2011/06/19(日) - 11:09
並みいるビッグスプリンターを振り払い、ゴールに飛び込む青いポイント賞ジャージ。韋駄天ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)がステージ2勝目をマークした。イエロージャージを懸けた闘いはいよいよクライマックスを迎える。
2011年6月18日、テューバッハからシャフハウゼンまでの167kmで行なわれたツール・ド・スイス第8ステージ。最終日前日のこのステージはスプリンター向きで、コースの大半は平坦路だ。
しかし終盤にかけて2つのカテゴリー山岳を越える。ゴール22km手前で3級山岳ハラウアーベルグ、ゴール13km手前で4級山岳シブリンガーヘーエをクリア。この標高差100m前後の小さな丘が、スプリンターを篩にかける。
そんなスプリンター向きのステージで、スプリンターのフランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)が逃げに乗った。同じく逃げたのはルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)、ヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・サンガード)、ヤン・バルタ(チェコ、チームネットアップ)。タイム差は70km地点で8分まで拡大する。
定石通りランプレ・ISDがコントロールしたメイン集団は、後半にかけてHTC・ハイロードやチームスカイが牽引。ゴールまで30kmを切ると逃げグループでは不協和音が流れ始め、メイン集団とのタイム差は縮小する。
そして迎えた3級山岳ハラウアーベルグ。逃げグループはパオリーニとマリチャの先行が決まり、メイン集団はモビスターとレオパード・トレックのペースアップによって分裂する。メイン集団はこの登りで30名ほどに絞り込まれた。
多くのスプリンターたちとともに、総合2位のバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)が後方集団に取り残されてしまう。
フランク・シュレク(ルクセンブルク)の総合ジャンプアップを目指し、モレマの脱落を知ったレオパード・トレックが全力で集団牽引。アンディ・シュレク(ルクセンブルク)、リーナス・ゲルデマン(ドイツ)、マキシム・モンフォール(ベルギー)、そしてイェンス・フォイクト(ドイツ)が身を粉にする鬼気迫る集団牽引を見せたため、モレマは単独追走を諦め、後方集団への合流を選ばざるを得なかった。
メイン集団はレオパード・トレックが引き続けた状態でシャフハウゼンの街へ。ラスト2kmでワウテル・ポエルス(オランダ、 ヴァカンソレイユ・DCM)がアタックを仕掛けると、ようやくスプリンターチームが集団先頭へ。ダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)がハイスピードで集団を牽引し、ラスト1kmアーチを潜った。
ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)とベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)を先頭に、ラスト300mで始まったスプリントバトル。飛び出すタイミングを遅らせたサガンが一気に先頭に立ち、ゴスとアルカンシェルのトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)が追い上げる展開。
しかしゴスやフースホフトは伸びない。サガンは伸びやかなスプリントでゴールラインに突進し、他を寄せ付けずに両手を広げる。ポイント賞ジャージの前にひれ伏したスプリンターたちは肩を落としてゴールした。
「こんなに嬉しい勝利はないよ!だってここまでチャンスを全てものにできている!」サガンは板についてきたイタリア語で喜びを表現する。
「今日のステージは終盤にアップダウンがあったからトリッキーだった。登りでのアタックで集団が割れることを予想していて、本当にその通りになったんだ。そこで多くのスプリンターが脱落した。最後はダニエル・オスの力強いリードアウトに導かれて先頭へ。早めに仕掛けたライバルたちを左から追い上げたんだ」。
今シーズン7勝目を飾ったサガン。「トップコンディションを維持しているんだ。この好調さを維持して、勝つことを継続させたい」。ツール・ド・スイスでは第3ステージに続く2勝目。ポイント賞ランキングで首位を快走している。
イエロージャージはクネゴがキープ。モレマを含むメイン集団が48秒遅れでゴールしたため、思いがけずクネゴは総合リードを広げることに成功している。クネゴはステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)から1分36秒、フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)から1分41秒、そしてリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)から1分59秒のリードを得て最終個人タイムトライアルに挑むことに。
クルイスウィックはジロ・デ・イタリアの最終個人TTで20位に入る実力の持ち主。Fシュレクは決してTTを得意としないが、昨年大会の最終個人TTで好走して逆転総合優勝に輝いている。ライプハイマーはグランツールの個人TTでも上位に入るTT系オールラウンダーだ。個人TTの距離は32.1km。オールラウンダーとして復権しつつあるクネゴの真価が問われる。
選手コメントはリクイガス・キャノンデール公式サイト、ならびにランプレ・ISD公式サイトより。
ツール・ド・スイス2011第8ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) 3h52'00"
2位 マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)
3位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
4位 コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)
5位 トル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)
6位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
7位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)
8位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)
9位 サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード
個人総合成績
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) 31h01'49"
2位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク) +1'36"
3位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +1'41"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) +1'59"
5位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +2'11"
6位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) +2'38"
7位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +3'10"
8位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ) +3'11"
9位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム) +3'20"
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード) +3'22"
ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
山岳賞
アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
中間スプリント賞
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
チーム総合成績
レオパード・トレック
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
2011年6月18日、テューバッハからシャフハウゼンまでの167kmで行なわれたツール・ド・スイス第8ステージ。最終日前日のこのステージはスプリンター向きで、コースの大半は平坦路だ。
しかし終盤にかけて2つのカテゴリー山岳を越える。ゴール22km手前で3級山岳ハラウアーベルグ、ゴール13km手前で4級山岳シブリンガーヘーエをクリア。この標高差100m前後の小さな丘が、スプリンターを篩にかける。
そんなスプリンター向きのステージで、スプリンターのフランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)が逃げに乗った。同じく逃げたのはルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)、ヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・サンガード)、ヤン・バルタ(チェコ、チームネットアップ)。タイム差は70km地点で8分まで拡大する。
定石通りランプレ・ISDがコントロールしたメイン集団は、後半にかけてHTC・ハイロードやチームスカイが牽引。ゴールまで30kmを切ると逃げグループでは不協和音が流れ始め、メイン集団とのタイム差は縮小する。
そして迎えた3級山岳ハラウアーベルグ。逃げグループはパオリーニとマリチャの先行が決まり、メイン集団はモビスターとレオパード・トレックのペースアップによって分裂する。メイン集団はこの登りで30名ほどに絞り込まれた。
多くのスプリンターたちとともに、総合2位のバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)が後方集団に取り残されてしまう。
フランク・シュレク(ルクセンブルク)の総合ジャンプアップを目指し、モレマの脱落を知ったレオパード・トレックが全力で集団牽引。アンディ・シュレク(ルクセンブルク)、リーナス・ゲルデマン(ドイツ)、マキシム・モンフォール(ベルギー)、そしてイェンス・フォイクト(ドイツ)が身を粉にする鬼気迫る集団牽引を見せたため、モレマは単独追走を諦め、後方集団への合流を選ばざるを得なかった。
メイン集団はレオパード・トレックが引き続けた状態でシャフハウゼンの街へ。ラスト2kmでワウテル・ポエルス(オランダ、 ヴァカンソレイユ・DCM)がアタックを仕掛けると、ようやくスプリンターチームが集団先頭へ。ダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)がハイスピードで集団を牽引し、ラスト1kmアーチを潜った。
ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)とベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)を先頭に、ラスト300mで始まったスプリントバトル。飛び出すタイミングを遅らせたサガンが一気に先頭に立ち、ゴスとアルカンシェルのトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)が追い上げる展開。
しかしゴスやフースホフトは伸びない。サガンは伸びやかなスプリントでゴールラインに突進し、他を寄せ付けずに両手を広げる。ポイント賞ジャージの前にひれ伏したスプリンターたちは肩を落としてゴールした。
「こんなに嬉しい勝利はないよ!だってここまでチャンスを全てものにできている!」サガンは板についてきたイタリア語で喜びを表現する。
「今日のステージは終盤にアップダウンがあったからトリッキーだった。登りでのアタックで集団が割れることを予想していて、本当にその通りになったんだ。そこで多くのスプリンターが脱落した。最後はダニエル・オスの力強いリードアウトに導かれて先頭へ。早めに仕掛けたライバルたちを左から追い上げたんだ」。
今シーズン7勝目を飾ったサガン。「トップコンディションを維持しているんだ。この好調さを維持して、勝つことを継続させたい」。ツール・ド・スイスでは第3ステージに続く2勝目。ポイント賞ランキングで首位を快走している。
イエロージャージはクネゴがキープ。モレマを含むメイン集団が48秒遅れでゴールしたため、思いがけずクネゴは総合リードを広げることに成功している。クネゴはステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)から1分36秒、フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)から1分41秒、そしてリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)から1分59秒のリードを得て最終個人タイムトライアルに挑むことに。
クルイスウィックはジロ・デ・イタリアの最終個人TTで20位に入る実力の持ち主。Fシュレクは決してTTを得意としないが、昨年大会の最終個人TTで好走して逆転総合優勝に輝いている。ライプハイマーはグランツールの個人TTでも上位に入るTT系オールラウンダーだ。個人TTの距離は32.1km。オールラウンダーとして復権しつつあるクネゴの真価が問われる。
選手コメントはリクイガス・キャノンデール公式サイト、ならびにランプレ・ISD公式サイトより。
ツール・ド・スイス2011第8ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) 3h52'00"
2位 マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)
3位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
4位 コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)
5位 トル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)
6位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
7位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)
8位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)
9位 サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード
個人総合成績
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) 31h01'49"
2位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク) +1'36"
3位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +1'41"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) +1'59"
5位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +2'11"
6位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) +2'38"
7位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +3'10"
8位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ) +3'11"
9位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム) +3'20"
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード) +3'22"
ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
山岳賞
アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
中間スプリント賞
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
チーム総合成績
レオパード・トレック
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
フォトギャラリー
Amazon.co.jp