2012/04/26(木) - 20:43
いよいよ日本チャンピオンを決めるレースが岩手県八幡平で行われる。海外活動選手の新城幸也(ユーロップカー)と土井雪広(アルゴス・シマノ)が帰国して参戦。アンカー勢もフランス遠征から帰国。国内勢も準備万端で決戦に挑む。
4月28日(土)、29日(日)に岩手県八幡平市を舞台に行われる全日本選手権ロード。参加するすべての選手が調子を最高に持ってくる大会、真剣勝負の中の真剣勝負がこの全日本だ。すべての選手が全力で走る250km・約6時間半の戦いだ。
オリンピックイヤーの大会
今年の全日本ロードは例年よりも2ヶ月早く開催される。その理由はこの大会がロンドンオリンピックの代表候補を決める参考大会だからだ。日本のエリート男子2枠のうち、一人は別府史之(グリーンエッジ)で決まっているが、もう一人はこの全日本選手権を経て5月1日に発表される。
その「もう一人」として有力だった新城だが、直前に落車事故で手首を骨折。大会には痛みをおして出場するが、万全とは言いがたい状況だ。だからといって土井や福島晋一(トレンガヌサイクリングチーム)、西谷泰治(愛三工業レーシング)らが手加減することはないだろう。彼らとて王座を獲得したいところだ。なおディフェンディングチャンピオンの別府は出場しない。
今までならオリンピックイヤーの全日本選手権は有力選手をマークするあまり特異な展開になることが多かったが、別府が出場しないことと新城が負傷していることで展開が変わるだろう。新城の出方を待つのではなく、攻める展開のレースが予想される。
コース紹介
岩手山ふもとの1周15.5kmの公道が今回のコースだ。細長い二等辺三角形で、短い底辺部分が4km弱の上り、あと12kmほどは直線状の緩い下りから平坦だ。上りは標高差210mで平均勾配は約6%。各クラス共に上りきったところがゴールとなる。
ポイントは4kmの上りと、その後の緩い下り坂区間だ。上りはペースが上がればアウターで上る程度の勾配。ヒルクライマーが活躍するほどの場所ではないが、スプリンターは苦しむ登りだ。
上り区間のあと、フィニッシュエリアを過ぎて右折し、ピークを越えるとそこからは一直線の緩く長い下り。風圧を受けるため誰もが集団で走りたい区間だ。
上りで集団をばらけさせ、そのまま下りに入って小集団で逃げる展開がどのクラスでも見られるはずだが、ここをひとりまたは数人で逃げるには体力を消耗する覚悟が必要だ。
気になる天候は、天気予報では晴れから曇り。朝の気温は10度以下だが、昼には20度近くまで上がる。スタート時は寒くとも、レース終盤には水分の補給が欠かせないだろう。風向きは読めないが、直線の2区間は向かい風か追い風になることが予想される。風向きを読むこともカギになる。
コースそのものは単調だ。しかしだからこそ特にエリートでは展開が複雑になる。そして今年は昨年より50km長い252kmのレースだ。単騎よりもチーム戦が有利。新城や福島ら単独参戦の選手にとっては苦しいが、どういった戦い方で不利をカバーしてくるかが見ものだ。
有力選手紹介
全日本選手権は海外で走る選手たちが同じ土俵で走れる数少ないレース。国内を主戦場として闘う選手たちを相手に、どのような走りを見せるかに観客の期待は集まる。その実力から、海外組みおよび海外を経験した選手たちで優勝争いは行われることが予想される。
土井雪広(アルゴス・シマノ)
今年は土井が満を持して出場。昨年は大会2ヶ月前に膝蓋骨骨折という選手生命さえ脅かす大怪我を負いながらも出場した。今年はアルデンヌ・クラシックでの好調さそのままに岩手へ乗り込む。
土井はヒルクライマータイプだが、ベースの体力レベルが違うのでどんなコースでも勝負できる。
単騎参戦でありながら国内のシマノレーシングと連携の可能性があるのが強みだ。
しかしシマノレーシングも最初から土井をエースに据えてのシマノ総力戦に持ち込むことは考えにくい。シマノレーシングのメンバーも勝利が欲しい。シマノは「終盤に勝てる位置に最も近い選手がエース」という考えだろう。
新城幸也(ユーロップカー)
昨年、僅差で2位に甘んじた新城。本来は万全の体調で臨み、オリンピックへの切符を手にするはずだっただろう。しかし4月1日のレース中の落車で左手首を骨折。現在も治療中でプレートが入っていると言う。それでもスタートラインにつく。新城は「出走を迷った時期もありましたが、日本の皆さんに自分の走る姿を見て頂ける数少ない機会ですから、元気にスタートラインに並ぶことを目標に治療を続けてきた」という、その意気込みで走る。現実的には相当の困難が予想されるが、必ずや勇気ある姿を見せてくれるはずだ。
清水都貴、西薗良太(ブリヂストンアンカー)
今年ここまで海外を中心にすでに30レース以上こなしてきたアンカー。特にツアー・オブ・カタールとオマーンでは逃げに乗ったり上位でゴールしたりと、周囲のプロチームに引けをとらない戦いをしてきた。なかでも清水はオマーン山岳ステージで13位と大健闘。
昨年の全日本ロードで3位の清水。そして4位の西薗良太(昨年はシマノ)。アンカーは清水と西薗のダブルエース体制と言っても過言で無い。
2人とも1週間前の実業団群馬で好調ぶりを見せている。結果こそ残していないが、誰よりも好調だったことはその走りで明らか。また、吉田隼人も順調に伸びており走りに期待が持てる。
西谷泰治(愛三工業レーシング)
アジアに戦いの拠点をシフトしている愛三レーシング。国内公式戦はこの全日本が初めてだが、1月から始まっているアジアツアーにフル参戦しており、仕上がり具合はどのチームよりも良い。今年は特にプロ2年目の伊藤雅和と木守望が順調に進化しており、万全の体制を整える。
中心となるのは。2009年ロードチャンピオンの西谷。そして鈴木謙一と中島康晴もトップを狙える選手であり、この3人が注目だ。
鈴木譲、畑中勇介(シマノレーシング)
現在国内のJプロツアーレースで無敵の2人。ゴールスプリントでも登坂勝負でも勝てるポテンシャルは、他に敵う者がいないほどだ。そして独走力では参加する選手の中でトップの力を持つ阿部嵩之がどこで逃げるかに注目だ。
メンバーの誰もが優勝候補に挙げられるチームだが、畑中と鈴木、特に今年チームキャプテンになった鈴木に注目したい。
気になるのは土井雪広との連携だ。スタート時点でそれはなく、展開次第で変わってくるだろう。オールシマノで見た場合、鈴木や畑中が土井を差し置いて優勝を狙うこともある得る。
増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
昨秋の大怪我から見事な復帰を果たしたエース増田。国内レースでは今年まだ勝利こそ無いものの、最も強い選手として存在感を示している。中村誠も1週間前の群馬では120km近くを逃げ続けて5位に入る健闘を見せた。初山翔もすべてのレースで積極的に走り他チームの脅威になっている。
登坂力と独走力では国内トップの力を持つ増田。終盤に独走に持ち込めばチャンピオンの座は見えてくる。
山下貴宏(マトリックスパワータグ)
オールラウンダーとして成長している山下。長丁場や悪条件に強く、昨年のツール・ド・北海道第2ステージ優勝でようやく結果を出した。ビッグレースで常に上位に入る安定度もある。1週間前の群馬では、チームメイト全員がアタックを連発してエースは2位、山下自身も7位に。チームの連携がかみ合ったところを見せた。
鈴木真理(キャノンデール・スペースゼロポイント)
今年から活動を開始した新チームにプレイングコーチとして移籍した鈴木。Jプロツアーでは、現在ポイントリーダーでルビーレッドジャージを着る。チームとしても首位で、結束力の高さを誇る。
このチームの特徴は、エース鈴木のためにチームメイトが文字通り身を粉にして動けること。
勝ち方を知っている優れた選手の鈴木。終盤に単独となっても戦えるし、チームメイトが残っていればなおさら。2002年以来となる全日本チャンピオンを狙ってチームを背負って戦う。
狩野智也(チームUKYO)
今年から活動開始のチーム右京。スプリンターからTTのスペシャリスト、ヒルクライマーなど役者ぞろいだが、ここは狩野を挙げよう。攻撃的なスタイルで「日本の山岳王」として名高い狩野は、上りだけでなくオールラウンドな強さがある。悪条件に強いタフなベテラン選手として、250kmの長丁場で勝機をうかがう。そしてこのチームも強い結束力でエースの走りを支える。
福島晋一(トレンガヌサイクリングチーム)
アジアツアーで大活躍の福島。今春のレースでも常に逃げて勝利を狙う貪欲さは40歳の今も変わらず、むしろ進化しているのではと思えるほど。2003年にロードそして2010年に個人TTで全日本チャンピオンになっている、独走力とスプリント力も持ち合わせるタフな選手だ。
今年は完全に単騎参戦だが、アジアツアーの好調さそのままにレースで動くだろう。福島の動きがレースに大きな影響を及ぼす。40歳での全日本チャンピオン獲得に期待が高まる。
女子
2010、2011年と連覇の萩原麻由子(サイクルベースあさひ)が最有力。高い独走力を武器に今年も戦う。昨年は最後の登坂勝負で2位となった片山梨絵(SPECIALIZED)は、同じ轍を踏むことはしない。どのようにして萩原を攻略するかが見もの。そして昨年3位の西加南子(LUMINARIA)は今年も好調さをキープしている。今年もこの3人を軸に勝負が進むだろう。さらに若手として、上野みなみ(鹿屋体育大)と福本千佳(同志社大)を挙げよう。高校時代からの強さが、大学進学後も順調に伸びている。
U23
有力選手が多く出場するのが今年のU23だ。3連覇を目指す山本元喜(鹿屋体育大)を筆頭に、ツール・ド・北海道個人総合5位の黒枝士揮(鹿屋体育大)、学連大会で上位の成績のある日本大、中央大、京都産業大、立教大、法政大、順天堂大ら学連選手たちが活躍する。
早生まれの早川朋宏(TEAM NIPPO)はこのクラスで出場、台風の目だ。そして海外でTEAM NIPPOとして参戦してきた中京大の中根英登と榊原健一の積極的な走りは見もの。レースをかき乱し、ゴールを狙う。また、キャノンデール・スペースゼロポイントとチームUKYO所属の若手もこのクラスで出場する。
MJ
ジュニア年代のこのクラスは強豪選手がしのぎを削る。なかでも優勝候補筆頭は西村大輝(昭和第一学園)。1週間前のツール・ド・イストリア(UCIネイションズカップ)では歴代日本人最高のステージ4位、しかも集団の中では2位という快挙を達成。同校の馬渡伸弥とともに出場し、アジア選ロードチャンピオンに死角は無い。
高校選抜、ジャパンカップオープン、おきなわなどタイトルを総なめにしている小橋勇利(松山工)は本来ならば優勝候補だが、直前のツール・ド・イストリアで落車負傷、出場が危ぶまれる。
徳田優(北桑田高)は独走力、登坂力に優れ、得意の展開に持ち込む動きをするだろう。終盤に独走すれば優勝の可能性が出てくる。
U17・15
中学生で初のJCF強化選手となった橋詰丈は名門昭和第一学園へ進学。この橋詰と、そして山本大喜(榛生昇陽高校)が優勝候補筆頭だ。U23の山本元喜とあわせて兄弟優勝の可能性もある。さらにフランスジュニアクラスで優勝の石上優大(EQADS)や日野竜嘉(ボンシャンス飯田)らも有力だ。
レース会場
岩手県八幡平市岩手山パノラマラインコース(公道)距離15.8km/1周
大会スケジュール
4月28日(土)
8時00分 MU17+MU15 スタート 5周 79.0km
8時05分 WJ+WU17 スタート 4周 63.2km
11時00分 MU23 スタート 11周 173.8km
11時05分 MJ スタート 8周 126.4km
4月29日(日)
8時00分 ME スタート 16周 252.8km
8時05分 WE スタート 8周 126.4km
シクロワイアードでは現地よりテキストライブ&速報をお送りします。お楽しみに。
text:Hideaki TAKAGI
photo:Kenji NAKAMURA、Minoru OMAE、Sonoko TANAKA、Kei TSUJI、Hideaki TAKAGI
4月28日(土)、29日(日)に岩手県八幡平市を舞台に行われる全日本選手権ロード。参加するすべての選手が調子を最高に持ってくる大会、真剣勝負の中の真剣勝負がこの全日本だ。すべての選手が全力で走る250km・約6時間半の戦いだ。
オリンピックイヤーの大会
今年の全日本ロードは例年よりも2ヶ月早く開催される。その理由はこの大会がロンドンオリンピックの代表候補を決める参考大会だからだ。日本のエリート男子2枠のうち、一人は別府史之(グリーンエッジ)で決まっているが、もう一人はこの全日本選手権を経て5月1日に発表される。
その「もう一人」として有力だった新城だが、直前に落車事故で手首を骨折。大会には痛みをおして出場するが、万全とは言いがたい状況だ。だからといって土井や福島晋一(トレンガヌサイクリングチーム)、西谷泰治(愛三工業レーシング)らが手加減することはないだろう。彼らとて王座を獲得したいところだ。なおディフェンディングチャンピオンの別府は出場しない。
今までならオリンピックイヤーの全日本選手権は有力選手をマークするあまり特異な展開になることが多かったが、別府が出場しないことと新城が負傷していることで展開が変わるだろう。新城の出方を待つのではなく、攻める展開のレースが予想される。
コース紹介
岩手山ふもとの1周15.5kmの公道が今回のコースだ。細長い二等辺三角形で、短い底辺部分が4km弱の上り、あと12kmほどは直線状の緩い下りから平坦だ。上りは標高差210mで平均勾配は約6%。各クラス共に上りきったところがゴールとなる。
ポイントは4kmの上りと、その後の緩い下り坂区間だ。上りはペースが上がればアウターで上る程度の勾配。ヒルクライマーが活躍するほどの場所ではないが、スプリンターは苦しむ登りだ。
上り区間のあと、フィニッシュエリアを過ぎて右折し、ピークを越えるとそこからは一直線の緩く長い下り。風圧を受けるため誰もが集団で走りたい区間だ。
上りで集団をばらけさせ、そのまま下りに入って小集団で逃げる展開がどのクラスでも見られるはずだが、ここをひとりまたは数人で逃げるには体力を消耗する覚悟が必要だ。
気になる天候は、天気予報では晴れから曇り。朝の気温は10度以下だが、昼には20度近くまで上がる。スタート時は寒くとも、レース終盤には水分の補給が欠かせないだろう。風向きは読めないが、直線の2区間は向かい風か追い風になることが予想される。風向きを読むこともカギになる。
コースそのものは単調だ。しかしだからこそ特にエリートでは展開が複雑になる。そして今年は昨年より50km長い252kmのレースだ。単騎よりもチーム戦が有利。新城や福島ら単独参戦の選手にとっては苦しいが、どういった戦い方で不利をカバーしてくるかが見ものだ。
有力選手紹介
全日本選手権は海外で走る選手たちが同じ土俵で走れる数少ないレース。国内を主戦場として闘う選手たちを相手に、どのような走りを見せるかに観客の期待は集まる。その実力から、海外組みおよび海外を経験した選手たちで優勝争いは行われることが予想される。
土井雪広(アルゴス・シマノ)
今年は土井が満を持して出場。昨年は大会2ヶ月前に膝蓋骨骨折という選手生命さえ脅かす大怪我を負いながらも出場した。今年はアルデンヌ・クラシックでの好調さそのままに岩手へ乗り込む。
土井はヒルクライマータイプだが、ベースの体力レベルが違うのでどんなコースでも勝負できる。
単騎参戦でありながら国内のシマノレーシングと連携の可能性があるのが強みだ。
しかしシマノレーシングも最初から土井をエースに据えてのシマノ総力戦に持ち込むことは考えにくい。シマノレーシングのメンバーも勝利が欲しい。シマノは「終盤に勝てる位置に最も近い選手がエース」という考えだろう。
新城幸也(ユーロップカー)
昨年、僅差で2位に甘んじた新城。本来は万全の体調で臨み、オリンピックへの切符を手にするはずだっただろう。しかし4月1日のレース中の落車で左手首を骨折。現在も治療中でプレートが入っていると言う。それでもスタートラインにつく。新城は「出走を迷った時期もありましたが、日本の皆さんに自分の走る姿を見て頂ける数少ない機会ですから、元気にスタートラインに並ぶことを目標に治療を続けてきた」という、その意気込みで走る。現実的には相当の困難が予想されるが、必ずや勇気ある姿を見せてくれるはずだ。
清水都貴、西薗良太(ブリヂストンアンカー)
今年ここまで海外を中心にすでに30レース以上こなしてきたアンカー。特にツアー・オブ・カタールとオマーンでは逃げに乗ったり上位でゴールしたりと、周囲のプロチームに引けをとらない戦いをしてきた。なかでも清水はオマーン山岳ステージで13位と大健闘。
昨年の全日本ロードで3位の清水。そして4位の西薗良太(昨年はシマノ)。アンカーは清水と西薗のダブルエース体制と言っても過言で無い。
2人とも1週間前の実業団群馬で好調ぶりを見せている。結果こそ残していないが、誰よりも好調だったことはその走りで明らか。また、吉田隼人も順調に伸びており走りに期待が持てる。
西谷泰治(愛三工業レーシング)
アジアに戦いの拠点をシフトしている愛三レーシング。国内公式戦はこの全日本が初めてだが、1月から始まっているアジアツアーにフル参戦しており、仕上がり具合はどのチームよりも良い。今年は特にプロ2年目の伊藤雅和と木守望が順調に進化しており、万全の体制を整える。
中心となるのは。2009年ロードチャンピオンの西谷。そして鈴木謙一と中島康晴もトップを狙える選手であり、この3人が注目だ。
鈴木譲、畑中勇介(シマノレーシング)
現在国内のJプロツアーレースで無敵の2人。ゴールスプリントでも登坂勝負でも勝てるポテンシャルは、他に敵う者がいないほどだ。そして独走力では参加する選手の中でトップの力を持つ阿部嵩之がどこで逃げるかに注目だ。
メンバーの誰もが優勝候補に挙げられるチームだが、畑中と鈴木、特に今年チームキャプテンになった鈴木に注目したい。
気になるのは土井雪広との連携だ。スタート時点でそれはなく、展開次第で変わってくるだろう。オールシマノで見た場合、鈴木や畑中が土井を差し置いて優勝を狙うこともある得る。
増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
昨秋の大怪我から見事な復帰を果たしたエース増田。国内レースでは今年まだ勝利こそ無いものの、最も強い選手として存在感を示している。中村誠も1週間前の群馬では120km近くを逃げ続けて5位に入る健闘を見せた。初山翔もすべてのレースで積極的に走り他チームの脅威になっている。
登坂力と独走力では国内トップの力を持つ増田。終盤に独走に持ち込めばチャンピオンの座は見えてくる。
山下貴宏(マトリックスパワータグ)
オールラウンダーとして成長している山下。長丁場や悪条件に強く、昨年のツール・ド・北海道第2ステージ優勝でようやく結果を出した。ビッグレースで常に上位に入る安定度もある。1週間前の群馬では、チームメイト全員がアタックを連発してエースは2位、山下自身も7位に。チームの連携がかみ合ったところを見せた。
鈴木真理(キャノンデール・スペースゼロポイント)
今年から活動を開始した新チームにプレイングコーチとして移籍した鈴木。Jプロツアーでは、現在ポイントリーダーでルビーレッドジャージを着る。チームとしても首位で、結束力の高さを誇る。
このチームの特徴は、エース鈴木のためにチームメイトが文字通り身を粉にして動けること。
勝ち方を知っている優れた選手の鈴木。終盤に単独となっても戦えるし、チームメイトが残っていればなおさら。2002年以来となる全日本チャンピオンを狙ってチームを背負って戦う。
狩野智也(チームUKYO)
今年から活動開始のチーム右京。スプリンターからTTのスペシャリスト、ヒルクライマーなど役者ぞろいだが、ここは狩野を挙げよう。攻撃的なスタイルで「日本の山岳王」として名高い狩野は、上りだけでなくオールラウンドな強さがある。悪条件に強いタフなベテラン選手として、250kmの長丁場で勝機をうかがう。そしてこのチームも強い結束力でエースの走りを支える。
福島晋一(トレンガヌサイクリングチーム)
アジアツアーで大活躍の福島。今春のレースでも常に逃げて勝利を狙う貪欲さは40歳の今も変わらず、むしろ進化しているのではと思えるほど。2003年にロードそして2010年に個人TTで全日本チャンピオンになっている、独走力とスプリント力も持ち合わせるタフな選手だ。
今年は完全に単騎参戦だが、アジアツアーの好調さそのままにレースで動くだろう。福島の動きがレースに大きな影響を及ぼす。40歳での全日本チャンピオン獲得に期待が高まる。
女子
2010、2011年と連覇の萩原麻由子(サイクルベースあさひ)が最有力。高い独走力を武器に今年も戦う。昨年は最後の登坂勝負で2位となった片山梨絵(SPECIALIZED)は、同じ轍を踏むことはしない。どのようにして萩原を攻略するかが見もの。そして昨年3位の西加南子(LUMINARIA)は今年も好調さをキープしている。今年もこの3人を軸に勝負が進むだろう。さらに若手として、上野みなみ(鹿屋体育大)と福本千佳(同志社大)を挙げよう。高校時代からの強さが、大学進学後も順調に伸びている。
U23
有力選手が多く出場するのが今年のU23だ。3連覇を目指す山本元喜(鹿屋体育大)を筆頭に、ツール・ド・北海道個人総合5位の黒枝士揮(鹿屋体育大)、学連大会で上位の成績のある日本大、中央大、京都産業大、立教大、法政大、順天堂大ら学連選手たちが活躍する。
早生まれの早川朋宏(TEAM NIPPO)はこのクラスで出場、台風の目だ。そして海外でTEAM NIPPOとして参戦してきた中京大の中根英登と榊原健一の積極的な走りは見もの。レースをかき乱し、ゴールを狙う。また、キャノンデール・スペースゼロポイントとチームUKYO所属の若手もこのクラスで出場する。
MJ
ジュニア年代のこのクラスは強豪選手がしのぎを削る。なかでも優勝候補筆頭は西村大輝(昭和第一学園)。1週間前のツール・ド・イストリア(UCIネイションズカップ)では歴代日本人最高のステージ4位、しかも集団の中では2位という快挙を達成。同校の馬渡伸弥とともに出場し、アジア選ロードチャンピオンに死角は無い。
高校選抜、ジャパンカップオープン、おきなわなどタイトルを総なめにしている小橋勇利(松山工)は本来ならば優勝候補だが、直前のツール・ド・イストリアで落車負傷、出場が危ぶまれる。
徳田優(北桑田高)は独走力、登坂力に優れ、得意の展開に持ち込む動きをするだろう。終盤に独走すれば優勝の可能性が出てくる。
U17・15
中学生で初のJCF強化選手となった橋詰丈は名門昭和第一学園へ進学。この橋詰と、そして山本大喜(榛生昇陽高校)が優勝候補筆頭だ。U23の山本元喜とあわせて兄弟優勝の可能性もある。さらにフランスジュニアクラスで優勝の石上優大(EQADS)や日野竜嘉(ボンシャンス飯田)らも有力だ。
レース会場
岩手県八幡平市岩手山パノラマラインコース(公道)距離15.8km/1周
大会スケジュール
4月28日(土)
8時00分 MU17+MU15 スタート 5周 79.0km
8時05分 WJ+WU17 スタート 4周 63.2km
11時00分 MU23 スタート 11周 173.8km
11時05分 MJ スタート 8周 126.4km
4月29日(日)
8時00分 ME スタート 16周 252.8km
8時05分 WE スタート 8周 126.4km
シクロワイアードでは現地よりテキストライブ&速報をお送りします。お楽しみに。
text:Hideaki TAKAGI
photo:Kenji NAKAMURA、Minoru OMAE、Sonoko TANAKA、Kei TSUJI、Hideaki TAKAGI
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