西日本で12月のロードレースと言えば「冬の長良川クリテ」。今までで最高の参加者が青空の下、レースを楽しんだ。そしてプロレーサーを引退する涌本正樹(マトリックス)にとってラストレースになった。

好天の長良川河川敷 スポーツⅡ 好天の長良川河川敷 スポーツⅡ  photo:Hideaki.TAKAGI
サイクルロードレース協会が主催するCリーグは年間5戦。その締めくくりがこの冬の長良川クリテだ。今年は2日間の開催になり、初日の12月3日(土)はエンデューロ、2日目の4日(日)はクリテリウムだ。

60分エンデューロ・初級 双子レーサーも頑張る60分エンデューロ・初級 双子レーサーも頑張る photo:Hideaki.TAKAGIビギナーⅠ ビギナーⅠ  photo:Hideaki.TAKAGI


会場は岐阜県にある国営木曽三川公園長良川サービスセンター前の長方形の河川敷コースだ。全くの平坦だが常時強めの北風が吹く。

タイムトライアル 1位の小西優大(大阪工業大)タイムトライアル 1位の小西優大(大阪工業大) photo:Hideaki.TAKAGI今年は新しく土曜日にエンデューロを開催した。60分で初級クラスと、中上級クラスとに分けられた。参加者のレベルの差が大きくないので安全に走れる。曇り空のもと行われたレースは、マトリックスパワータグの選手たちが安全にリードするので走りやすい。速く走りたい人にもサポートがつくので上位者の平均時速は39キロと速い。

2日目の日曜日は朝から快晴。青空がまぶしい。日差しもあるのでそれほど寒くはない。
この長良川クリテは一度のエントリーで最大4レースが走れるのが魅力。たとえばスポーツⅠクラスに5000円でエントリーすれば、朝一番の個人TTは無料、そしてスポーツⅠで上位に入ればネックス杯ラウンド2に進出。そこでも上位に入れば頂上決戦のネックス杯ラウンド3に出られるのだ。

朝一番は3km個人タイムトライアル。風が強い中、4分を切れば速いほうのこの種目でダントツ1位は3分38秒546の小西優大(大阪工業大)。2位に8秒差をつけて圧勝だ。
このTTにはTTバーやディスクホイールはもちろん、専用のTTマシンを持ち込む人も目立った。また、協賛のオージーケーカブトが最新のエアロヘルメットの貸し出しサービスをしており、もちろん借りる人も。

アンダー9 8歳でもこのガッツポーズ!アンダー9 8歳でもこのガッツポーズ! photo:Hideaki.TAKAGIネックス杯ラウンド3 ゴールネックス杯ラウンド3 ゴール photo:Hideaki.TAKAGI

クリテリウムはビギナーからエリートまで5クラスに分けられて行われた。なかでもタイムトライアル、スポーツⅠ、ネックス杯ラウンド2の3レースで優勝したのは小西優大(大阪工業大)。積極的な展開で、しかも優勝する走りは別格だった。
さらに上位者が進出するネックス杯ラウンド1、2、3も行われた。特にネックス杯は1周0.6kmのショートコースで、一部始終が見られるため盛り上がる。その頂上決戦のラウンド3を制したのは小渡健悟(チーム米俵)。終盤は独走しての優勝だ。


2008年都道府県対抗大会男子ロード 優勝の涌本正樹(大阪・マトリックスパワータグ)2位は辻善光2008年都道府県対抗大会男子ロード 優勝の涌本正樹(大阪・マトリックスパワータグ)2位は辻善光 photo:Hideaki.TAKAGI今シーズンで引退の涌本正樹(マトリックスパワータグ)今シーズンで引退の涌本正樹(マトリックスパワータグ) photo:Hideaki.TAKAGIネックス杯ラウンド3 涌本正樹(マトリックスパワータグ)ネックス杯ラウンド3 涌本正樹(マトリックスパワータグ) photo:Hideaki.TAKAGIこのレースを最後に引退の涌本正樹(マトリックスパワータグ)を囲んでこのレースを最後に引退の涌本正樹(マトリックスパワータグ)を囲んで photo:Hideaki.TAKAGIプロ選手から次のステージへ 涌本正樹

5年間マトリックスに在籍した涌本正樹が今シーズン限りでマトリックスを離れることになった。涌本にとっても最後のレースになるネックス杯ラウンド3の前にセレモニーが行われた。プロレーサーとしては引退だが、自転車の活動は続ける。その経緯を聞いてみた。

…おもな経歴は?
「高校のときに地元のサカタニレーシングに所属して、その後にマトリックスに入りました。おもな成績は08年都道府県対抗ロード(新潟)優勝と08年シマノスズカ国際ロード2位です」

…ヨーロッパへ行っていましたね
「マトリックスに所属しながらヨーロッパへも行きました。昨春はエカーズでフランスへ、続いて夏にパールイズミでベルギー・オランダへ、そして今春もオランダへ行きました。安原監督に「ツール・ド・フランスに出るのが夢です」と話したことがあって、それでボクをヨーロッパへ行かせてくれたのです」

…そこで何を感じた?
「山宮さん浅田さんに教わって、自分の夢に対して全く現実を見ていないということがわかりました。自分が選手として小さい器だということもわかりました。監督・チームにはものすごく感謝しています。今後は自転車専業ではなくなるということで、引退ではありません」

…これから何を?
「オランダの自転車文化に感銘を受けました。オランダでやっていることを日本でできないか。もう一度長期的に行って、文化・システム・運営・歴史を勉強して、日本に戻ってそれを自分がいつかやりたい、そう考えています」
「具体的には大学に入って勉強しオランダへ留学なりしたいです。23歳の今だから選択の余地があると思っています。今のうちにいろいろ経験しないと人生がもったいないと。これからも走りますが、安原監督そしてマトリックスにお世話になったので、すぐにどこかのチームに属すということはないです」

ヨーロッパへ送り出してくれたチームと監督、直接指導に関わった山宮氏浅田氏への恩は大きい。そしてたくさんのことを経験し、それを人生設計の材料とし実現に向けて行動する。プロレーサーを辞めることはそのための第一歩なのだ。


結果
60分エンデューロ 初級
1位 清水直哉 12周36km 1時間02分13秒410
2位 齋藤実 +17秒247
3位 佐藤匡也(チームあれ!あれ!)+17秒392

60分エンデューロ 中上級
1位 平塚剛 14周42km 1時間04分47秒819
2位 中島剛 +01秒618
3位 田口隆之 -1Lap

タイムトライアル 3km
1位 小西優大(大阪工業大)
2位 久保田寛隆(マルコADONパンターニ)
3位 吉川博昭(ARRT/自転車道/JGSDF)

ネックス杯ラウンド2 6.5km
1位 小西優大(大阪工業大)9分55秒353
2位 岡林知人(チームしまうま)+02秒
3位 田口直史(EURO-WORKS Racing)+09秒

エリート 36km
1位 児玉誠治(Lumiere Kobe)56分05秒854
2位 小渡健悟(チーム米俵)
3位 水野貴行(ボンシャンス飯田)+01秒

ネックス杯ラウンド3 6.5km
1位 小渡健悟(チーム米俵)9分34秒023
2位 野島遊(シルベスト/興國高校)+04秒
3位 田口直史(EURO-WORKS Racing)+07秒

photo&text:高木秀彰