2012/09/15(土) - 12:23
フランスに本拠地を置き、品質にこだわったバイクをリリースするのがMBK。今回のインプレッションでは、MBKのロードバイクラインナップ最高峰に当たるRD1200 RSのプロトタイプを徹底検証する。フランス生まれのピュアレーサーの実力は如何に。
MBKというブランドの創業は1923年にまで遡る。当初「モトベカン」という名称のオートバイブランドとしてスタートしたこの伝統あるメーカーが自転車の製造に着手をしたのは1960年代のこと。オートバイで養ってきた2輪車の運動性能や特質を熟知する職人によって造り上げられる自転車は、レースの舞台で数多くの輝かしい記録を打ち立ててきた。
その中で社名をMBKと変えながら、自国で行われる世界最大のレース、ツール・ド・フランスではマイヨジョーヌの獲得や、メジャークラシックレースの制覇など大舞台で活躍を見せ、自転車大国・フランスに根ざすピュアフレンチブランドとしての威信を見せつけてきた。
MBKが開発にあたって重要視するのは、「真っ直ぐに走ること」「自然な体重移動で曲がってくれること」「安全に止まれること」。MBKが永年養ってきたノウハウは、フレームの素材が鉄、アルミ、カーボンと変遷を遂げても、ライダーに無理なストレスを与えず、思うままにナチュラルな挙動で走るという一貫したコンセプトに向けて集約される。
今回インプレッションを行うRD1200 RSもまた、その伝統のコンセプトに基づいて開発が行われたMBKのフラッグシップに当たるマシンだ。前モデルのRD1200(インプレッションはこちら)が持っていた、MBKらしさのある曲線を多用したイメージを踏襲しながらも、フォルムは大きく変貌を遂げた。
トップチューブはよりスローピング角の大きな弓なりの形状をもつ"ラウンドシェイプ"形状とし、そのまま細身のシートステーへと繋がっている。フレームのアッパー部分が全て一連の曲線で結合された美しいデザインだ。さらにダウンチューブもわずかに上側に湾曲するなど、フレンチブランドらしい独創的なフォルムを魅せる。
しかし、MBK全てのマシンに言えることだが、その美しいフォルムは単に見た目の美しさのみを追求しただけではなく、フレームの剛性・重心バランスを最適化し、ストレス無くバイクが前に進むことを前提とした上でのこと。性能とデザイン、この2つを同居させることが容易くないことは簡単に想像できる。トップモデルのRD1200にこのようなフォルムが採用されている事はつまり、MBKの高い技術力の証明と言って良いだろう。
その美しいモノコックフレームを構成するのは、レイヨン製50tカーボン、テナックス製40tカーボンのミックスチャーだ。応力解析システムによってフレームの細部に至るまでカーボンの積層が追求された結果、軽量性と剛性を高い次元でバランスさせることに成功しているという。
ヘッドセットは上1-1/8、下1-1/2の、上下異型のテーパードヘッドチューブ。オフセットデザインを採用するBB周りや、そこから繋がるチェーンステーなどはパワー伝達性能を求めたボリューム感のある造詣だが、流麗なフレームデザインに上手く包み込まれている。
またコンポーネントは機械式、Di2どちらにも対応できる。共用フレームには高い精度が求められることからも、MBKの技術力を伺えるというもの。Di2化のために強化されたFディレイラー取付台座など、実用性を重視したフレームワークは各所で見受けることができる。前後のエンドは耐久性を考えてアルミ製とされた。
また、本国には無いXXS、XSサイズがラインナップされていることも大きな特徴だ。これはMBKの代理店を務めるサイクルラインズがプロトモデルを徹底的にテストし、乗り味をそのままに設計したジャパンオリジナルモデル。MBKはこうした各国のディストリビューターでの徹底的なテストを重ねてから、ようやく正式にリリースがされるのだ。
今回インプレッションを行なったRD1200 RSは、そのテスト用に供されていたプロトタイプモデル。一部カーボンの積層やRブレーキワイヤー取り回し、デカールのデザインが一部異なるモデルであるため、その点をご考慮頂きい。
他ブランドがマネのできない品質本位の自転車作りを進める今となっては数少ないブランドの一つであるMBK。そんなフレンチブランドが放つフラッグシップマシン、RD1200RSを2人のテストライダーが検証する。
―インプレッション
「ヒルクライムや平地でも、走りの軽さが際立つバイク」金子友也(YOU CAN)
非常にしっかりとした剛性感に溢れるバイク。特に横方向に対する剛性が強いイメージを持ちました。
扱いやすさが非常に強いため、ダンシングで振りやすく、コーナーでの安定性がとても感じられます。例えばバンク角を深くしていった際にどこかで急に倒れこむような点が見当たらず、路面にずっと食いついてくれます。非常にナチュラルなハンドリング性能を有しており、コーナーでの安心感は抜群でした。
踏みごたえとしてはかなり硬めな部類に入るバイクだと思います。ギアを掛けてグイグイ踏み続けると反発もそれなりにはあるのですが、高いケイデンスで回していくと非常に軽快に走らせることができました。特にヒルクライムなど、長い時間を高い負荷を掛けて走る場合などには非常に活きてくるでしょう。とても軽く進んでくれます。
平地でもその走りの軽さは変わりませんでした。硬いだけに荒れた路面は得意では無いのかなという先入観を持っていましたが、簡単なレンガ敷きの区間を走ってもフレーム全体が衝撃をいなしてくれるような乗り味を味わえました。ですのでダンシングをしても暴れず、素直な性格があります。ヘッドはかなりしっかりと作られていますので、その部分も影響しているのでしょうね。
ルックスはダウンチューブが湾曲していたり、スローピングがかなり大きめだったりとかなり独特なフォルムをしていますね。フランスらしいこだわりのあるフォルムで好感がもてます。
このバイクは高いケイデンスで走らせた際に一際優秀な性能を見せてくれますので、組み合わせるホイールは軽量なものが良いと思います。
先ほど述べたように、ヒルクライムはこのバイクの得意とする所ですが、硬い踏みごたえの割にそこまで疲れが溜まってしまう感覚もありませんでした。ですのでロングライドで使用してもしっかりと走ってくれそうですね。乗るライダーを選ばない、総合的にバランスの取れたフレームかと思います。
「パワー系ライダーに向く、剛性感にあふれるレーシングバイク」村上純平(YOU CAN)
本当にレース志向、レースで勝つための剛性が与えられていて、速く走ることができる自転車という第一印象を持ちました。乗り心地、踏み味と共にかなり硬めですね。カーボンフレームですが、アルミフレームにも近いような乗り味を感じることができました。「速く走るための設計」という雰囲気を非常に強くイメージできます。ですのでレースに参加する方にこそ乗ってもらいたいですね。
湾曲したダウンチューブも含め、デザインに隠されていて気づきにくいですが、かなりボリュームのある形状をしています。そこから来る硬さや力強さを良く感じる事ができました。乗り心地はハードですが、ホイールを変えることによってかなり特性も変わってきます。テストバイクにはカッチリめのアルミホイールが装着されていたため、これをカーボンホイールやソフトなタイヤに交換してあげる事でとても乗りやすくなるかと感じました。
このバイクはトップモデルですので、もちろんレースを念頭において作られていると思います。レーシングマシンとして見れば非常に優秀な性能を持っていますし、ヘッド周りがしっかりと作られているためにダウンヒルでのコーナリング性能は抜群でした。
クリテリウムのような、ダンシングや加速を繰り返すようなシチュエーションの現場ではライバルに対してかなりアドバンテージを持つことができるかと思います。パワー系ライダーやスプリンターにとっては最良と言っても良い選択かと思いました。
日本人向けに小さいフレームサイズを研究し、展開していると聞きましたが、これはとても良いことですね。ショップ目線としてもお客様にオススメしたい自転車です。
MBK RD1200 RS
フレーム MBKカーボンテクノロジー:R-FORCE
素材:三菱レイヨン、東邦テナックス、東レ
ヘッドサイズ:上1-1/8 下1-1/2
フォーク MBKオリジナル軽量ウイングシェイプ R-FORCE
サイズ XS,S,M
※電動シフティングシステムDi2、通常ワイヤーシフティングシステムの両方が可能
価格 フレームセット:¥305,000 (税込)
インプレライダーのプロフィール
金子友也(YOU CAN)
1987年11月27日生まれ。高校から競技を始め、チームユーキャン、ブリヂストンエスポワール、チームブリヂストンアンカーに所属し、国内、アジアツアー、ヨーロッパレースに参戦。全日本選手権U23で6位、フランス第2カテゴリー優勝。西日本実業団選手権BR-1優勝、実業団in石川JPT 9位などの実績を持ち、ヒルクライムレースや暑い天候のサバイバルレースが得意。2012年4月からバイシクルショップユーキャンに勤務。
村上純平(YOU CAN)
鹿屋体育大学時代に全日本選手権U23で優勝。翌年からシマノレーシングに4シーズン在籍し、うち2シーズンはオランダを拠点に活動。主な戦歴はツールド北海道2010総合5位、ツールドフィリピン第2ステージ2位、ツールド台湾2011第1ステージ4位、ツールドおきなわ2011山岳賞など多数。引退後自転車に携る仕事・選手時代に得たものを生かせる環境を求めユーキャンに入社。自転車の「楽しみ」を提供するとともに、ジュニア育成にも取り組む。
YOU CAN(ユーキャン)
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
MBKというブランドの創業は1923年にまで遡る。当初「モトベカン」という名称のオートバイブランドとしてスタートしたこの伝統あるメーカーが自転車の製造に着手をしたのは1960年代のこと。オートバイで養ってきた2輪車の運動性能や特質を熟知する職人によって造り上げられる自転車は、レースの舞台で数多くの輝かしい記録を打ち立ててきた。
その中で社名をMBKと変えながら、自国で行われる世界最大のレース、ツール・ド・フランスではマイヨジョーヌの獲得や、メジャークラシックレースの制覇など大舞台で活躍を見せ、自転車大国・フランスに根ざすピュアフレンチブランドとしての威信を見せつけてきた。
MBKが開発にあたって重要視するのは、「真っ直ぐに走ること」「自然な体重移動で曲がってくれること」「安全に止まれること」。MBKが永年養ってきたノウハウは、フレームの素材が鉄、アルミ、カーボンと変遷を遂げても、ライダーに無理なストレスを与えず、思うままにナチュラルな挙動で走るという一貫したコンセプトに向けて集約される。
今回インプレッションを行うRD1200 RSもまた、その伝統のコンセプトに基づいて開発が行われたMBKのフラッグシップに当たるマシンだ。前モデルのRD1200(インプレッションはこちら)が持っていた、MBKらしさのある曲線を多用したイメージを踏襲しながらも、フォルムは大きく変貌を遂げた。
トップチューブはよりスローピング角の大きな弓なりの形状をもつ"ラウンドシェイプ"形状とし、そのまま細身のシートステーへと繋がっている。フレームのアッパー部分が全て一連の曲線で結合された美しいデザインだ。さらにダウンチューブもわずかに上側に湾曲するなど、フレンチブランドらしい独創的なフォルムを魅せる。
しかし、MBK全てのマシンに言えることだが、その美しいフォルムは単に見た目の美しさのみを追求しただけではなく、フレームの剛性・重心バランスを最適化し、ストレス無くバイクが前に進むことを前提とした上でのこと。性能とデザイン、この2つを同居させることが容易くないことは簡単に想像できる。トップモデルのRD1200にこのようなフォルムが採用されている事はつまり、MBKの高い技術力の証明と言って良いだろう。
その美しいモノコックフレームを構成するのは、レイヨン製50tカーボン、テナックス製40tカーボンのミックスチャーだ。応力解析システムによってフレームの細部に至るまでカーボンの積層が追求された結果、軽量性と剛性を高い次元でバランスさせることに成功しているという。
ヘッドセットは上1-1/8、下1-1/2の、上下異型のテーパードヘッドチューブ。オフセットデザインを採用するBB周りや、そこから繋がるチェーンステーなどはパワー伝達性能を求めたボリューム感のある造詣だが、流麗なフレームデザインに上手く包み込まれている。
またコンポーネントは機械式、Di2どちらにも対応できる。共用フレームには高い精度が求められることからも、MBKの技術力を伺えるというもの。Di2化のために強化されたFディレイラー取付台座など、実用性を重視したフレームワークは各所で見受けることができる。前後のエンドは耐久性を考えてアルミ製とされた。
また、本国には無いXXS、XSサイズがラインナップされていることも大きな特徴だ。これはMBKの代理店を務めるサイクルラインズがプロトモデルを徹底的にテストし、乗り味をそのままに設計したジャパンオリジナルモデル。MBKはこうした各国のディストリビューターでの徹底的なテストを重ねてから、ようやく正式にリリースがされるのだ。
今回インプレッションを行なったRD1200 RSは、そのテスト用に供されていたプロトタイプモデル。一部カーボンの積層やRブレーキワイヤー取り回し、デカールのデザインが一部異なるモデルであるため、その点をご考慮頂きい。
他ブランドがマネのできない品質本位の自転車作りを進める今となっては数少ないブランドの一つであるMBK。そんなフレンチブランドが放つフラッグシップマシン、RD1200RSを2人のテストライダーが検証する。
―インプレッション
「ヒルクライムや平地でも、走りの軽さが際立つバイク」金子友也(YOU CAN)
非常にしっかりとした剛性感に溢れるバイク。特に横方向に対する剛性が強いイメージを持ちました。
扱いやすさが非常に強いため、ダンシングで振りやすく、コーナーでの安定性がとても感じられます。例えばバンク角を深くしていった際にどこかで急に倒れこむような点が見当たらず、路面にずっと食いついてくれます。非常にナチュラルなハンドリング性能を有しており、コーナーでの安心感は抜群でした。
踏みごたえとしてはかなり硬めな部類に入るバイクだと思います。ギアを掛けてグイグイ踏み続けると反発もそれなりにはあるのですが、高いケイデンスで回していくと非常に軽快に走らせることができました。特にヒルクライムなど、長い時間を高い負荷を掛けて走る場合などには非常に活きてくるでしょう。とても軽く進んでくれます。
平地でもその走りの軽さは変わりませんでした。硬いだけに荒れた路面は得意では無いのかなという先入観を持っていましたが、簡単なレンガ敷きの区間を走ってもフレーム全体が衝撃をいなしてくれるような乗り味を味わえました。ですのでダンシングをしても暴れず、素直な性格があります。ヘッドはかなりしっかりと作られていますので、その部分も影響しているのでしょうね。
ルックスはダウンチューブが湾曲していたり、スローピングがかなり大きめだったりとかなり独特なフォルムをしていますね。フランスらしいこだわりのあるフォルムで好感がもてます。
このバイクは高いケイデンスで走らせた際に一際優秀な性能を見せてくれますので、組み合わせるホイールは軽量なものが良いと思います。
先ほど述べたように、ヒルクライムはこのバイクの得意とする所ですが、硬い踏みごたえの割にそこまで疲れが溜まってしまう感覚もありませんでした。ですのでロングライドで使用してもしっかりと走ってくれそうですね。乗るライダーを選ばない、総合的にバランスの取れたフレームかと思います。
「パワー系ライダーに向く、剛性感にあふれるレーシングバイク」村上純平(YOU CAN)
本当にレース志向、レースで勝つための剛性が与えられていて、速く走ることができる自転車という第一印象を持ちました。乗り心地、踏み味と共にかなり硬めですね。カーボンフレームですが、アルミフレームにも近いような乗り味を感じることができました。「速く走るための設計」という雰囲気を非常に強くイメージできます。ですのでレースに参加する方にこそ乗ってもらいたいですね。
湾曲したダウンチューブも含め、デザインに隠されていて気づきにくいですが、かなりボリュームのある形状をしています。そこから来る硬さや力強さを良く感じる事ができました。乗り心地はハードですが、ホイールを変えることによってかなり特性も変わってきます。テストバイクにはカッチリめのアルミホイールが装着されていたため、これをカーボンホイールやソフトなタイヤに交換してあげる事でとても乗りやすくなるかと感じました。
このバイクはトップモデルですので、もちろんレースを念頭において作られていると思います。レーシングマシンとして見れば非常に優秀な性能を持っていますし、ヘッド周りがしっかりと作られているためにダウンヒルでのコーナリング性能は抜群でした。
クリテリウムのような、ダンシングや加速を繰り返すようなシチュエーションの現場ではライバルに対してかなりアドバンテージを持つことができるかと思います。パワー系ライダーやスプリンターにとっては最良と言っても良い選択かと思いました。
日本人向けに小さいフレームサイズを研究し、展開していると聞きましたが、これはとても良いことですね。ショップ目線としてもお客様にオススメしたい自転車です。
MBK RD1200 RS
フレーム MBKカーボンテクノロジー:R-FORCE
素材:三菱レイヨン、東邦テナックス、東レ
ヘッドサイズ:上1-1/8 下1-1/2
フォーク MBKオリジナル軽量ウイングシェイプ R-FORCE
サイズ XS,S,M
※電動シフティングシステムDi2、通常ワイヤーシフティングシステムの両方が可能
価格 フレームセット:¥305,000 (税込)
インプレライダーのプロフィール
金子友也(YOU CAN)
1987年11月27日生まれ。高校から競技を始め、チームユーキャン、ブリヂストンエスポワール、チームブリヂストンアンカーに所属し、国内、アジアツアー、ヨーロッパレースに参戦。全日本選手権U23で6位、フランス第2カテゴリー優勝。西日本実業団選手権BR-1優勝、実業団in石川JPT 9位などの実績を持ち、ヒルクライムレースや暑い天候のサバイバルレースが得意。2012年4月からバイシクルショップユーキャンに勤務。
村上純平(YOU CAN)
鹿屋体育大学時代に全日本選手権U23で優勝。翌年からシマノレーシングに4シーズン在籍し、うち2シーズンはオランダを拠点に活動。主な戦歴はツールド北海道2010総合5位、ツールドフィリピン第2ステージ2位、ツールド台湾2011第1ステージ4位、ツールドおきなわ2011山岳賞など多数。引退後自転車に携る仕事・選手時代に得たものを生かせる環境を求めユーキャンに入社。自転車の「楽しみ」を提供するとともに、ジュニア育成にも取り組む。
YOU CAN(ユーキャン)
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano