2011年7月2日、フランス西部のヴァンデ県で第98回ツール・ド・フランスが動き出す。ブルターニュとノルマンディ地方を駆け抜け、中央山塊に挑み、そしてピレネー山脈の麓に達する第11ステージまでのコースを紹介。

7月2日(土) 第1ステージ
パサージュ・デュ・ゴワ〜モン・デザルエット  191.5km
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第1ステージ・コースプロフィール第1ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.第98回大会はフランス西部のヴァンデ県でスタートを切る。スタート地点はヴァンデ県の西端に位置するノワールムーティエ島だ。初日は「約10名の選手による闘いになる」プロローグではなく、「198名の選手に平等にマイヨジョーヌのチャンスが生まれる」通常のラインレースだ。

1999年大会で大落車を引き起こした「パサージュ・デュ・ゴワ」と呼ばれる海道が登場する。その悪名高き海道は、満潮時に海の底に沈むぬかるんだ道。しかし正式なスタート地点は海道の先にあるため、大きなトラブルは起こらないはず。最後は平均勾配4.7%・登坂距離2.2kmの4級山岳モン・デザルエットを駆け上がってゴール。パンチ力のあるパンチャー、もしくは登坂力のあるスプリンターがマイヨジョーヌを手にするだろう。


7月3日(日) 第2ステージ
レゼサール〜レゼサール 23km(チームTT)
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第2ステージ・コースプロフィール第2ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.2年ぶりにチームTTがツールに帰ってくる。前日にステージ優勝を果たしたチームは、マイヨジョーヌを守るために全開走行を強いられる。ここで総合首位を守る、もしくは総合首位を奪うことができれば、シュペル・ベス・サンシーの頂上ゴールが設定された第8ステージまでマイヨジョーヌを着続ける可能性が高い。

コースはフラットなレイアウトで、全長は23kmと短い(歴代最長チームTTは1978年の153km!)。そのため大きなタイム差は生まれず、最終的なマイヨジョーヌ争いには大きな影響を及ぼさないと見られている。TTスペシャリストを揃えた英語圏のチームが上位に名を連ねる。一方、TTが苦手なメンバーを揃えるチームは、1分前後のタイムロスを被るだろう。メンバーの中で5番手でゴールする選手のタイムがチームの成績に反映される。


7月4日(月) 第3ステージ
オロンヌ・シュルメール〜ルドン 198km
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第3ステージ・コースプロフィール第3ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.この日の最高地点は、ゴールの55km手前に位置する標高66mのサン・ナゼール橋。ロワール川に架かるこの橋が、この日唯一の4級山岳に設定されている。つまりそれ以外はほぼフラット。ヴァンデからブルターニュまで、大西洋に面した平野部を198kmかけて北上する。正真正銘のスプリンター向きステージだ。

今大会に登場するスプリンター向きの平坦ステージは8つ。スプリンターチームがトレインを組んでルドンの街に向かい、ラスト600mの最終コーナーを抜けてスプリント開始。超ハイスピードで繰り広げられるスプリント争いに注目したい。同時に最強スプリンターの証であるマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)争いが始動する。今年もボーナスタイムが設定されないため、マイヨジョーヌを奪うのは難しいだろう。


7月5日(火) 第4ステージ
ロリアン〜ミュール・ド・ブルターニュ 172.5km
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第4ステージ・コースプロフィール第4ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.ブルターニュを駆ける一日。細かいアップダウンとワインディングを繰り返し、最後は3級山岳の「ミュール・ド・ブルターニュ」を駆け上がってゴールだ。標高293mの丘の上に向かって、平均勾配6.9%を直線的に登る。全長が2kmに及ぶこの「ミュール(壁)」がゴール地点としてツールに組み込まれるのは今回が初めて。

主催者は平坦ステージに分類しているが、スプリンターが勝負に絡むためには相当の努力が必要となる。総合優勝を狙うオールラウンダーたちにとっても油断大敵。この「アルデンヌ・クラシック」さながらのコースで、クラシックハンターたちが飛び出すだろう。ずばり、この日29回目の誕生日を迎えるフィリップ・ジルベール(ベルギー)向きのゴールだ。


7月6日(水) 第5ステージ
カルエ〜カプ・フレル 164.5km
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第5ステージ・コースプロフィール第5ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.「ミュール」での刺激的な闘いの翌日、スポットライトは再びスプリンターに当てられる。カルエからカプ・フレルに至るコースの全長は164.5km。これは今大会の1ステージ平均距離163.3kmに近い数字だ。

ブルターニュが生んだ名選手ベルナール・イノーの故郷イフィニアックを122km地点で通過し、スプリンターチームを先頭にカプ・フレルに突入する。ゴールの3km手前で標高差50mほどの丘を越え、最後はマンシュ通りの緩斜面を駆け上がってゴール。終盤の約60kmは大西洋に近いアップダウンコースで、海から吹き付ける横風が集団分裂を招く可能性も。ド平坦コースではないため、逃げ切りが生まれるシナリオも想定される。


7月7日(木) 第6ステージ
ディナン〜リズー 226.5km
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第6ステージ・コースプロフィール第6ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.レースの舞台はブルターニュからノルマンディに移ろう。今大会最長の226.5kmコースには、2つの3級山岳と1つの4級山岳が設定されている。カテゴリー山岳の数だけを見ると、それほど難易度は高くない。しかし細かいアップダウンが確実にスプリンターたちの脚を弱らせる。

しかもゴール前は登り基調。ラスト3kmから登りが始まり、フラムルージュ(ラスト1kmアーチ)に至るまで標高差88mを駆け上がる。スプリンターチームがトレインを組んで支配するようなハイスピードな展開には持ち込まれない。登りでアタックした選手による逃げ切り、もしくは登りで絞り込まれた集団によるスプリントバトルの可能性が高い。リズーがゴール地点に設定されるのは3回目。過去の2回はいずれもベルギー人選手が制している。


7月8日(金) 第7ステージ
ル・マン〜シャトールー 218km
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第7ステージ・コースプロフィール第7ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.ほぼ真っ平ら。TTと最終日のシャンゼリゼステージを除けば、今大会唯一の「カテゴリー山岳ゼロ」の平坦ステージである。

そんな平坦ステージで注目したいのが、今年から変更されたスプリントポイントのポイントシステムだ。昨年までは1ステージに複数のスプリントポイントが設定されていたが、今年から1ステージ・1スプリントポイントに固定され、ポイント通過上位15名まで、ゴール地点の約半分のポイントが与えられることになった。つまりスプリントポイントでの獲得ポイントがマイヨヴェール争いに大きな影響を及ぼす。この日はラスト26km地点のスプリントポイントで1度目の、そしてシャトールーのゴール地点で2度目のスプリントが繰り広げられる。シャトールーは2008年にマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)が自身初のツールステージ優勝を遂げた地だ。


7月9日(土) 第8ステージ
エギュランド〜シュペル・ベス・サンシー 189km
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第8ステージ・コースプロフィール第8ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.1週間に及ぶ平坦シリーズは終了。この日から舞台はフランスのマシフ・サントラル(中央山塊)に差し掛かる。頂上ゴールにはカウントされていないが、3級山岳シュペル・ベス・サンシーの登りゴールで総合争いは動き出す。

標高1275mのシュペル・ベス・サンシーに向かって前半から高度を上げ、ゴールの25km手前で一旦2級山岳ラ・クロワ・サン・ロベール峠を通過。平均勾配6.2%・登坂距離6.2kmという登りで絞られた集団が、最後の3級山岳に挑む。ラスト10kmは登りと下りの連続で、ラスト1500mで標高差115m・平均勾配7.6%を駆け上がってゴール。2008年にこのシュペル・ベス・サンシーで優勝したリカルド・リッコ(イタリア)はプロトンの中にもういない。ジルベールのようなパンチ力のある選手がステージ優勝を争うだろう。


7月10日(日) 第9ステージ
イソワール〜サン・フルール 208km
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第9ステージ・コースプロフィール第9ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.合計8つのカテゴリー山岳が詰め込まれた第9ステージ。いずれの山岳も平均勾配は6〜7%で、中盤にかけて3つの2級山岳を越える。99.5km地点の2級山岳パ・ド・ペイロルはマシフ・サントラルで最も標高のある峠だ。

この日のカテゴリー山岳を全て先頭通過すると23ポイント獲得。これは第8ステージまでの合計ポイント(20ポイント)を上回る数字であり、山岳賞ランキングが変動が起こるのは間違いない。ゴール地点は4級山岳サン・フルール。旧市街へと続く道は平均勾配6.1%・登坂距離1600m。2004年には山岳王リシャール・ヴィランク(フランス)がここでキャリア最後のツール勝利を飾り、山岳賞ジャージを手にしている。


7月11日(月) 休息日


7月12日(火) 第10ステージ
オリアック〜カルモー 158km
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第10ステージ・コースプロフィール第10ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.1回目の休息日を終え、ツールは引き続きピレネー山脈に向けて南下する。後半にかけて4つのカテゴリー山岳が設定されており、純粋にスプリンター向きのコースレイアウトではない。加えてスプリントポイントが37.5km地点という早いタイミングで登場するので、スプリンターチームの中には前半で役目を終えるチームが出てくるかもしれない。

故に逃げ切りが決まりやすいコースレイアウトであるとも言える。スプリンターチームがステージ優勝に興味を示したとしても、際どい展開に持ち込まれるはず。暑さという難敵に苦しむ選手も出てくるだろう。なお、この日のステージでコース全体(3430km)の半分を消化したことになる。


7月13日(水) 第11ステージ
ブレイ・レ・ミン〜ラヴォール 167.5km
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第11ステージ・コースプロフィール第11ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.スプリンターたちに残されたチャンスは3つ。この第11ステージと第15ステージ、そして最終日のシャンゼリゼステージだ。この日は28.5km地点で3級山岳トナック峠を、135.5km地点で4級山岳ピュイロランス峠を通過。その難易度の低さから、ゴール勝負には直接影響しないと思われる。ラヴォールでは迫力の大集団スプリントに持ち込まれるはずだ。

この第11ステージでツールは一区切り。翌日の第12ステージからはピレネーの山岳ステージ、そして間を置いてアルプスの山岳ステージが始まる。総合狙いの選手にとっては、トラブルなくピネレーに辿り着くことが最優先事項だ。


text:Kei Tsuji
image:A.S.O.

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