2012年2月9日、ツアー・オブ・カタール(UCI2.HC)第5ステージで西薗良太(ブリヂストンアンカー)が逃げた。ブリヂストンアンカーはこれで3ステージ連続で逃げに選手を送り込むことに成功。レースは大集団でのスプリントを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)が2勝目。

スタート前にラクダを記念撮影スタート前にラクダを記念撮影 photo:A.S.O.第5ステージはカタール中部のキャメルレーストラックをスタートし、半島の内陸部を蛇行しながら北上。最後はカタール半島東部のアルコール・コルニッシュにゴールする今大会最長の160kmコースだ。

ラクダとの記念撮影を終えた121名の選手たちがスタートすると、まもなく10km地点で逃げが決まる。第3ステージのルメア、第4ステージの清水都貴に続き、この日は西薗良太がアタック。ブリヂストンアンカーは3日連続で逃げに乗った。

逃げる西薗良太(ブリヂストンアンカー)ら5名逃げる西薗良太(ブリヂストンアンカー)ら5名 photo:A.S.O.西薗のアタックに反応し、合流したのはロバート・ワグナー(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)、アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、カチューシャ)、マチェイ・ボドナール(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)、トーマス・ベルトリーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)の4名。

追い風の影響で最初の1時間の平均スピードは52.3km/hをマーク。しかし延々と続く一直線のコースは、逃げにとって過酷な環境。総合で2分19秒遅れのクチンスキーが逃げに乗ったため、先頭5名のリードは4分40秒を上限に縮まり始める。

ゴールデンジャージを着て走るトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ゴールデンジャージを着て走るトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:A.S.O.ガーミン・バラクーダやオメガファーマ・クイックステップといったスプリンターチーム率いる大集団は、ゴールまで30kmを残して西薗とワグナー、ベルトリーニをキャッチ。粘ったクチンスキーとボドナールもラスト9kmで捉えられた。

前日とは異なり比較的平穏に進んだメイン集団は、ここからハイスピードな展開を見せる。

粘り強く逃げ付けたアレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、カチューシャ)とマチェイ・ボドナール(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)粘り強く逃げ付けたアレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、カチューシャ)とマチェイ・ボドナール(ポーランド、リクイガス・キャノンデール) photo:A.S.O.チームスカイやラボバンク、オメガファーマ・クイックステップ、グリーンエッジ、チームスカイ、ロット・ベリソル、プロジェクト1t4i、BMCレーシングチーム、カチューシャが集団先頭に入り乱れ、激しい主導権争いを繰り広げる。別府史之(グリーンエッジ)もスプリンターのポジションキープのために集団先頭に加わった。

ラスト1.3kmでほぼ180度ターンするラウンドアバウトで集団は更に縦に長く伸び、完璧なトレインを組むチームが現れないままフラムルージュ(ラスト1km)。

オメガファーマ・クイックステップがコントロールするメイン集団オメガファーマ・クイックステップがコントロールするメイン集団 photo:A.S.O.ヘンダーソン(ロット・ベリソル)、デゲンコルブ(プロジェクト1t4i)、クルオピス(グリーンエッジ)という並びの後ろから、ラスト250mでアルカンシェルのカヴェンディッシュがスプリントを開始する。

先行するヘンダーソンを一気に抜き去り、デゲンコルブをかわして先頭に立つカヴェンディッシュ。スリップストリームに入ったダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)を振り切り、カヴェンディッシュが大きな差を広げてゴールに飛び込んだ。

スプリント2勝目を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)スプリント2勝目を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ) photo:A.S.O.チームメイトの力を借りてポジションをキープし、そして自分のタイミングでスプリント。トップコンディションからはほど遠い状態とは言え、加速力では誰にも負けない。「最後は風が大きなファクターだった。風向きが常に変わる状態だったので、リードアウトトレインは組めなかった。激しい競り合いを経て、追い風だったのでラスト250〜300mで仕掛けたんだ。そこからゴールまで突進した」

カヴェンディッシュは第3ステージに続く2勝目。シーズン好スタートに満足している様子だ。「ステージ2勝はナイスだ。2009年大会でもステージ2勝していて、その年はキャリアの中で最高のシーズンになったんだ。だからチームスカイの一員として、そして世界チャンピオンジャージを着て、良いスタートを切ることが出来て嬉しいよ」

ゴールデンジャージを着るトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)はスプリントの進路を遮られたため勝負に絡めず。しかし確固たるリードを保ったまま総合首位の座をキープしている。4度目のカタール総合優勝に向けて残すところ1ステージとなった。

また、この日も集団内では落車が多発。ブレイズ・ソノリー(フランス、ブリヂストンアンカー)とフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)はともに鎖骨骨折を負った。ポッツァートは春のクラシックシーズンを棒に振ることになりそうだ。

レース内容はレース公式サイト、選手コメントはチームスカイ公式リリースより。

ツアー・オブ・カタール2012第5ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)       3h30'40"
2位 ダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
4位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、プロジェクト1t4i)
5位 リュトガー・ゼーリッヒ(ドイツ、カチューシャ)
6位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、グリーンエッジ)
7位 アルノー・デマール(フランス、FDJ・ビッグマット)
8位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)
9位 デニス・ガリムジャノフ(ロシア、カチューシャ)
10位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ベリソル)
33位 別府史之(日本、グリーンエッジ)
71位 井上和郎(日本、ブリヂストンアンカー)
98位 清水都貴(日本、ブリヂストンアンカー)              +1'30"
100位 吉田隼人(日本、ブリヂストンアンカー)
110位 西薗良太(日本、ブリヂストンアンカー)              +2'58"

個人総合成績
1位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)  13h21'30"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)        +31"
3位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)        +34"
4位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) +36"
5位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームスカイ)        +45"
6位 トム・フィーラース(オランダ、プロジェクト1t4i)         +1'00"
7位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)       +1'05"
8位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) +1'06"
9位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)  +1'09"
10位 アイディス・クルオピス(リトアニア、グリーンエッジ)       +1'10"
51位 別府史之(日本、グリーンエッジ)                 +3'52"
97位 清水都貴(日本、ブリヂストンアンカー)             +11'08"
109位 井上和郎(日本、ブリヂストンアンカー)             +20'26"
113位 吉田隼人(日本、ブリヂストンアンカー)             +22'27"
115位 西薗良太(日本、ブリヂストンアンカー)             +25'00"

ポイント賞
トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)

新人賞
ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)

チーム総合成績
オメガファーマ・クイックステップ

text:Kei Tsuji
photo:A.S.O.