2011/09/15(木) - 12:32
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)は今年初めて3週間のグランツールを走った。結果は、偉大な選手であることを改めて証明するものだった。スロバキアを飛び出した21歳は、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ3勝を達成。世界選手権の優勝候補に名乗りを上げた。
ステージ3勝目をアピールしてゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsuji「確かに彼が世界選で勝つ可能性はある。でもそんな大きなプレッシャーを感じて闘う必要は無い」。そう語るのはリクイガス・キャノンデールのステファノ・ザナッタ監督。「正直言って、フィジカルな面では、すでに世界チャンピオンに値する境地に達している。だが彼にはまだ成熟度やメンタリティーが足りない。それに260kmのレースでは様々な要素が交錯するんだ」。
サガンは初出場のブエルタで第6、第12、第21ステージ優勝。UCIワールドランキングでフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)が首位を快走する中、サガンはランキングを大きく上げた。
ここに今年サガンが勝ったレースを列挙してみる。
ジロ・ディ・サルデーニャ:ステージ3勝&総合優勝
ツアー・オブ・カリフォルニア:ステージ1勝
ツール・ド・スイス:ステージ3勝&総合8位
スロバキアナショナル選手権:優勝
ツール・ド・ポローニュ:ステージ2勝&総合優勝
ブエルタ・ア・エスパーニャ:ステージ3勝
終盤にかけて集団前方に上がるペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsuji昨年リクイガスでプロデビューするまで、サガンはMTBバイカーとして成功を収めてきた。サガンは2008年のMTB世界選手権クロスカントリーのジュニアタイトルを獲得している。
「兄のユライがレースの世界に導いてくれたんだ。自転車競技を始めたのは彼のほうが先で、その1年後に僕もバイクに跨がった。確か9歳のときだったと思う」。サガンはそう回想する。
チームメイトと談笑するヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiプロデビュー戦となった昨年のツアー・ダウンアンダーで、サガンは早速その怪物ぶりを見せつける。
初日のクリテリウムでランス・アームストロング(アメリカ)と逃げを試み、平坦ステージの集団スプリントでも上位に。最難関山岳ステージでは、当時世界チャンピオンのカデル・エヴァンス(オーストラリア)に食らいついた。昨シーズンの通算成績は5勝。
慣れた手つきでシャンパンを開けるペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsuji「彼は今年プロ選手として成熟した」とザナッタ監督。「自分の能力に自信をもち始めてからというもの、彼の進化のスピードは上がった。昨年と比べて体重は約3kg落ち、より筋肉質な身体を手に入れた。今回のブエルタで、彼は3週間の闘いにも対応できることを証明。最終日マドリードのステージで優勝したことが、そのことを如実に物語っている」。
「チーム首脳陣は、彼がブエルタでステージ1勝できればいいなと思っていた。それが驚きのステージ3勝!ペーターには充分驚かされた。もう彼の破天荒ぶりには驚かない。自分の居場所を見つけ、リラックスしてレースに挑んでいる。注目を集める(ヴィンチェンツォ)ニーバリの陰に隠れて、大切なことを学び、吸収し続けている」。
9月25日にデンマーク・コペンハーゲンで開催されるロード世界選手権のコースは、一般にスプリンター向きだと言われている。サガンはブエルタのスプリントで3勝しているが、生粋のスプリンターではない。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)やダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)とは違うタイプ。どちらかと言うと、2度の世界チャンピオン、現イタリア代表監督のパオロ・ベッティーニに近い。
「自分がどんなタイプの選手かって?なかなか難しい質問だね。そのことについてあまり考えたことがない。ただレースで勝ちたいと思い続けているだけなんだ」。
サガンは間違いなくコペンハーゲンでの優勝候補の一人だ。今年アルカンシェルを穫れなかったとしても、彼が現在のロードレース界でずば抜けた能力を備えた選手だという事実に変わりはない。
2010年ツアー・ダウンアンダー 20針縫う怪我を負いながらも第3ステージで4位に入った20歳のペーター・サガン(スロバキア、リクイガス) photo:Kei Tsuji
2010年ツアー・ダウンアンダー第5ステージ ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)がエヴァンスの後ろ、5位でゴール photo:Kei Tsuji
ブエルタ最終日 落ち着いて周回をこなすペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsuji
text:Gregor Brown
photo&translation:Kei Tsuji
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サガンは初出場のブエルタで第6、第12、第21ステージ優勝。UCIワールドランキングでフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)が首位を快走する中、サガンはランキングを大きく上げた。
ここに今年サガンが勝ったレースを列挙してみる。
ジロ・ディ・サルデーニャ:ステージ3勝&総合優勝
ツアー・オブ・カリフォルニア:ステージ1勝
ツール・ド・スイス:ステージ3勝&総合8位
スロバキアナショナル選手権:優勝
ツール・ド・ポローニュ:ステージ2勝&総合優勝
ブエルタ・ア・エスパーニャ:ステージ3勝
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「兄のユライがレースの世界に導いてくれたんだ。自転車競技を始めたのは彼のほうが先で、その1年後に僕もバイクに跨がった。確か9歳のときだったと思う」。サガンはそう回想する。
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初日のクリテリウムでランス・アームストロング(アメリカ)と逃げを試み、平坦ステージの集団スプリントでも上位に。最難関山岳ステージでは、当時世界チャンピオンのカデル・エヴァンス(オーストラリア)に食らいついた。昨シーズンの通算成績は5勝。
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「チーム首脳陣は、彼がブエルタでステージ1勝できればいいなと思っていた。それが驚きのステージ3勝!ペーターには充分驚かされた。もう彼の破天荒ぶりには驚かない。自分の居場所を見つけ、リラックスしてレースに挑んでいる。注目を集める(ヴィンチェンツォ)ニーバリの陰に隠れて、大切なことを学び、吸収し続けている」。
9月25日にデンマーク・コペンハーゲンで開催されるロード世界選手権のコースは、一般にスプリンター向きだと言われている。サガンはブエルタのスプリントで3勝しているが、生粋のスプリンターではない。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)やダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)とは違うタイプ。どちらかと言うと、2度の世界チャンピオン、現イタリア代表監督のパオロ・ベッティーニに近い。
「自分がどんなタイプの選手かって?なかなか難しい質問だね。そのことについてあまり考えたことがない。ただレースで勝ちたいと思い続けているだけなんだ」。
サガンは間違いなくコペンハーゲンでの優勝候補の一人だ。今年アルカンシェルを穫れなかったとしても、彼が現在のロードレース界でずば抜けた能力を備えた選手だという事実に変わりはない。
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text:Gregor Brown
photo&translation:Kei Tsuji
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