2012/09/28(金) - 21:49
開催時期を10月から9月に移したジロ・ディ・ロンバルディア(UCIワールドツアー)に、世界チャンピオンになったばかりのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が出場する。今年は最大勾配30%の「ソルマーノの壁」が新たに登場。刺激的なレースになること請け合いだ。
「ソルマーノの壁」が50年ぶりに復活
今年で開催106回目を迎えるジロ・ディ・ロンバルディア。第1回大会が開催されたのは1905年のこと。ミラノ〜サンレモ(1907年〜)、ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年〜)、パリ〜ルーベ(1896年〜)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1892年〜)と並んで「モニュメント」と称される伝統の一戦だ。
例年10月中旬に開催され、「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」と呼ばれてきたが、今年は開催時期を9月下旬に移行。中国で開催されるツアー・オブ・北京に「シーズン最終戦」の座を奪われた。
レースの舞台となるのはレース名の通りイタリア北部のロンバルディア州。ベルガモをスタートし、山岳地帯を縫うように進みながらレッコを目指す。コース全長は251km。ワンデーレースながら、標高が1000mを超える本格山岳が登場するのが特徴だ。
最も標高があるヴァルカーヴァ(90km地点・標高1336m)や、マドンナ・デル・ギザッロ(204km地点・標高754m)、そして直前のヴィッラ・ヴェルガノ(241km地点・標高522m)は健在。
数ある登りの中でも、今年の注目は何と言っても168km地点の「ソルマーノの壁(Muro di Sormano)」だろう。1962年以来50年ぶりに復活する「壁」は登坂距離1920mで平均勾配15.8%。道は細く、中腹のヘアピンコーナーの部分は最大勾配が30%に達する。昨年もレースはソルマーノを通過しているが、「壁」は通らず、新たに整備された緩斜面を大きく迂回した。
「壁」通過後、名物マドンナ・デル・ギザッロを、ゴール45km手前でクリアする。サイクリストの聖地として知られるギザッロ教会に向かって、コモ湖畔から8.6kmかけて標高差532mを駆け上がる。平均勾配6.2%・最大勾配14%のこの登りで有力選手が動くだろう。
ギザッロ通過後、短い平坦路を挟んで、選手たちは平均勾配7.4%・最大勾配15%・標高差243m・登坂距離3.3kmのヴェルガノに突入。他の登りと比較すると距離は短いが、このヴェルガノ頂上からゴールまでは9kmしかない。
ソルマーノとギザッロで絞り込まれた集団の中から、このヴェルガノで飛び出した数名、もしくは単独の選手がレッコまで逃げることになるだろう。道が細く、勾配のあるこの登りで、昨年オリバー・ザウグ(スイス)が決定的なアタックを成功させた。
世界チャンピオンの独壇場か?コンタドールやニーバリ、別府史之出場
6日前のロード世界選手権で世界タイトルを手にしたばかりのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が、アルカンシェルを着てベルガモのスタートラインに並ぶ。
ジルベールは2009年と2010年大会の優勝者であり、ロンバルディアの勝ち方を心得ている。レース当日は悪天候が予想されているため、ジルベール有利との見方が強い。シーズン終盤、ジルベールは2週続けてビッグタイトルを狙う。
意外なことに、ロンバルディアで優勝したスペイン人は誰一人としていない。ブエルタ・ア・エスパーニャの総合トップスリーが揃って出場する今年、その歴史が塗り替えられる可能性は充分にある。
ブエルタ総合優勝のアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)は、直前のミラノ〜トリノで優勝している。世界選手権ではジルベールに敗れたが、登りの距離が長いロンバルディアはコンタドール向きか? アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)の2人も上位に絡んでくるだろう。
世界選手権でイタリアチームのエースを担ったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)は、イヴァン・バッソ(イタリア)やモレーノ・モゼール(イタリア)を従え、リクイガス・キャノンデールを勝利に導きたいところ。
オリバー・ザウグ(スイス、レディオシャック・ニッサン)は、ディフェンディングチャンピオンの証である「1」をつけての出場。2008年大会3位で、直前のジロ・デル・ピエモンテを制したリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)や、昨年大会2位のダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)、トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)にも注目したい。
他にも、ダニーロ・ディルーカ(イタリア)とカルロス・ベタンクール(コロンビア)擁するアックア・エ・サポーネ、フランコ・ペッリツォッティ(イタリア)擁するアンドローニ・ジョカトリなど、ワイルドカード枠で出場するイタリアンプロコンチネンタルチームは果敢に攻めてくるはずだ。
オリカ・グリーンエッジからは別府史之が出場する。フミは2006年に初出場して72位で完走。コース試走を終えたフミは、「ソルマーノの壁」について「イタリア的な強烈な壁だった」とツイートしている。全ての「モニュメント」を完走しているフミが、2度目のロンバルディアに挑む。
ジロ・ディ・ロンバルディアはJ SPORTSでライブ放送予定。放送は9月29日(土)21:30からJ SPORTS 2にて。
text:Kei Tsuji
「ソルマーノの壁」が50年ぶりに復活
今年で開催106回目を迎えるジロ・ディ・ロンバルディア。第1回大会が開催されたのは1905年のこと。ミラノ〜サンレモ(1907年〜)、ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年〜)、パリ〜ルーベ(1896年〜)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1892年〜)と並んで「モニュメント」と称される伝統の一戦だ。
例年10月中旬に開催され、「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」と呼ばれてきたが、今年は開催時期を9月下旬に移行。中国で開催されるツアー・オブ・北京に「シーズン最終戦」の座を奪われた。
レースの舞台となるのはレース名の通りイタリア北部のロンバルディア州。ベルガモをスタートし、山岳地帯を縫うように進みながらレッコを目指す。コース全長は251km。ワンデーレースながら、標高が1000mを超える本格山岳が登場するのが特徴だ。
最も標高があるヴァルカーヴァ(90km地点・標高1336m)や、マドンナ・デル・ギザッロ(204km地点・標高754m)、そして直前のヴィッラ・ヴェルガノ(241km地点・標高522m)は健在。
数ある登りの中でも、今年の注目は何と言っても168km地点の「ソルマーノの壁(Muro di Sormano)」だろう。1962年以来50年ぶりに復活する「壁」は登坂距離1920mで平均勾配15.8%。道は細く、中腹のヘアピンコーナーの部分は最大勾配が30%に達する。昨年もレースはソルマーノを通過しているが、「壁」は通らず、新たに整備された緩斜面を大きく迂回した。
「壁」通過後、名物マドンナ・デル・ギザッロを、ゴール45km手前でクリアする。サイクリストの聖地として知られるギザッロ教会に向かって、コモ湖畔から8.6kmかけて標高差532mを駆け上がる。平均勾配6.2%・最大勾配14%のこの登りで有力選手が動くだろう。
ギザッロ通過後、短い平坦路を挟んで、選手たちは平均勾配7.4%・最大勾配15%・標高差243m・登坂距離3.3kmのヴェルガノに突入。他の登りと比較すると距離は短いが、このヴェルガノ頂上からゴールまでは9kmしかない。
ソルマーノとギザッロで絞り込まれた集団の中から、このヴェルガノで飛び出した数名、もしくは単独の選手がレッコまで逃げることになるだろう。道が細く、勾配のあるこの登りで、昨年オリバー・ザウグ(スイス)が決定的なアタックを成功させた。
世界チャンピオンの独壇場か?コンタドールやニーバリ、別府史之出場
6日前のロード世界選手権で世界タイトルを手にしたばかりのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が、アルカンシェルを着てベルガモのスタートラインに並ぶ。
ジルベールは2009年と2010年大会の優勝者であり、ロンバルディアの勝ち方を心得ている。レース当日は悪天候が予想されているため、ジルベール有利との見方が強い。シーズン終盤、ジルベールは2週続けてビッグタイトルを狙う。
意外なことに、ロンバルディアで優勝したスペイン人は誰一人としていない。ブエルタ・ア・エスパーニャの総合トップスリーが揃って出場する今年、その歴史が塗り替えられる可能性は充分にある。
ブエルタ総合優勝のアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)は、直前のミラノ〜トリノで優勝している。世界選手権ではジルベールに敗れたが、登りの距離が長いロンバルディアはコンタドール向きか? アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)の2人も上位に絡んでくるだろう。
世界選手権でイタリアチームのエースを担ったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)は、イヴァン・バッソ(イタリア)やモレーノ・モゼール(イタリア)を従え、リクイガス・キャノンデールを勝利に導きたいところ。
オリバー・ザウグ(スイス、レディオシャック・ニッサン)は、ディフェンディングチャンピオンの証である「1」をつけての出場。2008年大会3位で、直前のジロ・デル・ピエモンテを制したリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)や、昨年大会2位のダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)、トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)にも注目したい。
他にも、ダニーロ・ディルーカ(イタリア)とカルロス・ベタンクール(コロンビア)擁するアックア・エ・サポーネ、フランコ・ペッリツォッティ(イタリア)擁するアンドローニ・ジョカトリなど、ワイルドカード枠で出場するイタリアンプロコンチネンタルチームは果敢に攻めてくるはずだ。
オリカ・グリーンエッジからは別府史之が出場する。フミは2006年に初出場して72位で完走。コース試走を終えたフミは、「ソルマーノの壁」について「イタリア的な強烈な壁だった」とツイートしている。全ての「モニュメント」を完走しているフミが、2度目のロンバルディアに挑む。
ジロ・ディ・ロンバルディアはJ SPORTSでライブ放送予定。放送は9月29日(土)21:30からJ SPORTS 2にて。
text:Kei Tsuji
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