2009/05/26(火) - 10:07
今大会の最重要ステージと目されたジロ・デ・イタリア第16ステージは、難関の頂上ゴールを制し、カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)がステージ優勝。2位でフィニッシュしたデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)はコンディションの高さを見せつけ、マリアローザを死守した。
2009年5月25日に行われたジロ・デ・イタリア第16ステージは、標高1400m級の峠を含む3つの山岳ポイントを越え、ラストは平均勾配7.9%、最大勾配最大13%のモンテペトラーノの頂上ゴールという厳しいコース設定だった。距離も後半戦最長の237km。連日の酷暑と蓄積した疲労の中、決戦の火ぶたが切られた。
高い気温、遮る物のない日差しの中、レースは序盤から動いた。
地元が近いミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)に加え、個人総合で9分遅れ・14位のヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、アスタナ)、9分43秒遅れ・15位のダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)を含む20名の逃げが決まった。
3名以外のメンバーは、ガブリエーレ・ボジージオ(イタリア、LPRブレークス)、マウリシオアルベルト・アルディラ(コロンビア、ラボバンク)、マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)、キェール・カールストローム(フィンランド、リクイガス)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)、フランチェスコ・デボニス(イタリア、ディキジョヴァンニ)、ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)、フランチェスコ・ベロッティ(イタリア、バルロワールド)、アルノー・ジャネソン(フランス、ケースデパーニュ)、マチュー・スプリック(フランス、Bboxブイグテレコム)、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、ケースデパーニュ)、アンヘル・ゴメスゴメス(スペイン、フジ・セルヴェット)、ルノー・ディオン(フランス、アージェードゥーゼル)、パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)、デリオ・フェルナンデス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン・スリップストリーム)、トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・スリップストリーム)。
個人総合トップのデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)を擁するラボバンクが2名、また、2位のダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)を擁するLPRブレークス、3位のリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)を擁するアスタナ、4位のフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)と6位のイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)を擁するリクイガスはそれぞれ1名を先頭グループに送り込んでいる。
前日の第15ステージでも、大人数の逃げから降りてきたアシストがエースを助けるシーンが見られたが、このことが個人総合を巡る争いにどのような影響を与えることになるかということにも注目が集まった。
20名から成る逃げグループは徐々にリードを広げたが、第1山岳モンテチェザーネの上りでガーミン・スリップストリームのウィギンズとダニエルソンが遅れ、18名で逃げ続けることとなった。
その後の下りでスカルポーニ、ブラット、カタルドが落車し、スカルポーニは大きく破けたジャージを着替え、バイクを交換するために足を止めたが、その後集団に復帰している。
逃げグループはメイン集団に対して一時8分以上のタイム差をつけた。
第2山岳のモンテネローネの上りではブラット、ロペスガルシア、チャリンギ、フェルナンデスが遅れ、逃げグループは14名に。
ペースを上げるデボニスを先頭にモンテネローネの山頂を越えた。
3分42秒差で逃げグループを追うメイン集団は、ラボバンクがコントロールしていた。先ほどまで逃げていたチャリンギも合流し、先頭交替に加わっている。
空撮のカメラが集団の後方に位置するカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)を幾度となく映し出す。
第15ステージ終了後、マリアローザのメンショフが「明日はサストレをマークすることになるだろう」と言及している。そのサストレは単に不調なのか、好機をじっと狙っているのか判断は後にゆだねられることとなる。
175km過ぎから始まる山岳ポイントのついていないカンティアーノ峠の上りで、それまで先頭でペースを作っていたチームメイトのデボニスをかわし、スカルポーニがアタックした。クネゴがすかさず反応する。
後続からはポポヴィッチ、ボジージオが2名を追い、中間スプリントポイントを前に先頭は4名となった。しかし、ボジージオ、ポポヴィッチはあまり積極的に先頭交替には加わらない。
それを嫌ったのか第3山岳の上りでクネゴが仕掛けた。しかし、このアタックにスカルポーニは反応できず、むしろ置き去りにしたかったボジージオ、ポポヴィッチが追いつく。一度は追いついたスカルポーニだったが、その後のポポヴィッチのペースアップに着いていかれず、先頭は3名に絞られた。
メイン集団では、ラボバンクのテンダムと、そして逃げグループから下がってきたアルディラがペースを作る。
集団が徐々に絞られ、トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)、ジルベルト・シモーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)が早々にちぎれた。ロヴクヴィストのマリアビアンカを巡る争いに黄信号が灯ってしまった。
先頭3名はメイン集団に対して約3分10秒のアドバンテージを持って第三山岳のモンテカトリアの山頂を通過した。
そしてその後の下りでクネゴがアタック。しかし他の2名を引き離す動きにはならない。
逆にポポヴィッチがクネゴをかわし、一気に加速して差を開いた。
一方、メイン集団も何ら動きがないままに下りに入った。ガードレールのない危険なコースを警戒してのことだろう。バイク審判が赤旗を掲げ、メイン集団のペースを落とした。
そんな中、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)がパンクで止まった。追い越し禁止区間だったこともあってか、アシスト1名に引かれライプハイマーは無事に集団に復帰。しかしここで足を使ってしまったことが後々影響することとなった。
そしてラストのモンテペトラーノの上りに入った。
ここまでメイン集団を引いてきたテンダム、アルディラは位置を下げ、代わって集団先頭に上がってきたのはリクイガス。
前日チームの采配ミスで涙を飲んだセルジュ・パウエルス(ベルギー、サーヴェロ・テストチーム)のアタックを皮切りに、レースが動き始めた。
パウエルスを追ってバッソがペースを上げる。チェックしたのはメンショフだ。ディルーカもぴったりとマークしている。
完全に振り切ることはできず、一度は集団に戻った。
しかしバッソはもう一度仕掛けた。メンショフ、ディルーカ、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)が追いつき、さらには後続からサストレ、ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)も追いついた。
この動きについていかれなかったのがライプハイマー。後続に取り残されメンショフらを追うことになった。
この後も仕掛け合いは続く。まず仕掛けたサストレに一旦は追いついたメンショフ、ディルーカ、バッソだったが、畳みかけるようなサストレの攻撃に反応したのはバッソだけだった。バッソは単独でサストレを追いはじめた。
ディルーカ、メンショフは互いの様子を見合い、牽制。
しかし、ディルーカもここで攻撃しないわけにはいかない。
満を持してディルーカがアタック。しかし、絶好調のメンショフを振り切ることはできなかった。
先頭ポポヴィッチ、2番手サストレ、3番手バッソ、そしてメンショフとディルーカという陣容でゴールに向かう。
ここまで快調に飛ばしてきたポポヴィッチのペースが落ちた。
残り5km地点で1分20秒の差があったはずのサストレが、残り3kmを切ったあたりでポポヴィッチを抜き去った。
サストレはそのままの勢いで飛ばす。
ディルーカとメンショフは今や協力してペースを上げるが、バッソに追いつくのがやっとだった。
最後の最後までペダルを踏み、ゴールラインを越える間際で指先にキスをしてその手でガッツポーズを見せたサストレ。7時間を越える死闘だった。
注目の2位争いはゴール手前で仕掛けたメンショフがディルーカを突き離してゴール。タイム差1秒をつけ、2位のボーナスタイム4秒をも加算して34秒のタイム差をさらに5秒広げる形となった。
集団後方で脚を貯め、一気に爆発させステージ優勝を飾ったサストレは「今日のまたとないチャンスを生かしたかった。長くて厳しいステージだった。メンショフはうまくペダリングしていた。バッソも調子がよさそうだった。ディルーカも戦闘的だった。もし今日僕が調子がよければ、マリアローザを獲りに行こうと思っていた」と語る。
そして「今日は僕にとって重要だった。最終週がいつもすべてを決める。僕は冷静だ。すべてを賭けている。噂や雑音には耳を貸さないよ。僕は僕の仕事に集中して、重要なレースに備えているし、アタックのチャンスがきたらそれをするだけだ」とまだまだ狙っていくことを表明している。
そしてコンディションの高さを見せつけたメンショフは「ジロに勝ったと言うのはまだ早いよ。まだ重要なステージがいくつか待っている。ローマまでの最後のタイムトライアルの前に2つの重要なステージがある。ディルーカとサストレから離されないよ。そしてローマまで待つ。ローマまでに本当にハードな闘いが待っている」と語っている。
この日、ブレーキとなってしまったのはライプハイマーとロヴクヴィストだ。
マリアローザグループから下がったアームストロングのアシストを受けて2分51秒遅れでゴールしたライプハイマーは個人総合順位を3位から6位に落とした。
また、ロヴクヴィストは何と24分46秒遅れでゴール。マリアビアンカを失ってしまった。
代わってマリアビアンカに袖を通したのはケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)だ。「今日のステージではできるだけいい位置につけられるようにがんばった。ホワイトジャージ(マリアビアンカ)のために、リザルト上の直接的な相手(ロヴクヴィストや新人賞対象の選手)に下りで差を付けられるように走った」と語るシールドライヤースは、今度は4分13秒差のフランチェスコ・マシャレッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)を意識しながら走ることになる。
そして休息日を挟んで行われるジロ・デ・イタリア第17ステージは、ブロックハウスを舞台に争われる頂上決戦だ。個人総合優勝を争う選手達の熾烈な争いを目の当たりにすることができるだろう。
ジロ・デ・イタリア2009第16ステージ結果
1位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) 7h11'54"
2位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +25"
3位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) +26"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +29"
5位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +1'19"
6位 フランチェスコ・マシャレッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +1'21"
7位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) +1'21"
8位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル) +2'11"
9位 ホセ・セルパ(コロンビア、ディキジョヴァンニ) +2'35"
10位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ) +2'51"
個人総合成績
1位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) 70h06'30"
2位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) +39"
3位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +2'19"
4位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) +3'08"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +3'19"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ) +3'21"
7位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア) +5'54"
8位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +8'21"
9位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ) +8'39"
10位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル) +8'47"
ポイント賞 マリアチクラミーノ
ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)
山岳賞 マリアヴェルデ
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
新人賞 マリアビアンカ
ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)
チーム総合成績
アスタナ
text:Reiko Tsuru
photo:Kei Tsuji, Cor Vos
2009年5月25日に行われたジロ・デ・イタリア第16ステージは、標高1400m級の峠を含む3つの山岳ポイントを越え、ラストは平均勾配7.9%、最大勾配最大13%のモンテペトラーノの頂上ゴールという厳しいコース設定だった。距離も後半戦最長の237km。連日の酷暑と蓄積した疲労の中、決戦の火ぶたが切られた。
高い気温、遮る物のない日差しの中、レースは序盤から動いた。
地元が近いミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)に加え、個人総合で9分遅れ・14位のヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、アスタナ)、9分43秒遅れ・15位のダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)を含む20名の逃げが決まった。
3名以外のメンバーは、ガブリエーレ・ボジージオ(イタリア、LPRブレークス)、マウリシオアルベルト・アルディラ(コロンビア、ラボバンク)、マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)、キェール・カールストローム(フィンランド、リクイガス)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)、フランチェスコ・デボニス(イタリア、ディキジョヴァンニ)、ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)、フランチェスコ・ベロッティ(イタリア、バルロワールド)、アルノー・ジャネソン(フランス、ケースデパーニュ)、マチュー・スプリック(フランス、Bboxブイグテレコム)、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、ケースデパーニュ)、アンヘル・ゴメスゴメス(スペイン、フジ・セルヴェット)、ルノー・ディオン(フランス、アージェードゥーゼル)、パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)、デリオ・フェルナンデス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン・スリップストリーム)、トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・スリップストリーム)。
個人総合トップのデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)を擁するラボバンクが2名、また、2位のダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)を擁するLPRブレークス、3位のリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)を擁するアスタナ、4位のフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)と6位のイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)を擁するリクイガスはそれぞれ1名を先頭グループに送り込んでいる。
前日の第15ステージでも、大人数の逃げから降りてきたアシストがエースを助けるシーンが見られたが、このことが個人総合を巡る争いにどのような影響を与えることになるかということにも注目が集まった。
20名から成る逃げグループは徐々にリードを広げたが、第1山岳モンテチェザーネの上りでガーミン・スリップストリームのウィギンズとダニエルソンが遅れ、18名で逃げ続けることとなった。
その後の下りでスカルポーニ、ブラット、カタルドが落車し、スカルポーニは大きく破けたジャージを着替え、バイクを交換するために足を止めたが、その後集団に復帰している。
逃げグループはメイン集団に対して一時8分以上のタイム差をつけた。
第2山岳のモンテネローネの上りではブラット、ロペスガルシア、チャリンギ、フェルナンデスが遅れ、逃げグループは14名に。
ペースを上げるデボニスを先頭にモンテネローネの山頂を越えた。
3分42秒差で逃げグループを追うメイン集団は、ラボバンクがコントロールしていた。先ほどまで逃げていたチャリンギも合流し、先頭交替に加わっている。
空撮のカメラが集団の後方に位置するカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)を幾度となく映し出す。
第15ステージ終了後、マリアローザのメンショフが「明日はサストレをマークすることになるだろう」と言及している。そのサストレは単に不調なのか、好機をじっと狙っているのか判断は後にゆだねられることとなる。
175km過ぎから始まる山岳ポイントのついていないカンティアーノ峠の上りで、それまで先頭でペースを作っていたチームメイトのデボニスをかわし、スカルポーニがアタックした。クネゴがすかさず反応する。
後続からはポポヴィッチ、ボジージオが2名を追い、中間スプリントポイントを前に先頭は4名となった。しかし、ボジージオ、ポポヴィッチはあまり積極的に先頭交替には加わらない。
それを嫌ったのか第3山岳の上りでクネゴが仕掛けた。しかし、このアタックにスカルポーニは反応できず、むしろ置き去りにしたかったボジージオ、ポポヴィッチが追いつく。一度は追いついたスカルポーニだったが、その後のポポヴィッチのペースアップに着いていかれず、先頭は3名に絞られた。
メイン集団では、ラボバンクのテンダムと、そして逃げグループから下がってきたアルディラがペースを作る。
集団が徐々に絞られ、トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)、ジルベルト・シモーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)が早々にちぎれた。ロヴクヴィストのマリアビアンカを巡る争いに黄信号が灯ってしまった。
先頭3名はメイン集団に対して約3分10秒のアドバンテージを持って第三山岳のモンテカトリアの山頂を通過した。
そしてその後の下りでクネゴがアタック。しかし他の2名を引き離す動きにはならない。
逆にポポヴィッチがクネゴをかわし、一気に加速して差を開いた。
一方、メイン集団も何ら動きがないままに下りに入った。ガードレールのない危険なコースを警戒してのことだろう。バイク審判が赤旗を掲げ、メイン集団のペースを落とした。
そんな中、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)がパンクで止まった。追い越し禁止区間だったこともあってか、アシスト1名に引かれライプハイマーは無事に集団に復帰。しかしここで足を使ってしまったことが後々影響することとなった。
そしてラストのモンテペトラーノの上りに入った。
ここまでメイン集団を引いてきたテンダム、アルディラは位置を下げ、代わって集団先頭に上がってきたのはリクイガス。
前日チームの采配ミスで涙を飲んだセルジュ・パウエルス(ベルギー、サーヴェロ・テストチーム)のアタックを皮切りに、レースが動き始めた。
パウエルスを追ってバッソがペースを上げる。チェックしたのはメンショフだ。ディルーカもぴったりとマークしている。
完全に振り切ることはできず、一度は集団に戻った。
しかしバッソはもう一度仕掛けた。メンショフ、ディルーカ、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)が追いつき、さらには後続からサストレ、ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)も追いついた。
この動きについていかれなかったのがライプハイマー。後続に取り残されメンショフらを追うことになった。
この後も仕掛け合いは続く。まず仕掛けたサストレに一旦は追いついたメンショフ、ディルーカ、バッソだったが、畳みかけるようなサストレの攻撃に反応したのはバッソだけだった。バッソは単独でサストレを追いはじめた。
ディルーカ、メンショフは互いの様子を見合い、牽制。
しかし、ディルーカもここで攻撃しないわけにはいかない。
満を持してディルーカがアタック。しかし、絶好調のメンショフを振り切ることはできなかった。
先頭ポポヴィッチ、2番手サストレ、3番手バッソ、そしてメンショフとディルーカという陣容でゴールに向かう。
ここまで快調に飛ばしてきたポポヴィッチのペースが落ちた。
残り5km地点で1分20秒の差があったはずのサストレが、残り3kmを切ったあたりでポポヴィッチを抜き去った。
サストレはそのままの勢いで飛ばす。
ディルーカとメンショフは今や協力してペースを上げるが、バッソに追いつくのがやっとだった。
最後の最後までペダルを踏み、ゴールラインを越える間際で指先にキスをしてその手でガッツポーズを見せたサストレ。7時間を越える死闘だった。
注目の2位争いはゴール手前で仕掛けたメンショフがディルーカを突き離してゴール。タイム差1秒をつけ、2位のボーナスタイム4秒をも加算して34秒のタイム差をさらに5秒広げる形となった。
集団後方で脚を貯め、一気に爆発させステージ優勝を飾ったサストレは「今日のまたとないチャンスを生かしたかった。長くて厳しいステージだった。メンショフはうまくペダリングしていた。バッソも調子がよさそうだった。ディルーカも戦闘的だった。もし今日僕が調子がよければ、マリアローザを獲りに行こうと思っていた」と語る。
そして「今日は僕にとって重要だった。最終週がいつもすべてを決める。僕は冷静だ。すべてを賭けている。噂や雑音には耳を貸さないよ。僕は僕の仕事に集中して、重要なレースに備えているし、アタックのチャンスがきたらそれをするだけだ」とまだまだ狙っていくことを表明している。
そしてコンディションの高さを見せつけたメンショフは「ジロに勝ったと言うのはまだ早いよ。まだ重要なステージがいくつか待っている。ローマまでの最後のタイムトライアルの前に2つの重要なステージがある。ディルーカとサストレから離されないよ。そしてローマまで待つ。ローマまでに本当にハードな闘いが待っている」と語っている。
この日、ブレーキとなってしまったのはライプハイマーとロヴクヴィストだ。
マリアローザグループから下がったアームストロングのアシストを受けて2分51秒遅れでゴールしたライプハイマーは個人総合順位を3位から6位に落とした。
また、ロヴクヴィストは何と24分46秒遅れでゴール。マリアビアンカを失ってしまった。
代わってマリアビアンカに袖を通したのはケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)だ。「今日のステージではできるだけいい位置につけられるようにがんばった。ホワイトジャージ(マリアビアンカ)のために、リザルト上の直接的な相手(ロヴクヴィストや新人賞対象の選手)に下りで差を付けられるように走った」と語るシールドライヤースは、今度は4分13秒差のフランチェスコ・マシャレッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)を意識しながら走ることになる。
そして休息日を挟んで行われるジロ・デ・イタリア第17ステージは、ブロックハウスを舞台に争われる頂上決戦だ。個人総合優勝を争う選手達の熾烈な争いを目の当たりにすることができるだろう。
ジロ・デ・イタリア2009第16ステージ結果
1位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) 7h11'54"
2位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +25"
3位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) +26"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +29"
5位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +1'19"
6位 フランチェスコ・マシャレッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +1'21"
7位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) +1'21"
8位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル) +2'11"
9位 ホセ・セルパ(コロンビア、ディキジョヴァンニ) +2'35"
10位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ) +2'51"
個人総合成績
1位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) 70h06'30"
2位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) +39"
3位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +2'19"
4位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) +3'08"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +3'19"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ) +3'21"
7位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア) +5'54"
8位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +8'21"
9位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ) +8'39"
10位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル) +8'47"
ポイント賞 マリアチクラミーノ
ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)
山岳賞 マリアヴェルデ
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
新人賞 マリアビアンカ
ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)
チーム総合成績
アスタナ
text:Reiko Tsuru
photo:Kei Tsuji, Cor Vos
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