前号でフレームとパーツが揃い、いよいよ組み上げに入ったIndependent FabricationのCXバイク。サイクルハウスミカミ・三上店長の手で完成したバイクの姿とは。

BBタップを確認する三上さん。精度はバッチリ出ていたBBタップを確認する三上さん。精度はバッチリ出ていた 作業台の上に並べられたパーツたち。これから組み付けが始まる作業台の上に並べられたパーツたち。これから組み付けが始まる


私のIFの組み上げをお願いしたのは埼玉県飯能市にあるプロショップ、サイクルハウスミカミ。店長はロードバイクインプレッション記事でも度々ご登場頂いている三上和志さんだ。エリートシクロクロッサー/MTBerである三上さんは、FireFlyやIFを所有するなど、アメリカンハンドメイドブランドの造詣に深く、専門知識が必要なこの分野のバイクを組んでもらうには最適な方。

持ち込みながら二つ返事でOKの返答を頂くことができ、全てのパーツとフレームセットが揃ったのち、いよいよ作業が始まっていく。「IFのバイクはとても精度が良いから、組み付けしやすいんです。」と語る三上さん。まずはBBタップの確認から作業は始まった。
しかしフェイスカットの作業なども不要だとのこと。精度はすでに出した状態で出荷されており、あえて切削面取りしないほうがサビも呼ばないのだとか。これはアメリカ系ハンドメイドバイクの傾向だそうだ。

心から楽しそうに組み付けをする三上さん。ショップオーナーを務めつつエリートクラスを走る心から楽しそうに組み付けをする三上さん。ショップオーナーを務めつつエリートクラスを走る

BB、クランクセット、ヘッドセット圧入と流れるように進む作業。普段からにこやかで気さくな三上店長だが、「こういうバイクを組んでると、自然と楽しくなっちゃうんです」と言う表情は、無邪気に遊ぶ少年のそれ。居合わせた常連のお客さんも見守ってくれて、おしゃべりを楽しみながら組み付けは進んでいった。

ブラケット角度の微調整を行う。「パーツ100%の性能を引き出したい」ブラケット角度の微調整を行う。「パーツ100%の性能を引き出したい」 年季の入った治具。廃材屋に転がっていたものを再利用したという年季の入った治具。廃材屋に転がっていたものを再利用したという


「パーツの性能を100%発揮できるように組む」ことがモットーと言う三上店長。「基本中の基本だけど、それってなかなか難しいんです。乗っている時に"あれっ?"って思って欲しくない。出発からゴールまでいつも気持ちよく乗って欲しいですよね。」たまに組み付けるパーツは必ず丁寧に説明書を読む、と言う。

「こういうハンドメイドバイクって、超絶な完成度への高いこだわりがあるじゃないですか。ヘッドバッヂの凝り具合だったり、ルックスの美しさだったり。なんか良いですよね。そういうのって。一生ものだから組んでいる側も気合が入るし、ビルダーの心粋が伝わってくるから楽しいですよ」

アドバイスをもらいながら、入念にセッティングを出していくアドバイスをもらいながら、入念にセッティングを出していく Rブレーキケーブル受けの処理に一工夫を加えるRブレーキケーブル受けの処理に一工夫を加える


スマートなフォルムを見せるBB周りの様子スマートなフォルムを見せるBB周りの様子 最小限でスマートなワイヤールーティング最小限でスマートなワイヤールーティング


ハンドルやブラケット、サドルの位置などはじっくりと相談に乗ってもらうことができ、至れり尽くせり。シクロクロスエリートライダーのアドバイスだけに信頼度が違う。時間を掛けて対話することでしっくりとしたポジションが出来上がってきた。

リセットレーシングのBBは三上さんのオススメを受けてチョイスしたものだったが、外に工具を噛ませるリブが無く、BBシェルのスマートなフォルムを引き立ててくれる。

バーエンドキャップを差し込んで遂に完成を見たバーエンドキャップを差し込んで遂に完成を見た 深夜の1時を回っても丁寧な作業は変わらない。感謝。深夜の1時を回っても丁寧な作業は変わらない。感謝。


インナーケーブル直通しというスパルタン仕様のRブレーキケーブル受けは、細いチューブを噛ませることでフレーム側の傷つきを防ぐことで解決。ハンドルにアウターケーブルを固定するのには粘着性のリムテープを使うが、これは確実な固定をしブレーキの性能を引き出すための工夫で、さすがはシクロクロス経験が豊富な三上さんだ。

そしてバーエンドキャップを締め込み、深夜2時近くになって遂に完成を見た私のバイク。ほぼ思い通り、素晴らしい仕上がりとなったくれた。

Independent Fabrication Factory Lightweight Planet-XIndependent Fabrication Factory Lightweight Planet-X

構想からほぼ半年をかけて完成したFactory Lightweight Planet-X(特に車名が無いので、自分で名付けた)。実際に完成を目の当たりにすると、あれこれ思案した分感動が強く涙が出そうになった。一生をかけて付き合えそうなバイクを手にすることができて最高の気分だ。

軽量チューブやカーボンパーツのおかげで車重は7.89kgとクロモリとしては最軽量クラスに仕上がった。当初は堅牢なバイクを、ということでクロモリフレームにしたが、対話を進める内に軽量化を突き進めたい欲が出て、随分と過激な仕様になってしまった。転倒などはなるべくしないように...!

後はバイクの持つポテンシャルに負けないよう、エンジンを鍛えるのみ。この日はバイクを持ち帰ってから徹底的に磨きぬいてみた。今はこのバイクを泥に突っ込ませるなんてとても考えられないし、考えたくもない(笑)。完成してから最初の休日にバイクを持ち出し、前から"ここで撮ろう"と思っていた場所でしながらフォトセッションをしてみた。

ロゴは全てストライプと同じ水色に統一ロゴは全てストライプと同じ水色に統一 フォークのロゴも組み付けるとより引き締まって見えるフォークのロゴも組み付けるとより引き締まって見える PAUL製のシルバーケーブル受けを見送り、ブラックで統一したPAUL製のシルバーケーブル受けを見送り、ブラックで統一した


アメリカンマッスルカーからインパイアを受けた太いパイピングやカラーが今のトレンドだが、このバイクのデザインキーワードは"ピンストライプ"。明るいグレーにブルーの差し色が加えられたその姿は、上質な雰囲気を醸し出す。「あえて(流行から)外してみたんです」とは、デザインを担当してくれた矢野さん。

曰く「ロールスロイス(英国の超高級車)の仕上げに加えられるピンストライプを使うことで、上品なイメージに仕立てました。」と。 フォーク片側のみに散りばめたIFロゴも、現在のトレンドに対する新しい提案だ。

筆記体のロゴにピンストライプ。車体が引き締まる筆記体のロゴにピンストライプ。車体が引き締まる ブレーキはAvidのShorty UltimateブレーキはAvidのShorty Ultimate


カラーオーダーのフィジーク アンタレスカラーオーダーのフィジーク アンタレス 36×30Tのファイナルローギアの状態。どんな所でも走れそう36×30Tのファイナルローギアの状態。どんな所でも走れそう


次回はこのフレームを作るに当たって大きな協力をしてくれた矢野大介さんのインタビューをご紹介。オーダーメイドフレームの魅力や、勢いを増すアメリカンビルダーブランドの世界、そして実際にオーダーするには?深く、深く掘り下げてお伝えする。

Independent Fabrication Factory Lightweight Planet-XIndependent Fabrication Factory Lightweight Planet-X

text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,So.Isobe