2011/07/17(日) - 19:51
ピレネー3連戦を締めくくるクイーンステージ。総合争いの選手たちには緊張感が高まる。最終的にツールに誰が勝つのか、その答えに今日は少し近づくはずだった。しかし優勝候補たちは「お見合い」状態に。意外な勝者が誕生した。
スタートを控えたバッソ、コンタドールらは物静かに集中して、このステージが意味するものの大きさが伝わってくる。なかでもバッソはただならぬ雰囲気を発散させていた。2004年にアームストロングと互角の闘いを披露したこの地で、再び輝く強い意思を感じた。
スタート地点での人気ものは、昨ステージで逃げるも勝利できなかったジェレミー・ロワ(FDJ)だ。すでに5度のアタックでツールを沸かせるこのフランス人は勝てずともその勇敢な走りで観客たちの支持を得ている。フランス人が慣れない英語を使って叫ぶ「キング・ロワ!」(王を意味するRoiと発音が同じ)の暖かい声援が飛ぶ。
そしてもうひとりの人気者は、アルカンシェルを着てステージ勝利というこのうえない「ブラボーな走り」を披露したフースホフトだ。
昨日の勝利を喜ぶノルウェー人の元選手ダグオットー・ローリッツェンさん(TVコメンテーター)は言う。
「トルの昨日の走りは本当に凄かった。トルと僕はそのステージにチャンスがあるという話を数日前からしていて、昨日の勝利は予想していたものだったんだ。普通に走ってもチャンスはあったけど、アタックして自らのチャンスをより確実にした。アルカンシェルを着たらそれにふさわしい走りを見せなきゃいけない。すでにマイヨジョーヌとのダブルで目立ってたけど、やはり勝利するのとしないのではまったく違うからね。
彼は僕が叶えられなかった夢を叶えてくれたよ。僕はかつてからトルのトレーニングコーチをしてきたから、彼の活躍は格別だよ」。
ローリッツェンさんは元セブンイレブンの選手でツールに出場、ステージ優勝した経験をもつ。90年に宇都宮で開催されたロード世界選手権で終盤逃げたが、一緒に逃げた選手と自転車が絡んでストップを強いられ、世界チャンピオンへのチャンスをフイにしている。現在はノルウェーのTV局のコメンテーターだ。
「毎年この仕事でツールに帯同するんだよ。この仕事は好きだね。とくに自分の国の選手が活躍すると長い3週間の旅も苦じゃなくなる。違うツールを闘っている気分になるね。小さな国から2人の選手(ボアッソンハーゲンと)。ここまででマイヨジョーヌと2つのステージ優勝。素晴らしいよ。視聴率もすごいんだ。観戦に来るノルウェーの観客もますます増えているよ」。
ダスペ峠で事故死したファビオ・カザルテッリの石碑で行われた献花式
主催関係者たちはステージがスタートする前にあるところに急行していた。レース序盤に訪れる急勾配の2級山岳ダスペ峠。
1995年のツールで、今回のコースでは上りに当たるその峠道で、オリンピックロードチャンピオンでもあるイタリア人選手のファビオ・カザルテッリ(元モトローラ)が落車して頭を強打、命を落とした。
路肩に建てられたその慰霊の石碑の前で、集団の通過する前に関係者たちが集まり、小さな献花式を行った。
イタリアから駆けつけたカザルテッリの両親と、サポーターたちも参加。多数のメディアもレースを先行して駆けつけた。
総合ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏やベルナール・イノー氏が両親の肩を抱き、なぐさめの言葉を掛ける。ダスペ峠をツールが通過する年には必ず行われるようになった恒例のセレモニーだが、5月のジロでのウェイラントの死亡事故があったからか、この献花式が持つ意味が再び大きくなったようだ。
外れたジンクス「プラトー・ド・ベイユを制する者がツールを制する」
ゴール地点の超級山岳プラトー・ド・ベイユはかつて様々な名勝負を産んできた名峰。近代では1998年のマルコ・パンターニの独走優勝、イヴァン・バッソとランス・アームストロングのテールトゥーノーズの死闘。そしてこのベイユの勝者が決まってその年のツールの総合優勝を手にしてきた。ジンクス「プラトー・ド・ベイユを制する者がツールを制する」は本当か? いや、今年はとうとうハズレたようだ。
標高1780mに至る平均勾配7.9%・登坂距離15.8kmという登りのスペックは、あのラルプ・デュエズをも凌ぐ。しかしラスト4km付近からゴール地点までは勾配が緩くなる「クロスカントリースキーの名所」。かつてから決定的なアタックはラスト4kmまでで決まっていた。
お見合い状態を制したファネンデルト 名勝負の地で最高のプロ初勝利
膠着状態が続くマイヨジョーヌ集団から抜け出し、猛追したサムエル・サンチェスに21秒差をつけて頂上まで逃げ切ったイェーレ・ファネンデルト(オメガファーマ・ロット)。リュウザルディダンでSサンチェスに破れて2位となり、株を上げていたが、無名の26歳のベルギー人が第12ステージの再現で今度は勝利を手にした。今までの戦績では今年のフレーシュ・ワロンヌで6位に入っているが、トップレースの中では無名に近い選手だ。
ファネンデルトは言う「春に膝を壊し、クラシックの後少し休養をとってイタリアでのトレーニングセッションで再始動した。レースにはドーフィネから戻っている。実際、今のツールでの僕は完璧なコンディションだ。アタックする機会をくれたチームに感謝する。
ライバルたちが牽制の闘いを続ける中、するりと逃げ出したファネンデルト。お見合いのチャンスを見逃さなかった。「彼らはそれまでに何度もアタックしていた。とくにアンディは。彼ら総合争いのライダーはお互いをコントロールすることだけに関心があったから、僕は見逃してくれたんだと思う。僕には総合争いは関係ないから」。
「今日見たようなことは前にも何度もあった。クラシックではラスト10kmぐらいでアタックが決まることがあるし、今日はもっとやさしかった。彼らはお互いを見合っていたから僕は抜け出すことができた。もし僕が総合狙いの選手なら彼らも許してくれなかったと思うよ。だからリズムもそんなに高くなかった」。
お見合いを続けた優勝候補たち 実際は難しかった
機関車イェンス・フォイクトらによるレオパード・トレックのペースセッティングののち、プラトー・ド・ベイユでは予想通り総合優勝候補たちの闘いが繰り広げられた。しかしそれは期待したほどアグレッシブなものでなく、お見合いとも言える牽制が続いた。そのおかげでヴォクレールのマイヨジョーヌは再びキープされた。
アタックを繰り返したフランクとアンディ。コンタドールはまたしても守りに徹したが、離されることはなかった。アンディがコンタドール、エヴァンスらにつけた差は2秒だけ。ピレネーが終わると言うのに、まだ調子が上がりきらないコンタドールにタイム差をつけることができたチャンスをみすみす逃した?
アンディは言う「大きな差をつけることは難しかった。登りはそれに十分なほど勾配がハードじゃなく、何度もアタックしたけど差を開くのは不可能だった。それはあらかじめ予想できたことだったんだ」。
フランクは言う。「パーフェクトだ。アンディには待つように言っていた。他の有力候補にタイム差をつけられなかったのは残念だ。でもこれからもチャンスがある日は多くある。有力選手たちがお見合いをしたのは驚くことじゃない。全員の優勝候補が残っていたんだ。でも彼らのほとんどはただお互いを見合うだけだった。僕とアンディ、そしてバッソだけがアタックしたがっていた。他の選手達は後輪に着いているだけだった。これは総合優勝争いにとっていことじゃない」。
今後の展開を考えると、TTで安定した力を発揮できるエヴァンスに一歩有利な状況になってきた。コンタドール陣営は依然としてコンタドールが調子を日に日に戻していることを強調している。
力を見せたバッソ シュレク兄弟の走りに不満
上りで多く先頭を引き、強いテンポを刻んだイヴァン・バッソ。2004年の力はないが、再び力を見せた。バッソはシュレク兄弟のアタックに批判を込めて言う。
「上りでペースを上げたのは人数を絞るためだ。20人も集団にいる場合はまだアタックできない。まず4,5人まで人数を絞り込む必要がある。アンディとフランクがエヴァンスら他の選手を振り落としたいなら、もっと上りの早めの段階でペースを上げ始める必要があった。でなければそれは難しくなる。この上りではもっと早い段階でハードに攻めてセレクションをかけなければならなかったのは明確だ」。
バッソの誤算は、今日は上りの最終局面でのアシストとして頼れるシルヴェスタ・シュミットが不調で早い段階で遅れてしまっていたことだ。バッソは言う。
「僕は、僕のベストの力を示すために、チームメイトが残っていない状態でもアタックする必要があった。今日は自分たちが思い描いていたようにはうまく行かなかったけれど」
コンタドールは日に日に回復している。明日の平坦ステージ、さらに休息日を挟めば、アルプスで再び元の力を取り戻しているかもしれない。リース監督もニガードGMも、そうなることに期待を込め、今日の展開を好ましく見ていた。
アームストロングの予想 ヴォクレールが総合優勝する可能性がある?
ピエール・ロランのアシストに支えられ、アタックに対処し、いや、先頭グループを積極的にリードする姿勢さえ見せたヴォクレールが再びマイヨジョーヌをキープした。もはや総合争いの選手たちと同等に山頂ゴールを走っている。
ランス・アームストロングはこのステージのTV中継を見ながらTwittereで次のようにコメントしている。
「もし今日ヴォクレールがリーダーたちと頂上まで登れたら、彼がツールに勝つことができると言わざるをえない。ヴォクレールは2分タイム差を持っているけど、彼らはヴォクレースを振り落とせない。
彼はこの2日、決して後方でひらひらしていない。それどころか最強のひとりだ。他の選手達はセレクションをかけることに対して強引でもアグレッシブでもない。
彼は2分6秒差をもっている。最終タイムトライアルは42kmだ。彼はフランス人で、これはツール・ド・フランスだ。最終タイムトライアルで2分06秒は遅れないだろう。だとしたら...。
彼はラルプデュエズまでは遅れない。彼のチームメイトのピエール・ロランはロックスターだ。この状態は続くはずだ」。
かつてプラトー・ド・ベイユでマイヨジョーヌを着ながらもアームストロングの視野の外にいたヴォクレールが、今再びこのベイユでアームストロングに注目されている。もしも「プラトー・ド・ベイユを制する者がツールを制する」のジンクスがマイヨジョーヌにも当てはまるなら、案外シャンゼリゼでポディウム中央に立っているのはヴォクレールかもしれない。
photo&text:Makoto.AYANO
スタートを控えたバッソ、コンタドールらは物静かに集中して、このステージが意味するものの大きさが伝わってくる。なかでもバッソはただならぬ雰囲気を発散させていた。2004年にアームストロングと互角の闘いを披露したこの地で、再び輝く強い意思を感じた。
スタート地点での人気ものは、昨ステージで逃げるも勝利できなかったジェレミー・ロワ(FDJ)だ。すでに5度のアタックでツールを沸かせるこのフランス人は勝てずともその勇敢な走りで観客たちの支持を得ている。フランス人が慣れない英語を使って叫ぶ「キング・ロワ!」(王を意味するRoiと発音が同じ)の暖かい声援が飛ぶ。
そしてもうひとりの人気者は、アルカンシェルを着てステージ勝利というこのうえない「ブラボーな走り」を披露したフースホフトだ。
昨日の勝利を喜ぶノルウェー人の元選手ダグオットー・ローリッツェンさん(TVコメンテーター)は言う。
「トルの昨日の走りは本当に凄かった。トルと僕はそのステージにチャンスがあるという話を数日前からしていて、昨日の勝利は予想していたものだったんだ。普通に走ってもチャンスはあったけど、アタックして自らのチャンスをより確実にした。アルカンシェルを着たらそれにふさわしい走りを見せなきゃいけない。すでにマイヨジョーヌとのダブルで目立ってたけど、やはり勝利するのとしないのではまったく違うからね。
彼は僕が叶えられなかった夢を叶えてくれたよ。僕はかつてからトルのトレーニングコーチをしてきたから、彼の活躍は格別だよ」。
ローリッツェンさんは元セブンイレブンの選手でツールに出場、ステージ優勝した経験をもつ。90年に宇都宮で開催されたロード世界選手権で終盤逃げたが、一緒に逃げた選手と自転車が絡んでストップを強いられ、世界チャンピオンへのチャンスをフイにしている。現在はノルウェーのTV局のコメンテーターだ。
「毎年この仕事でツールに帯同するんだよ。この仕事は好きだね。とくに自分の国の選手が活躍すると長い3週間の旅も苦じゃなくなる。違うツールを闘っている気分になるね。小さな国から2人の選手(ボアッソンハーゲンと)。ここまででマイヨジョーヌと2つのステージ優勝。素晴らしいよ。視聴率もすごいんだ。観戦に来るノルウェーの観客もますます増えているよ」。
ダスペ峠で事故死したファビオ・カザルテッリの石碑で行われた献花式
主催関係者たちはステージがスタートする前にあるところに急行していた。レース序盤に訪れる急勾配の2級山岳ダスペ峠。
1995年のツールで、今回のコースでは上りに当たるその峠道で、オリンピックロードチャンピオンでもあるイタリア人選手のファビオ・カザルテッリ(元モトローラ)が落車して頭を強打、命を落とした。
路肩に建てられたその慰霊の石碑の前で、集団の通過する前に関係者たちが集まり、小さな献花式を行った。
イタリアから駆けつけたカザルテッリの両親と、サポーターたちも参加。多数のメディアもレースを先行して駆けつけた。
総合ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏やベルナール・イノー氏が両親の肩を抱き、なぐさめの言葉を掛ける。ダスペ峠をツールが通過する年には必ず行われるようになった恒例のセレモニーだが、5月のジロでのウェイラントの死亡事故があったからか、この献花式が持つ意味が再び大きくなったようだ。
外れたジンクス「プラトー・ド・ベイユを制する者がツールを制する」
ゴール地点の超級山岳プラトー・ド・ベイユはかつて様々な名勝負を産んできた名峰。近代では1998年のマルコ・パンターニの独走優勝、イヴァン・バッソとランス・アームストロングのテールトゥーノーズの死闘。そしてこのベイユの勝者が決まってその年のツールの総合優勝を手にしてきた。ジンクス「プラトー・ド・ベイユを制する者がツールを制する」は本当か? いや、今年はとうとうハズレたようだ。
標高1780mに至る平均勾配7.9%・登坂距離15.8kmという登りのスペックは、あのラルプ・デュエズをも凌ぐ。しかしラスト4km付近からゴール地点までは勾配が緩くなる「クロスカントリースキーの名所」。かつてから決定的なアタックはラスト4kmまでで決まっていた。
お見合い状態を制したファネンデルト 名勝負の地で最高のプロ初勝利
膠着状態が続くマイヨジョーヌ集団から抜け出し、猛追したサムエル・サンチェスに21秒差をつけて頂上まで逃げ切ったイェーレ・ファネンデルト(オメガファーマ・ロット)。リュウザルディダンでSサンチェスに破れて2位となり、株を上げていたが、無名の26歳のベルギー人が第12ステージの再現で今度は勝利を手にした。今までの戦績では今年のフレーシュ・ワロンヌで6位に入っているが、トップレースの中では無名に近い選手だ。
ファネンデルトは言う「春に膝を壊し、クラシックの後少し休養をとってイタリアでのトレーニングセッションで再始動した。レースにはドーフィネから戻っている。実際、今のツールでの僕は完璧なコンディションだ。アタックする機会をくれたチームに感謝する。
ライバルたちが牽制の闘いを続ける中、するりと逃げ出したファネンデルト。お見合いのチャンスを見逃さなかった。「彼らはそれまでに何度もアタックしていた。とくにアンディは。彼ら総合争いのライダーはお互いをコントロールすることだけに関心があったから、僕は見逃してくれたんだと思う。僕には総合争いは関係ないから」。
「今日見たようなことは前にも何度もあった。クラシックではラスト10kmぐらいでアタックが決まることがあるし、今日はもっとやさしかった。彼らはお互いを見合っていたから僕は抜け出すことができた。もし僕が総合狙いの選手なら彼らも許してくれなかったと思うよ。だからリズムもそんなに高くなかった」。
お見合いを続けた優勝候補たち 実際は難しかった
機関車イェンス・フォイクトらによるレオパード・トレックのペースセッティングののち、プラトー・ド・ベイユでは予想通り総合優勝候補たちの闘いが繰り広げられた。しかしそれは期待したほどアグレッシブなものでなく、お見合いとも言える牽制が続いた。そのおかげでヴォクレールのマイヨジョーヌは再びキープされた。
アタックを繰り返したフランクとアンディ。コンタドールはまたしても守りに徹したが、離されることはなかった。アンディがコンタドール、エヴァンスらにつけた差は2秒だけ。ピレネーが終わると言うのに、まだ調子が上がりきらないコンタドールにタイム差をつけることができたチャンスをみすみす逃した?
アンディは言う「大きな差をつけることは難しかった。登りはそれに十分なほど勾配がハードじゃなく、何度もアタックしたけど差を開くのは不可能だった。それはあらかじめ予想できたことだったんだ」。
フランクは言う。「パーフェクトだ。アンディには待つように言っていた。他の有力候補にタイム差をつけられなかったのは残念だ。でもこれからもチャンスがある日は多くある。有力選手たちがお見合いをしたのは驚くことじゃない。全員の優勝候補が残っていたんだ。でも彼らのほとんどはただお互いを見合うだけだった。僕とアンディ、そしてバッソだけがアタックしたがっていた。他の選手達は後輪に着いているだけだった。これは総合優勝争いにとっていことじゃない」。
今後の展開を考えると、TTで安定した力を発揮できるエヴァンスに一歩有利な状況になってきた。コンタドール陣営は依然としてコンタドールが調子を日に日に戻していることを強調している。
力を見せたバッソ シュレク兄弟の走りに不満
上りで多く先頭を引き、強いテンポを刻んだイヴァン・バッソ。2004年の力はないが、再び力を見せた。バッソはシュレク兄弟のアタックに批判を込めて言う。
「上りでペースを上げたのは人数を絞るためだ。20人も集団にいる場合はまだアタックできない。まず4,5人まで人数を絞り込む必要がある。アンディとフランクがエヴァンスら他の選手を振り落としたいなら、もっと上りの早めの段階でペースを上げ始める必要があった。でなければそれは難しくなる。この上りではもっと早い段階でハードに攻めてセレクションをかけなければならなかったのは明確だ」。
バッソの誤算は、今日は上りの最終局面でのアシストとして頼れるシルヴェスタ・シュミットが不調で早い段階で遅れてしまっていたことだ。バッソは言う。
「僕は、僕のベストの力を示すために、チームメイトが残っていない状態でもアタックする必要があった。今日は自分たちが思い描いていたようにはうまく行かなかったけれど」
コンタドールは日に日に回復している。明日の平坦ステージ、さらに休息日を挟めば、アルプスで再び元の力を取り戻しているかもしれない。リース監督もニガードGMも、そうなることに期待を込め、今日の展開を好ましく見ていた。
アームストロングの予想 ヴォクレールが総合優勝する可能性がある?
ピエール・ロランのアシストに支えられ、アタックに対処し、いや、先頭グループを積極的にリードする姿勢さえ見せたヴォクレールが再びマイヨジョーヌをキープした。もはや総合争いの選手たちと同等に山頂ゴールを走っている。
ランス・アームストロングはこのステージのTV中継を見ながらTwittereで次のようにコメントしている。
「もし今日ヴォクレールがリーダーたちと頂上まで登れたら、彼がツールに勝つことができると言わざるをえない。ヴォクレールは2分タイム差を持っているけど、彼らはヴォクレースを振り落とせない。
彼はこの2日、決して後方でひらひらしていない。それどころか最強のひとりだ。他の選手達はセレクションをかけることに対して強引でもアグレッシブでもない。
彼は2分6秒差をもっている。最終タイムトライアルは42kmだ。彼はフランス人で、これはツール・ド・フランスだ。最終タイムトライアルで2分06秒は遅れないだろう。だとしたら...。
彼はラルプデュエズまでは遅れない。彼のチームメイトのピエール・ロランはロックスターだ。この状態は続くはずだ」。
かつてプラトー・ド・ベイユでマイヨジョーヌを着ながらもアームストロングの視野の外にいたヴォクレールが、今再びこのベイユでアームストロングに注目されている。もしも「プラトー・ド・ベイユを制する者がツールを制する」のジンクスがマイヨジョーヌにも当てはまるなら、案外シャンゼリゼでポディウム中央に立っているのはヴォクレールかもしれない。
photo&text:Makoto.AYANO
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