2011/10/14(金) - 16:08
2011年シーズンもついに千秋楽。10月15日(土)に第105回ジロ・ディ・ロンバルディア(UCIワールドツアー)が開催される。フィリップ・ジルベール(オメガファーマ・ロット)の3連覇に注目が集まるが、今年は出場選手が実に豪華。新城幸也(ユーロップカー)は今シーズン最後のヨーロッパレースに挑む。
ゴール地点がレッコに変更 ソルマーノ、ギザッロ、ヴェルガノがポイント
開催105回目を迎えるジロ・ディ・ロンバルディア。今年から「イル・ロンバルディア(英語でザ・ロンバルディ)」という名称が使われている。
第1回大会が開催されたのは1905年のこと。ミラノ〜サンレモ(1907年〜)、ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年〜)、パリ〜ルーベ(1896年〜)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1892年〜)と並んで「モニュメント」と称される伝統の一戦だ。
ヨーロッパのレースシーズン最終戦として、例年10月中旬に開催されており、秋色に染まったイタリア北部を駆け抜けることから「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」とも呼ばれている。
レースの舞台となるのはレース名の通り、イタリア北部のロンバルディア州。スタート地点は今年も大都市ミラノだが、コースに大きな変更が加えられた。
例年はコモ湖を一周してコモにゴールするのがデフォルトだった。しかし今年は山岳地帯を抜けた後、コモ湖の南岸を走ってレッコにゴールする。長い歴史の中で、レッコがゴールを迎えるのは初めて。全長は260kmから241kmに短縮されたが、コース全体の登りの数、ならびに累積標高差はアップした。
主な登りは、ヴァルカーヴァ(78km地点・標高1336m)、コルマ・ディ・ソルマーノ(159km地点・標高1124m)、マドンナ・デル・ギザッロ(195km地点・標高754m)、そしてヴィッラ・ヴェルガノ(232km地点・標高522m)の4つ。長年名勝負を生んで来たコモ近郊のサンフェルモ・デッラ・バッターリアは登場しない。
初登場のヴァルカーヴァは、平均勾配8%・最大勾配17%・標高差934m・登坂距離11.7kmという本格的な登りだ。ゴールまで距離があるためここでは勝負はかからないと思われるが、確実に選手たちの脚にダメージを与える。
やはり勝負どころはゴールまで100kmを切ってから始まるソルマーノ、ギザッロ、ヴェルガノの3つ。1960年代に親しまれたコルマ・ディ・ソルマーノは、平均勾配6.6%・最大勾配12%・標高差629m・登坂距離9.5km。近くには「ムーロ・ディ・ソルマーノ(ソルマーノの壁)」と呼ばれる最大勾配25%の激坂も存在するが、レース主催者はこの激坂を回避した。
そして名物マドンナ・デル・ギザッロを、ゴール46km手前でクリアする。サイクリストの聖地として知られるギザッロ教会に向かって、コモ湖畔から8.6kmかけて標高差532mを駆け上がる。平均勾配6.2%・最大勾配14%のこの登りで有力選手が動くだろう。
ギザッロ通過後、短い平坦路を挟んで、選手たちは平均勾配7.4%・最大勾配15%・標高差243m・登坂距離3.3kmのヴェルガノに突入。他の3つの登りと比較すると明らかに距離は短いが、このヴェルガノ頂上からゴールまでは僅か9km。ソルマーノとギザッロで絞り込まれた集団の中から、このヴェルガノで飛び出した数名、もしくは単独の選手がレッコまで逃げることになるだろう。ヴェルガノからレッコまでの標高差319mのダウンヒルで勝負がつく可能性も有る。
本命は3連覇が懸かったジルベール 豪華なライバルが揃う
2009年からロンバルディアで無敵を誇っているフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)は、1940年代のファウスト・コッピ以降出ていない、史上3例目の大会3連覇を目指す。
今年のコース変更はジルベールの勝ちパターンに影響しないだろう。独走による逃げ切り、複数もしくは小集団のスプリント、どんな展開でもジルベールは勝てる。
アルデンヌ・クラシック3連勝、ツアー・オブ・ベルギー総合優勝、ベルギー選手権ダブルタイトル、ツール・ド・フランス区間優勝&マイヨジョーヌ着用、クラシカ・サンセバスティアン優勝、GPケベック優勝、ストラーデビアンケ優勝と、大成功のシーズンを収めているジルベール。シーズン最終戦を最高の形で締めくくることができるだろうか。
直前のグラン・ピエモンテで優勝したダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)は、ホアキン・ロドリゲス(スペイン)やダニーロ・ディルーカ(イタリア)とともにジルベールの牙城を崩しにかかる。カチューシャは良いメンバーを揃えているだけに、他チームよりも早く組織的に動いてくるだろう。
パリ〜トゥールで優勝し、グラン・ピエモンテでも2位に食い込んだフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)も好調。グラン・ピエモンテで積極的に動いたニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)やトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)にも注目だ。
地元イタリアのランプレ・ISDとリクイガス・キャノンデールは、ベストメンバーに近い布陣でイタリア有数のクラシックに挑む。
ランプレ・ISDは昨年2位のミケーレ・スカルポーニ(イタリア)とダミアーノ・クネゴ(イタリア)、そしてリクイガス・キャノンデールはイヴァン・バッソ(イタリア)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)の二枚看板。2004年と2007年、2008年大会で優勝しているクネゴは、ジャパンカップ出場を控えている。同じく来日予定のバッソとともに、そのコンディションに注目したい。
今年のツール・ド・フランスで山岳賞を獲得したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)は、2006年と2009年大会で2位。他にもブエルタ・ア・エスパーニャ覇者のファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)や、昨年のジャパンカップ覇者ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)らが勝負に絡んでくるだろう。
そして、ツール・ド・フランス第9ステーで落車し、右大腿骨を骨折したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が、引退宣言を撤回してレースに復帰する。2012年のツール・ド・フランスに意欲を見せているヴィノの復調具合は如何に。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)も出場するが、世界チャンピオンにはコースの難易度が高過ぎる。実質的にチーム最後のビッグレースに挑むHTC・ハイロードは、ミハエル・アルバジーニ(スイス)で勝負を狙ってくるだろう。
新城幸也(ユーロップカー)が日本人唯一の参戦。ユキヤは直前のグラン・ピエモンテでは、エーススプリンターとして集団に残ったが、逃げ切りが決まったことで勝負に絡めず。シーズン後半のロード世界選手権やパリ〜トゥールでも展開に恵まれずに、チャンスを逃している。日本ナショナルチームの一員としてジャパンカップに出場予定のユキヤは、トマ・ヴォクレール(フランス)らとともにシーズン最後のビッグタイトルを狙う。
10月15日追記:正式なスタートリストによると、スカルポーニとヴィノクロフ、カヴェンディッシュの欠場が決まった。
text:Kei Tsuji
ゴール地点がレッコに変更 ソルマーノ、ギザッロ、ヴェルガノがポイント
開催105回目を迎えるジロ・ディ・ロンバルディア。今年から「イル・ロンバルディア(英語でザ・ロンバルディ)」という名称が使われている。
第1回大会が開催されたのは1905年のこと。ミラノ〜サンレモ(1907年〜)、ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年〜)、パリ〜ルーベ(1896年〜)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1892年〜)と並んで「モニュメント」と称される伝統の一戦だ。
ヨーロッパのレースシーズン最終戦として、例年10月中旬に開催されており、秋色に染まったイタリア北部を駆け抜けることから「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」とも呼ばれている。
レースの舞台となるのはレース名の通り、イタリア北部のロンバルディア州。スタート地点は今年も大都市ミラノだが、コースに大きな変更が加えられた。
例年はコモ湖を一周してコモにゴールするのがデフォルトだった。しかし今年は山岳地帯を抜けた後、コモ湖の南岸を走ってレッコにゴールする。長い歴史の中で、レッコがゴールを迎えるのは初めて。全長は260kmから241kmに短縮されたが、コース全体の登りの数、ならびに累積標高差はアップした。
主な登りは、ヴァルカーヴァ(78km地点・標高1336m)、コルマ・ディ・ソルマーノ(159km地点・標高1124m)、マドンナ・デル・ギザッロ(195km地点・標高754m)、そしてヴィッラ・ヴェルガノ(232km地点・標高522m)の4つ。長年名勝負を生んで来たコモ近郊のサンフェルモ・デッラ・バッターリアは登場しない。
初登場のヴァルカーヴァは、平均勾配8%・最大勾配17%・標高差934m・登坂距離11.7kmという本格的な登りだ。ゴールまで距離があるためここでは勝負はかからないと思われるが、確実に選手たちの脚にダメージを与える。
やはり勝負どころはゴールまで100kmを切ってから始まるソルマーノ、ギザッロ、ヴェルガノの3つ。1960年代に親しまれたコルマ・ディ・ソルマーノは、平均勾配6.6%・最大勾配12%・標高差629m・登坂距離9.5km。近くには「ムーロ・ディ・ソルマーノ(ソルマーノの壁)」と呼ばれる最大勾配25%の激坂も存在するが、レース主催者はこの激坂を回避した。
そして名物マドンナ・デル・ギザッロを、ゴール46km手前でクリアする。サイクリストの聖地として知られるギザッロ教会に向かって、コモ湖畔から8.6kmかけて標高差532mを駆け上がる。平均勾配6.2%・最大勾配14%のこの登りで有力選手が動くだろう。
ギザッロ通過後、短い平坦路を挟んで、選手たちは平均勾配7.4%・最大勾配15%・標高差243m・登坂距離3.3kmのヴェルガノに突入。他の3つの登りと比較すると明らかに距離は短いが、このヴェルガノ頂上からゴールまでは僅か9km。ソルマーノとギザッロで絞り込まれた集団の中から、このヴェルガノで飛び出した数名、もしくは単独の選手がレッコまで逃げることになるだろう。ヴェルガノからレッコまでの標高差319mのダウンヒルで勝負がつく可能性も有る。
本命は3連覇が懸かったジルベール 豪華なライバルが揃う
2009年からロンバルディアで無敵を誇っているフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)は、1940年代のファウスト・コッピ以降出ていない、史上3例目の大会3連覇を目指す。
今年のコース変更はジルベールの勝ちパターンに影響しないだろう。独走による逃げ切り、複数もしくは小集団のスプリント、どんな展開でもジルベールは勝てる。
アルデンヌ・クラシック3連勝、ツアー・オブ・ベルギー総合優勝、ベルギー選手権ダブルタイトル、ツール・ド・フランス区間優勝&マイヨジョーヌ着用、クラシカ・サンセバスティアン優勝、GPケベック優勝、ストラーデビアンケ優勝と、大成功のシーズンを収めているジルベール。シーズン最終戦を最高の形で締めくくることができるだろうか。
直前のグラン・ピエモンテで優勝したダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)は、ホアキン・ロドリゲス(スペイン)やダニーロ・ディルーカ(イタリア)とともにジルベールの牙城を崩しにかかる。カチューシャは良いメンバーを揃えているだけに、他チームよりも早く組織的に動いてくるだろう。
パリ〜トゥールで優勝し、グラン・ピエモンテでも2位に食い込んだフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)も好調。グラン・ピエモンテで積極的に動いたニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)やトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)にも注目だ。
地元イタリアのランプレ・ISDとリクイガス・キャノンデールは、ベストメンバーに近い布陣でイタリア有数のクラシックに挑む。
ランプレ・ISDは昨年2位のミケーレ・スカルポーニ(イタリア)とダミアーノ・クネゴ(イタリア)、そしてリクイガス・キャノンデールはイヴァン・バッソ(イタリア)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)の二枚看板。2004年と2007年、2008年大会で優勝しているクネゴは、ジャパンカップ出場を控えている。同じく来日予定のバッソとともに、そのコンディションに注目したい。
今年のツール・ド・フランスで山岳賞を獲得したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)は、2006年と2009年大会で2位。他にもブエルタ・ア・エスパーニャ覇者のファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)や、昨年のジャパンカップ覇者ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)らが勝負に絡んでくるだろう。
そして、ツール・ド・フランス第9ステーで落車し、右大腿骨を骨折したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が、引退宣言を撤回してレースに復帰する。2012年のツール・ド・フランスに意欲を見せているヴィノの復調具合は如何に。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)も出場するが、世界チャンピオンにはコースの難易度が高過ぎる。実質的にチーム最後のビッグレースに挑むHTC・ハイロードは、ミハエル・アルバジーニ(スイス)で勝負を狙ってくるだろう。
新城幸也(ユーロップカー)が日本人唯一の参戦。ユキヤは直前のグラン・ピエモンテでは、エーススプリンターとして集団に残ったが、逃げ切りが決まったことで勝負に絡めず。シーズン後半のロード世界選手権やパリ〜トゥールでも展開に恵まれずに、チャンスを逃している。日本ナショナルチームの一員としてジャパンカップに出場予定のユキヤは、トマ・ヴォクレール(フランス)らとともにシーズン最後のビッグタイトルを狙う。
10月15日追記:正式なスタートリストによると、スカルポーニとヴィノクロフ、カヴェンディッシュの欠場が決まった。
text:Kei Tsuji
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