2012/02/01(水) - 22:07
1月中旬にシマノレーシングの合宿が沖縄・名護市・恩納村周辺にて行われた。トレーニングに同行した編集部の帯同レポートをお伝えしよう。
沖縄・名護市周辺で走りこみを行うシマノレーシング
昨シーズンはエースを務める畑中勇介が全日本実業団自転車競技連盟の主催するJプロツアーシリーズ総合優勝を遂げるなど、大きな活躍を見せたシマノレーシング。今年はメンバー構成を大きく変更した。鈴木真理と西薗良太がチームを離れ、早稲田大学から入部正太朗、鹿屋体育大学から野中竜馬という平成元年生まれのコンビを迎え入れた。
シマノレーシングの沖縄合宿も恒例となった 大学を卒業する2名が加入することで、平均年齢23.7歳という若手のチームに帰り咲いたシマノレーシング。村上純平が引退し、鈴木真理がキャノンデール・スペースゼロポイントへ、そして西薗良太はブリヂストンアンカーへそれぞれ移籍した。
なかでもこれまで絶対的な強さを誇り、長年シマノレーシングの核となって走ったチームのキャプテン格だった鈴木真理が抜けたのは大きな痛手だろう。
(2012年チーム体制についてはこちらから。)
名護湾を横目に見ながら走りこみを行う 今回は年明けの1月15日から、選手、監督を始めスタッフなどチーム全体が恒例の沖縄合宿に参加。取材当日はまだ鹿屋大育大生の野中の学業の都合で不在だったが、日程の後半で合流する予定とのことだった。
私たち編集部は、チームが拠点としている恩納村の喜瀬ビーチにあるホテルで合流し、トレーニング場所まで移動する選手たちを車で追いかけながら密着取材を行った。
取材に訪れた当日のメニューは、午前中に名護付近の多野岳の上りを5往復するというもの。多野岳はツール・ド・おきなわの際に日本チームが泊まるホテルが山の頂上付近にある。選手たちには「タニューの坂」と言ったほうが通りはいいはずだ。
多野岳を上るヒルクライムは、距離4.2kmで獲得標高320m。5往復すると獲得標高は1,600mにものぼるハードなものだ。最初の3本はパワーメーターを見ながら上り、最後の2本は各々で踏みを入れていく、という内容だ。
恩納村から自走し、ツール・ド・おきなわ最後の勝負どころの「イオン坂」近くに多野岳への道の入り口がある。上りの入口に到着すると、チームは一度ふもとで練習内容について再確認を行う。ミーティングを終えると、まとまってヒルクライムへと走り出していく。
キャプテンの鈴木譲(すずきゆずる) 26歳
エースとして期待がかかる畑中勇介(はたなかゆうすけ) 26歳
入部正太朗(いりべしょうたろう) 22歳
ブルーが濃くなった新しいジャージは、この時点でまだ3着しか届いておらず、新旧デザインのジャージが混ざっての走りだ。新しいフェルトのバイクもまだ全員分は揃っていない。
最初の2本は全員で固まって、話をしながらゆっくり上り始める。厳しい登り坂だが、ムードメーカーの畑中が先頭に立ち、面白い話をしながら皆が笑いながら一団で登っていく。「先に行きたくなる気持ちをぐっと抑えて、最初は200ワット以下で上るんだ」そう畑中が声をかける。パワーメーターを見ながら、強度を抑えてゆっくり上る。
チームでまとまってトレーニングメニューをこなしていく 最初の2本は抑え気味に、それ以降は徐々に火をつけたようにスピードが上がり、模擬レースのようになっていく。頂上近くの折り返しポイントまでのタイムは約15分だ。
出発時には長袖で走りだした選手たち。しかし徐々に日差しも眩しくなり、前をはだけて上るほどの夏日になった。沖縄は天気が良ければ1月でも本州の初夏の陽気だ。
トレーニング中は畑中勇介と鈴木譲が集団を牽く場面が多く見受けられた。まだオフ期のため各々のコンディショニングの差もあるだろうが、やはりキャプテンとエースを担うこの2人の強さが際立っているように感じた。
取材当日の最高気温は22℃まで上がった ワット数を確認しながら上りをこなし、同じ道を下り、ふもとで話し合いをしつつ小休止。これを5回繰り返す。冬季キャンプと言えば長距離の乗り込みを行うイメージがあったが、今はそうではない。短時間集中の反復トレーニング、ひいてはパワートレーニングが時代の主流となっているのだという。
野寺監督は言う「かつては冬のトレーニングというとLSDに代表される、長い距離をひたすら乗り込むという内容が主流でした。しかし今は冬だからこそ負荷をかけるんです。シーズン中にはかけられない高い負荷を、今のうちにしっかりかけておくという考え方です。
ボクが現役の頃は冬場はツーリングのように長い距離を乗っていましたが、今ではあまり遠出しなくても近場で練習が終わるようになりましたね」と笑う。
練習に同行していると、常にチーム内は明るく笑い声が絶えない。野寺監督や畑中が雰囲気作りに一役買っている印象を受けた。新加入の選手でも気兼ねなく溶け込みやすいような雰囲気が自然と出来上がっている。
オフシーズンの沖縄合宿にこだわるワケ
序盤は会話をしながら上りをこなす シマノレーシングが毎年温暖な沖縄で冬季合宿を行うのは、寒い場所では故障を誘発しやすく、高強度のトレーニングができないためだ。また、選手やスタッフにとって最良の環境が揃っているからだという。野寺監督に、沖縄でトレーニングする理由を聞いた。
「1月に沖縄で合宿をするのには、やはり第一に沖縄ならではの温暖な気候が挙げられます。これは沖縄でしか手に入れられません。また、沖縄には食事の美味しさや人の温かさなど、選手たちがリラックスできる環境があるのが良いですね。
ミーティングで指示を出す野寺秀徳監督 車が少なく、道幅も広い気持ちのいい道。人の気持ちもおおらかなので、走行におけるストレスがほとんどありません。今までに同じ印象を受けたのは高知県。居心地のいい土地での合宿は、効果が上がります。
シーズンイン直後は新しい環境に緊張感が高まる時期です。新加入の選手にとってはそれだけでストレスになるので、環境を整えることで集中してトレーニングに打ち込むことができます。
暖かい場所を求めれば海外でも良いのでしょうが、言語や文化の違いはそれだけで不安を感じてしまう選手もいます。ケガをした際にも困りますしね。となるとやはり国内、となれば沖縄が最高の環境だと言えます」。
導入したキャプテン制 鈴木譲がチームを率いる
早いテンポで多野岳をのぼる鈴木譲 また、近年キャプテンという立場の選手がいなかったチームに、今年から再びキャプテン制が導入され、鈴木譲が任命された。
鈴木は言う「キャプテンという立場として、どの場面においても皆を精神的に楽にできるような状況、雰囲気作りをしていきたいと考えています。選手としては全日本選手権、ツアー・オブ・ジャパンなどで結果を出していきたいですね。まだ僕自身足りてない部分もありますが、チームと一緒に成長していければ結果も自ずとついてくると思います。」と語る。
全開でヒルクライムを上る鈴木譲と畑中勇介 キャプテン制が導入された背景は、鈴木真理が去ったことが大きい。昨シーズンまでは年齢的にも実力的にも鈴木真理という存在が大きく、チームは自然とまとまりを見せていた。しかし若返りを図ったチームにはそういった核になる求心力をもつ選手がまだいない。
「僕と同じ26歳の畑中は強いけれど、まだ若いのでそういう感じではない。エースとキャプテンは同じではないですし。僕も正直そういう存在にはなれていない。」
「ですから僕がキャプテンに任命されることで、チームがまとめやすくなるという面があるんです。畑中と協力しあいながら、うまくチームがまとまれば良いと思います」。
畑中勇介が先頭で頂上へ現れた 日本のレースシーンを常に引っ張ってきたシマノレーシング。スキル・シマノ改めプロジェクト1T4iとのつながりも継続しながら、若い選手を世界に送り出せるまで育てるというチーム目標は継続してある。
勝つばかりがチームの目標ではなく、若手の育成や、自転車を取り巻く社会貢献活動にも積極的に関わっていくというスタイルだ。
新体制となったシマノレーシングは3月11日のJPT第1戦、クリテリウムin下総でシーズンインを果たす予定だ。
そして今年もヨーロッパ遠征を6月~8月頃に行うことを検討中。そこで若手が結果を残し、世界へ(プロ)へのきっかけを掴むこともチームは期待している。
チームバイク FELTを採用
同じシマノがスポンサードをするオランダのプロコンチネンタルチーム、1t4i(ワンティーフォーアイ)同様に、今年はバイクをコガからフェルトにチェンジした。取材時は暫定で届いたフェルト・F4を使用していたが、正式決定ではないとのことだ。
今年から機材をフェルトにチェンジした(写真は暫定仕様)
ハンドル周りはPROを使用する
サドルは引き続きセレイタリアを使用
コンポにはもちろんデュラエースDi2を使用する予定だが、取材時はアルテグラの選手も。ハンドル回りはPROで統一している。
シマノレーシング2012チーム体制
選手
野寺秀徳監督が今年もシマノレーシングを率いる 畑中勇介(はたなかゆうすけ) 26歳
鈴木譲(すずきゆずる) 26歳
平塚吉光(ひらつかよしみつ) 23歳
入部正太朗(いりべしょうたろう) 22歳
野中竜馬(のなかりょうま)22歳
ヨーロッパ派遣 (ParkHotel Valkenburg CT)
阿部嵩之(あべたかゆき) 25歳
青柳憲輝(あおやなぎかずき)22歳
監督 野寺秀徳
text:So.Isobe,Makoto.AYANO
photo:Makoto.AYANO

昨シーズンはエースを務める畑中勇介が全日本実業団自転車競技連盟の主催するJプロツアーシリーズ総合優勝を遂げるなど、大きな活躍を見せたシマノレーシング。今年はメンバー構成を大きく変更した。鈴木真理と西薗良太がチームを離れ、早稲田大学から入部正太朗、鹿屋体育大学から野中竜馬という平成元年生まれのコンビを迎え入れた。

なかでもこれまで絶対的な強さを誇り、長年シマノレーシングの核となって走ったチームのキャプテン格だった鈴木真理が抜けたのは大きな痛手だろう。
(2012年チーム体制についてはこちらから。)

私たち編集部は、チームが拠点としている恩納村の喜瀬ビーチにあるホテルで合流し、トレーニング場所まで移動する選手たちを車で追いかけながら密着取材を行った。
取材に訪れた当日のメニューは、午前中に名護付近の多野岳の上りを5往復するというもの。多野岳はツール・ド・おきなわの際に日本チームが泊まるホテルが山の頂上付近にある。選手たちには「タニューの坂」と言ったほうが通りはいいはずだ。
多野岳を上るヒルクライムは、距離4.2kmで獲得標高320m。5往復すると獲得標高は1,600mにものぼるハードなものだ。最初の3本はパワーメーターを見ながら上り、最後の2本は各々で踏みを入れていく、という内容だ。
恩納村から自走し、ツール・ド・おきなわ最後の勝負どころの「イオン坂」近くに多野岳への道の入り口がある。上りの入口に到着すると、チームは一度ふもとで練習内容について再確認を行う。ミーティングを終えると、まとまってヒルクライムへと走り出していく。



ブルーが濃くなった新しいジャージは、この時点でまだ3着しか届いておらず、新旧デザインのジャージが混ざっての走りだ。新しいフェルトのバイクもまだ全員分は揃っていない。
最初の2本は全員で固まって、話をしながらゆっくり上り始める。厳しい登り坂だが、ムードメーカーの畑中が先頭に立ち、面白い話をしながら皆が笑いながら一団で登っていく。「先に行きたくなる気持ちをぐっと抑えて、最初は200ワット以下で上るんだ」そう畑中が声をかける。パワーメーターを見ながら、強度を抑えてゆっくり上る。

出発時には長袖で走りだした選手たち。しかし徐々に日差しも眩しくなり、前をはだけて上るほどの夏日になった。沖縄は天気が良ければ1月でも本州の初夏の陽気だ。
トレーニング中は畑中勇介と鈴木譲が集団を牽く場面が多く見受けられた。まだオフ期のため各々のコンディショニングの差もあるだろうが、やはりキャプテンとエースを担うこの2人の強さが際立っているように感じた。

野寺監督は言う「かつては冬のトレーニングというとLSDに代表される、長い距離をひたすら乗り込むという内容が主流でした。しかし今は冬だからこそ負荷をかけるんです。シーズン中にはかけられない高い負荷を、今のうちにしっかりかけておくという考え方です。
ボクが現役の頃は冬場はツーリングのように長い距離を乗っていましたが、今ではあまり遠出しなくても近場で練習が終わるようになりましたね」と笑う。
練習に同行していると、常にチーム内は明るく笑い声が絶えない。野寺監督や畑中が雰囲気作りに一役買っている印象を受けた。新加入の選手でも気兼ねなく溶け込みやすいような雰囲気が自然と出来上がっている。
オフシーズンの沖縄合宿にこだわるワケ

「1月に沖縄で合宿をするのには、やはり第一に沖縄ならではの温暖な気候が挙げられます。これは沖縄でしか手に入れられません。また、沖縄には食事の美味しさや人の温かさなど、選手たちがリラックスできる環境があるのが良いですね。

シーズンイン直後は新しい環境に緊張感が高まる時期です。新加入の選手にとってはそれだけでストレスになるので、環境を整えることで集中してトレーニングに打ち込むことができます。
暖かい場所を求めれば海外でも良いのでしょうが、言語や文化の違いはそれだけで不安を感じてしまう選手もいます。ケガをした際にも困りますしね。となるとやはり国内、となれば沖縄が最高の環境だと言えます」。
導入したキャプテン制 鈴木譲がチームを率いる

鈴木は言う「キャプテンという立場として、どの場面においても皆を精神的に楽にできるような状況、雰囲気作りをしていきたいと考えています。選手としては全日本選手権、ツアー・オブ・ジャパンなどで結果を出していきたいですね。まだ僕自身足りてない部分もありますが、チームと一緒に成長していければ結果も自ずとついてくると思います。」と語る。

「僕と同じ26歳の畑中は強いけれど、まだ若いのでそういう感じではない。エースとキャプテンは同じではないですし。僕も正直そういう存在にはなれていない。」
「ですから僕がキャプテンに任命されることで、チームがまとめやすくなるという面があるんです。畑中と協力しあいながら、うまくチームがまとまれば良いと思います」。

勝つばかりがチームの目標ではなく、若手の育成や、自転車を取り巻く社会貢献活動にも積極的に関わっていくというスタイルだ。
新体制となったシマノレーシングは3月11日のJPT第1戦、クリテリウムin下総でシーズンインを果たす予定だ。
そして今年もヨーロッパ遠征を6月~8月頃に行うことを検討中。そこで若手が結果を残し、世界へ(プロ)へのきっかけを掴むこともチームは期待している。
チームバイク FELTを採用
同じシマノがスポンサードをするオランダのプロコンチネンタルチーム、1t4i(ワンティーフォーアイ)同様に、今年はバイクをコガからフェルトにチェンジした。取材時は暫定で届いたフェルト・F4を使用していたが、正式決定ではないとのことだ。



コンポにはもちろんデュラエースDi2を使用する予定だが、取材時はアルテグラの選手も。ハンドル回りはPROで統一している。
シマノレーシング2012チーム体制
選手

鈴木譲(すずきゆずる) 26歳
平塚吉光(ひらつかよしみつ) 23歳
入部正太朗(いりべしょうたろう) 22歳
野中竜馬(のなかりょうま)22歳
ヨーロッパ派遣 (ParkHotel Valkenburg CT)
阿部嵩之(あべたかゆき) 25歳
青柳憲輝(あおやなぎかずき)22歳
監督 野寺秀徳
text:So.Isobe,Makoto.AYANO
photo:Makoto.AYANO
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