2012/05/08(火) - 08:22
平坦基調の190kmを高速で駆け抜けた後のゴールスプリント。待っていたのは本命カヴェンディッシュの落車とチームワークで生み出されたマシュー・ゴスの勝利だった。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)が披露した圧倒的なスプリントから一夜明けた第3ステージ。イタリアを飛び出し、北欧デンマークを走るジロもこの日が最終日。このステージを終えれば翌日は休息日となり、一行はイタリアへと戻っていく。
この日のルートは、ユトランド半島東部にある港町ホルセンスを発着する190km。平坦なデンマークを代表するかのごとくコースはほぼ平坦で、山岳ポイントが1つ設けられているものの標高は159mと難易度は低い。最後はホルセンスの街中に設けられた14.3kmのサーキットを3周半してゴールを迎える。
そして1年前、2011年ジロ・デ・イタリア第3ステージはワウテル・ウェイラント(ベルギー、当時レオパード・トレック)がレース中の事故で亡くなった日。ウェイラントのため、また偶然にも前日のサイクリングイベント中に心臓発作で亡くなったというホルセンス市長のためにスタート前1分間の黙祷が捧げられた。
この日アタックを決めたのは、ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)、マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、アルフレード・バッローニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)、ミゲル・ミンゲス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)、レト・ホレンシュタイン(スイス、チームネットアップ)、マッズ・クリステンセン(デンマーク、サクソバンク)の6名。
6名は平坦基調のコースを飛ばしていくが、スプリンターを抱えるチームが統率を取るメイン集団はタイムギャップをシビアにコントロールし、許された最大タイム差は3分程度。逃げ集団の中、山岳賞ジャージ(マリア・アッズーラ)を着るバッローニはこの日唯一設定された4級のカテゴリー山岳を先頭で通過し、ポイントを重ねることに成功した。
やがて残り距離が50kmを切ると、メイン集団はスプリンターチームと総合狙いのチームが位置取りを開始したことで活性化。逃げグループとのタイム差が急速に詰まっていく中、先頭6名からはクリステンセンがアタック。地元デンマーク人として1人意地を見せるものの、やがて全ての逃げメンバーは吸収。続いて抜けだしたデンマーク人、ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)も残り1周回を過ぎて集団に飲み込まれた。
カヴェンディッシュ擁するチームスカイや、ウェイラントのために勝利が欲しいタイラー・ファラーのガーミン・バラクーダ勢など、次から次に各チームが列車を組んで先頭に被さる激しい展開。この日も予想通り集団スプリントへと勝負は持ち込まれていく。
前日圧倒的な組織力を見せたチームスカイだったが、この日は残り1kmに突入した時点でメンバーを残せず。別ラインから主導権を握ったグリーンエッジを先頭にスプリントへと突入していった。
チームメイトに解き放たれたゴスが先頭でスプリントを開始するその後ろ、急にラインを変えたロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)の後輪がカヴェンディッシュの前輪をすくったことに起因する大落車が発生。転倒したカヴには複数の選手が突っ込み、マリア・ローザを着るフィニーも激しくクラッシュしてしまった。
壮絶な光景を背景に先頭でゴールラインを切ったのは、チームの完璧なアシストを受けたゴスだった。追い上げるファラーとフアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)を並ばせず、前日2位の雪辱を晴らすことに成功した。
優勝したマシュー・ゴスのコメント
「チームは今日パーフェクトな動きをしてくれ、それに報いることができて最高に嬉しいよ。本当に一日中僕のために働いてくれたんだ。ここまでずっと惜しいレースが続いていたけれど、僕の今季初勝利と同時にチーム初のグランツアーでの勝利となった。ファンタスティックな気分だよ。」
一方斜行で落車を引き起こしたフェラーリには降格処分が下される結果になった。ゴスのアシストを務めながら先頭付近をキープした別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は、エースの勝利を喜ぶガッツポーズをみせながら10番手フィニッシュ。最終的に9位に繰り上がる結果となった。
落車に巻き込まれたフィニーは救済措置によって辛くもマリア・ローザを守ったものの、足首を痛めた模様。激しい展開を見せるジロは早くも休息日を挟み、第4ステージから本国イタリアへと戻っていく。
ジロ・デ・イタリア2012第3ステージ結果
1位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 4h20'53"
2位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
4位 アルノー・デマール(フランス、FDJ・ビッグマット)
5位 マーク・レンショー(オーストラリア、ラボバンク)
6位 トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシング)
7位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
8位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ)
10位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
個人総合成績
1位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング) 9h24'31"
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +09″
3位 アレックス・ラスムッセン(デンマーク、ガーミン・バラクーダ) +13″
4位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク) +15″
5位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ) +18″
6位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、ヴァカンソレイユ・DCM) +22″
7位 ブレット・ランカスター(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +23″
8位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
9位 マルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム) +24″
10位 ジェシー・サージェント(ニュージーランド、レディオシャック・ニッサン) +26″
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞 マリアアッズーラ
アルフレード・バッローニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)
新人賞 マリアビアンカ
テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)
チーム総合成績
ガーミン・バラクーダ
photo:Kei Tsuji
text:So.Isobe
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)が披露した圧倒的なスプリントから一夜明けた第3ステージ。イタリアを飛び出し、北欧デンマークを走るジロもこの日が最終日。このステージを終えれば翌日は休息日となり、一行はイタリアへと戻っていく。
この日のルートは、ユトランド半島東部にある港町ホルセンスを発着する190km。平坦なデンマークを代表するかのごとくコースはほぼ平坦で、山岳ポイントが1つ設けられているものの標高は159mと難易度は低い。最後はホルセンスの街中に設けられた14.3kmのサーキットを3周半してゴールを迎える。
そして1年前、2011年ジロ・デ・イタリア第3ステージはワウテル・ウェイラント(ベルギー、当時レオパード・トレック)がレース中の事故で亡くなった日。ウェイラントのため、また偶然にも前日のサイクリングイベント中に心臓発作で亡くなったというホルセンス市長のためにスタート前1分間の黙祷が捧げられた。
この日アタックを決めたのは、ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)、マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、アルフレード・バッローニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)、ミゲル・ミンゲス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)、レト・ホレンシュタイン(スイス、チームネットアップ)、マッズ・クリステンセン(デンマーク、サクソバンク)の6名。
6名は平坦基調のコースを飛ばしていくが、スプリンターを抱えるチームが統率を取るメイン集団はタイムギャップをシビアにコントロールし、許された最大タイム差は3分程度。逃げ集団の中、山岳賞ジャージ(マリア・アッズーラ)を着るバッローニはこの日唯一設定された4級のカテゴリー山岳を先頭で通過し、ポイントを重ねることに成功した。
やがて残り距離が50kmを切ると、メイン集団はスプリンターチームと総合狙いのチームが位置取りを開始したことで活性化。逃げグループとのタイム差が急速に詰まっていく中、先頭6名からはクリステンセンがアタック。地元デンマーク人として1人意地を見せるものの、やがて全ての逃げメンバーは吸収。続いて抜けだしたデンマーク人、ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)も残り1周回を過ぎて集団に飲み込まれた。
カヴェンディッシュ擁するチームスカイや、ウェイラントのために勝利が欲しいタイラー・ファラーのガーミン・バラクーダ勢など、次から次に各チームが列車を組んで先頭に被さる激しい展開。この日も予想通り集団スプリントへと勝負は持ち込まれていく。
前日圧倒的な組織力を見せたチームスカイだったが、この日は残り1kmに突入した時点でメンバーを残せず。別ラインから主導権を握ったグリーンエッジを先頭にスプリントへと突入していった。
チームメイトに解き放たれたゴスが先頭でスプリントを開始するその後ろ、急にラインを変えたロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)の後輪がカヴェンディッシュの前輪をすくったことに起因する大落車が発生。転倒したカヴには複数の選手が突っ込み、マリア・ローザを着るフィニーも激しくクラッシュしてしまった。
壮絶な光景を背景に先頭でゴールラインを切ったのは、チームの完璧なアシストを受けたゴスだった。追い上げるファラーとフアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)を並ばせず、前日2位の雪辱を晴らすことに成功した。
優勝したマシュー・ゴスのコメント
「チームは今日パーフェクトな動きをしてくれ、それに報いることができて最高に嬉しいよ。本当に一日中僕のために働いてくれたんだ。ここまでずっと惜しいレースが続いていたけれど、僕の今季初勝利と同時にチーム初のグランツアーでの勝利となった。ファンタスティックな気分だよ。」
一方斜行で落車を引き起こしたフェラーリには降格処分が下される結果になった。ゴスのアシストを務めながら先頭付近をキープした別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は、エースの勝利を喜ぶガッツポーズをみせながら10番手フィニッシュ。最終的に9位に繰り上がる結果となった。
落車に巻き込まれたフィニーは救済措置によって辛くもマリア・ローザを守ったものの、足首を痛めた模様。激しい展開を見せるジロは早くも休息日を挟み、第4ステージから本国イタリアへと戻っていく。
ジロ・デ・イタリア2012第3ステージ結果
1位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 4h20'53"
2位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
4位 アルノー・デマール(フランス、FDJ・ビッグマット)
5位 マーク・レンショー(オーストラリア、ラボバンク)
6位 トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシング)
7位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
8位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ)
10位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
個人総合成績
1位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング) 9h24'31"
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +09″
3位 アレックス・ラスムッセン(デンマーク、ガーミン・バラクーダ) +13″
4位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク) +15″
5位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ) +18″
6位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、ヴァカンソレイユ・DCM) +22″
7位 ブレット・ランカスター(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +23″
8位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
9位 マルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム) +24″
10位 ジェシー・サージェント(ニュージーランド、レディオシャック・ニッサン) +26″
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞 マリアアッズーラ
アルフレード・バッローニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)
新人賞 マリアビアンカ
テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)
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ガーミン・バラクーダ
photo:Kei Tsuji
text:So.Isobe
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