第8ステージは本格的な山岳コース。少人数に絞られた先頭集団からゴール前でアタックしたマテイ・ムジェルリ(スロベニア、プルティニナ)がステージ優勝、先頭集団でゴールしたムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)がリーダージャージをキープ。鈴木謙一がステージ5位でフィニッシュし、UCIポイントを獲得した。

地元の観客に応援され、2級山岳を越える選手たち地元の観客に応援され、2級山岳を越える選手たち photo:Sonoko.Tanaka

 2級山岳を登る選手たち 2級山岳を登る選手たち photo:Sonoko.Tanaka四川大地震の被災地での山岳ステージ

四川省の西に位置する都江堰をスタート/フィニッシュ地点として、2級山岳、1級山岳を越える134.1kmのループコースで開催されたツアー・オブ・チャイナ第8ステージ。102km地点、ゴールまで40km地点に用意された高低差約700mの1級山岳が勝負の大きな要となり、今大会のクイーンステージだ。

第7ステージを終えて、単独で総合首位に付けるのはムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)。今大会からジャイアント・ケンダチームに合流した無名選手が、2位に3分19秒のタイム差をつけている。

アタックを仕掛ける中島康晴(愛三工業レーシングチーム)アタックを仕掛ける中島康晴(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko.Tanaka昨日からの雨が残り、肌寒さを感じる中でレースはスタートした。レースは2008年の四川大地震で大きな被害を受けたという都江堰の大きな目抜き通りを進む。街では約3,000人もの人が亡くなり、80%の建物もダメージを受けたと言うが、現在は復興が進み、地震の爪痕はまったくといって感じることはない。ただただきれいに整備された道、という印象だ。


リーダージャージを自ら守ったハルムラトフ

チュン・キンロク(香港、香港ナショナル)とリー・ウェイ(中国、マックスサクセス)が先行する形で2つ目のスプリントポイントを越え、2級山岳に向かう。しかし、山頂を前に2人は集団に吸収され、山頂はアジア屈指のクライマー、ガダー1級山岳山頂には深い霧がかかった1級山岳山頂には深い霧がかかった photo:Sonoko.Tanakaル・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)がトップ通過。

そして細い下り区間を終えると、まもなく1級山岳への上りが始まった。麓から薄い霧がかかっていたが、標高が高くなるにつれ霧の深さは増した。標高1,405mの山頂付近の視界は5メートル程度、気温も9月とは思えないほど冷え込んだ。

上りでガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)を含む6人の先頭グループと、リーダージャージを着たムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)を含む20人程度の追走グループが作られる。ガダ山頂をトップで通過し山岳賞ジャージを獲得したガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)山頂をトップで通過し山岳賞ジャージを獲得したガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル) photo:Sonoko.Tanakaール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)が山頂を前にアタック、2級山岳に引き続き山頂をトップで通過する。

下り区間は、逃げる6人の先頭と、それを追うリーダー、ハルムラトフグループというハイスピードな展開に。愛三工業レーシングチームの鈴木謙一は「上りで少し追走グループから遅れてしまったので、下りで追いつこうと思って一生懸命加速したけど、なかなか追いつけなかった」と振り返る。

ハルムラトフ自らが、追走グループの先頭に立ち、果敢に追い上げ、残り10km地点で先行していた6人を吸収する。この時点でハルムラトフの総合首位が確実なものとなった。都江堰の街に戻り、ゴール手前で20人程度の集団からマテイ・ムジェルリ(スロベニア、プルティニナ)が先行し、後続に2秒の差をつけて、ステージ優勝。そして、2位以下のリーダージャージを着るムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)が先頭集団でゴールをめざすリーダージャージを着るムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)が先頭集団でゴールをめざす photo:Sonoko.Tanakaスプリントに加わった鈴木謙一がステージ5位でフィニッシュした。


ケガから復帰した鈴木謙一が健闘!

第3ステージの山岳でチーム内で唯一、先頭集団に残った鈴木。実質総合上位を狙えるのは彼だけだった。4月の韓国のレースで鎖骨を骨折し、まだボルトが残る状態でのレースだったが、ステージ5位、総合順位を38位から20位に上げ、自身初となるUCIポイントも獲得する力走だった。



ゴール手前300m、アタックを掛けてゴールへ向かうマテイ・ムジェルリ(スロベニア、プルティニナ)ゴール手前300m、アタックを掛けてゴールへ向かうマテイ・ムジェルリ(スロベニア、プルティニナ) photo:Sonoko.Tanaka鈴木謙一のコメント
「サイクルコンピュータが動かなくて、看板も山頂の1km手前にならないと出てこない。とにかくキツくて長い上りに感じました。上り口は傾斜が緩かったこともあり、集団の前方から上り始めて先頭に付いていくことができましたが、残り1kmで遅れてしまった。しかし下り区間でなんとか追いついてゴールスプリントに備えました。

ゴールスプリントでは3位に入れるかと思って踏みましたが、最後に捲られてしまい5位。これまでのステージで休ませてもらったので、総合、区間ともに狙ったステージでした。表彰台には乗れませんでしたが、やれることはやったと思っています。

ゴールに向かう鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)ゴールに向かう鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko.Tanaka4月に鎖骨を骨折するケガを負い、自転車に乗れない期間も長かったため、上半身のトレーニングなど多くの人のサポートで行っていました。結果として、今の状態はケガをする前よりもいい状態だと思います。次のレースはジャパンカップ。上りが得意なので頑張りたいと思っています」。


天津で迎える最終ステージ

飛行機で成都から天津に約2,000km移動し、最終ステージは首都・北京近くの天津で開催される85kmのクリテリウム。総合成績、各賞ジャージも確定しているため、ステージ優勝をかけたレースになる。今大会、ジャイアント・ケンダやタブリーズ・ペトロケミカルの活躍が目立つ一方で、まだ結果を出せていないチームも多い。彼らが最後のチャンスで勝負してくるだろう。もちろん、愛三工業レーシングチームも、目指すは念願のステージ優勝! 天気予報は晴れ。秋風吹く2週間の締めくくりとなるレースを楽しみにしたい。



ツアー・オブ・チャイナ2011、第8ステージ結果
1位 マテイ・ムジェルリ(スロベニア、プルティニナ) 3h06'43"
2位 イワン・コヴァレフ(ロシア、ロシアナショナル) +2"
3位 ダニエルホルム・ホーダー(デンマーク、グラッド&マーストランドLPO)
4位 ホセイン・アリザデー(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
5位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)
6位 ホセルイス・カーノ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)
7位 デニス・ヴァンニケルク(南アフリカ、プリンシパルMTN)
8位 ウラディミール・エフィムキン(ロシア、タイプ1)
9位 ワセマン・マーティン(南アフリカ、プリンシパルMTN)
10位 ディルク・ミューラー(ドイツ、ニュトリキシオン)
30位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)+2'07"
81位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+13'02"
82位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
83位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+18'07"
101位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+19'42"

個人総合成績(イエロージャージ)
1位 ムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)24h35'23"
2位 イワン・コヴァレフ(ロシア、ロシアナショナル)+3'16"
3位 マテイ・ムジェルリ(スロベニア、プルティニナ)+3'17"
4位 パブロ・ルシュガ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)+3'27"
5位 アレクサンドル・セロフ(ロシア、ロシアナショナル)+3'28"
6位 ダニエルホルム・ホーダー(デンマーク、グラッド&マーストランドLPO)+3'29"
7位 クリスター・レイク(ノルウェー、ジョーカー・メリダ)
8位 ディルク・ミューラー(ドイツ、ニュトリキシオン)+3'31"
9位 ウラディミール・エフィムキン(ロシア、タイプ1)+3'32"
10位 マニュエル・オルテガ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)+3'33"
20位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+3'45"
43位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)+9'55"
76位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+21'11"
78位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+22'07"
85位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+26'42"
97位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+30'15"

ポイント賞(ブルージャージ)
ボリス・シュピレフスキ(ロシア、タブリーズ・ペトロケミカル)

山岳賞(ポルカドットジャージ)
ガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)

チーム総合成績
ジョーカー・メリダ


photo&text:Sonoko.Tanaka

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