2009/05/15(金) - 02:47
ジロ・デ・イタリア第6ステージは“イタリアっぽくない”南チロル地方をスタート。標高ある山岳を越えるステージで、前日の頂上ゴールで出遅れたミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)が逃げた。
スタート地点はほぼオーストリア
昨日は何とか最終便に近いロープウェーに滑り込んだ。昨年のジャパンカップでも来日していたベテランフォトグラファーのロベルト・ベッティーニ氏と同じゴンドラで、彼の物まねに腹を抱えて笑っていると麓の駅に着いた。
2日間だけ同乗したコロンビア人のルイスとともに、薄暗い中、この日の宿を探す。「宿有り」の標識に釣られてコースを外れ、緑の山肌を縫うように曲がりくねった細道を抜けると、こじんまりとした民家的なコテージが現れた。夜も深まっていたので即決。
南チロルに属するこの地域は、イタリアよりもドイツ色が強い。チロルとはオーストリアとイタリアに跨がる山岳地帯で、北チロルと東チロルはオーストリアに、南チロルはイタリアに属している。宿を取り仕切るマダムも、イタリア語は通じたが、明らかにドイツ語の方が流暢だった。
第6ステージは248kmのロングコースのため早めに宿を出て、スタート地点のブレッサノーネに向かう。途中の交通標識はイタリア語よりもドイツ語表記が多いぐらい。ブレッサノーネの街に入ってもジロ色(ピンク)は少なく、沿道の観客の数も、熱気も明らかに薄かった。
ジロに同行する審判も「ここはイタリアじゃないから」と慣れたもの。ジロに欠かせない峠が連なる同地域だが、皮肉にもジロに対する関心は薄いように感じた。
ハイスピードで248kmを駆け抜けた選手たち
逃げが決まって沈静化しているだろうと予想して、40km地点で選手たちを待っていたが、ラジオツールから流れてくるのは「誰々がアタック」「飛び出していた誰々が吸収」「Velocita sempre sostenuta(集団はハイスピードのまま進行)」。この日の逃げが決まったのは55km地点だった。
山岳コースでは抜きどころがないため、大きくショートカットしてゴール地点のマイヤーホーフェンへ。氷河が削り取った渓谷をアウトストラーダ(アウトバーン)が貫く。慣れとは恐ろしいもので、雪を冠したドロミテやアルプスを見ても感動が薄くなってきた。
距離的にワンディクラシックに迫るような長丁場のため、ゴール地点で時間がたっぷりあると予想していた。しかし1時間半に渡って繰り広げられたアタック合戦と、脚の揃った逃げによりハイスピードな展開に。結果的に通過予定時刻を大きく割り込んで、選手たちはマイヤーホーフェンへの下りに突入した。
痙攣で勝機を失った昨年ジロ山岳賞2位のキリエンカ
逃げるスカルポーニとキリエンカの姿がスクリーンに映し出される。ティレーノ〜アドリアティコで総合優勝を飾るほど山岳力に長けたスカルポーニと、昨年のトラック世界選手権でポイントレースを制したキリエンカ。スプリント勝負ならキリエンカに分があるのは明らかだ。
しかしポイントレースチャンピオンはラスト25km地点でパンク。一旦はスカルポーニに合流したが、山岳で酷使した脚が悲鳴を上げて攣ってしまう。苦痛の表情を見せるキリエンカはスローダウンし、メイン集団に吸収。ひっそりと、優勝者から2分15秒遅れでゴールした。
スピードマンとして名を馳せるキリエンカだが、山岳も難なくこなす。昨年のジロでも標高ある山岳ステージで逃げ、他のメンバーが集団に吸収される中、単独で頂上ゴールまで逃げ切った。結果的にキリエンカはエマヌエーレ・セッラ(イタリア)に次ぐ山岳賞2位で昨年のジロを終えている。
ブエルタ・ア・エスパーニャでも果敢に逃げたが、後続集団を待ったダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)に勝利を奪われている。その走りを買われてか(?)キリエンカはケースデパーニュに移籍し、今回のジロではアローヨとともに闘っている。
スカルポーニ、完全復活を高らかに宣言
キリエンカを突き放し、メイン集団の追撃を振り切り、大歓声のゴールまで逃げ切ったスカルポーニ。昨日のアルペ・ディ・シウージは4分46秒遅れでゴールし、総合38位(6分19秒遅れ)まで順位を下げていた。
昨日のゴール直後、スカルポーニにちょうど声をかけていた。「キツかった! 総合成績で後退したことは残念。山岳ステージで逃げればチャンスがあるかな」。まさかその憔悴しきった29歳が、翌日の山岳ステージで逃げ切りを果たすとは思わなかった。
オペラシオンプエルト関与の疑いで出場停止処分を経て復活したスカルポーニ。「55km地点で飛び出した時は逃げ切れるとは思ってなかった。193kmに渡る逃げを成功させたなんて最高の気分だ」。すでに3月のティレーノ〜アドリアティコ総合優勝で復活をアピールしていたが、今回の勝利でそのポテンシャルの高さを今一度見せつけた。
スタート地点はほぼオーストリア
昨日は何とか最終便に近いロープウェーに滑り込んだ。昨年のジャパンカップでも来日していたベテランフォトグラファーのロベルト・ベッティーニ氏と同じゴンドラで、彼の物まねに腹を抱えて笑っていると麓の駅に着いた。
2日間だけ同乗したコロンビア人のルイスとともに、薄暗い中、この日の宿を探す。「宿有り」の標識に釣られてコースを外れ、緑の山肌を縫うように曲がりくねった細道を抜けると、こじんまりとした民家的なコテージが現れた。夜も深まっていたので即決。
南チロルに属するこの地域は、イタリアよりもドイツ色が強い。チロルとはオーストリアとイタリアに跨がる山岳地帯で、北チロルと東チロルはオーストリアに、南チロルはイタリアに属している。宿を取り仕切るマダムも、イタリア語は通じたが、明らかにドイツ語の方が流暢だった。
第6ステージは248kmのロングコースのため早めに宿を出て、スタート地点のブレッサノーネに向かう。途中の交通標識はイタリア語よりもドイツ語表記が多いぐらい。ブレッサノーネの街に入ってもジロ色(ピンク)は少なく、沿道の観客の数も、熱気も明らかに薄かった。
ジロに同行する審判も「ここはイタリアじゃないから」と慣れたもの。ジロに欠かせない峠が連なる同地域だが、皮肉にもジロに対する関心は薄いように感じた。
ハイスピードで248kmを駆け抜けた選手たち
逃げが決まって沈静化しているだろうと予想して、40km地点で選手たちを待っていたが、ラジオツールから流れてくるのは「誰々がアタック」「飛び出していた誰々が吸収」「Velocita sempre sostenuta(集団はハイスピードのまま進行)」。この日の逃げが決まったのは55km地点だった。
山岳コースでは抜きどころがないため、大きくショートカットしてゴール地点のマイヤーホーフェンへ。氷河が削り取った渓谷をアウトストラーダ(アウトバーン)が貫く。慣れとは恐ろしいもので、雪を冠したドロミテやアルプスを見ても感動が薄くなってきた。
距離的にワンディクラシックに迫るような長丁場のため、ゴール地点で時間がたっぷりあると予想していた。しかし1時間半に渡って繰り広げられたアタック合戦と、脚の揃った逃げによりハイスピードな展開に。結果的に通過予定時刻を大きく割り込んで、選手たちはマイヤーホーフェンへの下りに突入した。
痙攣で勝機を失った昨年ジロ山岳賞2位のキリエンカ
逃げるスカルポーニとキリエンカの姿がスクリーンに映し出される。ティレーノ〜アドリアティコで総合優勝を飾るほど山岳力に長けたスカルポーニと、昨年のトラック世界選手権でポイントレースを制したキリエンカ。スプリント勝負ならキリエンカに分があるのは明らかだ。
しかしポイントレースチャンピオンはラスト25km地点でパンク。一旦はスカルポーニに合流したが、山岳で酷使した脚が悲鳴を上げて攣ってしまう。苦痛の表情を見せるキリエンカはスローダウンし、メイン集団に吸収。ひっそりと、優勝者から2分15秒遅れでゴールした。
スピードマンとして名を馳せるキリエンカだが、山岳も難なくこなす。昨年のジロでも標高ある山岳ステージで逃げ、他のメンバーが集団に吸収される中、単独で頂上ゴールまで逃げ切った。結果的にキリエンカはエマヌエーレ・セッラ(イタリア)に次ぐ山岳賞2位で昨年のジロを終えている。
ブエルタ・ア・エスパーニャでも果敢に逃げたが、後続集団を待ったダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)に勝利を奪われている。その走りを買われてか(?)キリエンカはケースデパーニュに移籍し、今回のジロではアローヨとともに闘っている。
スカルポーニ、完全復活を高らかに宣言
キリエンカを突き放し、メイン集団の追撃を振り切り、大歓声のゴールまで逃げ切ったスカルポーニ。昨日のアルペ・ディ・シウージは4分46秒遅れでゴールし、総合38位(6分19秒遅れ)まで順位を下げていた。
昨日のゴール直後、スカルポーニにちょうど声をかけていた。「キツかった! 総合成績で後退したことは残念。山岳ステージで逃げればチャンスがあるかな」。まさかその憔悴しきった29歳が、翌日の山岳ステージで逃げ切りを果たすとは思わなかった。
オペラシオンプエルト関与の疑いで出場停止処分を経て復活したスカルポーニ。「55km地点で飛び出した時は逃げ切れるとは思ってなかった。193kmに渡る逃げを成功させたなんて最高の気分だ」。すでに3月のティレーノ〜アドリアティコ総合優勝で復活をアピールしていたが、今回の勝利でそのポテンシャルの高さを今一度見せつけた。
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