アジア初のプロコンチネンタルチームとなったチャンピオンシステムが、プレゼンテーションの翌日にチーム登録に必要な運動負荷試験を北京の病院で行った。これに帯同できる貴重な機会を得たのでその様子をレポートしよう。
到着したのは「国家体育総局運医所体育医院」 (c)Yuko.SATO■それはハプニングから始まった
それはプレゼンテーションの夜のこと。翌12日にチームは北京郊外に観光に出かけ、同行するカメラマンに撮影のチャンスがあるという予定だった。ディナーの席が設けられたホテルのレストランで「明日は何時出発ですか?」とルイスさんにきくと、「観光はあさって! 明日はチームは病院で検査だから万里の長城は13日に行きますよ!」との予想外の答え。
ええ?! 13日早朝のフライトでワタシは帰るんですが…。
「チームを登録するために、1月中にストレステストの書類をUCIに提出しないといけないんです。病院のスケジュールが明日しか空いていなくて、ゴメンなさいね」とルイスさんは、「創業者の社長さん」という雰囲気の笑顔でニコニコ。
「明日は、ほかにイベントや撮影のチャンスは?」「じゃあ病院にくればいいですよ! そのあとみんなでホテルに戻ってお昼を食べて…」「え? ホントにいいんですか?!」
翌朝チームは数人づつに分かれて病院へ行き、「第1便は朝7時半に出るからロビーに集合ね!」と話はまとまった。
しかし外国人の病院への同行が本当にできるのか? ここは自由な取材の許されていない国、中国だ。前回来たときは、町の風景の撮影でも届け出が必要で、場合によっては警官がアテンドしていた中国。ましてや日本でも、病院の撮影にはいろいろと配慮することが…。いや!これは取材じゃなくて商用の見学なのだ!と勝手に決めてその日は就寝した。
翌朝7時20分。ロビーにおりると…誰もいない。いや、中国系メディアのムービースタッフが2名。たぶん行き先は同じだ。7時半。念のため前日きいておいたスタッフさんの携帯に電話をかける。
「私たちの車はもう出発してしまったのですが、みんな遅れていてもうすぐ来ると思いますので、フロントの前に停まっているバスで待っていてください!」「バスのナンバーは…」「それであってます!」
送迎バスが病院に到着した (c)Yuko.SATOほっと安心してバスで待機することしばし。8時45分。ガルデインやマナンたち、選手がバスにやってきた。「…いつから待ってました?」とゼネラルマネージャー。なんだかこれは第2便のような気もするが、とりあえず無事に病院へゴーである。
ゼネラルマネージャーに見送られたバスは一路、病院へ。どこへ行くんだろう。ホテルの近くにも大きな救急病院があったけれど? バスはその病院を通りすぎ、北京郊外のベロドロームのエリアから北京中心方面に向かい走り続けている。
■それは国家的体育医院であった
スポーツ用品店が道の両側にずらりと並ぶ「体育館西路」を抜け、バスで10時半頃に到着した「病院」、そこには大きく「体育医院」の文字が掲げられていた。ただの病院ではなかったんですね…。となりは「国家体育館」。体育関係の省庁らしき建物もあり、日本でいえば国立競技場周辺のような、国家体育ヘッドクオーターエリアの様子。とりあえず外観だけでも!と目立たないようにシャッターを切ってみる。
ここは運動医学科だ (c)Yuko.SATO
運動医学重点実験室。ここで心肺機能の運動負荷試験をします (c)Yuko.SATO
階段を上って選手たちが到着したのは「運動医学科」。怒られちゃうかな?とこわごわ写真を撮っていると、廊下のむこうからやってきたのは、白衣を着た若い女性スタッフさん。ニコニコ笑顔で迎えてくれている。むむ? なんだか大丈夫そう?
選手はまず、「超声診察室」と「心電図室」で、安静状態での検査を受け、その結果に問題がなければ、隣室の「国家体育総局運動医学実験室」の心肺功能室で、心肺機能の運動負荷試験を受けるのだ。(ということはあとでスタッフさんと漢字で筆談して、後に通訳さんに確認してわかったのだけれど。)
心電図用の電極をつけるエイブリー (c)Yuko.SATO
トレッドミルにつながれたモニター装置。右にあるディスプレイには心電図の波形が表示されます (c)Yuko.SATO
廊下で心肺功能室の中をのぞいていると、白衣のスタッフさんが「入っていいよ」という。ええ?いいんですか?
そこへこれからチェックを受ける選手、エイブリーが入ってきた。これも撮っていいみたい? エイブリーは心電図用の電極をつけてトレッドミルに乗りハーネスを装着。
まずはゆっくり歩行から測定を始める (c)Yuko.SATO
トレッドミルの上をゆっくり歩き出すと、あとは廊下で待っていてね、というスタッフさん。予想外にもここまで写真を撮らせていただき、ありがとうございますみなさん。開いたドアからは、負荷を上げスピードの上がったトレッドミルの上を走る姿が見える。結果をプリントアウトして、テストは無事終了したようだ。
結果をプリントアウトして計測は終了だ (c)Yuko.SATO
検査結果のプリントアウトを手に話し合う病院のスタッフさんたち (c)Yuko.SATO
テストの所要時間は約20分。「この項目それぞれがspeed、grade、METS、HR、BPです」。メモした内容をあとで調べると、この装置はトレッドミルの速度を何段階か変えて、違う負荷レベルごとにMETS(代謝当量)、HR(心拍数)、BP(血圧)などをモニターしながら、心電図の波形を記録するもの。運動負荷試験では、運動した時だけに現れる心臓病の異常などを診断し、また呼吸と循環といった運動能力を調べることができるのだという。
「この体育医院はスポーツ医学の専門病院なんですか?」と白衣のスタッフさんに筆談で尋ねると、「国家運動員」という答え。どうやらこの病院、少なくともこの心肺機能試験室は、ナショナルアスリートのための施設らしい。
この病院の彼らにとってもサイクリングチームの来訪はちょっとした出来事のようで、最後に全員で集合写真をパチリ。終始笑顔でなごやかな空気のうちに、このストレステスト見学は終了した。
その後お礼を言う機会なく帰国してしまったのだが、チームのみなさん、興味深い見学の機会をどうもありがとうございました。
選手たちと一緒に写真を撮る検査室スタッフのみなさん (c)Yuko.SATO
病院をあとにする選手たち (c)Yuko.SATO
photo&text:Yuko.SATO in Beijing, China

それはプレゼンテーションの夜のこと。翌12日にチームは北京郊外に観光に出かけ、同行するカメラマンに撮影のチャンスがあるという予定だった。ディナーの席が設けられたホテルのレストランで「明日は何時出発ですか?」とルイスさんにきくと、「観光はあさって! 明日はチームは病院で検査だから万里の長城は13日に行きますよ!」との予想外の答え。
ええ?! 13日早朝のフライトでワタシは帰るんですが…。
「チームを登録するために、1月中にストレステストの書類をUCIに提出しないといけないんです。病院のスケジュールが明日しか空いていなくて、ゴメンなさいね」とルイスさんは、「創業者の社長さん」という雰囲気の笑顔でニコニコ。
「明日は、ほかにイベントや撮影のチャンスは?」「じゃあ病院にくればいいですよ! そのあとみんなでホテルに戻ってお昼を食べて…」「え? ホントにいいんですか?!」
翌朝チームは数人づつに分かれて病院へ行き、「第1便は朝7時半に出るからロビーに集合ね!」と話はまとまった。
しかし外国人の病院への同行が本当にできるのか? ここは自由な取材の許されていない国、中国だ。前回来たときは、町の風景の撮影でも届け出が必要で、場合によっては警官がアテンドしていた中国。ましてや日本でも、病院の撮影にはいろいろと配慮することが…。いや!これは取材じゃなくて商用の見学なのだ!と勝手に決めてその日は就寝した。
翌朝7時20分。ロビーにおりると…誰もいない。いや、中国系メディアのムービースタッフが2名。たぶん行き先は同じだ。7時半。念のため前日きいておいたスタッフさんの携帯に電話をかける。
「私たちの車はもう出発してしまったのですが、みんな遅れていてもうすぐ来ると思いますので、フロントの前に停まっているバスで待っていてください!」「バスのナンバーは…」「それであってます!」

ゼネラルマネージャーに見送られたバスは一路、病院へ。どこへ行くんだろう。ホテルの近くにも大きな救急病院があったけれど? バスはその病院を通りすぎ、北京郊外のベロドロームのエリアから北京中心方面に向かい走り続けている。
■それは国家的体育医院であった
スポーツ用品店が道の両側にずらりと並ぶ「体育館西路」を抜け、バスで10時半頃に到着した「病院」、そこには大きく「体育医院」の文字が掲げられていた。ただの病院ではなかったんですね…。となりは「国家体育館」。体育関係の省庁らしき建物もあり、日本でいえば国立競技場周辺のような、国家体育ヘッドクオーターエリアの様子。とりあえず外観だけでも!と目立たないようにシャッターを切ってみる。


階段を上って選手たちが到着したのは「運動医学科」。怒られちゃうかな?とこわごわ写真を撮っていると、廊下のむこうからやってきたのは、白衣を着た若い女性スタッフさん。ニコニコ笑顔で迎えてくれている。むむ? なんだか大丈夫そう?
選手はまず、「超声診察室」と「心電図室」で、安静状態での検査を受け、その結果に問題がなければ、隣室の「国家体育総局運動医学実験室」の心肺功能室で、心肺機能の運動負荷試験を受けるのだ。(ということはあとでスタッフさんと漢字で筆談して、後に通訳さんに確認してわかったのだけれど。)


廊下で心肺功能室の中をのぞいていると、白衣のスタッフさんが「入っていいよ」という。ええ?いいんですか?
そこへこれからチェックを受ける選手、エイブリーが入ってきた。これも撮っていいみたい? エイブリーは心電図用の電極をつけてトレッドミルに乗りハーネスを装着。

トレッドミルの上をゆっくり歩き出すと、あとは廊下で待っていてね、というスタッフさん。予想外にもここまで写真を撮らせていただき、ありがとうございますみなさん。開いたドアからは、負荷を上げスピードの上がったトレッドミルの上を走る姿が見える。結果をプリントアウトして、テストは無事終了したようだ。


テストの所要時間は約20分。「この項目それぞれがspeed、grade、METS、HR、BPです」。メモした内容をあとで調べると、この装置はトレッドミルの速度を何段階か変えて、違う負荷レベルごとにMETS(代謝当量)、HR(心拍数)、BP(血圧)などをモニターしながら、心電図の波形を記録するもの。運動負荷試験では、運動した時だけに現れる心臓病の異常などを診断し、また呼吸と循環といった運動能力を調べることができるのだという。
「この体育医院はスポーツ医学の専門病院なんですか?」と白衣のスタッフさんに筆談で尋ねると、「国家運動員」という答え。どうやらこの病院、少なくともこの心肺機能試験室は、ナショナルアスリートのための施設らしい。
この病院の彼らにとってもサイクリングチームの来訪はちょっとした出来事のようで、最後に全員で集合写真をパチリ。終始笑顔でなごやかな空気のうちに、このストレステスト見学は終了した。
その後お礼を言う機会なく帰国してしまったのだが、チームのみなさん、興味深い見学の機会をどうもありがとうございました。


photo&text:Yuko.SATO in Beijing, China
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