見えてくる。次のネイションズカップは7月22日からカナダで行われている。
text:JCFロード部会 柿木孝之
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