2013/03/31(日) - 21:11
三重県多気町は「自転車のまちづくりプロジェクト」を立ち上げ、自転車でまち興しを行う自治体。3月10日に開催された「勢和台マウンテンバイク耐久レース」を取材し、その経緯やあり方を聞いた。
勢和台マウンテンバイク耐久レース
三重県の中央に位置し牛肉で有名な松坂市にほど近い多気町。今回取材で初めて訪ねたが、山々に囲まれた多気町の第一印象は「のどかな田舎風景が続く町」。テレビドラマで地元の高校生が運営するレストラン「まごの店」が取り上げられ、全国的にも有名となったそうだ。
そんな多気町は一方で、豊かな里山や自然を生かした「自転車のまちづくりプロジェクト」を進め、MTB-DHで2連覇している清水一輝(AKI FACTORY TEAM)選手を技術専門官として職員に採用。同じく多気町に在住の元MTB日本選手団監督、西井匠さんと2人で勢和台スポーツセンター内にMTBコースを建設してきた。
3月10日に行われた「多気町長杯・勢和台マウンテンバイク2時間耐久レース」は、そのMTBコースのプレオープニングイベント。フルコースは5kmだが、今回は1.8kmのショートコースを使用した。まずは盛況だったレースの模様からお伝えしよう。
笑顔が絶えないレース
当日はレースイベントが各地で開催されたものの、122名のライダーが集まった。クラスは男女ソロ・チームと分けられ、DH13連覇の末政実緒(ダートフリーク/サラセン)と中原義貴(キャノンデール)が参加。メーカー各社がブースを出展し、試乗車も用意されるなど、初開催ながら豪華なイベントとなった。
1.8kmのコースはスポーツセンターから山林に入りしばらくすると山の峯沿いを登る。その勾配は結構キツく、インナーローでギリギリ行けるくらい。登りきると次は下りへ。コーナーの要所要所にはバンクが設けられ、上級者にも初心者にも対応するもの。最後は盛り土でなめらかに作られたジェットコースターセクションがあり、MTBの気持ちよさを存分に体感できた。
2時間ながら周回が短く、上りも下りも大満足の走りごたえのあるレースイベントに。また、初めて自転車イベントを見る地元の方の姿も多く、楽しんで走る参加者の皆さんを見て手応えを感じたようだった。
天候が心配されたものの、本降りにならず無事終了。表彰式ではトライアルショーが披露され、全日本トライアル2位の柴田泰嵩の絶技に観客から歓声が沸いた。各クラス3位までにはそれぞれ60kg(一俵)、30kg、10kgのお米と、地元特産品がプレゼントされた。
チーム優勝はキャノンデール・ジャパン。鹿屋体育大学でロード選手として活躍し、現在はキャノンデールに勤務する近藤美子さんはMTBビギナーだが、周回を重ねる事に走れるようになったとのこと。
「下りはまだ怖いですがバンクに乗せて走ると怖いけど楽しい!」とご満悦。
愛知のYAMASHIGEチームは10人で参加。尾上明子さんはガールズケイリンで走るレーサーで、元々はMTBも乗っていた。近くの松坂市出身で「近くにMTBコースができて嬉しい」と語ってくれた。
「自転車のまちづくりプロジェクト」を推し進める清水一輝選手と西井匠さん
今回1.8kmを使ったMTBコースは、将来的には総延長5kmにまで拡充予定。またパンプトラックも造成されるなど、本格的なプロジェクトとして動き出している。そんな「自転車のまちづくりプロジェクト」を推し進める中心人物、清水選手と西井さんに話を聞いてみた。
このプロジェクトのきっかけとなったのは、西井さんが多気町に移住したこと。
「妻が多気町・町の宝創造特命官の岸川氏と知り合いで、その縁でお会いしたところ意気投合し、多気町へ移り住んで活動することにしました」と西井さんは語る。
「ちょうど岸川氏が町づくりの手段を模索していたタイミングで、私もちょうど北京とユース、2度のオリンピックを経験させてもらい、そのノウハウを広く社会に還元したいと考えていました。ここからプロジェクトが始まりました。」
「多気町には、MTBを普及させるポテンシャルがあると感じたのも大きな理由。伊勢神宮まで30kmぐらいの場所に位置し、熊野古道の一部があるなど歴史のある町です。三重県の山にはお伊勢参りに使われていたと思しき道がありますが、交通網の発達により、現在は完全に埋もれて消えています。これを整備してトレイルとして利用すれば、すごい事になるのでは、と。」
一方で清水選手は、そんな多気町と西井さんの活動に興味を抱き、レースの現場に人材を探しに来た西井さんへと立候補したという。
「西井さんはMTB日本代表チームの監督をされていた方なので、よく自分を一本釣りしたかのように思われていますが、そんなことはありません。大会会場では西井さんが他の選手達にも声をかけていて、選手の間でちょっとした話題になっていました。こりゃヤバイ!と思ってレース後すぐに応募しましたよ。ちゃんとハローワーク経由で!(笑) そして面接などを経て、2012年の6月から多気町役場の産業環境課・技術専門官として採用していただきました」
―多気町ではどんな活動をしているのでしょうか?
清水「パンプトラックを多気町丹生(にゅう)にある勢山荘公園内に作りました。設計から施工まで全部やらせてもらい、凄く良い経験になりました。完成後、町内の子供が学校の放課後に遊びに来てくれます。作った甲斐がありましたね」
西井「コースの造成には、地元の多気町・古江地区の方々が全面的に協力してくださいました。こちらの指示通りにバンクを作るため、自前のユンボを持ってきてくださったり・・・。最初は 地元の方々もこちらの意図がわからず戸惑っていましたが、一つ、二つとバンクを作る度に要領を得てきて、最後には「お、エエ角度が出たな~」なんて自己判断できるようになってきました(笑)」
「パンプトラックは公園の一部ですので、年中無休で誰でも無料で遊ぶことができます。要するに、ブランコや滑り台と同じですね。ここは清水と二人でひたすら手作りしました。完成まで1ヶ月かかりましたが、清水の設計のおかげで良いものができたと自負しています」
「誰もが自由に遊べる場を目指していますので、唯一あるのは『ヘルメットと手袋をしましょう』というルールだけ。プッシュバイクの子供から、補助輪付きの子、実用車に乗る親御さんとパンプトラックで一緒に遊んでいる光景をしばしば見かけます。」
清水「また、自転車の学校を月に一回のペースで開催しています。パンプトラックのある公園や山道で自転車の楽しみ方を親子に教えています。「カズくん先生」と呼んでくれる子供もいるので、ちょっとむずがゆい感じもしますね(笑)。」
「他には交通安全教習。警察OBの方と、町内の小中学校で「走る・曲がる・止まる」の基本を教えています。一般的な交通安全教室ではなく、より実践的な内容を。特に緊急時のブレーキのかけ方は、プロ選手ならではの止まり方でウケが良いと思います。草刈りや伐採など、トレイルの整備は日常的に行なっていること。自転車愛好家の方が好むトレイルをどんどん作っていきたいです。」
「多気町は一言で言うと、ど田舎です(笑)。その代わり田舎ならではと言うか、自転車で走っていると地元の方から応援してもらったりします。町営のケーブルテレビにもしょっちゅう登場させてもらえるので、本当に多くの方から応援のお言葉をもらっています。選手冥利に尽きますね。トレーニングへのモチベーションも自然と上がります」
西井「我々のプロジェクトチームはコースを作らせて(走らせて)いただく代わりに、区の出会い(草刈作業など)にも積極的に参加しています。その際、我々だけでなく、私のブログ等で多くの方々に参加を呼びかけています。おかげさまで毎回多数のご参加をいただき、コースが「我々だけのもの」ではなく皆で共有しているという意識が高まっているように思います」
「また、プロジェクトをしっかりと理解していただくために、町議会や地区総会に出向いてプレゼンを何度も行ないました。このときは、大学でプレゼン方法の授業を担当していた自分のバックグラウンドがとても役に立ったと思います。こういった関係性作りの陰には、多気町役場や町体育協会の方々が献身的にサポートしてくださったことが最大の成功要因であることは間違いありません。この場をお借りして厚く御礼申し上げたいと思います」
―レースに関して始まる前と終わった後の感想は?
清水「今年のプロジェクトの集大成として、イベントの開催は去年6月から決まっていました。大会を開催する大変さを今回で知ることができました。多気町の方にマウンテンバイク大会の雰囲気を間近で感じてほしかったので、結果的に成功だったと思います。今後も継続してイベントを開催していきたいです」
西井「大会を開催する前はとてもハードワークでしたが、「いかに継続していくか」を深く考えています。できれば自転車がこの町の文化的なものとして、地域に根付いて欲しいと考えていますので。ですから、大会終了後の今の方がむしろ気が引き締まっていると思います。町の反応としては、何の変哲もない「ただの里山」と考えていたものが、これほどの人を集めることに驚いていたようです」
―清水選手の全日本チャンプとしての立場、今後の選手としての目標と多気町での活動は?
清水「多気町での活動に関しては、来年度も継続していただけることになりました。ですので多気町を拠点にし、トレーニングや大会参戦をしていきます。去年は富士見で3勝することができたのですが、逆に富士見以外のJシリーズでは勝てなかったので、そこが今シーズンに向けてのトレーニングの良い課題となりました。今シーズンは、国内全戦全勝を目標に頑張ります」
レース終了後にパンプトラックにも立ち寄らせてもらったところ、親子連れが楽しそうに遊んでいた。小さなパンプトラックではあるものの、いつでも遊べる上に丁寧な作りが印象的だ。
「そういえば、とても嬉しかったことが。」と西井さん。「多気町は通学バスでを使う小学生が多いのですが、学校帰りに母親に自分の自転車を積んで迎えに来てもらい、そのままパンプトラックで日が暮れるまで遊び、帰って行ったそうです。パンプトラックが携帯ゲーム機やTVアニメのような娯楽に優った、それだけで、パンプトラックを作って良かったなぁと心が清々しくなったことを鮮明に覚えています」
ここから将来世界で活躍する選手が現れる事を期待したい。
多気町長杯・勢和台マウンテンバイク2時間耐久レース結果
男子ソロ
1位 赤塚剛司(Mt.hase321)21周
2位 真弓ちから(Mt.hase321)20周
3位 橋本浩二(ケンタケ)18周
女子ソロ
1位 末政実緒(ダートフリーク/サラセン)18周
2位 中島崚歩(CLUB SY-Nak)15周
3位 尾上明子(チームヤマシゲ)13周
チーム
1位 キャノンデール・ジャパン 21周
2位 中野塗装Bチーム 20周
3位 明星隆希 19周
text&photo:Akihiro.NAKAO
勢和台マウンテンバイク耐久レース
三重県の中央に位置し牛肉で有名な松坂市にほど近い多気町。今回取材で初めて訪ねたが、山々に囲まれた多気町の第一印象は「のどかな田舎風景が続く町」。テレビドラマで地元の高校生が運営するレストラン「まごの店」が取り上げられ、全国的にも有名となったそうだ。
そんな多気町は一方で、豊かな里山や自然を生かした「自転車のまちづくりプロジェクト」を進め、MTB-DHで2連覇している清水一輝(AKI FACTORY TEAM)選手を技術専門官として職員に採用。同じく多気町に在住の元MTB日本選手団監督、西井匠さんと2人で勢和台スポーツセンター内にMTBコースを建設してきた。
3月10日に行われた「多気町長杯・勢和台マウンテンバイク2時間耐久レース」は、そのMTBコースのプレオープニングイベント。フルコースは5kmだが、今回は1.8kmのショートコースを使用した。まずは盛況だったレースの模様からお伝えしよう。
笑顔が絶えないレース
当日はレースイベントが各地で開催されたものの、122名のライダーが集まった。クラスは男女ソロ・チームと分けられ、DH13連覇の末政実緒(ダートフリーク/サラセン)と中原義貴(キャノンデール)が参加。メーカー各社がブースを出展し、試乗車も用意されるなど、初開催ながら豪華なイベントとなった。
1.8kmのコースはスポーツセンターから山林に入りしばらくすると山の峯沿いを登る。その勾配は結構キツく、インナーローでギリギリ行けるくらい。登りきると次は下りへ。コーナーの要所要所にはバンクが設けられ、上級者にも初心者にも対応するもの。最後は盛り土でなめらかに作られたジェットコースターセクションがあり、MTBの気持ちよさを存分に体感できた。
2時間ながら周回が短く、上りも下りも大満足の走りごたえのあるレースイベントに。また、初めて自転車イベントを見る地元の方の姿も多く、楽しんで走る参加者の皆さんを見て手応えを感じたようだった。
天候が心配されたものの、本降りにならず無事終了。表彰式ではトライアルショーが披露され、全日本トライアル2位の柴田泰嵩の絶技に観客から歓声が沸いた。各クラス3位までにはそれぞれ60kg(一俵)、30kg、10kgのお米と、地元特産品がプレゼントされた。
チーム優勝はキャノンデール・ジャパン。鹿屋体育大学でロード選手として活躍し、現在はキャノンデールに勤務する近藤美子さんはMTBビギナーだが、周回を重ねる事に走れるようになったとのこと。
「下りはまだ怖いですがバンクに乗せて走ると怖いけど楽しい!」とご満悦。
愛知のYAMASHIGEチームは10人で参加。尾上明子さんはガールズケイリンで走るレーサーで、元々はMTBも乗っていた。近くの松坂市出身で「近くにMTBコースができて嬉しい」と語ってくれた。
「自転車のまちづくりプロジェクト」を推し進める清水一輝選手と西井匠さん
今回1.8kmを使ったMTBコースは、将来的には総延長5kmにまで拡充予定。またパンプトラックも造成されるなど、本格的なプロジェクトとして動き出している。そんな「自転車のまちづくりプロジェクト」を推し進める中心人物、清水選手と西井さんに話を聞いてみた。
このプロジェクトのきっかけとなったのは、西井さんが多気町に移住したこと。
「妻が多気町・町の宝創造特命官の岸川氏と知り合いで、その縁でお会いしたところ意気投合し、多気町へ移り住んで活動することにしました」と西井さんは語る。
「ちょうど岸川氏が町づくりの手段を模索していたタイミングで、私もちょうど北京とユース、2度のオリンピックを経験させてもらい、そのノウハウを広く社会に還元したいと考えていました。ここからプロジェクトが始まりました。」
「多気町には、MTBを普及させるポテンシャルがあると感じたのも大きな理由。伊勢神宮まで30kmぐらいの場所に位置し、熊野古道の一部があるなど歴史のある町です。三重県の山にはお伊勢参りに使われていたと思しき道がありますが、交通網の発達により、現在は完全に埋もれて消えています。これを整備してトレイルとして利用すれば、すごい事になるのでは、と。」
一方で清水選手は、そんな多気町と西井さんの活動に興味を抱き、レースの現場に人材を探しに来た西井さんへと立候補したという。
「西井さんはMTB日本代表チームの監督をされていた方なので、よく自分を一本釣りしたかのように思われていますが、そんなことはありません。大会会場では西井さんが他の選手達にも声をかけていて、選手の間でちょっとした話題になっていました。こりゃヤバイ!と思ってレース後すぐに応募しましたよ。ちゃんとハローワーク経由で!(笑) そして面接などを経て、2012年の6月から多気町役場の産業環境課・技術専門官として採用していただきました」
―多気町ではどんな活動をしているのでしょうか?
清水「パンプトラックを多気町丹生(にゅう)にある勢山荘公園内に作りました。設計から施工まで全部やらせてもらい、凄く良い経験になりました。完成後、町内の子供が学校の放課後に遊びに来てくれます。作った甲斐がありましたね」
西井「コースの造成には、地元の多気町・古江地区の方々が全面的に協力してくださいました。こちらの指示通りにバンクを作るため、自前のユンボを持ってきてくださったり・・・。最初は 地元の方々もこちらの意図がわからず戸惑っていましたが、一つ、二つとバンクを作る度に要領を得てきて、最後には「お、エエ角度が出たな~」なんて自己判断できるようになってきました(笑)」
「パンプトラックは公園の一部ですので、年中無休で誰でも無料で遊ぶことができます。要するに、ブランコや滑り台と同じですね。ここは清水と二人でひたすら手作りしました。完成まで1ヶ月かかりましたが、清水の設計のおかげで良いものができたと自負しています」
「誰もが自由に遊べる場を目指していますので、唯一あるのは『ヘルメットと手袋をしましょう』というルールだけ。プッシュバイクの子供から、補助輪付きの子、実用車に乗る親御さんとパンプトラックで一緒に遊んでいる光景をしばしば見かけます。」
清水「また、自転車の学校を月に一回のペースで開催しています。パンプトラックのある公園や山道で自転車の楽しみ方を親子に教えています。「カズくん先生」と呼んでくれる子供もいるので、ちょっとむずがゆい感じもしますね(笑)。」
「他には交通安全教習。警察OBの方と、町内の小中学校で「走る・曲がる・止まる」の基本を教えています。一般的な交通安全教室ではなく、より実践的な内容を。特に緊急時のブレーキのかけ方は、プロ選手ならではの止まり方でウケが良いと思います。草刈りや伐採など、トレイルの整備は日常的に行なっていること。自転車愛好家の方が好むトレイルをどんどん作っていきたいです。」
「多気町は一言で言うと、ど田舎です(笑)。その代わり田舎ならではと言うか、自転車で走っていると地元の方から応援してもらったりします。町営のケーブルテレビにもしょっちゅう登場させてもらえるので、本当に多くの方から応援のお言葉をもらっています。選手冥利に尽きますね。トレーニングへのモチベーションも自然と上がります」
西井「我々のプロジェクトチームはコースを作らせて(走らせて)いただく代わりに、区の出会い(草刈作業など)にも積極的に参加しています。その際、我々だけでなく、私のブログ等で多くの方々に参加を呼びかけています。おかげさまで毎回多数のご参加をいただき、コースが「我々だけのもの」ではなく皆で共有しているという意識が高まっているように思います」
「また、プロジェクトをしっかりと理解していただくために、町議会や地区総会に出向いてプレゼンを何度も行ないました。このときは、大学でプレゼン方法の授業を担当していた自分のバックグラウンドがとても役に立ったと思います。こういった関係性作りの陰には、多気町役場や町体育協会の方々が献身的にサポートしてくださったことが最大の成功要因であることは間違いありません。この場をお借りして厚く御礼申し上げたいと思います」
―レースに関して始まる前と終わった後の感想は?
清水「今年のプロジェクトの集大成として、イベントの開催は去年6月から決まっていました。大会を開催する大変さを今回で知ることができました。多気町の方にマウンテンバイク大会の雰囲気を間近で感じてほしかったので、結果的に成功だったと思います。今後も継続してイベントを開催していきたいです」
西井「大会を開催する前はとてもハードワークでしたが、「いかに継続していくか」を深く考えています。できれば自転車がこの町の文化的なものとして、地域に根付いて欲しいと考えていますので。ですから、大会終了後の今の方がむしろ気が引き締まっていると思います。町の反応としては、何の変哲もない「ただの里山」と考えていたものが、これほどの人を集めることに驚いていたようです」
―清水選手の全日本チャンプとしての立場、今後の選手としての目標と多気町での活動は?
清水「多気町での活動に関しては、来年度も継続していただけることになりました。ですので多気町を拠点にし、トレーニングや大会参戦をしていきます。去年は富士見で3勝することができたのですが、逆に富士見以外のJシリーズでは勝てなかったので、そこが今シーズンに向けてのトレーニングの良い課題となりました。今シーズンは、国内全戦全勝を目標に頑張ります」
レース終了後にパンプトラックにも立ち寄らせてもらったところ、親子連れが楽しそうに遊んでいた。小さなパンプトラックではあるものの、いつでも遊べる上に丁寧な作りが印象的だ。
「そういえば、とても嬉しかったことが。」と西井さん。「多気町は通学バスでを使う小学生が多いのですが、学校帰りに母親に自分の自転車を積んで迎えに来てもらい、そのままパンプトラックで日が暮れるまで遊び、帰って行ったそうです。パンプトラックが携帯ゲーム機やTVアニメのような娯楽に優った、それだけで、パンプトラックを作って良かったなぁと心が清々しくなったことを鮮明に覚えています」
ここから将来世界で活躍する選手が現れる事を期待したい。
多気町長杯・勢和台マウンテンバイク2時間耐久レース結果
男子ソロ
1位 赤塚剛司(Mt.hase321)21周
2位 真弓ちから(Mt.hase321)20周
3位 橋本浩二(ケンタケ)18周
女子ソロ
1位 末政実緒(ダートフリーク/サラセン)18周
2位 中島崚歩(CLUB SY-Nak)15周
3位 尾上明子(チームヤマシゲ)13周
チーム
1位 キャノンデール・ジャパン 21周
2位 中野塗装Bチーム 20周
3位 明星隆希 19周
text&photo:Akihiro.NAKAO
フォトギャラリー
Amazon.co.jp