公道最終ステージすべての場面で圧倒した佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)が優勝。NIPPO勢らの攻撃でシマノは崩壊、リーダーの西薗良太は3分26秒遅れでゴール。NIPPOは世界で戦う力を見せ付けたが、新たなリーダーとなったジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)にはまだ8秒足りない。

序盤、日高峠への上りでのNIPPOとシマノの攻防序盤、日高峠への上りでのNIPPOとシマノの攻防 photo:Hideaki.TAKAGI夕張市内へ、強力な6人が逃げる夕張市内へ、強力な6人が逃げる photo:Hideaki.TAKAGI最終KOM下り、NIPPOとシマノが含まれる追走集団最終KOM下り、NIPPOとシマノが含まれる追走集団 photo:Hideaki.TAKAGIゴール前、山本元喜(鹿屋体育大学)が先行ゴール前、山本元喜(鹿屋体育大学)が先行 photo:Hideaki.TAKAGI4日間の今年のツール・ド・北海道。第3ステージが9月18日(日)、占冠村から江別市までの171kmで行われた。
コース全体は下り基調。最初に緩やかな日高峠を越え、平坦区間ののち緩斜面のKOMを経て丘陵地帯から標高差100mほどのKOMを越えて26kmでゴールするもの。朝から冷たい雨が降り、それの対策も重要だ。

序盤に形成された危険な9人の逃げ

占冠中学校前をスタートした集団は、標高差150mほどの日高峠へ。緩く上るが、NIPPO勢が小刻みに仕掛け、シマノ勢がそれをチェックして隊列が長く伸びた状態で越えていく。ここの下り区間でペースが上がり、9名の先頭集団ができる。ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOはチャヴェス・ルビアーノとシモーネ・カンパニャーロ、チームブリヂストン・アンカーは狩野智也、井上和郎、清水良行、さらには鈴木譲(シマノレーシング)、ヴィンチェンツォ・ガロッファロ(マトリックスパワータグ)、福島晋一(トレンガヌ・サイクリングチーム)、吉田隼人(鹿屋体育大学)だ。昨日に大逃げした福島と吉田が今日も逃げる。

総合上位のルビアーノとカンパニャーロが入った逃げは、差を20秒から40秒へと広げていく。鈴木譲以外は逃げる意思で統一されている。一方のメイン集団は、この逃げをシマノが危険と判断して鈴木真理と青柳憲輝を中心に牽引する。しかしその差は最大1分半まで開いてしまう。これに増田成幸の山岳賞をキープしたい宇都宮ブリッツェンと、総合3位のジャン・キュング擁する大韓民国自転車競技連盟がローテーションに加わる。
逃げ集団ではホットスポットを鈴木譲が1位通過で3秒獲得。2位通過のルビアーノに総合で1秒差にまで詰める。

最終KOM前後での激しい攻防でシマノが崩壊

メイン集団はシマノ勢中心に全開で追走した結果、最初のKOM手前で逃げの9人を吸収、しかしここでアタックしたルビアーノが1位通過して暫定山岳リーダーに。西薗は2位通過。
夕張市内への下り区間で29名の先頭集団ができ、ここからもアタックがかかり安定しない。そして4名の逃げができる。山本元喜(鹿屋体育大学)、ガロッファロ、マッシミリアーノ・リケーゼ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)、澤田賢匠(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)だ。

そして先頭はゴールまで26kmのKOMへ向かう。ここへ至る緩い上りで動きが活発に。そしてKOMを経ると先頭4名を含めた29名がばらばらになり再編成される。前方には佐野、ルビアーノ、リケーゼ、カンパニャーロ、西薗、畑中、鈴木譲、ジャンらがいる。ここでNIPPO勢が攻撃を仕掛ける。おもに佐野が仕掛け、シマノ勢がこれを追う。このNIPPOの攻撃でシマノは力を使い果たし千切れていく。

NIPPO主導でゴールへ

シマノがいなくなった先頭集団は11名。NIPPOは佐野、ルビアーノ、リケーゼ、カンパニャーロの4名をそろえる。さらにジャン、黒枝士揮・山本元喜(鹿屋体育大学)、ヴィズィアック・ガロッファロ(マトリックスパワータグ)、福島、早川朋宏(法政大学)だ。

ゴールまでの直線で早川がアタック、それを山本がかわすが佐野が追走して先頭へ。早川も残るが佐野が先着する。そして4秒のボーナスタイムが得られる3位争いは熾烈で、ジャンがゴールする寸前に、ルビアーノが伸びないのを見たリケーゼが差し込んで3位に。
佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)が優勝佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI

本来の強さを取り戻したNIPPO
2位の早川朋宏(法政大学)。先輩・青柳憲輝の3年前の記録を超えた2位の早川朋宏(法政大学)。先輩・青柳憲輝の3年前の記録を超えた photo:Hideaki.TAKAGI西薗良太(シマノレーシング)がステージ優勝の佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)を祝福西薗良太(シマノレーシング)がステージ優勝の佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)を祝福 photo:Hideaki.TAKAGI個人総合時間リーダーのジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)個人総合時間リーダーのジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟) photo:Hideaki.TAKAGI
NIPPOはスタート後から攻撃を仕掛け常に先手を打った。最終KOMを経ても4人が残っていたことが大きい。攻撃の中心は佐野。圧倒的な力でシマノ勢をねじふせ、ロングスパートでゴールをも手中にした。
NIPPOとしては総合で10秒差のジャンを突き放したいところでもあった。ルビアーノが1位でジャンが4位以下ならば総合リーダーになれたが、「それを最初から狙うのは無理が出てくる。8秒差ならば明日のTTで可能性がある」と大門監督。ここでジャンを押さえたリケーゼの3位が効いてくるのだ。

シマノは個人総合リーダーと上位、団体総合のすべてを失った。中盤までのNIPPOとBSアンカーが率いる逃げの追走に脚を使った。その後も要所でNIPPO勢の攻撃を受け、最終KOMを過ぎても残っていたが、またもやNIPPO勢の攻撃で脚をそがれ、一人も残ることができなかった。

総合リーダーに立ったジャン。翌日はチームコントロールの必要の無い個人TT。総合2位のルビアーノとの差は8秒。2.75kmならば3分30秒程度。時速にして2kmほどの差だ。上位陣とはいえ逆転の可能性は残されている。最終走者のジャンがゴールするまで、優勝の行方はわからない。

結果
第3ステージ 168.5km
1位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)3時間56分40秒
2位 早川朋宏(法政大学)
3位 マッシミリアーノ・リケーゼ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
4位 ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)
5位 チャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
6位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)
7位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)
8位 山本元喜(鹿屋体育大学)
9位 澤田賢匠(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)+08秒
10位 シモーネ・カンパニャーロ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)

個人総合時間賞 
1位 ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)13時間53分19秒
2位 チャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+08秒
3位 シモーネ・カンパニャーロ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+22秒
4位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+30秒
5位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)+1分15秒
6位 山本元喜(鹿屋体育大学)+2分27秒
7位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)+3分13秒
8位 西薗良太(シマノレーシング)+3分17秒
9位 畑中勇介(シマノレーシング)+3分21秒
10位 鈴木譲(シマノレーシング)+3分35秒

個人総合ポイント賞
1位 マッシミリアーノ・リケーゼ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)40点
2位 チャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)37点
3位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)34点

個人総合山岳賞
1位 チャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)20点
2位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)17点
3位 ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)11点

個人総合U23賞
1位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)13時間54分34秒
2位 山本元喜(鹿屋体育大学)+1分12秒
3位 中尾佳祐(順天堂大学)+5分25秒

団体総合時間賞
1位 ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO 41時間41分09秒
2位 シマノレーシング +9分20秒
3位 マトリックスパワータグ +12分36秒

photo&text:高木秀彰

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