2012/04/17(火) - 17:17
4月18日(水)、アルデンヌ・クラシック第2戦の第76回フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)が開催される。最大勾配が26%に達する「ユイの壁(Mur de Huy)」で決する激坂バトルに、今年は別府史之(グリーンエッジ)と土井雪広(アルゴス・シマノ)が挑む。
ユイの壁を含む登りが10カ所登場
アルデンヌ・クラシックの一つに数えられ、アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュの間に開催されるフレーシュ・ワロンヌ。ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポルト・アルガニザシオン)が主催するワンディレースだ。
レースの舞台となるのはベルギー南部のワロン地域。「北のクラシック」の舞台である北部のフランデレン地域ではフラマン語が話されているが、このワロン地域ではフランス語が公用語として話されている。
他の2レース(アムステルとリエージュ)と同じく、距離の短い上りが連続して登場するのが特徴。コース全長は200kmに満たない194kmで、数あるワンディクラシックの中では短めの部類に入る。
シャルルロワをスタートした一行は、リエージュ方向に向かって平坦な71kmのコースを東進。そこからゴール地点ユイを起点とした大小2種類の周回コースに入る。ユイに至る前半区間には例年横風が吹き付けるため、集団が常に縦一列に伸びることもしばしば。
合計10カ所の上りは、いずれも長さが1〜3kmほどで、平均勾配は3〜9%。登坂距離と上りの数だけを見ると、他の2レースより難易度は低い。しかしそれはレースの高速化を意味している。
数ある上り坂の中でもやはり注目は、合計3回通過し、ゴール地点でもある「ユイの壁」だ。長さ1300m、高低差121m、平均勾配9.3%の上りが「壁」と呼ばれる由縁は、最大勾配が26%に達する後半部分にある。上りが進むにつれて勾配が増し、頂上手前でマックスに。アムステルで登場したカウベルグ(最大勾配12%)よりも、断然その難易度は高い。
「ユイの壁」通過後、まずは5つの登りが詰め込まれた92kmの大周回コースをグルリと回る。その後もう一度「壁」を通過し、今年新たに設定された31kmの小周回コースに入る。ゴール15km手前のコル・ダメイ(1500m・6.7%)とゴール9km手前のコル・ド・ヴィレルブイエ(1200m・7.5%)はいずれも大会初登場だ。
これらの登りでセレクションがかけられた集団が、ユイの街に向かうダウンヒルを経て「壁」に突入する。登りの全長は1300mだが、具体的には、ラスト800mで幹線道路から右に曲がって脇道に入ると「壁」がスタート。ラスト400mから始まる急勾配区間で勝負が決まる。
登場する10カ所の上り(登坂距離・平均勾配)
1 70.5km地点 Mur de Huy(1回目) 1300m・9.3%
2 110.0km地点 Cote de Peu d'Eau 2700m・3.9%
3 115.5km地点 Cote de Haut-Bois 1600m・4.8%
4 141.0km地点 Cote de Groynne 2000m・3.5%
5 147.0km地点 Cote de Bohisseau 1300m・7.6%
6 150.0km地点 Cote de Bousalle 1700m・4.9%
7 163.0km地点 Mur de Huy(2回目) 1300m・9.3%
8 179.5km地点 Cote d'Amay 1500m・6.7%
9 185.5km地点 Cote de Villers-le-Bouillet 1200m・7.5%
10 194.0km地点 Mur de Huy(ゴール) 1300m・9.3%
エヴァンス欠場 ジルベールの復活なるか?
昨年「ユイの壁」で爆発的に加速し、他を置き去りにしたフィリップ・ジルベール(ベルギー)が初優勝を飾った。ジルベールは今年オメガファーマ・ロットからBMCレーシングチームに移籍。エースの座が確約されているが、シーズン序盤から不調が続く。
ジルベールは今シーズン0勝。しかしアムステル・ゴールドレースではカウベルグで積極的に動いて6位に。持ち前の爆発力は影を潜めているものの、回復の兆しを見せた。
2010年大会の覇者で、ジルベールのチームメイトであるカデル・エヴァンス(オーストラリア)は、体調不良によりアムステル・ゴールドレースを途中リタイアした。連覇が懸かった翌週のツール・ド・ロマンディに備え、エヴァンスはアルデンヌの残り2戦を欠場する。
地元ベルギー勢としては、昨年フレーシュで6位に入り、アムステルで僅差の2位に甘んじたイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)に注目したい。アムステルで熱烈なファンの声援を受けていた27歳は、昨年ツール・ド・フランスで超級山岳プラトー・ド・ベイユの頂上ゴールを制している。
今年もスペイン勢は強力なラインナップを揃える。中でも、激坂バトルを得意とするホアキン・ロドリゲス(スペイン)やダニエル・モレーノ(スペイン)、そしてアムステルでゴール寸前まで逃げたオスカル・フレイレ(スペイン)擁するカチューシャは屈強だ。「プリート」ことロドリゲスは2010年から2年連続2位に入っている。
昨年3位のサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)はスタートリストに名前が入っていない。変わって昨年5位のイゴール・アントン(スペイン)がバスクチームのエースを担うことになるだろう。
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)はアムステルで存在感を示すことが出来ず、22位に終わっている。今から6年前の2006年もバルベルデはアムステルで23位。しかし同年このフレーシュで勝ち、そしてリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも勝っている。
アムステルで勝ったエンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)や、ティレーノ〜アドリアティコの覇者ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、そしてイタリアチャンピオンのジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)らも上位に絡んでくるだろう。
精彩を欠く弟アンディに代わって、フランク・シュレク(ルクセンブルク)がレディオシャック・ニッサンのエースを担う。伏兵として、ブラバンツ・ペイルで果敢に動いたファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、コロンビア・コルデポルテス)にも注目したい。
そして日本からは、アルデンヌ連戦中の土井雪広(アルゴス・シマノ)と、ボルタ・ア・カタルーニャ以来のレース出場となる別府史之(グリーンエッジ)が顔を揃える。両者ともにフレーシュとリエージュを連戦予定だ。
text:Kei Tsuji in Charleroi, Belgium
ユイの壁を含む登りが10カ所登場
アルデンヌ・クラシックの一つに数えられ、アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュの間に開催されるフレーシュ・ワロンヌ。ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポルト・アルガニザシオン)が主催するワンディレースだ。
レースの舞台となるのはベルギー南部のワロン地域。「北のクラシック」の舞台である北部のフランデレン地域ではフラマン語が話されているが、このワロン地域ではフランス語が公用語として話されている。
他の2レース(アムステルとリエージュ)と同じく、距離の短い上りが連続して登場するのが特徴。コース全長は200kmに満たない194kmで、数あるワンディクラシックの中では短めの部類に入る。
シャルルロワをスタートした一行は、リエージュ方向に向かって平坦な71kmのコースを東進。そこからゴール地点ユイを起点とした大小2種類の周回コースに入る。ユイに至る前半区間には例年横風が吹き付けるため、集団が常に縦一列に伸びることもしばしば。
合計10カ所の上りは、いずれも長さが1〜3kmほどで、平均勾配は3〜9%。登坂距離と上りの数だけを見ると、他の2レースより難易度は低い。しかしそれはレースの高速化を意味している。
数ある上り坂の中でもやはり注目は、合計3回通過し、ゴール地点でもある「ユイの壁」だ。長さ1300m、高低差121m、平均勾配9.3%の上りが「壁」と呼ばれる由縁は、最大勾配が26%に達する後半部分にある。上りが進むにつれて勾配が増し、頂上手前でマックスに。アムステルで登場したカウベルグ(最大勾配12%)よりも、断然その難易度は高い。
「ユイの壁」通過後、まずは5つの登りが詰め込まれた92kmの大周回コースをグルリと回る。その後もう一度「壁」を通過し、今年新たに設定された31kmの小周回コースに入る。ゴール15km手前のコル・ダメイ(1500m・6.7%)とゴール9km手前のコル・ド・ヴィレルブイエ(1200m・7.5%)はいずれも大会初登場だ。
これらの登りでセレクションがかけられた集団が、ユイの街に向かうダウンヒルを経て「壁」に突入する。登りの全長は1300mだが、具体的には、ラスト800mで幹線道路から右に曲がって脇道に入ると「壁」がスタート。ラスト400mから始まる急勾配区間で勝負が決まる。
登場する10カ所の上り(登坂距離・平均勾配)
1 70.5km地点 Mur de Huy(1回目) 1300m・9.3%
2 110.0km地点 Cote de Peu d'Eau 2700m・3.9%
3 115.5km地点 Cote de Haut-Bois 1600m・4.8%
4 141.0km地点 Cote de Groynne 2000m・3.5%
5 147.0km地点 Cote de Bohisseau 1300m・7.6%
6 150.0km地点 Cote de Bousalle 1700m・4.9%
7 163.0km地点 Mur de Huy(2回目) 1300m・9.3%
8 179.5km地点 Cote d'Amay 1500m・6.7%
9 185.5km地点 Cote de Villers-le-Bouillet 1200m・7.5%
10 194.0km地点 Mur de Huy(ゴール) 1300m・9.3%
エヴァンス欠場 ジルベールの復活なるか?
昨年「ユイの壁」で爆発的に加速し、他を置き去りにしたフィリップ・ジルベール(ベルギー)が初優勝を飾った。ジルベールは今年オメガファーマ・ロットからBMCレーシングチームに移籍。エースの座が確約されているが、シーズン序盤から不調が続く。
ジルベールは今シーズン0勝。しかしアムステル・ゴールドレースではカウベルグで積極的に動いて6位に。持ち前の爆発力は影を潜めているものの、回復の兆しを見せた。
2010年大会の覇者で、ジルベールのチームメイトであるカデル・エヴァンス(オーストラリア)は、体調不良によりアムステル・ゴールドレースを途中リタイアした。連覇が懸かった翌週のツール・ド・ロマンディに備え、エヴァンスはアルデンヌの残り2戦を欠場する。
地元ベルギー勢としては、昨年フレーシュで6位に入り、アムステルで僅差の2位に甘んじたイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)に注目したい。アムステルで熱烈なファンの声援を受けていた27歳は、昨年ツール・ド・フランスで超級山岳プラトー・ド・ベイユの頂上ゴールを制している。
今年もスペイン勢は強力なラインナップを揃える。中でも、激坂バトルを得意とするホアキン・ロドリゲス(スペイン)やダニエル・モレーノ(スペイン)、そしてアムステルでゴール寸前まで逃げたオスカル・フレイレ(スペイン)擁するカチューシャは屈強だ。「プリート」ことロドリゲスは2010年から2年連続2位に入っている。
昨年3位のサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)はスタートリストに名前が入っていない。変わって昨年5位のイゴール・アントン(スペイン)がバスクチームのエースを担うことになるだろう。
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)はアムステルで存在感を示すことが出来ず、22位に終わっている。今から6年前の2006年もバルベルデはアムステルで23位。しかし同年このフレーシュで勝ち、そしてリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも勝っている。
アムステルで勝ったエンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)や、ティレーノ〜アドリアティコの覇者ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、そしてイタリアチャンピオンのジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)らも上位に絡んでくるだろう。
精彩を欠く弟アンディに代わって、フランク・シュレク(ルクセンブルク)がレディオシャック・ニッサンのエースを担う。伏兵として、ブラバンツ・ペイルで果敢に動いたファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、コロンビア・コルデポルテス)にも注目したい。
そして日本からは、アルデンヌ連戦中の土井雪広(アルゴス・シマノ)と、ボルタ・ア・カタルーニャ以来のレース出場となる別府史之(グリーンエッジ)が顔を揃える。両者ともにフレーシュとリエージュを連戦予定だ。
text:Kei Tsuji in Charleroi, Belgium
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