2012/09/06(木) - 02:49
総合逆転を懸けたアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)の勇敢なるアタック。3連続山岳ステージと休息日を終えたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)に反応する力は残っていなかった。2級山岳フエンテ・デで総合逆転が発生。コンタドールがマイヨロホを手にした。
休息日明けの第17ステージは、カンタブリア州の州都サンタンデールをスタートする。前半は海岸線と内陸を行ったり来たり。中盤の補給ポイントを境にして内陸部へと入り、3つのアストゥリアス山岳に挑む。
3級山岳オサルバ峠(124km地点・5.9km・6.6%)と2級山岳ラホス峠(138km地点・5.7km・7.6%)を越えた先に待つのは、2級山岳フエンテ・デの頂上ゴールだ。むき出しの白い岩山を望む名勝地フエンテ・デに至る登りは、登坂距離17.3km。しかし平均勾配は3.9%であり、前々日までの頂上ゴールと比べると格段に難易度は低い。
驚くことに、レース主催者はこの第17ステージを「平坦ステージ」にカテゴライズしたが、とてもスプリンターが勝負に残るほどの低い難易度ではない。逃げ切り狙いの選手たちが、この日もレース序盤からアタック合戦を繰り広げた。
選手が飛び出しては吸収され、カウンターアタックで選手が飛び出す。あまりのハイペースに60km地点で集団が割れ、コンタドールを含む集団が先行し、マイヨロホのロドリゲスが後方に取り残されるシーンも。
けたたましく鳴り続けた競技無線に平穏が戻ったのは80km地点。ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)やミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)、ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)ら11名が飛び出して逃げグループを形成する。
しかし、タイム差が3分まで広がったところで、逃げに選手を送り損ねたガーミン・シャープが総力を挙げて集団ペースアップを開始。レディオシャック・ニッサンもこれに加わり、3級山岳オサルバ峠に差し掛かる頃にはタイム差は1分に。
この3級山岳オサルバ峠でダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)やアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)らが飛び出し、下りで更に選手が追いついて先頭は26名まで膨れ上がる。サクソバンクはこの中にセルジオ・パウリーニョ(ポルトガル)とヘスス・エルナンデス(スペイン)を忍び込ませることに成功した。
ゴールまで51kmを残し、2級山岳ラホス峠でついにコンタドールが動く。強力なアタックでメイン集団を飛び立ったコンタドールは、先に逃げていたパウリーニョとエルナンデスに合流。ロドリゲスを引き離しにかかる。ペースが上がったメイン集団からはクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が脱落した。
2級山岳ラホス峠を越えて、先頭グループはコンタドールを含む13名。そこから20秒遅れでロドリゲスやアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を含む8名。その2分後方にフルームを含む集団という展開に。
パウリーニョとコンタドールがローテーションを回す先頭グループは、最後の2級山岳フエンテ・デに向かう平坦区間でリードを広げる。アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)が懸命にマイヨロホグループを牽引したが、先頭グループとのタイム差は広がるばかり。総合で28秒遅れのコンタドールがバーチャルリーダーとなる。
やがて、ゴールまで23kmを残してコンタドールが先頭グループからアタック。スプリントポイントを先頭通過(ボーナスタイム6秒獲得)したコンタドールにはパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)が追いつき、なだらかな2級山岳フエンテ・デの登りに突入する。
協力的なティラロンゴが力尽きるとコンタドールの独走がスタート。後方ではバルベルデがロドリゲスを振り切り、チームメイトのベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)とともに追走グループを形成する。アシストを失ったロドリゲスに、遅れを挽回する力は残っていなかった。
バルベルデの懸命な追走は届かず、先頭を独走し続けたコンタドールがそのままゴールへ。ステージ優勝と総合逆転を果たしたコンタドールが、咆哮をあげながらゴールした。
バルベルデは6秒遅れ、そしてロドリゲスを2分38秒遅れでゴール。ボーナスタイムを合計18秒獲得したコンタドールは、バルベルデから1分52秒、ロドリゲスから2分28秒のリードを得て総合首位に。若干目を赤らめ、喜びを噛み締めながらマイヨロホを受け取った。
最終日前日の超級山岳ボラ・デル・ムンドではなく、休息日明けの2級山岳フエンテ・デで動いたコンタドール。「計算通りではなく、本能的にアタックした。先に飛び出していたチームメイトに追いつこうと飛び出したんだ。トップコンディションではないけど、動くべきだと判断した」。その判断が形勢逆転に繋がった。
「ハンガーノックにならないように最後まで食べ続けた。脚が止まってしまうと総合2位の座も失いかねない。どれだけ登りでアタックしても引き離せなかったロドリゲスを、ようやく引き離すことが出来た。これは(大会制覇への)大きな一歩。辛い時期にも支え続けてくれた全ての人に感謝したい」
20分51秒遅れの大集団先頭でゴールした土井雪広(アルゴス・シマノ)は「初めて間近でコンタドールのアタックを見た」と興奮気味に話す。「最初の3時間は常にハイペース。今日も序盤からアタックを何度も仕掛けて、何度か決まりかけたけど結局は吸収されてしまった」と土井。翌日からの2連続平坦ステージでは、再びジョン・デゲンコルブ(ドイツ)のアシストに回る。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第17ステージ結果
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 4h29'20"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +06"
3位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
4位 ゴルカ・ベルドゥーゴ(スペイン、エウスカルテル)
5位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +19"
6位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・ニッサン) +55"
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +1'13"
8位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、アルゴス・シマノ) +1'40"
9位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +2'13"
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'38"
51位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +20'51"
敢闘賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 68h07'54"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'52"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'28"
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +9'40"
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +11'36"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +12'06"
7位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +12'55"
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +13'06"
9位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +13'49"
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +14'10"
119位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +2h33'24"
ポイント賞(プントス)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 170pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 159pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 152pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 38pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 36pts
3位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) 33pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 6pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 8pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 9pts
チーム総合成績
1位 モビスター 204h11'00"
2位 エウスカルテル +17'36"
3位 ラボバンク +25'16"
text&photo:Kei Tsuji in Fuente De, Spain
休息日明けの第17ステージは、カンタブリア州の州都サンタンデールをスタートする。前半は海岸線と内陸を行ったり来たり。中盤の補給ポイントを境にして内陸部へと入り、3つのアストゥリアス山岳に挑む。
3級山岳オサルバ峠(124km地点・5.9km・6.6%)と2級山岳ラホス峠(138km地点・5.7km・7.6%)を越えた先に待つのは、2級山岳フエンテ・デの頂上ゴールだ。むき出しの白い岩山を望む名勝地フエンテ・デに至る登りは、登坂距離17.3km。しかし平均勾配は3.9%であり、前々日までの頂上ゴールと比べると格段に難易度は低い。
驚くことに、レース主催者はこの第17ステージを「平坦ステージ」にカテゴライズしたが、とてもスプリンターが勝負に残るほどの低い難易度ではない。逃げ切り狙いの選手たちが、この日もレース序盤からアタック合戦を繰り広げた。
選手が飛び出しては吸収され、カウンターアタックで選手が飛び出す。あまりのハイペースに60km地点で集団が割れ、コンタドールを含む集団が先行し、マイヨロホのロドリゲスが後方に取り残されるシーンも。
けたたましく鳴り続けた競技無線に平穏が戻ったのは80km地点。ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)やミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)、ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)ら11名が飛び出して逃げグループを形成する。
しかし、タイム差が3分まで広がったところで、逃げに選手を送り損ねたガーミン・シャープが総力を挙げて集団ペースアップを開始。レディオシャック・ニッサンもこれに加わり、3級山岳オサルバ峠に差し掛かる頃にはタイム差は1分に。
この3級山岳オサルバ峠でダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)やアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)らが飛び出し、下りで更に選手が追いついて先頭は26名まで膨れ上がる。サクソバンクはこの中にセルジオ・パウリーニョ(ポルトガル)とヘスス・エルナンデス(スペイン)を忍び込ませることに成功した。
ゴールまで51kmを残し、2級山岳ラホス峠でついにコンタドールが動く。強力なアタックでメイン集団を飛び立ったコンタドールは、先に逃げていたパウリーニョとエルナンデスに合流。ロドリゲスを引き離しにかかる。ペースが上がったメイン集団からはクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が脱落した。
2級山岳ラホス峠を越えて、先頭グループはコンタドールを含む13名。そこから20秒遅れでロドリゲスやアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を含む8名。その2分後方にフルームを含む集団という展開に。
パウリーニョとコンタドールがローテーションを回す先頭グループは、最後の2級山岳フエンテ・デに向かう平坦区間でリードを広げる。アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)が懸命にマイヨロホグループを牽引したが、先頭グループとのタイム差は広がるばかり。総合で28秒遅れのコンタドールがバーチャルリーダーとなる。
やがて、ゴールまで23kmを残してコンタドールが先頭グループからアタック。スプリントポイントを先頭通過(ボーナスタイム6秒獲得)したコンタドールにはパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)が追いつき、なだらかな2級山岳フエンテ・デの登りに突入する。
協力的なティラロンゴが力尽きるとコンタドールの独走がスタート。後方ではバルベルデがロドリゲスを振り切り、チームメイトのベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)とともに追走グループを形成する。アシストを失ったロドリゲスに、遅れを挽回する力は残っていなかった。
バルベルデの懸命な追走は届かず、先頭を独走し続けたコンタドールがそのままゴールへ。ステージ優勝と総合逆転を果たしたコンタドールが、咆哮をあげながらゴールした。
バルベルデは6秒遅れ、そしてロドリゲスを2分38秒遅れでゴール。ボーナスタイムを合計18秒獲得したコンタドールは、バルベルデから1分52秒、ロドリゲスから2分28秒のリードを得て総合首位に。若干目を赤らめ、喜びを噛み締めながらマイヨロホを受け取った。
最終日前日の超級山岳ボラ・デル・ムンドではなく、休息日明けの2級山岳フエンテ・デで動いたコンタドール。「計算通りではなく、本能的にアタックした。先に飛び出していたチームメイトに追いつこうと飛び出したんだ。トップコンディションではないけど、動くべきだと判断した」。その判断が形勢逆転に繋がった。
「ハンガーノックにならないように最後まで食べ続けた。脚が止まってしまうと総合2位の座も失いかねない。どれだけ登りでアタックしても引き離せなかったロドリゲスを、ようやく引き離すことが出来た。これは(大会制覇への)大きな一歩。辛い時期にも支え続けてくれた全ての人に感謝したい」
20分51秒遅れの大集団先頭でゴールした土井雪広(アルゴス・シマノ)は「初めて間近でコンタドールのアタックを見た」と興奮気味に話す。「最初の3時間は常にハイペース。今日も序盤からアタックを何度も仕掛けて、何度か決まりかけたけど結局は吸収されてしまった」と土井。翌日からの2連続平坦ステージでは、再びジョン・デゲンコルブ(ドイツ)のアシストに回る。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第17ステージ結果
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 4h29'20"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +06"
3位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
4位 ゴルカ・ベルドゥーゴ(スペイン、エウスカルテル)
5位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +19"
6位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・ニッサン) +55"
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +1'13"
8位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、アルゴス・シマノ) +1'40"
9位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +2'13"
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'38"
51位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +20'51"
敢闘賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 68h07'54"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'52"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'28"
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +9'40"
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +11'36"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +12'06"
7位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +12'55"
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +13'06"
9位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +13'49"
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +14'10"
119位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +2h33'24"
ポイント賞(プントス)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 170pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 159pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 152pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 38pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 36pts
3位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) 33pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 6pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 8pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 9pts
チーム総合成績
1位 モビスター 204h11'00"
2位 エウスカルテル +17'36"
3位 ラボバンク +25'16"
text&photo:Kei Tsuji in Fuente De, Spain
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