2012/03/24(土) - 06:16
荘厳な修道院で名を馳せる1級山岳モントセラットでも、リーダージャージのミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)は沈まなかった。ライバルたちのアタックを封じ込めたアルバジーニは、総合優勝に向けて順調に駒を進める。小集団スプリントは、ジュリアン・シモン(フランス、ソール・ソジャサン)の手に落ちた。
スタート後2時間にわたって続いたアタック合戦
210.9kmで行なわれる予定だった第3ステージが雪で短縮されたため、2012年ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャの最長ステージとなった第5ステージ。
雨雲は消え去り、気温18度前後の陽気がスタート地点を包んだ。自然と、選手たちやスタッフ、大会関係者の顔がほころぶ。
暖かな太陽光を可能な限りエネルギーに変換しようと、太陽光発電のパネルが一帯に広がる。山の稜線には風力発電の風車が並び、川沿いには原子力発電所。まさにアスコ周辺は電力の一大生産拠点。スタート地点の「Asco La vostra energia(アスコ・あなたのエネルギー)」というネーミングも頷ける。
前日の第4ステージで集団コントロールに尽力した別府史之(グリーンエッジ)は少し疲れた顔で「今日は登りを後ろで走っていると思います」と笑いながらスタートに向かう。一方の土井雪広(プロジェクト1t4i)は「日に日に調子は上がっている」と言いながら清涼飲料水を口に注ぎ込む。
モクモクと水蒸気を上げる原子力発電所を横目に、第2ステージはスタートした。26km地点の2級山岳ラ・グラナデーリャに向かって、ワインディングロードを登って行く。
ハイペースで走る大集団は、アタックを飲み込みながら、一つの大きな塊となったまま2級山岳をクリア。赤い山岳賞ジャージを着るニキ・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)が、着実にポイントを重ねて行く。
2級山岳通過後もアタックの応酬は継続。逃げグループが形成されるまで、実に90kmを要した。アタックに加わった土井は「アタックしまくったけど逃げには入ることが出来なかった。SRMのデータを見ても、最初の2時間のアベレージが280ワット。ずっとペースが速かった」と驚く。
逃げたのは、山岳賞ジャージのセレンセンを含む6名。ようやくメイン集団は落ち着きを取り戻し、タイム差は7分30秒まで広がる。2日連続でアタックしたポーランドチャンピオンジャージを着るトマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)は、この日のポイントでスプリント賞トップに立っている。
総合優勝に向けて駒を進めるアルバジーニ
ゴール地点マンレザは、ちょうどカタルーニャ州の中央に位置する。地中海沿いの州都バルセロナから内陸に60kmほど入った位置。周囲を丘に囲まれた盆地にあり、2日前の大雪で冬の装いに戻ったピレネー山脈の南端を遠くに望む。
南に目を向けると、空に向かってニョキニョキと粘土が背を伸ばしたような岩山、標高1235mのモンセラート(セラト山)が見える。その中腹には荘厳な修道院があり、キリスト教の聖地、ならびにバルセロナからの観光客が訪れるスポットとして有名。ケーブルカーで頂上まで行くことも出来る。
そんなモンセラートこそ、第5ステージ最大の山場であり、今大会最後の1級山岳だ。標高650mの峠に向かって、平均勾配5.5%の登りが7.6kmにわたって続く。頂上通過後、麓のマンレザまで23kmをひたすら下ってゴールとなる。
残り3ステージの中では最もコースの難易度が高いため、アルバジーニを王座から引きずり降ろしたいライバルチームがペースアップ。1級山岳モンセラートの麓の時点で、逃げグループとメイン集団のタイム差は2分10秒まで縮まっていた。
逃げグループは、マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)のアタックをきっかけに分裂し、山岳賞狙いのセレンセンを先頭に頂上をクリア。しかしその僅か25秒後方にメイン集団が迫る。
アルバジーニを振るい落とすべく、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)やユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)らがアタック。しかし決定的なリードは奪えないまま頂上に到達する。
下りでセレンセンらに集団が追いつき、先頭は30名弱。ゴールまで13kmを残し、下りでサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が飛び出したが、この動きもラスト4kmで終了。ライプハイマーの執拗なペースアップにも、アルバジーニは千切れなかった。
ラスト1kmからマンレザの街中に入り、最後は登り勾配の大通りでゴールスプリント。早めに仕掛けたダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)を、シモンが抜いて行く。前日の勝者リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)を振り切ったシモンが勝利した。
26歳のシモンは、2008年にクレディアグリコルでプロデビューした選手。今年ソール・ソジャサンに移籍し、自身初のUCIワールドツアーレース勝利を掴んだ。ワイルドカード枠で出場しているUCIプロコンチネンタルチームのソール・ソジャサンにとっては、非常に価値ある大きな勝利だ。
総合上位陣のペースアップによって1級山岳で遅れた土井は、4分59秒遅れの第2集団でゴール。「調子は上がってるからそれなりに登れたけど、前半にアタックを繰り返したおかげで、最後の山はもう脚がいっぱいだった」と話す。
この日、グリーンエッジは積極的にレースを動かす必要がなかったため、別府は21分04秒遅れのグルペットでゴール。メリハリをつけ、別府は残り2ステージで再びリーダージャージキープに力を注ぐ。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第5ステージ
1位 ジュリアン・シモン(フランス、ソール・ソジャサン) 4h58'27"
2位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
3位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)
4位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
5位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
7位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)
8位 デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
37位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i) +4'59"
117位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +21'04"
個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 17h23'51"
2位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) +1'32"
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
4位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
8位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
9位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
10位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
47位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i) +10'36"
110位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +41'17"
山岳賞
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)
スプリント賞
トマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)
チーム総合成績
ガーミン・バラクーダ
text&photo:Kei Tsuji in Manresa, Spain
スタート後2時間にわたって続いたアタック合戦
210.9kmで行なわれる予定だった第3ステージが雪で短縮されたため、2012年ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャの最長ステージとなった第5ステージ。
雨雲は消え去り、気温18度前後の陽気がスタート地点を包んだ。自然と、選手たちやスタッフ、大会関係者の顔がほころぶ。
暖かな太陽光を可能な限りエネルギーに変換しようと、太陽光発電のパネルが一帯に広がる。山の稜線には風力発電の風車が並び、川沿いには原子力発電所。まさにアスコ周辺は電力の一大生産拠点。スタート地点の「Asco La vostra energia(アスコ・あなたのエネルギー)」というネーミングも頷ける。
前日の第4ステージで集団コントロールに尽力した別府史之(グリーンエッジ)は少し疲れた顔で「今日は登りを後ろで走っていると思います」と笑いながらスタートに向かう。一方の土井雪広(プロジェクト1t4i)は「日に日に調子は上がっている」と言いながら清涼飲料水を口に注ぎ込む。
モクモクと水蒸気を上げる原子力発電所を横目に、第2ステージはスタートした。26km地点の2級山岳ラ・グラナデーリャに向かって、ワインディングロードを登って行く。
ハイペースで走る大集団は、アタックを飲み込みながら、一つの大きな塊となったまま2級山岳をクリア。赤い山岳賞ジャージを着るニキ・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)が、着実にポイントを重ねて行く。
2級山岳通過後もアタックの応酬は継続。逃げグループが形成されるまで、実に90kmを要した。アタックに加わった土井は「アタックしまくったけど逃げには入ることが出来なかった。SRMのデータを見ても、最初の2時間のアベレージが280ワット。ずっとペースが速かった」と驚く。
逃げたのは、山岳賞ジャージのセレンセンを含む6名。ようやくメイン集団は落ち着きを取り戻し、タイム差は7分30秒まで広がる。2日連続でアタックしたポーランドチャンピオンジャージを着るトマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)は、この日のポイントでスプリント賞トップに立っている。
総合優勝に向けて駒を進めるアルバジーニ
ゴール地点マンレザは、ちょうどカタルーニャ州の中央に位置する。地中海沿いの州都バルセロナから内陸に60kmほど入った位置。周囲を丘に囲まれた盆地にあり、2日前の大雪で冬の装いに戻ったピレネー山脈の南端を遠くに望む。
南に目を向けると、空に向かってニョキニョキと粘土が背を伸ばしたような岩山、標高1235mのモンセラート(セラト山)が見える。その中腹には荘厳な修道院があり、キリスト教の聖地、ならびにバルセロナからの観光客が訪れるスポットとして有名。ケーブルカーで頂上まで行くことも出来る。
そんなモンセラートこそ、第5ステージ最大の山場であり、今大会最後の1級山岳だ。標高650mの峠に向かって、平均勾配5.5%の登りが7.6kmにわたって続く。頂上通過後、麓のマンレザまで23kmをひたすら下ってゴールとなる。
残り3ステージの中では最もコースの難易度が高いため、アルバジーニを王座から引きずり降ろしたいライバルチームがペースアップ。1級山岳モンセラートの麓の時点で、逃げグループとメイン集団のタイム差は2分10秒まで縮まっていた。
逃げグループは、マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)のアタックをきっかけに分裂し、山岳賞狙いのセレンセンを先頭に頂上をクリア。しかしその僅か25秒後方にメイン集団が迫る。
アルバジーニを振るい落とすべく、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)やユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)らがアタック。しかし決定的なリードは奪えないまま頂上に到達する。
下りでセレンセンらに集団が追いつき、先頭は30名弱。ゴールまで13kmを残し、下りでサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が飛び出したが、この動きもラスト4kmで終了。ライプハイマーの執拗なペースアップにも、アルバジーニは千切れなかった。
ラスト1kmからマンレザの街中に入り、最後は登り勾配の大通りでゴールスプリント。早めに仕掛けたダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)を、シモンが抜いて行く。前日の勝者リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)を振り切ったシモンが勝利した。
26歳のシモンは、2008年にクレディアグリコルでプロデビューした選手。今年ソール・ソジャサンに移籍し、自身初のUCIワールドツアーレース勝利を掴んだ。ワイルドカード枠で出場しているUCIプロコンチネンタルチームのソール・ソジャサンにとっては、非常に価値ある大きな勝利だ。
総合上位陣のペースアップによって1級山岳で遅れた土井は、4分59秒遅れの第2集団でゴール。「調子は上がってるからそれなりに登れたけど、前半にアタックを繰り返したおかげで、最後の山はもう脚がいっぱいだった」と話す。
この日、グリーンエッジは積極的にレースを動かす必要がなかったため、別府は21分04秒遅れのグルペットでゴール。メリハリをつけ、別府は残り2ステージで再びリーダージャージキープに力を注ぐ。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第5ステージ
1位 ジュリアン・シモン(フランス、ソール・ソジャサン) 4h58'27"
2位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
3位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)
4位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
5位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
7位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)
8位 デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
37位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i) +4'59"
117位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +21'04"
個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 17h23'51"
2位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) +1'32"
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
4位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
8位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
9位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
10位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
47位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i) +10'36"
110位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +41'17"
山岳賞
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)
スプリント賞
トマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)
チーム総合成績
ガーミン・バラクーダ
text&photo:Kei Tsuji in Manresa, Spain
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