10月22日(土)、宇都宮市内の目抜き通りでジャパンカップクリテリウムがで開催され、スティール・ヴォン・ホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)が集団スプリントを制し勝利。終始レースに絡んだジェネシスチームの働きに報いた。

声援にこたえながらパレード走行する新城幸也(ユーロップカー)声援にこたえながらパレード走行する新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji宇都宮市内はしとやかに秋の気配に濡れる。朝から断続的に降り続ける雨は、午後3時30分に始まるクリテリウムの時間になっても降り止むことはなかった。しかし交通規制された宇都宮市大通りにやってきたのは、鉛色の憂鬱な空の色とは対照的なカラフルで華やかな一団。第2回目を数えるジャパンカップクリテリウムに、各国の強豪チームと選手が集結した。

宇都宮市大通りの周回コースでクリテリウムがスタート宇都宮市大通りの周回コースでクリテリウムがスタート photo:Kei Tsuji山がちな日曜日のジャパンカップ本戦とは異なり、1周1.55kmのクリテリウムのコースはほぼ平坦。計20周の31kmで争われる。スプリンターを擁するチームとしては勝利を狙うまたとないチャンスであり、日本のチームとしては沿道に溢れんばかりに押し寄せる大観衆の前でアピールできる絶好の機会でもある。

メイン集団からアタックする別府史之(レディオシャック)メイン集団からアタックする別府史之(レディオシャック) photo:Kei Tsuji選手たちはまずはコースをぐるりと取り囲んだ観衆に顔見せのパレード走行。にこやかに手を振る選手に、大会PRキャクターの近藤未来さんやJALのキャビンアテンダントさん、ガールズケイリンや競輪選手たちが加わり、華やかなパレード・ランとなった。

ナショナルチームの一員として走る吉田隼人(鹿屋体育大学)は10周目のスプリント賞を獲得ナショナルチームの一員として走る吉田隼人(鹿屋体育大学)は10周目のスプリント賞を獲得 photo:Kei Tsujiレースの開始前には、このシーズン限りで引退を表明している山本雅道(ブリヂストン・アンカー)へのセレモニーが行われた。

スプリントポイントを先頭で通過した別府史之(レディオシャック)スプリントポイントを先頭で通過した別府史之(レディオシャック) photo:Kei Tsujiこの日のファーストアタックは内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)。これに応じて山本や地元で期待のかかる廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)が追うが、決定的な逃げにはならず集団に飲み込まれる。ヨーロッパ帰りの新城幸也(ジャパンナショナルチーム)も積極的に序盤からアタックを重ねてレースへの意志を見せる。

なかなか逃げが決まらず、集団は安定しない。ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズとリクイガス・キャノンデールが前方で逃げを許さない構えを敷き、初山翔(宇都宮ブリッツェン)、ラン・マーガリオット(イスラエル、サクソバンク)、新城の動きにもすぐに対処する。

スプリント賞のかかった5周目は、辻善光(宇都宮ブリッツェン)とジェネシスの選手との一騎打ちとなり、辻がこれを制す。魅せる走りを問われる宇都宮ブリッツェンにとって、まずはひとつ仕事をしっかりとこなした形だ。だが昨年の日本人最高位(9位の)辻にはゴールでの成績も同時に求められることになる。

6周目にかけてマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク)とネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)が抜け出しに成功。1周強を逃げるも、やはり集団は逃げを容認しない。ヴィンチェンツォ・ガロッファロ(イタリア、マトリックス・パワータグ)のアタックも不発に終わる。

9周目には別府史之(クリテリウムスペシャルチーム)が気迫のアタックを見せるが、これはチームにスプリンターのスティール・ヴォン・ホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)がいるネイサン・アール(オーストラリア)がチェック。フミはアールを引き離せず集団に戻った。

10周目のスプリントポイントに向けて最高の形を築いたのはジャパンナショナルチーム。吉田隼人が宮澤崇史を連れ出す形で集団から飛び出すと、そのまま宮澤の加速はなく吉田が先頭でゴールラインを通過。スプリント賞を獲得した。

メイン集団から飛び出したマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク・サンガード)メイン集団から飛び出したマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク・サンガード) photo:Kei Tsuji徐々にポジションを上げる辻善光(宇都宮ブリッツェン)徐々にポジションを上げる辻善光(宇都宮ブリッツェン) photo:Kei Tsuji
直線的なコースには180度コーナーが2カ所ある直線的なコースには180度コーナーが2カ所ある photo:Kei Tsuji

度重なるアタックを経て、13周回目には3名が飛び出しを決める。アンソニー・ジャコッポ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)、鈴木謙一(愛三工業レーシング)、ヘンリー・フルースト(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)の3名に後から宇都宮出身の青柳憲輝(シマノレーシング)が合流して先頭は4名に。しかしクリスティアーノ・サレルノ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)を中心とするリクイガス勢の牽きによりこの動きもすぐに潰えた。

15周目のスプリントポイントを狙ってスプリントを仕掛けたのはフミ。これにロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)が応じ、力と力のぶつかり合いはフミに軍配。今年のスプリント賞はすべて日本人が獲得という結果になった。

ジャパンナショナルチームのメンバーが集団前方に上がるジャパンナショナルチームのメンバーが集団前方に上がる photo:Kei Tsuji最終周回。宮澤崇史を引っ張って集団の先頭で走る新城幸也(ジャパンナショナルチーム)最終周回。宮澤崇史を引っ張って集団の先頭で走る新城幸也(ジャパンナショナルチーム) photo:Yufta Omata


この動きによって飛び出したフミを追う動きの中からボアーロとネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)がカウンターで飛び出す。しかし逃げ切りたいボアーロに反して、スプリンターを擁するハースは牽引を拒否。18周目に入るまで粘ったこの逃げも集団に飲み込まれる。

先頭で姿を現したスティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)先頭で姿を現したスティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ) photo:Kei Tsuji最終局面でレースは激しさを増すが、集団はひとつのまま最終周回へ。位置取りが激化する中、ゴールへの最終コーナーを先頭で越えたのはボアーロ、デイヴィッド・タナー(オーストラリア、サクソバンク)のサクソバンク勢。しかしコーナーの立ち上がりでサクソバンク勢は失速。

替わって猛烈な牽引で前へ出たのはジャコッポ。エーススプリンターのヴォンホフを一気に引っ張り、トップスピードで解き放つ。辻がヴォンホフの番手に入る位置取りの良さを見せたが、強烈なヴォンホフのスプリントはあらゆる選手を寄せ付けず、そのまま先頭でゴールラインを割った。

ゴールに飛び込むスティール・ヴォン・ホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)ゴールに飛び込むスティール・ヴォン・ホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ) (c)Makoto.AYANO

クリテリウム2代目チャンピオンとなったスティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)クリテリウム2代目チャンピオンとなったスティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ) photo:Kei Tsujiゴール手前でダヴィデ・チモライ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)とタナーにかわされた辻は4位。何度もハンドルを叩き悔しさをあらわにしたが、スプリント賞を獲りかつゴール勝負に絡んだことは評価される走りだ。辻は昨年に続き日本人最高位の成績を収めた。

生憎の雨模様での開催となったが、初開催となった昨年同様に多くのファンや観衆を集めたジャパンカップクリテリウム。プロチームがその実力を見せる中、コンチネンタルチームの活躍が目立つレースとなった。ハイスピードなレースで魂に火をつけ、選手たちは明日のジャパンカップに照準を合わせる。






ジャパンカップ2011クリテリウム結果
1位 スティール・ヴォン・ホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ) 42'39"
2位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
3位 デイヴィッド・タナー(オーストラリア、サクソバンク)
4位 辻善光(宇都宮ブリッツェン)
5位 チャールズ・ハフ(アメリカ、ジェリー・ベリー・ケンダ)
6位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 マリウス・ヴィズィアック(ポーランド、マトリックス・パワータグ)
8位 鈴木譲(シマノレーシング)
9位 宮澤崇史(ジャパンナショナルチーム)
10位 西谷泰治(愛三工業レーシング)


text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji

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