2011/07/06(水) - 19:43
初代モデルから多くのライダーの喝采を浴びてきたピナレロのドグマが、いよいよ5代目としてモデルチェンジし、「ドグマ2」として我々の前に姿を見せた。その注目のポイントは、最先端のシステムを導入して空力特性にまで大きく踏み込んだ点だ。その詳細を見ていきたい。
ピナレロといえば、エントリユーザーにはその流麗なグラフィックと、数々のセールスポイントと比較して手が届きやすいプライスで好評を博し、ハイレベルユーザーには左右非対称デザインや最先端のカーボンフレームという、即戦力になるフィーチャーで魅了してきた。今回のドグマ2は、そのハイレベルユーザー向け車両のフラグシップモデルだ。
従来のドグマ 60.1がデビューしたのが2年前だが、その時はフレームの要であるカーボン素材に東レのハイグレードカーボン、トレカCarbon 60HM1Kを採用し話題を呼んだが、この素材をドグマ2も踏襲。同種のカーボン素材を売りにしたバイクも多く見られるが、東レのトレカ純正カーボンの証である「TORAYCAロゴ」を使用できるのはピナレロだけだという。
そしてこれほど希有なカーボン素材を使っていながら、12サイズものサイズバリエーションを揃えているのもピナレロの驚くべき点だ。同社のカーボンバイクはモノコック形状を採っており、すなわちサイズ毎に異なる金型が必要となり、12サイズも展開するという事はそれだけ多くの金型のバリエーションを用意している事になる。メーカーにとっては大変な事だが、周辺パーツで間に合わせのサイズ調整をする必要が少なくなるこの展開力は、どのレベルのユーザにも助かるポイントだろう。
空力特性が新生ドグマ2のキーワード
2012年デビューとなるドグマ2だが、どこが最大の変更点でありセールスポイントになるのであろうか? それは、ずばり「空力特性シミュレーション」によって導き出されたフレーム設計だ。ピナレロによると、ウィンドトンネルテストをコンピュータ上でシミュレーションできるCFDシステムを開発し、これにより今まで不可能であったフレームからパーツの細部に至るまでの空力特性解析が可能になったのだという。
変更はこれだけに留まらない。先の、CFD数値流体力学シミュレーションに加え、FEM構造解析システムにより全体の剛性バランスが更に煮詰められ、ピナレロ特有の左右非対称フレームを生かしながら大きな進化を遂げているという。そもそも、この左右非対称のデザインはライディング時のフレームへの負荷の掛かり方をFEM構造解析技術で解析し、駆動システムが車体右側に集中するロードバイクで、フレーム全体に渡る負荷バランスを最適化するために採用されたもの。これがより進化を果たしてるのだ。
一例としては、ヘッドチューブ周辺は下側に大口径の1"1/2ベアリングを装着する為、全面投影面積は6%増加しているが、空気抵抗は10%の減、フロントフォークのクラウン部分をテールウィング形状にして、ダウンチューブとの間隙で発生する空気の乱れを整流しながら、ブレーキングパワーに対しての剛性を19%アップさせているという。この変更により、ドグマ 60.1のヘッドチューブ周辺に設けられたリブはドグマ2では少なくなっている。
他の部分も大きな変更を受けている。トップチューブとシートチューブが交差するする部分はドグマ 60.1でも明確に左右非対称な形状だったものが、解析の結果さらに均等な反応を得るためにトップチューブの左右非対称形状の度合いが強っまている。シートチューブと交差する部分がより右側に移動し、シート周辺のリブ部分は右側はより長く、左側は短くなっている。
ダウンチューブもドグマ2から左右非対称となり、右側面にはヘッド方向へ伸びる長いリブが設けられた。この事により、フレーム形状に作用する左右対称の動作はドグマ 60.1と比較して、6%向上したという。
レースに必須となるUCI認定もクリア
この他の注目点としては、UCI(国際自転車競技連合)による新たな取り決めとして、UCI管轄のレースで使用されるフレームは同連合により認証され、UCI認定ラベルが添付されていなければならない規則に改められたが、ドグマ2はこれをクリアしている。現段階での国内レースの動向は不明だが、そのほとんどが「UCIルールに順ずる」というケースが多いので、遅かれ早かれ効果は発揮されるだろう。
最先端素材や異形フレームだけでなく、空力特性にまで大きく切り込んできた新生ドグマ2を、2人のインプレッションライダーはどのような評価を下したのか、話を聞いてみよう。
—インプレッション
「相当戦闘能力の高いバイクへと進化している」
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
試乗を終えての第一印象は「スバラシイ」の一言です。乗り味は、上り、下り、加速、巡航、コーナーリング、ブレーキング性能、何処をとっても非の打ち所がありませんし、どこでも行けてしまいます。
アシンメトリック技術(左右非対称)の恩恵か、踏み込んだときの「かかり」が非常に良く、とても気持ちよく加速するのも印象的でした。
「この車体に文句ある人はいないのでは?」と云うのが率直な感想です。
もしあるとすれば「何処が?」と尋ねてみたくなる程の完成度だと感じました。ただ強いて挙げるならば、この奇抜なスタイルを走行性能を追求した機能美ととらえるか否かが選考の分かれ目になると思います。
前モデルより更に進化したアシンメトリック技術でフレームシェイプが若干変わっているように見えますし、加えて前モデルから更に大径化されたヘッドベアリングとの相乗効果で剛性もアップしているという事ですが、この点は元のドグマが良いだけに私には体感できるレベルではありませんでした。
ただ、パワーやトルクのあるスプリンターでも、「この構造なら対応できるのでは?」と思います。
外観で最も目を惹くのは、フォークの後ろに突き出したフィンで、フレームとの一体感が生まれエアロ効果が格段に上がっているといいます。実際に乗って分かるものではないですが、極上の走行性能にエアロ効果が加わる事で、相当戦闘能力の高いバイクへと進化しているとも思います。また、ワイヤーがフレーム内蔵なので、エアロ効果は更にアップされている印象です。
Di2に対応した仕様が60万円オーバーとかなり高価ですが、ピナレロの最高峰というだけのことはありますし、このフレーム性能に納得できればけして高くはないと思いました。このトータルバランスの良さは、他にはなかなかないのではないでしょうか。軽さはそれほどでもありませんが、それを払拭するだけの走りの良さがあります。実戦で使うのもありだし、グランフォンドやロングライドでも気持ちよく使えると思います。
「フレームの進化は止まらない。」と改めて認識させられるバイクでした。
「苦しい場面で、ストレスなく伸びやかに進んでくれるフレーム」
白川賢治(YOU CAN リバーシティ店)
私の第一印象もやはり「とっても良かった」になってしまいます。パッと乗ってみて『ニヤッ』としてしまう位イイ感じです。更に踏んでみて感じるのは「ズバリ、レース用機材だな。」という事です。パッと踏んだ感じはシャキシャキとしてて軽快に進みます。そこから先はピナレロお得意の直進制が強く安定感が出てきます。勿論この安定感はまったりという感じではありません。
ジオメトリーが良いからかダンシング性能もすごく軽快で、上りや平坦で大きなギアを踏み込んでもフレームがガチガチではなく、バックがたわむというかしなやかさを感じます。そのしなやか感により、常にトラクションが掛っている事が伝わってきますし、嫌な硬さもありません。
低速域に於いて軽いギア/シッティングで上っている時もクイクイ進むし、ここでも嫌な硬さは有りません。長い距離乗っても「いつでも踏めるぞ!」という感じです。そこから踏めばやはり伸びやかに加速していきます。この加速感は「スパッ」という加速というよりは、「グングン伸びていく」という感じのモノです。
ですから、ついつい踏みたくなってしまいますし、踏んでいてとても気持ちいいモノです。「苦しい場面でもストレスなく伸びやかに進んでくれるフレームだな。」という感覚がありました。
フロントフォーク周りも、定評のあるフォーク形状のお陰からか、すごくしっかりしているので、色々と乗り較べていくと「フォークの重要さ」というのを凄く感じます。もしかするとフォークの剛性が高過ぎる分だけ、踏み込んだ時などにリアバックがバランス的に柔らかく感じるのかも知れません。
ただこの感覚も全然ネガティブな方向ではなく、単に堅いだけのフレームだとキツイ場面では脚が跳ね返されイッパイになり易いのですが、このフレームは踏めば踏んだだけもうひと踏みもうひと踏み伸びていく感じがあるのでライダーは助かると思います。
では、誰が乗ってもこれらの魅力を堪能できるかと云うと、必ずしもそうは言い切れないでしょう。
ある程度は綺麗にペダリング出来るライダーでないと、普通のハードなバイクに感じるかもしれません。上りも結構なギアを踏んでハイスピードにならないと、このフレームのイイトコロが実感できない可能性があります。
「マイペースでのんびりロングライドで快適に」という目的で乗ろうとするとよさが引き出せないかな、というのが率直な感想です。もっとも、イイトコロを実感し難いだけの話であって不満が出るレベルでは無いでしょうが。
安い機材ではありませんので、やはりレースしている人に、レースで勝負するために使ってもらいたいバイクだと思います。それが市民レースだとしてもレース機材としてのアドバンテージはかなり高いと感じますし、所有する満足感がとても高いというのも大きな魅力の一つだと言えるでしょう。
*スペック
カラー:615/Carbon Silver Red、619/Movi Blue、633/Carbon White Red(CDE)、***/TeamSKY、613/White、614/Red、616/Pos Blue、617/Pos Red、618/Violet、620/Movi White、621/Blue、622/GF(Granfondo)、631/WWF、612/BOB、***/Giro d'italia
チューブ:トレカ Carbon 60HM1K
サイズ:42SL、44SL、46.5SL、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62(C-C)/SLはスローピングデザイン
フレーム重量:920g(54サイズ、無塗装、ベアリングなど部品なし状態)
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-1/2 ONDA 2 60HM1K
価格:フレームセット 578,000円(税込)、iReady仕様(電動コンポ専用) 638,000円(税込)
インプレライダーのプロフィール
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
なるしまフレンド神宮店販売チーフを経て現在は立川店勤務。かつて実業団チーム日本鋪道(昨年までのチームNIPPO)に所属してツール・ド・北海道をはじめとした国内外のトップレースを走った経験を持つ。高校時のインターハイ2位を始めツールド北海道特別賞(堅実なアシストに贈られる賞)やツールド東北総合4位等の実績を持つ。なるしまフレンドに入社後もレース活動を欠かさない36歳にしていまだ現役のJPTレーサー。ショップではレースから得た経験を通じ自転車の魅力と楽しさをより多くの人に伝えられるよう日々自分磨きに勤しんでいる。現在の愛車はタイム・RXインスティンクト。
なるしまフレンド
白川賢治(YOU CAN リバーシティ店)
2010年4月に山梨県中央市にOPENしたYOUCANリバーシティ店の店長。高校時代から20代後半まで競技に打ち込み、現役時代にはツール・ド・北海道総合スプリント賞や全日本選手権100kmチームタイムトライアル優勝、全日本選手権ポイントレース3位等の成績を収める。実業団レースを走った経験や、輸入代理店において広報車両のセットアップを担当した経験を生かしながら、自身の「自転車大好き」な気持ちで一生つき合える自転車の楽しみを提供できるショップを目指している。普段はキャノンデール・スーパーシックスHI-MODに乗る。
YOU CAN
ウェア協力:MAVIC
text:Harumichi SATO
photo:Makoto AYANO
ピナレロといえば、エントリユーザーにはその流麗なグラフィックと、数々のセールスポイントと比較して手が届きやすいプライスで好評を博し、ハイレベルユーザーには左右非対称デザインや最先端のカーボンフレームという、即戦力になるフィーチャーで魅了してきた。今回のドグマ2は、そのハイレベルユーザー向け車両のフラグシップモデルだ。
従来のドグマ 60.1がデビューしたのが2年前だが、その時はフレームの要であるカーボン素材に東レのハイグレードカーボン、トレカCarbon 60HM1Kを採用し話題を呼んだが、この素材をドグマ2も踏襲。同種のカーボン素材を売りにしたバイクも多く見られるが、東レのトレカ純正カーボンの証である「TORAYCAロゴ」を使用できるのはピナレロだけだという。
そしてこれほど希有なカーボン素材を使っていながら、12サイズものサイズバリエーションを揃えているのもピナレロの驚くべき点だ。同社のカーボンバイクはモノコック形状を採っており、すなわちサイズ毎に異なる金型が必要となり、12サイズも展開するという事はそれだけ多くの金型のバリエーションを用意している事になる。メーカーにとっては大変な事だが、周辺パーツで間に合わせのサイズ調整をする必要が少なくなるこの展開力は、どのレベルのユーザにも助かるポイントだろう。
空力特性が新生ドグマ2のキーワード
2012年デビューとなるドグマ2だが、どこが最大の変更点でありセールスポイントになるのであろうか? それは、ずばり「空力特性シミュレーション」によって導き出されたフレーム設計だ。ピナレロによると、ウィンドトンネルテストをコンピュータ上でシミュレーションできるCFDシステムを開発し、これにより今まで不可能であったフレームからパーツの細部に至るまでの空力特性解析が可能になったのだという。
変更はこれだけに留まらない。先の、CFD数値流体力学シミュレーションに加え、FEM構造解析システムにより全体の剛性バランスが更に煮詰められ、ピナレロ特有の左右非対称フレームを生かしながら大きな進化を遂げているという。そもそも、この左右非対称のデザインはライディング時のフレームへの負荷の掛かり方をFEM構造解析技術で解析し、駆動システムが車体右側に集中するロードバイクで、フレーム全体に渡る負荷バランスを最適化するために採用されたもの。これがより進化を果たしてるのだ。
一例としては、ヘッドチューブ周辺は下側に大口径の1"1/2ベアリングを装着する為、全面投影面積は6%増加しているが、空気抵抗は10%の減、フロントフォークのクラウン部分をテールウィング形状にして、ダウンチューブとの間隙で発生する空気の乱れを整流しながら、ブレーキングパワーに対しての剛性を19%アップさせているという。この変更により、ドグマ 60.1のヘッドチューブ周辺に設けられたリブはドグマ2では少なくなっている。
他の部分も大きな変更を受けている。トップチューブとシートチューブが交差するする部分はドグマ 60.1でも明確に左右非対称な形状だったものが、解析の結果さらに均等な反応を得るためにトップチューブの左右非対称形状の度合いが強っまている。シートチューブと交差する部分がより右側に移動し、シート周辺のリブ部分は右側はより長く、左側は短くなっている。
ダウンチューブもドグマ2から左右非対称となり、右側面にはヘッド方向へ伸びる長いリブが設けられた。この事により、フレーム形状に作用する左右対称の動作はドグマ 60.1と比較して、6%向上したという。
レースに必須となるUCI認定もクリア
この他の注目点としては、UCI(国際自転車競技連合)による新たな取り決めとして、UCI管轄のレースで使用されるフレームは同連合により認証され、UCI認定ラベルが添付されていなければならない規則に改められたが、ドグマ2はこれをクリアしている。現段階での国内レースの動向は不明だが、そのほとんどが「UCIルールに順ずる」というケースが多いので、遅かれ早かれ効果は発揮されるだろう。
最先端素材や異形フレームだけでなく、空力特性にまで大きく切り込んできた新生ドグマ2を、2人のインプレッションライダーはどのような評価を下したのか、話を聞いてみよう。
—インプレッション
「相当戦闘能力の高いバイクへと進化している」
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
試乗を終えての第一印象は「スバラシイ」の一言です。乗り味は、上り、下り、加速、巡航、コーナーリング、ブレーキング性能、何処をとっても非の打ち所がありませんし、どこでも行けてしまいます。
アシンメトリック技術(左右非対称)の恩恵か、踏み込んだときの「かかり」が非常に良く、とても気持ちよく加速するのも印象的でした。
「この車体に文句ある人はいないのでは?」と云うのが率直な感想です。
もしあるとすれば「何処が?」と尋ねてみたくなる程の完成度だと感じました。ただ強いて挙げるならば、この奇抜なスタイルを走行性能を追求した機能美ととらえるか否かが選考の分かれ目になると思います。
前モデルより更に進化したアシンメトリック技術でフレームシェイプが若干変わっているように見えますし、加えて前モデルから更に大径化されたヘッドベアリングとの相乗効果で剛性もアップしているという事ですが、この点は元のドグマが良いだけに私には体感できるレベルではありませんでした。
ただ、パワーやトルクのあるスプリンターでも、「この構造なら対応できるのでは?」と思います。
外観で最も目を惹くのは、フォークの後ろに突き出したフィンで、フレームとの一体感が生まれエアロ効果が格段に上がっているといいます。実際に乗って分かるものではないですが、極上の走行性能にエアロ効果が加わる事で、相当戦闘能力の高いバイクへと進化しているとも思います。また、ワイヤーがフレーム内蔵なので、エアロ効果は更にアップされている印象です。
Di2に対応した仕様が60万円オーバーとかなり高価ですが、ピナレロの最高峰というだけのことはありますし、このフレーム性能に納得できればけして高くはないと思いました。このトータルバランスの良さは、他にはなかなかないのではないでしょうか。軽さはそれほどでもありませんが、それを払拭するだけの走りの良さがあります。実戦で使うのもありだし、グランフォンドやロングライドでも気持ちよく使えると思います。
「フレームの進化は止まらない。」と改めて認識させられるバイクでした。
「苦しい場面で、ストレスなく伸びやかに進んでくれるフレーム」
白川賢治(YOU CAN リバーシティ店)
私の第一印象もやはり「とっても良かった」になってしまいます。パッと乗ってみて『ニヤッ』としてしまう位イイ感じです。更に踏んでみて感じるのは「ズバリ、レース用機材だな。」という事です。パッと踏んだ感じはシャキシャキとしてて軽快に進みます。そこから先はピナレロお得意の直進制が強く安定感が出てきます。勿論この安定感はまったりという感じではありません。
ジオメトリーが良いからかダンシング性能もすごく軽快で、上りや平坦で大きなギアを踏み込んでもフレームがガチガチではなく、バックがたわむというかしなやかさを感じます。そのしなやか感により、常にトラクションが掛っている事が伝わってきますし、嫌な硬さもありません。
低速域に於いて軽いギア/シッティングで上っている時もクイクイ進むし、ここでも嫌な硬さは有りません。長い距離乗っても「いつでも踏めるぞ!」という感じです。そこから踏めばやはり伸びやかに加速していきます。この加速感は「スパッ」という加速というよりは、「グングン伸びていく」という感じのモノです。
ですから、ついつい踏みたくなってしまいますし、踏んでいてとても気持ちいいモノです。「苦しい場面でもストレスなく伸びやかに進んでくれるフレームだな。」という感覚がありました。
フロントフォーク周りも、定評のあるフォーク形状のお陰からか、すごくしっかりしているので、色々と乗り較べていくと「フォークの重要さ」というのを凄く感じます。もしかするとフォークの剛性が高過ぎる分だけ、踏み込んだ時などにリアバックがバランス的に柔らかく感じるのかも知れません。
ただこの感覚も全然ネガティブな方向ではなく、単に堅いだけのフレームだとキツイ場面では脚が跳ね返されイッパイになり易いのですが、このフレームは踏めば踏んだだけもうひと踏みもうひと踏み伸びていく感じがあるのでライダーは助かると思います。
では、誰が乗ってもこれらの魅力を堪能できるかと云うと、必ずしもそうは言い切れないでしょう。
ある程度は綺麗にペダリング出来るライダーでないと、普通のハードなバイクに感じるかもしれません。上りも結構なギアを踏んでハイスピードにならないと、このフレームのイイトコロが実感できない可能性があります。
「マイペースでのんびりロングライドで快適に」という目的で乗ろうとするとよさが引き出せないかな、というのが率直な感想です。もっとも、イイトコロを実感し難いだけの話であって不満が出るレベルでは無いでしょうが。
安い機材ではありませんので、やはりレースしている人に、レースで勝負するために使ってもらいたいバイクだと思います。それが市民レースだとしてもレース機材としてのアドバンテージはかなり高いと感じますし、所有する満足感がとても高いというのも大きな魅力の一つだと言えるでしょう。
*スペック
カラー:615/Carbon Silver Red、619/Movi Blue、633/Carbon White Red(CDE)、***/TeamSKY、613/White、614/Red、616/Pos Blue、617/Pos Red、618/Violet、620/Movi White、621/Blue、622/GF(Granfondo)、631/WWF、612/BOB、***/Giro d'italia
チューブ:トレカ Carbon 60HM1K
サイズ:42SL、44SL、46.5SL、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62(C-C)/SLはスローピングデザイン
フレーム重量:920g(54サイズ、無塗装、ベアリングなど部品なし状態)
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-1/2 ONDA 2 60HM1K
価格:フレームセット 578,000円(税込)、iReady仕様(電動コンポ専用) 638,000円(税込)
インプレライダーのプロフィール
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
なるしまフレンド神宮店販売チーフを経て現在は立川店勤務。かつて実業団チーム日本鋪道(昨年までのチームNIPPO)に所属してツール・ド・北海道をはじめとした国内外のトップレースを走った経験を持つ。高校時のインターハイ2位を始めツールド北海道特別賞(堅実なアシストに贈られる賞)やツールド東北総合4位等の実績を持つ。なるしまフレンドに入社後もレース活動を欠かさない36歳にしていまだ現役のJPTレーサー。ショップではレースから得た経験を通じ自転車の魅力と楽しさをより多くの人に伝えられるよう日々自分磨きに勤しんでいる。現在の愛車はタイム・RXインスティンクト。
なるしまフレンド
白川賢治(YOU CAN リバーシティ店)
2010年4月に山梨県中央市にOPENしたYOUCANリバーシティ店の店長。高校時代から20代後半まで競技に打ち込み、現役時代にはツール・ド・北海道総合スプリント賞や全日本選手権100kmチームタイムトライアル優勝、全日本選手権ポイントレース3位等の成績を収める。実業団レースを走った経験や、輸入代理店において広報車両のセットアップを担当した経験を生かしながら、自身の「自転車大好き」な気持ちで一生つき合える自転車の楽しみを提供できるショップを目指している。普段はキャノンデール・スーパーシックスHI-MODに乗る。
YOU CAN
ウェア協力:MAVIC
text:Harumichi SATO
photo:Makoto AYANO
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